佐藤隆の発言 (本会議)

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○佐藤隆君 私は、自由民主党を代表いたしまして、国民生活に密接な関係を持つ物資の価格の急騰と、これに対処する政府の対策について、総理並びに関係各大臣の御所見を承りたいと思います。
 さきに、ドルの一〇%切り下げに伴い、円が変動相場制に移行して以来、経済界には、国際経済、日本経済の将来についていろいろな不安や懸念が生じ、政府・与党が責任をもってしっかりした対策を講ずることを望む強い期待感があります。
 大豆、木材、羊毛など、生活必需品の最近の異常な値上がりについてもまた同様でありまして、国民はすみやかに効果的な対策がとられることを期待しているのであります。しかし、政府がやっていることと、国民が政治に期待するところとは、その間にとかくギャップを生じがちでありまして、私の見るところ、そうしたギャップは残念ながら次第に大きくなりつつあるように思うのであります。できないことはできないと言い、できることはすぐやる、これが田中内閣の特徴であります。しかし、それが必ずしも国民には十分に理解されていないうらみがあります。たとえば、今度の商品投機の問題にいたしましても、その元凶は大商社であるという商社性悪説が流され、政府はその商社と癒着している、だから思い切った対策がとられないのだというような中傷さえも行なわれているのであります。政府が何らかの措置を講じようとする、また講じたにもかかわらず、この種の中傷がまかり通るというのも、政府が国民の理解を求める努力にいささか欠けているからではないでしょうか。
 私の乏しい政治経験から申しますと、世論にこたえて画期的な対策を打ち出す場合、対応策を急ぐあまり、大きな期待感だけを持たせ、そのあとで結局失望を与えるような、いわゆる思いつき構想に終わるようであっては、かえって国民を落胆させかねないという体験をしたことがございます。これ以上はできない、しかし、ここまではいかなる障害があっても実行できるし、実行する、ということを見きわめた上で構想を打ち出すべきだということを学びました。また、国民のためにやるべきことをやっても、そのまま理解されない。それは、広報活動に欠くるところありとも考えさせられたのであります。今度の商品投機の問題にいたしましても、このように慎重な姿勢と十二分な配慮で臨むことが必要であろうと思うのであります。
 さて、具体的に、まず第一に総理にお尋ねをいたしますが、国際情勢を見ますと、ドル不信に基づく金投機など、一連の通貨不信が高まっているおりから、わが国もそのらち外にいることはできない状況であります。たとえば、わが国の場合、円の大幅切り上げがほとんど現実のものとなっており、輸入物資の値下げに大きな期待が持たれているにもかかわらず、思ったほどの値下がりもなく、期待はずれになる公算が大きく、商品相場の急騰など、きわめて理解しにくい状況が生じております。これは、わが国にも通貨不安を底流に置いた経済面での混乱が現実化しているからでありましょう。そこで、こういった激動期を迎えたわが国の経済の先行き見通しについて、政府はどう考えておられるか、お伺いをいたしたいのであります。
 第二に、総理、農林大臣、経企庁長官にお尋ねをいたします。
 最近数カ月間に、大豆、木材、生糸などが急激に上昇いたしました。たとえば、大豆は近ごろやや落ちついたとはいうものの、それでも昨年十二月の二倍に近い価格であります。その結果、町には百円とうふまであらわれるような始末であります。木材にいたしましても、卸値三万八千円の杉の柱が、一時は八万五千円、最近でも六万円といわれておるのであります。こうした生活必需品の値上がりはいかにも異常であると考えますが、政府としてはこの事態をどう見ておられるのか、お伺いをいたします。
 第三に、総理、農林大臣、経企庁長官、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
 政府は、この異常な事態を解消するために、これまで、金融政策も含め、いかなる措置をとってこられたのか、お尋ねをいたします。しかるべき対策を講じたにもかかわらず、その対策が微温的であったがために、あるいはまた、現行法制のもとではそれ以上のことはできないがために、目立った効果をあらわさず、今日の事態を招いたのか。それとも、対策は徐々に浸透しつつあるのであって、いましばらくすれば相当な効果があらわれることを期待してよいものか、お伺いをいたします。
 特に商品相場が急騰している背景には、過剰流動性があるといわれておるのであります。政府は、その吸収策として、一月に預金準備率の引き上げを行ないました。もとより適切な措置であります。過剰流動性を吸収することによって、株価や地価の上昇に見られるインフレマインドを冷却させる点で、一般的に物価安定に役立ち、大豆等々の騰貴を押えることになりましょう。さきに行なわれた預金準備率の引き上げによって、二千九百億円の過剰資金が吸収されるものと見込まれておりまするが、実際の効果はどうであったでしょうか。また、近く行なわれるという再引き上げによってどれだけのものが吸収されるでありましょうか。
 第四に、通産大臣、農林大臣、経企庁長官にお尋ねをいたします。
 それは、一部大企業の投機行為についてであります。世上には、一部大企業の買い占め、売り惜しみこそが、最近の物価急騰の元凶であるという意見もありますが、これについて政府はどう見ているのでありましょうか。しかるべき調査を行なったでありましょうか。その結果はどうか、お聞かせを願います。
 現行法規のもとでは、おそらく調査も十分に行ない得ないのではありますまいか。だが、火のないところには煙は立たないと申します。何らかの形で買い占めや売り惜しみが行なわれていることを否定するわけにはまいらないでありましょう。政府は、物価対策の一環として、十大商社への融資の規制を行なうとのことでありますが、これはあたかも右の推測を裏づけるかのごとくであります。
 私は、この際、一部商社のもうけ主義、利潤第一主義に強い反省を促すものであります。商社に対しては、自分らの利潤追求が広く国民の利益をそこなうことになりかねない場合には、進んで自粛するだけの商業道徳の確立を強く訴えたいと思うのであります。この点、御所見をお伺いいたします。
