細谷治嘉の発言 (本会議)
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○細谷治嘉君 予算は、その国の政治の顔だといわれます。
「いい世に走れ七三年」のごろ合わせで編成された昭和四十八年度政府予算は、国民多数の間では「いい世にはしない」あるいは「いいようにかってに走れ」とも呼ばれ、現に、土地・証券投機、商社による生活物資の買い占め、異常な物価の値上がりなどルールなしで横行し、無政府状態の感すらあります。(拍手)いま一億のはらからは、生活と権利、そして平和をかけて、国会の予算審議の状況を見守っているのであります。われわれは、その期待に必ずこたえなければなりません。
私は、日本社会党を代表し、政府の昭和四十八年度一般会計予算、同特別会計予算及び政府関係機関予算に強く反対し、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党、四党提案に係る、右三案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に心から賛成する討論を行ないたいと思います。(拍手)
政府は、予算編成にあたり、福祉、国際収支、物価という三つの問題の同時解決に努力したと自画自賛しておりますが、そもそも、この三つの政策課題がトリレンマを形成すると認識するところに、福祉路線転換への切りかえができていない何よりの証拠と言えるのであります。(拍手)
福祉充実の前提条件が物価の安定にあることは論をまちません。また、生活関連社会資本の充実、公害防止、国内市場拡大が福祉と対外的均衡につながることも明白であります。すなわち、福祉政策への転換を決意し、国際収支の均衡、物価安定のため適切な手段をとりさえすれば、三者の矛盾は全くあらわれないのであります。つまり、政府が従来の経済成長、資本蓄積路線を継承し、生産第一、輸出第一、重化学工業中心の高度成長政策を取り続け、みずから作成した経済社会基本計画をも上回る高成長をとるところに、トリレンマがあらわれるのであります。(拍手)
事実、この誤りは、予算の審議中二度にわたって行なわれた為替市場の閉鎖、円のフロートで証明済みであります。
いまや、予算編成の前提となっている政府の経済見通しは根底からくずれ去り、福祉無策、円無策、物価無策の三無策予算と成り果てたのであります。(拍手)政府は、いさぎよく三予算を撤回し、直ちに野党四党の要求の線に沿って編成替えされるべきであります。(拍手)
政府予算に反対する第二の理由は、財政投融資も含めて七兆八千億円にも及ぶ列島改造の路線であります。
田中首相は、一枚看板ともいうべき日本列島改造論をひっさげて登場したのでありますが、この構想が、すでに失敗を繰り返した新全国総合開発計画、新経済社会発展計画の延長線上にあり、さらに土地、物価の騰貴、環境破壊と公害の拡散を促進し、あまつさえ地方自治を否定し、中央集権化を進め、農村の荒廃をもたらし、海外資源の争奪戦をも誘発する危険性すら持つのであります。
列島改造論における工業再配置計画や工場追い出し税、二十五万都市建設構想など、すでに幾多の面で破綻しつつあることは周知のとおりであります。けだし、過疎過密同時解消論は一種の空論にすぎず、これを解決する道は、日本経済の二重構造の解消と同様、現在の経済体制を維持しては不可能なことを知るべきであります。(拍手)
第三の反対理由は、福祉とは一体何かが全く不明確な点であります。
公共事業など、列島改造関係では長期、中期の計画を決定しながら、最大の重点であるべきはずの福祉政策に対しては何ら計画がないことは、まことに遺憾であります。重要なことは、福祉の概念を明確にし、国、府県、市町村間の責任分担を定め、企業、個人を含む費用分担を適正化し、社会保障、社会福祉拡充年次計画を具体的に策定することであります。社会保障に後退は許されないといわれるだけに、政府は、憲法二十五条で規定した「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために、不退転の決意をこの計画で示すべきであります。
