東中光雄の発言 (懲罰委員会)
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○東中委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、稲村利幸君提出の、議員小林政子君を懲罰に付すべしとの動議に断固反対し、田邊誠君提出の、懲罰事犯にあらずとの動議に賛成するものであります。
私は、まず最初に次のことを指摘したいと思います。およそ議員に対する懲罰は慎重の上にも慎重でなければならないのであります。言うまでもなく議員は国民の代表であります。議員に対する誤った懲罰は、これを選出した有権者の意思をじゅうりんし、国民に対する重大な挑戦となるものであります。
さらに、より根本的には、国会は国権の最高機関であり、国政に対して重大な権能を有しており、国会における言論の自由を保障することは、国会の使命達成にとって不可欠のものであります。誤った懲罰により、いやしくも議員の言論の自由を抑圧するようなことがあれば、ゆゆしき事態であり、言論の府としての国会の自殺行為といわなければなりません。
もとより国会議員といえども、どんな無責任な言辞を弄してもよいとか、あるいはどんなことをしても国会議員だからよいということではないことは明らかであります。無礼の言、侮辱のたぐいは許されないことはまた言うをまちません。この意味で、懲罰規定も必要であることは当然であります。しかし、これに籍口して、多数党が数にものをいわせて、政党間の政策上の違いから生まれる言論内容や評価の違いを理由とし、あるいは為政者、政府・与党にとって不利益であることを理由にして、議員の発言を懲罰をもって規制するがごときことは断じて許されません。それは国会の上に党利を置き、懲罰権を私物化するものであるからであります。
ところで、一体、四月二十六日の物価問題特別委員会における小林議員の質問のどこが懲罰に値するというのでしょうか。小林質問は、大商社の反社会的買占め行為を規制するため、政府の政治姿勢について、具体的な問題で事実に基づき総理に疑惑をただしたものであります。すなわち、上越新幹線上毛高原駅の決定並びに同駅予定地周辺の土地買収をめぐって起きている疑惑を取り上げ、総理の政治姿勢を国民の前に明らかにされることを求めたものであります。
このことは、大商社などの反社会的な買占め行為に対する国民の強い非難の声が高まっていた時期であり、まさに国政上の重大な焦点の一つとなっていた問題であります。小林議員が指摘した疑惑は、地域の人たちが現に持っている疑惑であり、その内容は、もちもろの関係から見て当然生まれる客観性のある疑惑であり、このような疑惑があるとき、主権者である国民にかわってこれをただすのは国会議員としてきわめて当然のことであり、当然の権利でもあります。
このような正当な質問に対して自民党の諸君は、小林発言は個人の名誉を傷つけ、院の品位を失墜させるものだと言っておりますが、これらは全くのこじつけにしかすぎないことは、この懲罰委員会の審議を通じて明白になったのであります。
懲罰動議を提出した自民党の諸君は、動議提出の理由として、第一に、「小林議員は、株式会社上牧荘が、上越新幹線上毛高原駅予定地から一・五キロメートル以内に土地を購入した事実があると繰り返し指摘されていますが、そのような事実は全くありません。」とし、「同駅から一・五キロメートル以内で大規模の土地を買いあさっているがごとき小林君の発言は、事実に反するものと断定せざるを得ない」こう言っております。小林議員の質問があたかも事実無根の質問であるかのごとく述べておるのであります。しかしながら、小林質問は、駅予定地から一・五キロメートル以内の土地買占めなどという主張をしたものでないことは、物価問題特別委員会の速記録によって明白であります。自民党の諸君も、みずからの主張を小林質問の中で具体的に的確に指摘することができなかったのであります。
小林議員の質問は、新幹線上毛高原駅の近くにおいて、石倉地区という地域における上牧荘の土地買収の事実を、登記簿等により確認した事実に基づいて指摘したものであることはきわめて明らかであります。上牧荘の買収土地は、群馬県当局の発表した新幹線上毛高原駅周辺地域開発構想から見ても、また駅発表前後の大規模な不動産業者の土地買占め地域と比べてみても、駅に近い中心的な地域にあることは明白であります。駅周辺開発地域の広大さから見て、同駅から約一・五里離れた本件土地を一・五キロと誤って説明したとしても、そのことは、動議提出者の言うような上牧荘の土地買収の事実そのものがなかったという根拠にならないことは明白であります。いわんや、この誤りは、すでに小林議員より当該委員会において訂正されていることであって、本件の懲罰動議提出者が動議提出の法的根拠を言い違えた誤りと本質的に何ら異なるものではなく、懲罰の理由たり得ないことは明々白々のことであります。
小林議員が発言していないことを、あたかも発言したかのごとくつくり上げて、これを非難し、懲罰動議の理由とすることは、まさにでっち上げと言っても過言ではありません。言論を論理のトリックで抑圧する悪質きわまりないものだと言わざるを得ないのであります。
