野田毅の発言 (本会議)

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○野田毅君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました所得税法、法人税法及び祖税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、質問をいたします。
 今回の改正案によりますと、所得税の減税規模は、初年度二千四百八十億円となっておりますが、これに昨年度改正の平年度化分を含めますと、実質約七千億円の減税となっております。片や、財政が硬直化し、各種の財政需要が急増する中で、また、国債発行額が昨年度より千六百億円も減額するという環境を考えますと、これだけの所得税減税が行われることは、高く評価すべきであります。
 また、改正の内容は広範多岐にわたっておりますが、しさいに検討いたしますと、障害者控除、老齢者控除など、特別な人的控除の大幅引き上げを初め、各種の福祉関係措置の拡充、同族会社の留保所得課税の大幅軽減、白色専従者控除の大幅引き上げなど、中小零細企業のための改善、勤労者財産形成、住宅対策のための措置の拡充、公害防止、環境保全あるいは資源対策の視点からの措置の新設、拡充など、改正の内容においても、私は率直にこれを評価するものであります。
 特に、多年の懸案でありました農業後継者に対する農地の相続税の実質的な非課税措置の実施は、農業後継者問題に一条の光を与えるものとして、また、土地の譲渡所得課税について、高額の長期譲渡所得を本則よりも重課することは、いわゆる土地成金の出現を未然に防止するものとして、注目すべきでありましょう。
 しかしながら、今回の改正によっても、残された問題が多々あることは言うまでもありません。
 以下、数点について、総理並びに関係大臣にお伺いをいたします。
 私が伺いたい第一の問題は、今後における国民の総合的な税負担の問題であります。
 国民所得に対する租税負担の割合二〇・三%という数字は、確かに欧米諸国に比べれば、はるかに低いと言えましょう。その点だけからするならば、高福祉を進めるための高負担の余力はまだまだあるようでもあります。しかし、中身を見ますと、特に直接税の負担割合がここ数年の間に飛躍的に増大しており、十年前に五九%程度であったものが、来年度は七三%を超える見込みとなっております。
 過去においては、経済の高度成長や物価上昇などのため、いわば無理をしなくとも、直接税を中心に毎年大幅な税の自然増収が発生してきたのでありますが、今後予想される資源やエネルギーなどの制約条件を考えますと、負担の面、税源の面、この両面から、直接税に対する過度の依存には限界が出てくることになります。
 こうした状況の中で、今後さらに高福祉のための高負担を求めるとなれば、欧州と同様に、間接税のウエートを相当程度高めていくことが必要となるのではないか、そのためには、単なる物品税の手直しにとどまらず、何らかの方策もまた必要となるのではないかと考えられるのでありますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 他方、国民が高福祉を要求する以上、何らかの意味で負担の増加に耐えねばならぬことは当然であります。しかし、逆に、負担が増加する以上は、高福祉と言われる中身について、いろいろと要求を抱くこともまた当然でありましょう。
 最近、福祉というにしきの御旗のもとに、本来的に自己の責任において処理すべきことであっても、安易に国や自治体あるいは第三者に責任を転嫁し、またこれを許そうとする風潮が生まれつつあるように思われます。
 たとえば、昨年の暮れ、ある老人が亡くなってから一週間もたった後に発見されたという痛ましい記事が出ていましたが、そのときの論調を見ると、異口同音、政府や自治体の責任を追及していたようであります。しかし、私は、ただそれだけにとどまっていいものかどうか、まず問われるべきは、その息子や娘たちであり、隣近所の人たちではないのか、もっと人間としての原点から問われるべきではないのかと考えざるを得ないのであります。親のめんどうを見るのは第一義的には子供の責任ではないか、子供を幼いころしつけるのは親の責任ではないのか、このような基本的な事柄を素通りして、ただ一方的に、国や自治体が迎合的に福祉という名のつく予算を数字的にふやしていくことが、本当に高福祉と言われるゆえんのものであろうか。私は疑問なしとしないのであります。(拍手)
 総理は、文芸春秋二月号の「日本の自殺」という論文をお読みになったでしょうか。それによりますと、古代ギリシャやローマの没落は、単に外敵から物理的に滅ぼされたというよりも、むしろ社会の構成員の精神的な内部崩壊に真因があったと言います。民主政治のもとでは、政治家が票を欲しがり、政府は厚い信任を得ようとして当時の世論に迎合し、パンとサーカスを与える競争に陥る危険を絶えずはらんでおります。
 しかし、その結果は、単に財政的破綻を来すだけでなく、国民に責任転嫁や他人への依存心の増大や怠惰をもたらし、ひいては、社会全体の活力を奪い、国家民族の内部崩壊へとつながるという警告を発しているのであります。
