田邊誠の発言 (本会議)

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○田邊誠君 民主政治の基本は選挙にあります。狂乱物価のもとにおける参議院第十回通常選挙の結果、国民は、田中政治に対して、明らかにノーの意思を表明いたしたのであります。
 私は、ここに日本社会党を代表して、深い憤りと大きな怒りを込めて国会を見守っておる国民とともに、田中内閣不信任決議案に対して賛成の討論を行ないます。(拍手)
 一昨年七月、田中内閣の登場は、長期にわたる官僚型保守政治に怨嗟の念を深くしていた国民にとって、暗いトンネルから抜け出たときの太陽のごとく強烈なまぶしさを覚えさせるに十分でありました。しかし、それから満二万年、次第に光になれた国民の目に映じた田中内閣の正体は、全く期待を裏切ったばかりでなく、国民の求めるところをことごとく踏みにじった、かつてない反民主主義性格を持った戦後最悪の内閣と成り下がったのであります。(拍手)
 われわれが田中内閣を不信任しなければならない最大の理由は、何といっても、国民の命と暮らしを破壊してきたその失政にあります。
 今日、国民は、とどまるところを知らない物価高、企業公害、交通災害の中で命をすり減らし、暮らしへの限りない不安をかかえて呻吟しています。しかも、その原因が、大商社の買い占め、売り惜しみに象徴されるように、大資本中心の経済の仕組み、さらに、この大企業との密着からくる保守政治の本質からきていることを知らされた現在、一〇%台に下がった世論調査に示されたとおり、もはや、自民党政治に対する国民の不信が決定的段階にまで来たことは、理の当然といわなければなりません。(拍手)
 物価、公害は、台風が来てかわらが一、二枚飛び、雨漏りがしたり、といにごみがたまったのと同じだ、すぐ修理できると演説されるような総理の無神経きわまる感覚では、今日、地価の高騰、資材の値上がりの中で、マイホームの夢を見ることもできなくなった庶民の苦しみを全く理解しないと言われても、抗弁の余地はないと思うのであります。(拍手)
 田中総理が政権を担当してきたこの二年間で、卸売り物価は五一・六%、消費者物価は三六・二%も急騰いたしておるのであります。しかも、これに対して、大企業、大商社の利益が膨大なものになっている事実も明らかであります。わが党の推進によって成立したインフレ利得吸収のための会社臨時特別税法が、あの自民党の骨抜きにもかかわらず、三月末の申告で、もうけ過ぎに対するところの税額は六百十二億円にのぼり、先取り、便乗値上げの大きさを裏づけているのであります。
 しかるに、田中内閣は、新価格体系への移行と称して、行政指導による高値容認、なしくずし値上げの態度をとり、物価は鎮静しているという宣伝のもとに、物価抑制の基本的な政策の柱である原価公開や大企業製品の価格引き下げ等の独禁法の改正、寡占価格規制などには全く触れず、一方では公共料金等の空前の値上げラッシュを行なおうとしておるのであります。これでは、今年度後半に政府主導型の物価暴騰が再発し、国民生活を根底から破壊し、インフレの高進が社会不安をさらに激化させることは必至であり、田中内閣の責任は、まことに重大といわなければなりません。政府のいう新価格体系への移行とは、要するに、財界の意向を受けた政府が、価格の引き上げを認めることによって、大企業、大資本の高利潤を確保しようとするものにほかならないのであります。
 しかも、田中総理は、物価対策に無策無能であることが国民の前に明らかになるにつれて、選挙の最大の争点である物価問題に対する対策を避けて、道徳教育を宣伝するなど、話題を故意にそらし、選挙中から、この臨時国会を、物価、生活国会にすることを回避しようとたくらんでまいったのであります。
 さらには、大企業の土地買い占め、地価暴騰の引き金となった日本列島改造論について、発想の転換をすると言いながら、その舌の根もかわかないうちに、物価抑制措置は何ら講じないまま、昭和六十年までに全国七千キロの新幹線、本四架橋の建設を行なうと発言し、さらに、排気ガス規制の延期や大阪空港の残置発言など、列島改造計画により、再び大企業中心の高度成長の方向を明らかにしているのでありまして、節度ある経済対策を忘れた、全くの暴論といわなければなりません。(拍手)
 政府が、ほんとうに安定成長の路線に切りかえ、省資源型産業構造に移行することによって、真に福祉型経済に転換させようとするならば、財政金融政策の根本的な転換をはかり、長期計画を洗い直し、大企業本位の公共事業計画を削減するなど、長期展望のもとに抜本的な対策に早急に取りかかり、この前提に立って、公共料金の値上げを押え、土地や物資の買い占めによって、もうけをたくわえているインフレ加害者の負担で、インフレ被害者を救済し、生活防衛をはかることが断じて必要であります。
 しかし、値上げを認められた大企業や財界から膨大な政治献金を受け、大資本本位の開発と列島改造再編を企図し、国民生活をさかなでする値上げ政策を続けている田中内閣には、とうていこれを断行する意思も能力も持ち合わせていないと判断せざるを得ないのであります。(拍手)
