阿部憲一の発言 (本会議)

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○阿部憲一君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十九年度予算三案に対し反対の討論を行なうものであります。
 最初に、予算編成の前提となる政府の基本姿勢の誤りを指摘したいのであります。
 昨年暮れからの狂乱物価は、政府・自民党が長年にわたり推し進めてきた大企業優先の高度経済成長政策と、大企業、大手商社等が石油危機を利用し、生活必需物資を買い占め、売り惜しみ、大幅な便乗値上げをし、パニック状態をつくり上げたからであります。
 さらに、政府の過剰流動性に対する金融政策の失敗、四十七年度の大型補正、さらに四十八年度、いわゆる列島改造予算等によってすでに悪性インフレの状況が発生していたにもかかわらず、好況期二兆三千四百億円の空前絶後の国債発行も計画した財政政策の失敗等々によってもたらされたものであります。主要閣僚である福田大蔵大臣が悪性インフレをごまかすために名づけた狂乱物価は、ともすれば政府はこれを石油危機のせいにしようとしておりますが、さきに述べたように田中内閣の責任であり、長年にわたる政府・自民党の手によって起こされた狂乱インフレなのであります。田中内閣の無定見、無節操な政治、経済の運営によって、もはや国民大衆の生活は根本から破壊されております。田中内閣が予算を提出するに際しては、インフレ政策の失敗をすなおに反省し、大企業優先の政策を改めることが最低の条件であったはずであります。
 しかるに、本予算の審議の過程で明らかになったことは、大企業と政府の癒着であり、政府の大企業擁護の姿であり、経済成長政策に関する総理と蔵相の極端な意見の相違すなわち閣内不統一であります。また、参議院の良識をもって行なおうとして注目を集めた物価集中審議において、政府・自民党は野党の強く要求する証人喚問についてはこれに強く反対し、これを否決させ、国民の前に真相を明らかにすることを妨害するなど、全く国民不在の政治姿勢を終始一貫取り続けてきたのであります。口でどう言おうと、田中内閣はこれまでの誤れる政策や姿勢を転換する能力がないばかりか、国民大衆の願いを踏みにじる姿勢を強引に続けていることは、断じて許すことはできません。
 次に、予算案反対の理由を申し上げます。
 第一は、見せかけの物価対策費しか組まれていないことであります。物価狂乱の元凶である財政インフレを是正するための予算規模の圧縮は地方交付税の操作と災害復旧費の当然減九百三十一億円がおもなもので、政策努力に見るべきものは何らありません。
 他方、公債は四十八年度実績を三千五百億円も上回り、公債依存率は九年間の実績に比べ四番目という高さであり、先進資本主義諸国にも一二%という依存率の国はないのでありまして、これほどの巨額な赤字国債を計上しておいて、総需要抑制、引き締め型予算とどうして言えるでありましようか。
 さらに狂乱物価で足腰が立たなくなった庶民の家計が消費支出の激増、貯蓄の減少となってあらわれていることは、統計的にはっきり出ております。しかるに、政府は、さきに石油価格の大幅値上げを行ない、近日中に九社平均六二%という電力料金の引き上げをねらっており、さらに私鉄、バス、国鉄、消費者米価とすべての公共料金の値上げをたくらんでおります。政府は、価格凍結とか、事前承認制とかかっこうのいいポーズをとって新価格体系施行などとことばでごまかし、国民には物価の安値安定の期待とムードをちらつかせながら、その実態はすべての物の価格をさみだれ式に長期にわたって値上げすることにしており、夏ごろまでに物価を安定させるとの総理の言明がごまかしであり、高値安定どころか、高値追いの競争となるのが落ちでありましょう。不況下の物価高騰で庶民を苦しめる田中内閣の新価格体系という新しいインフレ政策と断じる以外はないのであります。
 また、政府は、四十九年度予算で、一兆五千八百十七億円、前年度比一六・九%増の物価対策予算を組んだと宣伝しておりますが、その中身を見ると、十数年来、物価上昇の原因と政府が言い続けてきた低生産部門への資金配分がこれまでの惰性から一歩も出ないばかりか、大企業の価格協定を取り締まる競争条件整備の予算はふえず、その比率は年々低下しており、政府がやみカルテルや価格協定を予算面から暗黙に承認し、あと押しする結果となっているのであります。したがって、公明党は独自の独禁法改正案を提出し、物価政策の前進を強く要求したのであります。
 次に、この予算が政府の宣伝とはうらはらに規模縮小もインフレ対策も不十分であることを指摘しなくてはなりません。
 予算規模の圧縮が不当表示であることは、財政インフレを燃え上がらせた四十八年度予算の伸び率二四・六%に比べて、一九・七%が若干低目であるというにすぎず、四十年代の一般会計予算の伸び率で見ますと三番目に高く、これまで政府が財政の経済に対する影響を説明するために用いた政府財貨サービスの購入の伸び率と経済の名目成長率比較で見ても、四十九年度は財貨サービス購入一四・九%、経済成長率二一・九%と財政が経済成長率を上回っており、景気刺激型の財政規模と言わねばなりません。