 私は、今日のわが国の状況を見ておりますと、単に杞憂とは言い切れない一面を、この論文はついておると思うのであります。
 私は、全く身寄りのない老人や障害者など、本当に気の毒な人たちについてとやかく言うのではありません。このような人たちには、もっと手厚い思いやりが必要でありましょう。しかし、福祉というものは、世話をする人の思いやりと、世話をされる人の感謝の気持ちが裏づけとならなければなりますまい。権利や義務という単純な関係ではないはずであります。いわんや、金をつければ、それで福祉が増進するというものではないはずであります。
 福祉優先、弱者対策を強調される総理の頭には、福祉とは金のみにてあがなえるものではないという確固とした哲学的信念がおありのことと思います。総理は、かつて翼賛選挙に敢然として立ち向かった毅然たる人物であり、決して世相だからといって迎合する人物ではないはずであります。今日のこうした風潮をどのように受けとめておられるのか、そして、今後の福祉政策のあり方について、特にその進め方と、その裏づけとなる負担の関係について、総理の忌憚のないお考えを伺いたいのであります。
 次に、利子所得課税の問題についてお伺いします。
 今回、利子、配当所得の源泉分離選択税率を、その限度と言われる三〇%に引き上げたことは、大いに評価しなければなりません。しかし、所得税の本則である総合課税のたてまえからするならば、とかく批判があることも事実であります。他方、今日の社会実態として、架名預金や預金先の分散が行われていることも事実であります。このような状態の中で、直ちに総合課税に持っていくと、いわば正直者がばかを見るという結果になることは、目に見えております。
 そこで、アメリカでは、いわゆる国民総背番号制を取り入れているようでありますが、わが国においても、行政の円滑化という面からも、これを取り入れる考えはございませんか。また、全面的にこの制度を取り入れることが、いま直ちには困難であるとするならば、少なくとも税務及び金融取引の面において、納税者番号制度をすべての個人についても拡充するお考えはないか、大蔵大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
 第三にお伺いしたいのは、社会保険診療報酬課税の特例の問題についてであります。
 今回の税制改正要綱において、「社会保険診療報酬課税の特例措置の改善合理化は、次回診療報酬改訂と同時に実施する。」とあります。私は、この特例措置が、世上報道されているように、単なる医師の優遇措置であるとは考えておりません。この特例措置が超党派の議員立法により、昭和二十九年、「本法律案は、社会保険診療報酬の適正化の実現までの暫定措置であるから、政府は速やかにこれが実現をはかるよう善処せられたい。」との附帯決議を付して設けられた経緯からも明らかなように、社会保険診療報酬体系の抜本的改正と表裏一体の関係にあり、いわば車の両輪関係にあります。しかし、残念ながらこの特例措置が、世上不必要な税の不公平感をもたらしていることも事実であります。
 問題は、政府がこの特例の存在に甘えて、本来の診療報酬の抜本的改正を避けて通ってきているのではないかということであります。
 田中厚生大臣は、歴代大臣の中でも特に誠実なお人柄であり、私の最も尊敬するお一人でもあります。すでに、この問題について十分御検討を重ねておられることと思います。現在検討しておられる方向と内容、さらに、抜本的改正の目標とされる時期について、率直な御見解をお伺いします。
 あわせて、医師会の言ういわゆる医療の公共性について、大臣の御所見を御披露いただきたいのであります。
 最後に、税務調査の問題についてお伺いをいたします。
 税務署の調査官は、一億国民の公僕として適正な税務の執行のために調査を行っているのであります。ところが、この調査官に対して、納税者でもない者が多人数でこれを取り囲み、テープレコーダーを持ち込んだり、悪口雑言はおろか、時には物を投げつけるなどの調査妨害が行われているのであります。しかも、これがある団体の指導のもとに、きわめて組織的に行われているのであります。このような団体の存在は、正しい税務の執行を阻害するものであり、善良なる納税者にとってはまことに憂慮すべき、ゆゆしき問題であります。(拍手)
 法治国家において、このような集団的威嚇が白昼堂々と行われておること自体遺憾でありますが、こういうことによって、万が一にも法のもとの平等がゆがめられ、税務行政が適正を欠くことがあってはならないのであります。大蔵大臣は、このような事態に対して、厳正に措置を講ずべきであり、勇断をもって臨むべきであると思うが、御所見を伺います。
 以上、各点について、総理並びに関係大臣の率直な御答弁を期待して、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 107505254X00619750214_015

発言者: 野田毅

speaker_id: 14178

日付: 1975-02-14

院: 衆議院

会議名: 本会議