小林政子の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○小林政子君 私は、ただいま提出された、私を懲罰委員会に付するとの動議に対し、一身上の弁明をいたしたいと思います。(拍手)
 去る四月二十六日、私は、本院物価問題特別委員会において、田中総理に対する質問を行ないました。その趣旨は、上越新幹線上毛高原駅予定地周辺の土地買収をめぐって起きている疑惑を取り上げ、総理の政治姿勢はいかなるものであるか、これを国民の前に明らかにされるよう求めたものであります。(拍手)
 ところが、私のこの質問について、いま一部の自民党議員から、事実に反するとか、個人の名誉、院の品位を傷つけたなどの理由をあげて、懲罰動議が出されているのであります。一体、私の質問のどこが院の品位をそこなうと言われるのか。(拍手)何をさして個人の名誉を傷つけると言われるのか。疑惑をただすのがなぜ懲罰に値するのか、全く理解に苦しむところであります。(拍手)自分の気に入らぬことがあると、すぐ懲罰の名によって抑圧しようとするこの動議について、私はとうてい承服することはできません。(拍手、発言する者あり)
 そもそも国会は国権の最高機関であり、言論の府であり、国政審議の場であります。国政に関して国民が抱いているさまざまな疑問や不満を取り上げ、国民が聞きたいこと、問いただしたいと願っていることを議員が積極的に取り上げ、政府に質問することは、国会議員としての当然の責務であり、権利であります。(拍手)
 田中総理は、私の質問に対し、「非常に不愉快な発言だ」「事実を調べて責任を負え」などと、冒頭からたいへん興奮され、感情を露骨に示して、冷静に答弁するという態度ではありませんでした。国民の不信や疑惑に基づく質疑に対し、このような態度で臨まれることこそ批判さるべきではないでしょうか。(拍手)
 もとより、私は事実に基づいて質問をいたしております。上毛高原駅の決定と同駅予定地周辺における土地買収には、幾つかの疑惑がからんでおります。私は、ここではその要点を簡単に指摘しておくにとどめたいと思います。
 上越新幹線の上毛高原駅は、昭和四十六年十月決定されました。それは群馬県利根郡月夜野町であります。
 もともと北毛地域、北群馬の人々は、新しい駅の設定は、この地域の中心部の都市、沼田市などになるであろうと予想しつつも、その誘致運動を進めておりました。ところが、結果は、この人口まばらな山峡の地、おもな旅館は二軒という上牧温泉、しかも総理の刎頸の友、入内島氏が経営する上牧荘の近くに上毛高原駅の設置が決定されたのであります。当然ながら、政治的疑惑は、周辺住民の中で広がってきたのであります。
 また、上毛高原駅発表前後から、その周辺地域、従来あまり不動産の移動のなかったこの地域で、山林原野を中心に相当広範に土地の買収、買占め工作が不動産業者によって始められ、その地価が高騰しています。
 こうしたときに、総理がかつて役員であった株式会社上牧荘が事業計画を拡大し、土地を買収していることについても、周辺住民の疑惑が生まれてきているのであります。(拍手、発言する者あり)
 上牧荘は、昭和三十五年に現在の田中総理が当時の経営陣に加わって後、急速に増資を重ね、前経営者当時と比較して、昭和三十九年までわずか数年の間に、資本金は四十八倍に増資されました。昭和四十二年五月には、入内島氏夫人が取締役に就任するとともに、六月には定款を変更して、新しく営業目的にも「土地建物の売買並びに斡旋」「ビルの経営並びに管理」が追加されたのであります。そして七月には、資本金はさらに二倍半にふやされているのであります。この地域では土地の売買などあまり行なわれない時期であり、何のために行なわれたのかという疑問が起こるのは当然のことであります。(拍手、発言する者あり)
 ところが、定款変更が行なわれてから二カ月後の四十二年八月末、上越新幹線を含む全国新幹線網が発表されたのであります。さらに発表後、入内島氏は代表取締役に就任し、昭和四十三年から四十六年にかけて、登記簿上明白なものだけでも、山林原野等合計六千五百八十四平米を買収しております。こうした中で昭和四十六年十月、上毛高原駅の決定が公にされたのであります。
 また、御承知のように、昭和四十七年一月、当時の衆議院副議長であった荒舩清十郎氏の発言の問題であります。荒舩は、上越新幹線をつくる問題については、通産大臣をやっている田中角榮氏、外務大臣の福田赳夫氏と副議長の荒舩清十郎氏のこの三氏が、どこにとめるか、どう通していくかというようなこともきめたのだと発言をされているのであります。
