谷川和穗の発言 (本会議)

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○谷川和穗君 私は、自由民主党を代表して、昭和五十年度予算三案に関し、政府原案に賛成し、日本社会党及び公明党共同提出の編成替え動議に反対の討論を行うものであります。(拍手)
 戦後、急激な復興と発展を遂げてまいりましたわが国経済社会は、ここに至り、重大な試練に直面いたしております。すなわち、国際環境の急変、資源・エネルギーの制約、予断を許さない物価動向、それに生活環境の破壊などであります。顧みて、この数年間は経済の異常な混乱の年でありました。
 来るべき昭和五十年度経済は、この混乱を収束し、中期的な見通しのもと、静かで控え目な成長に移行する重大な年であります。
 一方、原油価格は一挙に四倍となり、世界経済が適応の余裕を持ち得ず、混乱を続けました中で、石油エネルギーに対して特に依存度の高いわが国経済が、コストインフレと国際収支の悪化に悩まされてきたのは当然でありますが、この経験を経て、わが国経済の体質を、量的拡大の時代から質的充実の時代へと、静かに移していくことの必要性が認識され始めております。
 その意味において、昭和五十年度は、均衡のとれた発展の上に、国民総福祉の社会を実現することを目指す新しい出発の年としなければならないというのが、われわれの反省であり、われわれの認識であり、かつ、われわれの決意であります。
 言うまでもなく、一国の予算は、当該年度における一切の諸問題に対する政府の総括的、集中的解答であります。政府が、激変する社会情勢の中、いかなる問題意識を持ち、いかなる政治姿勢と政治的決意とをもって、国民経済の発展を図り、国民の幸せを確保するか、予算の編成に当たってはこれが問われなければなりません。
 私は、昭和五十年度を転機とする新しい経済社会の実現の中、いま求められている最も重要な課題を、第一に物価、第二に国民福祉、そして第三に資源・エネルギー及び国民食糧の問題であると考えます。
 以下、私は、五十年度予算案を通じ、政府がこれらの重要課題を解決するため、いかなる対策を用意したかを明らかにしながら、私の見解を表明いたしたいと存ずるのであります。
 まず第一に、物価の問題であります。
 ようやくにして物価も鎮静化の方向へ進みつつあることは、大方の認めるところでありましょう。本年一月において、卸売物価前月比〇・四%減、東京都区部消費者物価がほとんど横ばい、この三月の消費者物価の前年同月比上昇率が、政府の見通し一五%を下回って、二二%台に落ちつくことは確実であります。政府が物価の安定を当面の最重要な政策目標として掲げ、抑制的な財政、控え目な金融政策の運営に当たって、眼目をこの一点にしぼって経済政策を推し進めていることに、私は賛意を表するものであります。(拍手)
 すなわち、すでに生じた物価、賃金の大幅な上昇から、当然増経費が前年度予算総額の二〇%を超すという、かってない予算硬直化傾向の中、予算規模の圧縮には種々な困難が存在したにもかかわらず、一般会計において、既定経費の削減と合理化と、さらに財源の重点的な配分によって、前年度当初予算の二四・五%増、財政投融資計画においては、抑制的基調を堅持して、前年度当初計画に対し、わずかに一七・五%という予算編成を断行いたしました。一部に、予算規模が二四%を超して伸びたことを取り上げ、インフレ増強予算と言う者がありますが、義務的経費あるいは人件費、社会保障費など、当然増が二〇%を超すという、その大半であることを考えれば、これは当たらない批判であります。
 さらに、公債発行額を見れば、インフレ進行という国際環境の中、逆に前年度より千六百億円の減額を立て、公債依存度を、思い切って一〇%以下に抑え込むというかたい決意で臨んでおります。これは、政府みずからが財貨サービス購入の伸びを抑え、物価抑制には避けて通ることのできない、あえて試練の道を選んだものとして評価をいたします。(拍手)
 もとより、総需要抑制の長期化に伴い、生活活動が低下、雇用情勢にも変化が生じ、企業の中には、新規採用者の採用取り消しというような、およそ好ましからざる事態も生じ始めております。しかし、企業別に見れば、なおコストプッシュ圧力はまだかなり根強く、いまここで景気転換策に転ずれば、潜在的な値上げ要求が企業内合理化努力を越えて、再び物価を押し上げるかもしれず、いまここが、国民のしんぼう強い努力が強く求められるところかと存じます。
 労使関係についてこれを言えば、賃上げの三つの条件は、企業業績と、労働需要と、そして物価の三点かと存じます。いまここで二〇%を超える大幅賃上げが行われるならば、日本経済に重大なる影響を与えることは必至であります。
 よって、私は、政府が五十年度予算の執行に当たっては、片や、細心の注意をもって、機動的、弾力的に財政並びに金融を運用することを望みつつ、片や、労使双方に強く働きかけて、賃金の決定についても、国民経済的視野から、節度ある態度を貫かしむるよう期待いたしつつ、五十年度予算案を貫く政府の物価対策を強く支持するものであります。(拍手)
 次に、社会的公正の確保のための国民総福祉についてであります。
 インフレの進行は、所得や資産の再配分に大きな不公正を生み、国民経済を破壊し、ひいては、社会秩序をも混乱に陥れているがゆえに、インフレこそ、働く者にとっても経営の側からも、まさに恐るべき共通の敵であります。何にも増して、インフレ克服が第一義的な政策であることは論をまちません。
