羽田野忠文の発言 (懲罰委員会)
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○羽田野委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、稲村利幸君提出の懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により二十日間の登院停止を命ずべしとの動議に賛成し、田邊誠君提出の懲罰事犯にあらずと決すべしとの動議に反対するものであります。
以下その理由を申し述べます。
去る四月二十六日、議員小林政子君は物価問題等に関する特別委員会におきまして、田中内閣総理大臣に対する質問のうちにこういうことを述べております。
新幹線や高速道路または地域開発計画に起因し、周辺地域の地価急騰の問題を取り上げまして、かような「計画が発表される以前に情報をいち早くキャッチして、その地域を資金を持っている者が買い占めていく」行動に対して規制すべきではないだろうかという問題を提起したその後に、具体的な事実といたしまして「上越新幹線の上毛高原駅が発表になった昭和四十六年の十月以前に土地が相当あの近辺で買われているという事実が、私の調査によっても明らかになっております。その土地は上毛高原駅からわずか一・五キロメートル以内の山林、原野、ここが具体的に昭和四十三年から四十四年にかけて、群馬県利根郡のいわゆる月夜野町の字石倉地区という地域が相当土地を買われているわけでございます。しかも、買い主は株式会社」上牧荘であると具体的な事実を摘示をしております。次いで、田中総理はかつて上牧荘の取締役をされておられ、現在上牧荘の取締役八内島さんとたいへん古くから知り合いで親しい間柄といわれておったと田中総理と上牧荘の関係を述べた後、さらに、田中総理は「上越新幹線を含めた全国のいわゆる新幹線網あるいは新全国総合開発計画などの具体的な日本列島改造を進めていく、こういう計画、構想、こういうものに非常に密接にタッチ」していたという、いわゆる情報を知り得る立場にあったということを述べて、そのあと結論的な判断として、「たまたま新幹線計画が発表された時点の中で、そのすぐ近くに駅ができるというようなことはいろいろと——しかもその近辺の土地が、山林、原野が相当買われているというような事実について」一国の総理大臣がみずからの政治的地位を利用して「このようなことがやられたんじゃないか、」「私は非常に大きな疑問を」持っておりますという疑問を提起し、なお引き続き、二国の総理大臣が、この点についてほんとうに政治姿勢を改めると同時に、そのようなことをやっていたのでは、いまの不当な商社のこの買い占め、本気になってこれを取り締まり、やめさせていく」ことができるだろうかという結論を述べておるわけであります。
この一連の質問は、筋をたどってみますと、結局、田中総理大臣が上越新幹線計画をその発表前に知り得る立場にあり、その知り得た情報を親友の入内島氏に提供して上毛高原駅付近の土地を買収させたというような一般的印象のとれる質問をしておるのでありまして、これは一国の総理大臣の政治姿勢を問う重大な発言であります。
しこうして、それでは一国の総理大臣の政治姿勢が疑われるような具体的な事実があるのかどうかという点について、その後当委員会で調査をいたしました。ところがその結果によりますと、こういうことになっております。
小林議員が指摘しておられる昭和四十三年から昭和四十四年にかけて石倉地区で上牧荘が買い受けた土地というものはどれだけのものがあるのか、これは地続きのがけ地千六百二十九平方メートル、坪数にして四百九十三坪、これがあるだけのものであります。相当の土地が買われておるという指摘を受けたのは、この四百九十三坪の土地のみであります。
なお、それでは、昭和四十六年以前にということを言っているから、四十六年以前に取得したものがその石倉地区やあるいはその周辺にも上牧荘のものがありゃせぬか、ここまで厳密に調べ上げたその集計でも、山林、原野あるいは一部の畑が加わって合計して六千三百二十三平方メートル、坪数にして千九百十四坪弱、これだけのものを上牧荘が買い受けて登記をしておるという事実があります。およそ計画発表前に情報を取得して資金のある者が買占めるという大前提に立った、しかも、一国の総理大臣の政治姿勢を追及するというような問題として取り上ぐべき問題でありましょうか。山間の山林、原野が坪数にして二千坪弱、これだけのものを買い受けたということはきわめて疑惑であるということ、それ自体が常識として納得できない。