 第五に、食糧問題等について農林大臣に特にお尋ねをいたしたいと思います。
 豊凶変動が大きく、供給面での弾力的対応が困難な農産物、しかも、国民日常生活の基礎物資である農産物について、単なるコスト計算だけで安易な国際分業を進めることは非常に危険であり、国内で自給できる農産物、自給すべき農産物については、十分な措置を施して国内自給の体制を確立するということが必要であると考えるのであります。主要農産物の需給の見通しはどうでありますか、これらの国内自給の体制は万全であるかどうか、お伺いをいたします。
 なお、これに関連し、気象その他自然条件等に左右されやすい農産品の備蓄を真剣に考慮すべきだと思うのであります。米など主要食糧は言うに及ばず、飼料などについても、たとえば政府関係機関としての備蓄事業団をつくるなど、積極的な備蓄対策を打ち出すべきではないでしょうか。その是非を明らかにしていただきたいと思うのであります。
 さらに、わが国は、主食用小麦、飼料用麦類などの穀物及び木材の海外依存度が高く、これらの物資の不足感が世界的に高まる状況下でその安定供給を確保することは、国民的関心事となっております。そこで、今後も海外からの供給に依存せざるを得ない穀物及び木材等については、長期の契約ないし協定に基づき、多元的かつ安定的な輸入ソースを確立すべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
 また、わが国の一部の商社などが海外で各種の資源を買いあさり、資源の枯渇による反発を招いている状況にかんがみまして、わが国政府が低開発諸国に対し積極的な経済協力、技術協力を行ない、これを通じていわばギブ・アンド・テークの形による開発輸入の体制をつくり上げていくことは、エコノミック・アニマルという海外からのそしりを避けるとともに、農産物の安定供給を確保する意味からも必要と考えますが、いかがでありましょうか。
 なお、国民生活にとって一日も欠かせない主食——米の需給はだいじょうぶでありますか。かりにも、世界的な穀物の逼迫感が広がる中で、米の需給に不安があるとするならば、ゆゆしき事態であります。このような状況のもとで、本年の米の生産調整に変更はないのかどうか。
 また、伝えられるところによれば、モチ米等については、昨年暮れ以来、市場出回り量が少なく、一部商社等による買い占めや価格の騰貴も目立つようでありますが、これは、モチ米だけの話か、米全体の需給に不安はないのでしょうか、お答えを願いたいのであります。
 また、さらに、過剰流動性が問題となる状況下で、豊富な資金が投機や思惑で米にも集中されることが予想されます。万が一にもかかる動きが起こるとするならば、国民生活にとってはもちろん、農政を適確に遂行していく基盤がそこなわれることになります。かりにも米が投機の対象にならないよう、政府の需給操作や適正な流通を維持していくことが肝要であり、これがためには、食管制度の基本を維持するとともに、運用の強化によって、国民消費生活の安定と農業再生産の確保という基本目的を厳然として貫くべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 第六に、物価抑制の新しい立法の問題について、総理、通産大臣、農林大臣、経企庁長官にお尋ねをいたします。
 先ほど、私は、政府はちゃんとした調査をしましたかと申しました。しかし、政府には、もともと突っ込んだ調査を行なう権限はないでしょう。事態がここまで来た以上、特定の物資について、必要な調査、質問、立ち入り検査などの権限を持って、不当な買い占め、売り惜しみを行なっていると認められる者には一定価格での放出を勧告し、従わない者はこれを公表して社会的制裁を加えるというような新しい立法が必要であると思います。わが党におきましても、こうした立法の内容につき成案を得つつありますが、政府のお考えはいかがでありますか。
 最後に、自由経済のあり方について、私は、この際、次のことを提唱するとともに、総理の御見解を伺いたいと思うのであります。
 いま茶の間の議論としてささやかれているのは、次のようなことであります。選挙になると、どこの政党でも経済政策など区別がつけにくい、なるほど脱イデオロギーの時代かな、先々どうなることだろう、これが一部の茶の間談義であります。だが、これは、単なる茶の間談義として済ますわけにはまいりません。投機抑制のための新しい立法につきましても、実は、私自身、ついこのごろ、自由経済の原則はどうなるのでしょうかという率直な問いかけを受けたものでございます。一部の悪質な投機行為は規制しなければなりません。しかし、自由経済の原則に照らして、そうした規制をどこまで行なうか、その限度もまたはっきりさせておく必要があるのであります。もとより、自由な創意を伸ばしながら優先するのは、公共の福祉であります。戦中戦後の統制経済については、われわれは苦い経験を持っております。統制経済あるいは計画経済は、社会主義の国であるソ連などにおいても必ずしもうまくいっておらず、近ごろはいろいろとむずかしい問題が起きておるようであります。
 いわんや、自由主義経済のわが国において、統制経済めかしたことは、つとめて避けなければなりません。ここにむずかしさがあります。したがって、われわれは、いま、大衆福祉社会における公共福祉優先の資本主義はいかにあるべきかという新しい経済原則を求められているのであります。
 われわれは、自由主義経済社会体制の基盤の上で、公共と国民福祉の大義を旗じるしに、時代の要請にこたえる社会政策を果敢に実行していかなければならないのであります。われわれの国は社会主義とは別な自由主義経済社会体制の国である、そのことをはっきりさせることを国民は望んでおるのであります。この私の提言について、御見解を承りたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 107115254X00719730302_009

発言者: 佐藤隆

speaker_id: 5536

日付: 1973-03-02

院: 参議院

会議名: 本会議