政府の予算にあらわれているような高負担低福祉は、絶対に許されないのであります。同時に、各種公共料金の値上げを抑制し、生活費には課税せずの原則に基づいて、大幅減税を断行すべきであります。国税の自然増収が、前年度当初比で二兆五千九百十億円もあるのに、減税はわずかに三千三百五十五億円で、地方税を合わせても、自然増収に対し一二%弱にすぎません。まさに、実質的増税というべきであります。また、悪名高い租税特別措置による減収が一兆円にも達しており、税負担公平の原則を破壊する最たるものである点にかんがみ、この際、抜本的に洗い直すとともに、大法人に対する法人税の実効税率を実質的に西欧水準にまで引き上げ、土地税制はさらに強化すべきであります。
第四の反対理由は、四次防の本格的予算化であります。
特に、攻撃的な空軍力の整備、爆撃装置のついた新機種の研究開発、大型護衛艦、新型装甲車など新兵器の増強、自衛官の大幅増員や沖繩の南西航空混成団の新設、さらに兵器国産化による産軍体制の強化など、危険な計画を内容としております。
政府は、防衛施設庁費に三沢及び岩国の米軍基地兵舎の改修、改築費十億円を計上しておりますが、これは、安保条約締結以来、わが国が負担する初めてのケースであります。まさに地位協定第二十四条の拡大解釈であり、旧安保条約の防衛分担金を復活するものであります。(拍手)
現在、米軍が基地の整備拠点化や老朽施設の改築を要求しており、その額は数百億円にのぼっているといわれています。もし、万一、三沢、岩国のケースを許すならば、わが国の負担は歯どめなく増大することになるのであります。
政府は、一昨年の沖繩返還協定に際し、基地整備費六千五百万ドルの負担について、地位協定の拡大解釈でやることを密約したことを認めました。われわれ日本社会党は、国際緊張緩和に逆行して、ニクソン・ドクトリンに追随し、米軍の拠点化など日米安保体制を強化し拡大しようとする政府の態度と予算に断固反対し、これを全面的に削除するよう要求するものであります。(拍手)
第五は、ばく大な財政投融資が大企業への低利融資や産業基盤投資に優先的に投資され、福祉投資が軽視されている点であります。
この原資の大部分が大衆貯蓄や年金積み立て金であり、かつ、財投が第二の予算と呼ばれ、一般会計予算と密接不可分である以上、財政の公開主義、民主主義、平和主義の観点から、公団、事業団等の支出も政府機関と同様、国会の議決事項とすべきであります。
第六の反対理由は、地方行財政を軽視している点であります。
四十八年度地方財政計画は、国の予算に完全にビルトインされ、列島改造に動員されております。まさしく地方自治の否定であります。福祉重点の政治は地方の行政力、財政力を強化する以外にありません。私は、この意味で、税財源の大幅移譲、交付税率の引き上げなどを強く要求するものであります。(拍手)
以上のように、国民生活軽視、公約不履行、そして編成の土台を失った政府予算三案を認めることは絶対にできないのであります。
新聞等の伝えるところによれば、西ドイツは、二月、マルクの投機で多量の短資が流入し、インフレが強まったのに対し、過剰流動性吸収策として法人税等の増徴を実施に移そうとしつつあり、また、英国のバーバー蔵相は、三月六日の下院本会議で、新年度予算について演説をし、老人年金の増額、土地の投機的買い占めの防止などを含む通貨調整待ちの中立予算を発表しております。
田中首相は、一月二十七日施政方針演説で、「新しい時代の創造は、大きな困難と苦痛を伴うものであります。しかし、私は、あえて困難に挑戦し、議会制民主主義の確固たる基盤に立って、国民のための政治を決断し、実行いたします。そして結果についての責任をとります。」と宣言したのでありますが、いまや、そのことばの片りんすらも見当たりません。他の国と比較すれば雲泥の差が感じられ、はなはだ遺憾に思うのであります。
世論調査によりますと、田中内閣に対する期待度はわずかに二二・五%にすぎず、政治の流れを変える声は七九・六%にも達し、全国津々浦々にみなぎっておるのであります。
政府は、すみやかに予算三案を撤回し、野党四党の要求する線に沿って、直ちに編成替えを行なうよう重ねて強く要求して、反対討論を終わります。(拍手)