 さらに、財政収支のバランスがくずれ、予算総額の一割三分もの赤字国債を抱いた財政は、身分不相応の肥満児であり、総需要抑制の政策と矛盾していることは明らかであります。
 さらに、物価安定の武器として政府がその手中におさめている唯一の公共料金も、消費者米価、国鉄運賃のわずか半年の延期だけでほかに見るべきものがないばかりか、さきに指摘したごとく、公共料金の値上げが第二の物価狂乱の引き金にすらなろうとしておるのであります。この予算では国民が望む物価安定は期しがたいと断ぜざるを得ません。
 第三の反対理由は、物価狂乱の最大の被害者である社会的、経済的に弱い立増の人たちの生活防衛を無視していることであります。
 インフレは富める者をさらに富まし、貧しい者を一層苦しめて社会的不公正を拡大する社会的犯罪行為であります。これを是正し救済するものが財政の機能であり、責任であるべきであります。しかるに、年率三五%をこす卸売り物価、同じく二五%をこす消費者物価高騰のインフレ下で、生活扶助基準は昨年度に比べ一五%の引き上げにすぎず、物価上昇分を差し引いたネットの保護基準改善率では、四十年代の最低であります。この扶助基準改正で、東京など一級地では、一人一日たった六十三円の引き上げであります。また、福祉施設等入所者の一日の食事代は、老人ホーム三百十四円、養護施設三百三十六円となっており、とうていこの物価高の中で満足な食事のできるものではありません。
 老齢福祉年金も五千円から七千五百円に引き上げ、政府は五〇%アップと宣伝していますが、この絶対額から見てあめ玉年金である実体は変わらず、また、厚生年金のスライド制実施も宣伝だけは盛んにやっていますが、不十分のそしりを免れません。しかも、それら両年金スライドの実施が来年一月とことし十月からというに至っては、政府の感覚を疑わざるを得ないばかりか、憲法二十五条を政府はどう理解し、憲法擁護義務を規定した九十九条を何と心得ているか、その責任を問わねばなりません。
 さらに、狂乱物価のあおりで、マイホームの夢は実施の見通しが全くなくなりましたが、現在五百万戸とも八百万戸とも言われている住宅困窮者に対し、四十九年度の政府の公共住宅建設は、前年度より四万五千戸も削減しております。社会的弱者には安心して住める場所すら与えないようなひどい政策をとっている政府は世界に例がありません。それでも福祉重視とは驚きのほかであり、政府が言う福祉の尺度は目盛りのないものさしを使っているとしか言いようがありません。
 第四は、社会的不公正是正を放棄した税制改正についてであります。
 政府は二兆円減税を四十九年度予算の目玉商品と騒ぎ立てておりまするが、これは自民党の人気取りの政略的性格が強く、インフレ下では中小給与所得者を中心にしたインフレ調整減税をとるのが当然であるのに、給与所得控除の上限撤廃、高額所得者の累進税率緩和などいわゆる重役減税であって、勤労国民大衆の要請とは相いれないものと言わざるを得ません。そればかりか、高度経済成長のてことして使われた資産所得優遇措置という資本蓄積のやり方は改められず、昨年十二月の東京都の調査及び大蔵省の資料でも、各種分離課税が多用される現行課税方式では高額所得者ほど負担が軽減される逆累進型となっているのであります。そうした現行税制の不公平な負担関係を是正しないばかりか、拡大する結果となる四十九年度税制改正は、税制の使命である所得再分配機能を放棄しているもので、断じて認めるわけにはまいりません。
 第五には、この予算が苦しい地方財政に千六百八十億円余の削減を強要していることであります。
 福田蔵相は、四十四年、地方財政からの借り上げ措置は行なわないと当時の野田自治大臣との間に文書を交換し調印しておることは、お忘れではないと思います。しかるに、四十九年度一般会計予算の増加率を二〇%以下にしたいという全く形式的な理由によって約束を破り、調印をほごにして、交付税の借り上げを行なった結果、予算の伸び率は一九・七%になりましたが、たったコンマ以下の伸び率の伸縮で蔵相のメンツは立っても、物価高騰で苦しむ地方財政を一そう圧迫し、いまこそ住民福祉を向上しなければならないときに、地方自治を財政面から侵害していくことは、高騰する物価高の中で国民にさらに大きな苦しみを与えることになり、断じて容認ができないのであります。
 以上、狂乱物価を抑制できず、国民福祉向上を無視する予算に対して、強く反対の意思を重ねて表明し、私の反対討論を終わります。(拍手)
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発言情報

speech_id: 107215254X01719740410_009

発言者: 阿部憲一

speaker_id: 16262

日付: 1974-04-10

院: 参議院

会議名: 本会議