 しかし、同時に、最近における物価の動向に顧み、社会的公正が、インフレによって、はなはだしく損なわれつつある事実も見逃すことはできないのであります。その影響を最も受けやすい老人、身体障害者など、社会的、経済的に恵まれない人々に対して、極力福祉政策の充実を図り、他方、相対的に優位な立場にある人々には、税その他公共的負担に耐えてもらい、国民連帯でこのインフレを乗り越えることこそ、新しい政治の課題かと存じます。
 これを五十年度予算で見るならば、老齢福祉年金の月額七千五百円から一万二千円への引き上げ、年金への物価スライド制の導入、障害福祉年金、母子、準母子福祉年金の大幅引き上げ、生活扶助基準の二三・五%アップ、重度障害福祉手当、あるいは原爆被爆者保健手当などの創設などを初め、全体として抑制的な予算の中で一八・四%、伸び率にして、実に三五・八%、総額にして三兆九千億円というかってない福祉予算となっていることは、すでに国民すべての知るところであります。昭和三十年度社会保障費の総額が千十二億円であったことを思うとき、まさに隔世の感がいたすのであります。(拍手)
 これを、千八十億円を超しました私学助成を含め、三四・五%も伸びた文教及び科学振興費、さらに勤労者財産形成、一般会計、財政投融資計画、合計三〇・三%増の思い切って質の改善を図った住宅対策費、総財政投融資計画の六五%に近い下水、水道、公園、環境などの生活関連施設費の伸びなどとあわせて考えるとき、五十年度予算は、基本的に弱者救済、社会的公正確保、国民総福祉の基本路線が貫かれている予算であると考えるのであります。(拍手)
 さらに、妻や農地の相続税については、思い切った軽減措置を用意しつつ、所得税において、標準家族の課税最低限を、アメリカ、西ドイツを抜いて世界最高の百八十三万円に引き上げ、他方において、租税特別措置の改正では、利子、配当課税の強化、土地譲渡所得等に対する課税の特例等の是正を初め、幾つもの改正を行って、強者に対する公共負担の増大を迫っております。
 以上が、私が政府原案を積極的に支持する第三の理由であります。(拍手)
 次に、資源・エネルギー及び国民食糧の確保に対する施策の推進についてであります。
 食糧の供給力から見ると、すでに宇宙船地球号は定員オーバー、食糧と人口の問題は、年を追って人類生存にかかわる重大な問題としてあらわれ始めております。このような世界的環境の中、わが国の食糧体制を考えるとき、われわれはいまさらのように事の重大性に慄然たる思いを禁じ得ません。
 このような不安定の体制から脱却して、国民の生存を支えるため、五十年度からさらに自給度を高め、米について、新たに三十五万トンの在庫積み増しを行い、稲作転換目標を百万トンにとどめることとし、かつ、麦、大豆、飼料作物等の生産振興費に百八十七億円を上乗せするほか、農林漁業金融公庫資金を五百十億、農業及び林業近代化資金を一千六百五十億円増額いたしております。
 さらに、重要なエネルギー対策としては、石油九十日備蓄計画、原子力平和利用、原子力安全局の新設、新エネルギーの技術開発に踏み出し、さらに、国民の生活環境を守ることに関しては、先進工業国においては最も厳しい断固たる決意と対策を用意して、国民の生存の脅威である公害の防止に懸命の努力を傾けております。
 これをもって、私は、政府予算に賛成するいま一つの理由といたすのであります。
 次に、日本社会党及び公明党共同提出の編成替え動議について申し上げます。
 五十年度予算案は、三木内閣の対話と協調の政治姿勢により、予算編成前に、数次に及ぶ党首会談や、あるいは大蔵大臣と野党代表との会談を通じ、野党側の意見も十分に聞いた上、取るべきものは取り入れて編成したものであります。このような例は、かつて見ないことであります。
 さらに、政府予算案審議のさなか、野党のうちから提出されました修正要求も、慎重に検討の対象となりました。
 高度経済成長を支えてきた内外の条件が崩れ去り、安い原料、安い燃料、あるいは食糧や飼料が自由に手に入る時代が終わり、国内での労働環境の変化、国民意識の転換から、これはごく自然の流れであったとも言えるかもしれません。しかし、事柄は予算編成という事柄であり、かつ、予算執行という面からすれば、政府が自信と責任を持って当たるのが当然でありまして、その面からして、われわれは、政府原案をより現実的なもの、現下の日本経済の生々発展にとり、より効率的なものとの確信を持って、政府原案に賛成するものであります。(拍手)
 特に、野党の編成替え要求の中に、例年のごとく、防衛費の削減とか、法人課税の重課などに財源を求めるものがありますが、国の防衛に責任を持つ政権担当政党の自由民主党としては、必要最小限の防衛予算を計上することは当然の責務と考えており、また、事業税の新設によって、世界の水準より高くなる法人の税負担をこれ以上重くすることは、負担の均衡上からも適当でないと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 以上、申し述べました理由により、私は、政府の予算三案に賛成し、社会、公明両党共同の編成替え動議に反対するものであります。
 議員各位の御賛同を賜らんことを要望しつつ、私の討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 107505254X01019750304_016

発言者: 谷川和穗

speaker_id: 18568

日付: 1975-03-04

院: 衆議院

会議名: 本会議