それでは、その土地というものはどういうととろにあるのか、新幹線の上毛高原駅予定地のすぐ周辺にあるのかどうかというような点についても、当委員会で調べたところによりますと、小林議員は、この買い受けた土地は「上毛高原駅からわずか一・五キロメートル以内の山林、原野」であるというふうに述べております。この「わずか一・五キロ」というのも、駅に近いあるいは駅周辺ということについては相当疑問があります。しかし、これは人の見方、見方でありますが、これを「わずか」ということで表現をしておる。ところがその後当委員会の調査によりますと、この石倉地域その他、買い受けた土地は、上毛高原駅予定地から六キロメートル以上離れた地域であるということが明らかになっております。この点につきましては、小林議員もその後、この「一・五キロメートル」と言ったのは、一・五里の言い違いであったという訂正をされております。
ここで問題は、およそ上毛高原駅予定地から六キロ以上も離れた山間の山林、原野を、そこで旅館を営業しておる株式会社上牧荘が地続きの土地、あるいはその付近の土地として二回、三回に分けて、二千坪に足りないような土地を買ったからといって、しかも買った人がかつて総理が取締役をしていた法人であった、あるいは現在、その法人の取締役が親友である、こういう、これだけのつながりで総理の政治姿勢に結びつけて、総理が事前に知り得た情報を漏らして、それをもとにして買ったというふうな結びつけをすることが、社会一般通念として妥当であるかどうか、客観的妥当性があるかどうか。これはだれが考えても、少なくとも一国の総理大臣の政治姿勢を問うにはあまりにもかけ離れた、飛躍した私は質問である。こういうことで一国の総理大臣の政治姿勢に疑惑を抱かせるというような質問は、それ自体が総理に対する無礼のことばにもなりますし、議院の品位も傷つける質問だということで、私は、この質問者小林議員は、国会の自律権に従って責任をとらなければならない問題であると確信をいたします。
なお、この具体的事実についても一言申し述べたいと思いますが、小林議員は、総理大臣の、さような事実はないはずだ、私は知らないという答弁にもかかわらず、これは具体的な調査に基づくものだということで事実を申し述べておりますが、この表現そのものを見ますと、「その土地は上毛高原駅からわずか一・五キロメートル」、非常に近いという印象を出そうという表現。それから広さについては具体的な面積は示さずして、「相当土地を買われている」、非常にあいまいかつ不正確な表現をしております。これだけのことを聞きますと、いわゆる国会並びに国会の発言が社会に知られた場合に、さも上毛高原駅、いわゆる新幹線の駅予定地の近いところに広い土地が買われたというような、誤った印象を与えるような表現、これは私は、そういう印象を与えるためにことさらそういうことばを使ったというのではないかと思いますが、少なくともそのことば自体は軽率で、そのために非常に誤った印象を与え、人に迷惑をかけた。具体的には、質問を受けられた田中内閣総理大臣の政治姿勢を疑わせ、また具体的に名前を示された株式会社上牧荘と、その代表取締役である入内島さんそのものに、信用上あるいは営業上の迷惑をかけるような軽率な発言である。先ほど田遇議員が動議の中で、片言隻句をとらえ、これはやはり質問の中には適切でないことばなどもある、しかしこれは容認さるべきものも相当あるし、容認さるべきであるということばがありましたが、私も、その一言一句そのものというものをそう追及する考えはございませんが、少なくとも事総理なりあるいは特定の個人の名誉なり信用なり、政治姿勢に関係のあるようなものについては、よほど正確に、かつ慎重に、それらの人に不当な迷惑や疑惑を及ぼさせないような配慮をすることが、質問者の当然の義務であります。その点では、私は、この質問者は責任を負わなければならないと思います。国会議員は院内における発言について責任を問われないという免責特権がございますが、これは何を言ってもよろしいというのではございません。少なくとも議員がそれだけの特権がある以上、発言することについては正確と品位を守るという責任があるはずであります。その責任にたがったこの質問者は、ただいま提案者が述べられたような二十日間の登院停止という責めは当然負うべきであり、こういうきびしい態度で望みませんと、公の場所である国会において免責特権があるということのために、疑惑を招くような、ことさら疑惑を起こすような質問がなされる、あるいは個人の名誉、信用、政治姿勢が棄損されるような質問がなされるということになれば、ひいては国会の権威を失墜し、信頼を落とす結果ともなります。
この際、本件懲罰事犯については厳たる態度をもって望むべきであると思いますし、したがって稲村利幸君の動議に賛成をし、各委員もこれに賛成していただくように御要望して討論を終わります。(拍手)