 地価上昇は、昭和三十年から昨年三月までに、六大都市で二十九倍、全国市街地で二十三倍となり、物価指数倍率二・八倍やGNP倍率十三倍をはるかにこえています。その結果、大企業、商社の所有する土地の含み資産は、東証一部上場会社五百八十九社だけで、驚くなかれ、七十三兆円になっておるのであります。しかも、この含み資産の多いぼろもうけ企業が、軒並み値上げを敢行いたしておるのであります。
 このような大企業の横暴なふるまいには目をつぶる一方、公務員賃金の引き上げに対する人事院勧告さえ直ちに実施せず、言を左右にして引き延ばし、あまつさえ、公務員労働者の労働基本権を踏みにじり、日教組の計画的な弾圧をはじめ、憲法に規定された当然の基本的権利すら剥奪しようと企図しているのであります。まさに、民主主義否定、働く国民の犠牲の上に立った独占奉仕そのものの姿勢であることを告発しなければなりません。(拍手)
 今日、世界各国の政治危機がいわれているときに、政府の失政の中に、必ず物価値上がりの要素があるといわれておるにもかかわらず、ヨーロッパの二倍以上の物価高騰の中にあってもわが国の政治交代が行な、れないのはなぜかという疑問がありました。したがって、わが国では経済問題で内閣は倒れないという通説があったのであります。
 しかし、今日は違います。今回の参議院選挙で、いまだかつてない七三・二%という高率の投票に示された国民の意思は、まさしく物価値上がりの怒りを投票でぶっつけ、その責任を政府はとるべきであることを明らかにいたしたのであります。(拍手)
 田中内閣を弾劾するもう一つの重要な要素は、民主政治の危機に対する国民の自衛意識からであります。
 昨年、田中総理は、民主政治のよってくる基盤そのものをくつがえさんとする小選挙区制の国会提案を行なわんとし、そのための通年国会を主張し、百三十日もの大幅会期延長の暴挙を強行したのであります。ところが、今回の参議院通常選挙後の国会においては一転し、十五年も続けて行なわれてきた所信表明を拒否し、緊急質問も認めず、みずからの意思表示を回避し続けてきたのであります。選挙に示された国民の国政に対する願いを、国会の場で何一つ論議せず、ひたすら口を閉ざして逃げ切ろうといたしておるのであります。まさしく、その行為には天地の差があります。
 しかし、その底に流れる思想は いずれの場合も、議会制民主主義を否定する立場において共通しているといえるのであります。(拍手)多数の上にあぐらをかいていられるときは、通年国会で自己の思うように悪法をも押し通す。保革伯仲して、造反をおそれるようになれば、国会の審議は行なわない。まさしく一党独裁、ファッショ政治そのものの本体を明らかに示したものと断ぜざるを得ないのでありまして、天人ともに容認できません。(拍手)
 三九・五%の得票しか得られなかった自民党政府にとって、いまこそ、謙虚に野党の主張も聞き、その考えも取り入れた国会の論議と話し合いの政策実施をはかるとともに、民主政治の基本に照らして、今日ほどこの民主国会の場所におけるところの論議が要請されるときはないにもかかわらず、その道を避けて通らんとすれば、戦後三十年間積み上げてきた議会制民主主義は、もはや回復できない奈落の底に突き落とされるであろうことを警告いたします。そして、このような一刻も猶予を許さない事態の中から、独裁者の道を歩む田中内閣への覚醒のむちを打たんとするものであります。(拍手)
 いまこそ、国政に携わる者は、静かに立ちどまって、日本の行く手を見詰めなければなりません。
 今回の参議院選挙において、政府・自民党は史上空前の金権選挙、企業ぐるみ選挙を繰り広げ、金力と権力による強権政治が、田中自民党政治の本質であることを国民の前に暴露したのであります。そして、国民の怒りとおそれの叫びによって敗れたのであります。したがって、田中総理の列島改造を頂点とする政治戦略体制は、内外の総反撃によってもろくもくずれ去ったというべきでありましよう。
 戦後の保守党内閣の中でも、最も忠実に財界への奉仕の姿勢をとってきた田中内閣にとって、高度経済成長による資本主義延命対策が、逆に保守永久政権にピリオドを打つ引き金となった今日、田中総理とその内閣のとるべき道はただ一つであります。国民の手にその主権を戻し、国民の名において新しいにない手に政権の座を明け渡すのみであります。(拍手)
 田中総理、あなたは、いま、国民の主権の行使によって、猪突猛進する前面をふさがれました。しかも、自民党内の造反と、財界の保守政権に見切りをつけようとする言動のあらわれによって、その退路も断たれようとしております。
 総理は、選挙中、しばしば、自分の言動を行き過ぎというなら、三国峠を越えて、八十四歳の母の待つ新潟に帰ると言われたとのことであります。その言やよし。いまならば、あなたの母堂の待つ郷里に通ずる上越国境の三国峠は、まだ開かれておりましょう。みずからの退陣によって進退を決し、有終の美を飾ることを、国民の願いを込めて、私は強く勧告をするものであります。(拍手)
 最後に、自民党の諸君、ニクソン弾劾における与党議員の良識ある投票のごとく、真に日本の政治の将来のため、この際、勇気をもってこの不信任案に賛成されることを期待してやまないのであります。
 以上をもって私の賛成討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 107305254X00319740731_023

発言者: 田邊誠

speaker_id: 14363

日付: 1974-07-31

院: 衆議院

会議名: 本会議