井原岸高の発言 (本会議)
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○井原岸高君 私は、自由民主党を代表いたしまして、野党四党の共同提案にかかる予算委員長荒舩清十郎君に対する解任決議案に対し、反対の討論を行なわんとするものでございます。(拍手)
荒舩予算委員長は、就任以来、党派に偏せず、中立公正な立場で委員会の運営をしていく方針を言明され、今日に至ったのであります。その間、審議日数、質疑時間、その他各種の事柄について野党諸君の要望を全面的に受け入れ、また、政府の答弁に対しましては常に正確を求め、質疑者の要請にこたえるべく最善を尽くされて、名委員長として野党の皆さんからも称賛を受けたことは御承知のことでございます。(拍手)
私どもは、委員長が公正中立というからには、与党に対しても五分、野党に対しても五分であるべきと考えてまいったのでありますが、これまでの経過から判断いたしますると、野党に対しましては七分も八分も譲っておるわけでございます。しかも与党は三分ではないかと、はなはだ歯がゆい思いを感ずる場合があったのであります。
しかして物価問題については、本問題が今日の国民的最大の緊急課題となっておるこの実情にかんがみまして、予算委員会に企業の代表者等を招き、実態を明らかにし、一刻も早く物価の鎮静をはかり、国民の期待にこたえたいと、荒舩委員長みずからの提唱によって、総括質問終了後、二月七日、八日の二日間をこれに当てることとし、理事会においても与野党の意見が一致しておったところであります。
ただ一点、与野党の意見の相違は、出席を求める人を参考人とするか、あるいはまた証人とするかということであります。
野党の諸君は、参考人では事実の解明が不十分となるおそれがあるから、証人として喚問すべきであるというのでありますが、もちろん、証人の喚問は、議院証言法により法的には可能であります。しかしながら、証人には、法律上のきびしいワクがはめられており、また、きびしい義務が課せられておるのであります。その取り扱いについてはきわめて慎重を要するものであることは、言をまつまでもないところであります。
過去における証人喚問の実態をながめてまいりますると、証人が自殺をした実例もございます。また、造船疑獄その他の事件に際しては、国会における証人の喚問のあり方が、遺憾ながら法曹界あるいは学界、国民多数の批判を受けたことは耳目に新しいところでございます。これは、私企業や個人についての調査が、行政権の行使と関連ある限度を越えて、半ば査問的、犯罪捜査的調査に堕したからであると思われるのでございます。
第二には、予算委員会の所管は、どこまでも予算であるということであります。したがって、直接に審議すべきは予算であり、国政調査も直接に予算に関係するものに限定されるものと考えるべきでございます。
ところで、物価問題を第一義的に、専門的に所管する委員会といたしましては、本院において物価問題等に関する特別委員会が設置されておるのでございまして、それぞれの所管に関する事項を明確に区分されております。
もちろん、従来から予算委員会においては国政全般に関する質疑が行なわれる慣例になっており、昨今の情勢から見て物価問題が最も重要な問題であることは、われわれも認めるところであります。
しかし、予算委員会における物価問題討議の目的は、あくまでも、物価に対する政府の行政の手ぬるいこと、この問題を追及して、その改善を要求することにあるのであります。民間人の出席を求めての意見の聴取は、そのために必要な範囲にとどめるべきであります。したがって、われわれは、参考人という資格だけで十二分に所期の目的が達せられると思っておるのであります。
私たちは、どこまでも立法府における国政調査権のあり方という法律論から、証人喚問はあくまでも慎重を期すべきであるというのであって、野党の言われるがごとくに、ありもしない企業との癒着云々なんという、ただいまの……(「癒着しているじゃないか」と呼び、その他発言する者多し)証拠があるのかという御質問でございますが、そういう乱暴な数字を並べてあえて与党・政府を非難することは、私はまことに、それこそ野党の方々の考え違いである、迷惑千万だと感じております。
もし、国政全般を論議する予算委員会において、そのときどきの問題について、関係する民間人をそのつど証人で喚問するような慣例をつくりまするというと、今後の国会の運営上、ゆゆしき問題が起こるのでございます。いわゆる人権無視という問題も起こってくるでございましょう。それがゆえに、今日まで予算委員会においては証人喚問の先例がなかったのでございます。証人喚問ということを予算委員会ではやっていないのです。国権の最高機関である国会の権能にもおのずから節度があるのです。司法官憲のごとく犯罪の捜査を行なったり、法の執行を行なう行政権の行使のごときは、厳にわれわれは慎まなければなりません。近代民主主義が、議会と行政、司法の権能をそれぞれ独立させ、それぞれの機能を重複しないようにいたしたのも、かかる観点に立っておるからでございます。
われわれは、このような認識のもとに、二月八日以来、連日理事会において協議を続けてまいりましたが、与野党の主張は平行線をたどり続けました。ここにおいてわが党は、事態打開のため、一応参考人として出席を求め、理由なく出席を拒んだり、また、誠意ある陳述がなされない場合には、証人としてあらためて喚問するとの提案を行ない、一日も早く物価の集中審議が開始されるよう野党諸君の理解を求めたのでありますが、野党の諸君は依然として当初の主張を一歩も譲らない。じんぜん、この問題だけで一週間にわたり理事会において協議が行なわれたのであります。国民生活に不可欠の予算審議に入れないという最悪の事態を招くに至った。理事会においては、本件の決着を早くつけるべきであるとの、野党理事の中からもそういう御意見が出ておったのです。野党の理事の中からも、結論を早くつけなさい、委員長、あなたは責任者だから、結論を出しなさいといって、委員長に言われたじゃありませんか。(拍手、発言する者多し)そんなことを言われたじゃありませんか。
かくて、荒舩委員長は、本件について、早急に参考人を招き、審議を進めるべきであるとの理事会の多数意見により、民主主義のルールに従って、委員会の動議のごとく決した次第でありまして、付託案件の審議促進をはからなければならない委員長の職責を考えまするときに、これを非難する理由というのは、こればかりもないじゃありませんか。(拍手)委員長の責任を果たしたことをなぜあなた方は非難するのですか。あなた方、委員長になったらどうやるつもりなんだ。
荒舩委員長は、御承知のように、長年国会で活躍され、この間四たび予算委員長に選任され、また、国務大臣、本院副議長の要職を歴任して、その人格、識見はともにすぐれておる。議会運営の公平さは高くわれわれお互いに評価しなければなりません。(拍手)
私は、ここに、予算委員長荒舩清十郎君を深く強く信任して、あなた方の出しておる解任決議案には絶対に反対をいたします。絶対に反対いたします。(拍手)議院における証人喚問が、後世、その運用を誤ったと人々に言われないためにも、より慎重であるべきことを主張いたしまして、私は反対の討論を終わります。(拍手)