堀昌雄の発言 (本会議)
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○堀昌雄君 私は、ただいま議題となりました田中内閣不信任決議案に対し、日本社会党を代表して、賛成の意思を表明いたします。(拍手)
田中内閣発足以来一年二カ月余り、これほどむざんに国民の期待が裏切られたことは、政治の歴史の上でもあまり例がありません。
田中首相に国民が期待を寄せたのは、それなりに無理からぬ事情があったからであります。長い間官僚出身の首相が続き、国民の心の琴線に触れるような政治が絶えて久しかったからであります。
ところが、それではなぜ、その国民の期待が二〇%を割るような急減をしたのでしょうか。一言でいえば、田中角榮氏が一国の宰相としての器ではなかったのではないかと、国民が疑問を抱くに至ったからでありましょう。(拍手)
以下、その理由を明らかにしてまいりたいと思います。
人間には、一つのことが、長所であると同時に短所である場合が間々あるわけであります。そこで、私は、まずこの短所と長所は、個人としてはなるほど長所でありましょうけれども、宰相としては致命的な短所であるというところに、この問題の根源があると考えるのであります。田中総理は、たいへんゴルフがお好きなようであります。たいへん熱心であります。これは、われわれ医学的な性格分析をしますときに、マニアという類型に入るわけであります。一つのものごとについて非常に熱中して、他を顧みずしてこれを達成しようというこの姿は、個人の特性としては、これはよき特性であるかもしれません。しかし、一国の宰相として国民全体を率いていくときに、一つの問題だけに集中をして他を顧みずして暴走をすることは、まさに国民にとっては大きな被害であります。(拍手)
これらの問題は、まず、小選挙区法の中で明らかに浮かび上がっておるわけであります。この問題は、御承知のように私も何回かこれらを論じてまいりましたから、詳しくは申しませんけれども、このようなやり方が突然起きて、周囲のいろいろな反対を押し切り押し切り、猪突猛進をして小選挙区法案を成立させようとしたこの姿の中に、私たちは、国民がきわめて危険を感じ取ったと考えておるわけであります。(拍手)
このことはまた、「列島改造論」の中においても明らかなわけでございます。けさの新聞の報ずるところによれば、これまでの新幹線の予定の上に、さらに西日本縦断新幹線等五つの新幹線を六十年までにつくろうという問題が出されておるのであります。一体、皆さん、われわれは、これらの新幹線をつくるためにどれだけの財政負担を国民がしなければならないのか。一体総理が真剣に考えられてこの問題に取り組んでおられるのか。言うなれば、一たん言い出した「日本列島改造論」を何が何でも推し進めようというこの執念、これがまさに国民にとっては大きな問題なのでありまして、今日の物価上昇は一体どこからきているのか。これはこれまでの高度成長政策、経済の成長を通じて日本の国土に四倍の工業生産をつくり、現在の倍の工業用水を必要とするという、現在の情勢から見て考えられないことを「列島改造論」の中で述べて、それを実現するための一つの手段としてまたもや新しく新幹線を考えるなどということは、全く論外のさたといわなければなりません。(拍手)
その次に、総理は義理人情に厚いという個人的な長所を備えておられるようでありますけれども、反面、メンツを異常に重視をして、科学的、合理的な判断に欠ける点が国民の不安の一つの理由であります。
このことは、すでに再度の大幅国会の会期延長を行なって、何が何でも政府が提案したものは通さなければがまんができないという中に、言うなれば、メンツにこだわって、国民の利害は眼中にないのではないかと国民がおそれておるのが現在の姿ではないでしょうか。(拍手)
さらに、政治的な思考のあり方についても問題があります。
総理は、支持率がたとえ〇%になっても自分のやることはやるのだということを言われております。一体、皆さん、支持率が〇%になるということは、国民が支持していないということではないでしょうか。民主主義の世の中では、国民の期待にこたえ、国民の求めることを行なうのが民主主義の政治であって、国民が完全に見放したことを、なおかつわれ一人行くということが、はたして一国の宰相に許されることでありましょうか。(拍手)
私は、終わりに、この十月に日本においてローマクラブの会議が行なわれます。私は、昨年十月三十一日の本会議の代表質問で、田中総理にこの問題についてお尋ねがしてありますが、返事はいただけませんでした。今日ローマクラブが提案をしておることは、いまのままの成長が続くならば、資源は枯渇をし、公害による汚染は広がり、農業生産は障害をされて、いまから百二十五年先の二一〇〇年には、人類は急激な危機におちいると問題を提起しているのであります。
さらに、この問題についてわれわれが考える時間は、あと十年間しかないということを明らかにしておることは、皆さんも成長の限界を通じて御理解をいただいておることだと思うのであります。いまやわれわれに課せられておることは、現在の世代にこたえるだけではなくて、歴史に責任を負わなければなりません。
このように、われわれに求められておる政治の姿を一体総理はどう理解しておられるのか。われわれは、現在の世代にもこたえず、物価を引き上げ、高度成長、列島改造をさらに推し進めようというやり方は、単に、国民の期待にこたえず、その期待を裏切るだけではなくて、歴史に対して大きなあやまちをおかすことになるということを、私はここにはっきりと申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)
このような意味で、私は、成田委員長の提案の趣旨に全面的に賛成であり、田中総理の退陣こそ、歴史がその正しさを証明するものであることを確信して、賛成討論を終わります。(拍手)