 上牧荘の定款変更や、この地域でのあれこれの土地買収、そして上毛高原駅の決定、これらについて人々らが疑惑を持たれるのは当然の成り行きではないでしょうか。(拍手、発言する者あり)
 ところで、自民党一部の議員は、議運委員会で懲罰動議の提出理由を説明して、上毛高原駅から一・五キロ以内には上牧荘の土地買収の事実はない、私の質問は事実無根だと言っています。しかし、私が指摘したのは、石倉地区という地域の土地の買収であります。一・五里を一・五キロと言い違えましたけれども、石倉地区における土地買収の事実はあるのであります。(拍手)私は、この言い違えを訂正するにやぶさかではありません。しかし、買収土地が駅周辺地域であることに何ら変わりはないのであります。(拍手)
 また、自民党の一部の議員は、買収地の一部は従業員宿舎などの建設用地だと言われています。しかし、上牧荘の買ったこの土地は、上牧温泉から奈女沢温泉に通ずる道路の入口の要所に位置し、高さ約十メートル近くの滝に接する土地であります。また、すでに上牧荘は昭和四十年、二階建て寄宿舎を新築しており、さらにその上に従業員宿舎用地として、四千六百平米以上もの広大な土地を必要とすることは、常識ではとうてい考えられないのであります。しかし、この問題についても、質疑の中で解明すれば済むことであります。
 私は、以上述べましたように、事実に基づいて、上越新幹線上毛高原駅の決定と、上牧荘の土地買収問題をめぐる疑惑と関連して、田中総理の政治姿勢をただしたのであります。事実に基づいて、国民の中にある疑惑をただすことがなぜ懲罰に値するのでしょうか。(拍手)
 もし、田中総理がみずからの政治姿勢にいささかの疑点もないならば、堂々と答弁し、国民の疑惑を晴らすべきであります。これこそ、主権者たる国民に対する総理のとるべき当然の態度だと私は思うのであります。(拍手)
 ところが、筋違いにも、質問した私を懲罰委員会に付せと要求しているのであります。これは、まさに議員の審議権に対する抑圧であり、国民に対する挑戦といわざるを得ません。(拍手、発言する者あり)
 すでに述べましたように、国会は国政審議の場であり、言論の府であります。国民の疑惑をただす質問にはこまかく意を尽くし、これに答えるのが為政者のとるべき当然の態度であります。たとえ、為政者にとって不愉快であろうとも、いやしくも私的感情をまじえるべきものではないと思います。個人的感情のおもむくままに、国民の疑惑をただす質問を一方的に抑圧するとすれば、これはまさに言論の自由に対する侵犯であり、国会の自殺行為であり、憲法違反の暴挙といわなければなりません。(拍手、発言する者あり)
 いま、田中内閣の政治のもとで、大資本、大商社の土地投機や商品買占めなどの反社会的行為が全国にわたって横行し、各地でさまざまな疑惑を生み出す事件が相次いで起きております。また、国民生活の破壊を顧みない大資本本位の政治に対する国民の不信や疑惑が今日いよいよ深まっていることは、最近の新聞の世論調査の結果を見るまでもないことであります。(拍手)
 このような状況のもとで、国民の抱く疑惑や不満に積極的にこたえ、それをただすことこそ、国会と国会議員に課せられた重要な責務と思うのであります。(拍手)何ら懲罰に値するものではありません。(拍手、発言する者あり)
 私は、まさにこのような確信のもとに質問をしたのであります。この私の質問が、個人の名誉を傷つけ、国会の品位をそこなうものであるとして懲罰に付すなら、一体、国会は、国会議員の言論に対して何を保障しているといえるのでしょうか。(拍手)もし、私の発言が多数の力により懲罰にかけられるなら、国会は、もはや民主的な言論の府としての権威を失い、その歴史に重大な汚点を残すことになるでしょう。(拍手)私の発言は、絶対に懲罰に付されるようなものではありません。(発言する者あり)
 私に対する懲罰動議は、決して私個人に対する懲罰動議ではありません。国会議員としての言論、国民に対し責任を持とうとする国会議員に対する懲罰といわなければなりません。(拍手、発言する者あり)
 私は、国会の権威を守り、言論の自由、議会制民主義を断固として守り抜くために、同僚議員の皆さんが、党派を越えてこの懲罰動議に反対されることを心から期待して、一身上の弁明を終わります。(拍手)
    —————————————

発言情報

speech_id: 107105254X03219730510_005

発言者: 小林政子

speaker_id: 20899

日付: 1973-05-10

院: 衆議院

会議名: 本会議