第二に、動議提出者は、小林質問が上牧荘は相当の土地を買収したと言うが、それは事実に反すると主張しております。しかしながら、買収土地は、実測では二千数百坪に及ぶものであり、新幹線駅予定地の決定によって、この周辺地域においても地価は著しく急騰し、現に坪十万をこえる高値がつけられている今日であります。二千坪もの土地を相当の地域と表現することが事実に反する歪曲であるなどというのは、何の根拠もないものであるばかりか、逆に、主張者自身大土地買い占めを当然視するみずからの感覚を暴露したものにすぎないのであります。相当の土地買収を取り上げた小林質問に、もし見解の違いがあり、異議があるのであるならば、その見解は答弁において明らかにすればよいことであって、評価が違うことをもって懲罰をもって抑圧するがごときことは許されないこと、きわめて明らかではありませんか。
第三に、上越新幹線計画、駅予定地決定の時期から見て、田中総理と上牧荘の土地買収とは何の関係もないものだという動議提出者の主張について、述べる必要があります。動議提出者は、上越新幹線構想が始まったのは昭和四十四年五月新全国総合開発計画の決定に始まる、こう述べ、駅決定は昭和四十六年十月十四日であり、昭和四十三、四年に行なわれた本件の土地買収とは関係がないというのであります。しかしながら、上越新幹線構想が最初に国鉄当局により発表されたのは、昭和四十二年八月末であります。すなわち、田中角榮氏を会長とする自民党都市政策調査会の求めによって、国鉄当局は、上越新幹線構想を含む全国新幹線網構想をまとめて同調査会に報告したのは、昭和四十二年八月三十一日であり、田中総理を中心とする都市政策調査会が、「都市政策大綱」なる文書、これは百数十ページに及ぶ本になっておりますが、これを決定したのは昭和四十三年五月二十二日であります。上越新幹線構想が右調査会会長田中角榮氏によってまとめられた時期、まさにその時期である昭和四十二年五月一日に、上牧荘は本件岩竹日影の土地買収の仮登記をしておるのであります。また、その構想が閣議決定された昭和四十四年五月二十九日の直前である四月十二日にこの土地の買収が完了し、所有権移転登記が行なわれておることは、登記上明白であります。時期はまさに符合しておるのであります。
荒舩清十郎氏が上越新幹線について、どこを通し、どこにとめるかは田中角榮、福田赳夫の両氏と荒舩氏がきめたと発言しましたが、この発言が単なる放言であるといえないことは、右の事実経過に照らしても、明らかであります。
自民党内の要職にあり、新幹線構想決定に重大な関係があり、鉄道建設審議会委員でもあった田中総理と、上牧荘のこの土地買収と無関係であったと断定できないのはもちろんのこと、逆に、その時期が完全に符合しておることから、疑惑があることは客観的に明らかになっております。
特に、上牧荘の土地買収時期は、この地域で土地買収、土地移動がほとんどなく、それ自体が異常に感ぜられるときであり、しかも、上牧荘が事業を拡大し、何ら不動産の移動のないこの時期のこの地域で、土地売買、あっせんを事業目的に追加し、また、ビルなど全くないこの地域で、ビル管理を事業目的に追加したことは、世にもふしぎな物語であったわけであります。
しかしながら、この地域に地元大方の予想に反して上毛高原駅が決定され、これが発表されるに及んで、上牧荘のこれらの行為が、営業活動として、その事情を知っておる者にとっては、あり得ることだということが明白になったのであります。上牧荘のこれらの行動は、上越新幹線構想についてあらかじめ知っていてこそ、初めてなし得るものといわざるを得ないのであります。少なくともこの点について疑惑を持つのは当然のことではないでしょうか。
小林質問は、この疑惑をただし、総理の政治姿勢を問うたものであります。この国民の疑惑をただす質問が、どうして非難されるのでありましょうか。
自民党の懲罰動議提出者こそ、事実の歪曲と不当な推測、仮定とこじつけに基づいてこの動議を提出したものといわざるを得ないのであります。
懲罰動議の不当な性格は歴然としております。小林議員の質問は、どこから見ても懲罰に値するところはないのであり、懲罰事犯に当たらないことは明白であります。
自民党の諸君は、事あるごとに、国会の品位を傷つけるとか、議員の名誉を傷つけるなどと口ばしっておりますが、そのような事例は、ほかならぬ一部自民党の諸君にこそ当てはまると断じてはばからないのであります。
このことは、先日の運輸委員会における口ぎたないやじなどを見れば、歴然であります。本委員会においても、特定議員を名ざしで、————————————————————— などという発言をされたことであります。これこそ無礼の言であり、個人の名誉を傷つける最たるものであります。これこそ院の品位を傷つけるものではないでしょうか。こういう者にこそ懲罰権は向けられてしかるべきものではないでしょうか。
ところが、事もあろうに、自民党は、懲罰規定をかってにねじまげて、国会議員としての当然の質問に対し、しばしば懲罰をもって臨んできたのであります。これは歴史的に見て明らかであります。
懲罰の歴史は、まさに自民党による言論抑圧の歴史であり、川上貫一氏に対する懲罰事件を典型として、先年の穗積七郎議員に対する懲罰など、枚挙にいとまがないのであります。
今回の懲罰もそれと軌を一にするもので、自民党の言論抑圧の暴挙に新しい歴史を刻むものと断ぜざるを得ないのであります。
いまや、田中内閣と自民党の大資本中心の悪政のもとで、国民の苦しみはその極に達しており、小林議員の質問は、この国民の立場に立って、国民が聞きたいと思うことを率直に聞いたにすぎないのであります。小林議員に対する懲罰はまさに国民への挑戦であります。田中首相と自民党のこのような姿勢こそ、国民の批判を高めていることを知るべきであります。
わが党は、以上のような見地に立って、稲村利幸君の議員小林政子君を懲罰に付すべしとの動議に対し、強く反対するものであります。
以上で、討論を終わります。(拍手)