横路孝弘の発言 (本会議)
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○横路孝弘君 私は、まず初めに、重大な問題を抱えた赤字公債発行の特例法の審議がわずか二日しか行われず、しかも、わが党が審議に不可欠な資料を求め、慎重な審議を要求したにもかかわらず、強行採決という手段に訴えた自民党の暴力行為をまず批判し、これに抗議することを明らかにして、日本社会党を代表して、議題となりました本法案に反対の討論を行います。(拍手)
まず、今日の財政危機を迎えるに至った原因はどこにあるのか、それを明確にしなければなりません。
第一に、戦後日本の経済体質そのものの中に、今回の財政危機を見ることができるのであります。戦後、日本経済の自立のためには、輸出の拡大こそ最大の課題であるとみなされ、輸出の振興、とりわけ、重化学工業推進のための資本蓄積や、国際競争力を強めるための企業の合理化、近代化が最優先の政策目標となり、高度経済成長は、日本経済にとって欠くべからざるものとして無条件に容認されてきました。
日本の企業は、この路線の上に立って、世界じゅうから原料を買いあさり、加工して世界じゅうに売りまくり、貿易立国の名をほしいままにしてまいりました。しかし、それは、実は一次産品価格の長期的低落傾向と、南北格差の拡大と、世界経済の不均衡に依拠するものにほかならなかったのであります。
同時に、わが国の石油、鉄鉱石などの資源消費量を驚異的テンポで拡大させ、そのほとんどを輸入に依存することになり、日本経済はみずから資源エネルギー制約を表面化させる原因をつくるとともに、対外資源への過度の依存という脆弱性をみずから招来したのであります。
しかし、ここ数年、新しい世界の経済秩序確立が求められ、昨年の国連における経済権利義務憲章に見られるように、一次産品輸出国の経済的自立と価格引き上げが要求されている情勢下では、もはやわが国がただ一国で世界輸入市場の石油二〇%、鉄鉱石四六%、原料炭六七%、あるいは食糧一五%などという国際的独占が許されるはずがないのであり、ここに日本経済が資源と市場という二つの壁に直面するや、高度成長と、それによる税の自然増収に依存してきた財政が直ちに破綻するのも明らかであります。このことは、すでに七〇年当初から指摘され、わが党も政策の根本的転換を要求してきたにもかかわらず、政府はこれに対応しようとせず、わが国財政は行き詰まることが明白な経済拡大の後押しをしてきたのであります。したがって、この法案は、池田、佐藤、田中、三木、歴代自民党政権の経済政策の破綻の何よりも明白なあかし以外の何ものでもないのであります。(拍手)
第二に、財政の具体的構造においても、本来の役割りが全く果たされていないことであります。
その役割りとは、言うまでもなく、公正な所得の再配分であり、国民生活を維持、発展させるための公的なストックの充実にあります。しかるに、自民党財政は、輸出奨励、産業優先の政策のもとで、大企業利潤の拡大に主眼が置かれてきたのであります。
公共投資の中で、住宅などの生活関連投資は一〇%台で推移し、他方、道路投資を軸として、運輸、通信部門の投資は四〇%台を占めるなど、一貫して企業のための財政投資が行われてきたのであります。税制もまた、企業の資本蓄積、内部留保の拡大、輸出産業助成や設備の近代化などのために、各種の準備金や引当金、特別償却制度など、至れり尽くせりの優遇措置を与えてきたのであります。
まず企業が利潤を蓄積し、その利潤の限られた一部で財政が成り立つのであれば、経済政策の基本に破綻が起これば、財政が行き詰まるのは自明の理であり、この構造の転換なくして財政の再建はあろうはずがありません。政府の提出した特例法は、まさにその転換を拒否したものと言わなければならないのであります。(拍手)
財政構造や経済構造の転換を図ることなく、再び経済成長サイクルの中で財政を考えていこうというのが今回の特例法です。しかし、それは一体可能でしょうか。
わが党の要求によって大蔵省が試算した結果によると、名目成長一五%、租税弾性値一・二、現在の税、財政構造を前提とした場合、五十年度三兆円の減収として計算しても、五十五年度には公債を十二兆六千百億円発行せざるを得ないのであります。四条公債を現行程度発行するものとしても、赤字公債五兆円という数字になり、そのときの公債残高は六十三兆円にも上るのであります。この試算は、赤字公債の発行が本年度だけの特例ではなくて、五年後も続くということであり、償還のめどは全くなく、政府が否定をしている借りかえか大幅な増税をせざるを得なくなることを明らかにしているのであります。
昭和四十二年度財政審は、依存率五%以下を目標とすべきとし、政府もまた国会答弁でこれを目標と口では言っていますけれども、現在の二六・三%という数字は各国に比べても異常であり、日本の財政が公債に抱かれた危険な道を歩み始めたと言わざるを得ません。
四十年不況時と異なって高度成長が望めない状態では、こうした赤字公債財政が長期化するのは明白であり、われわれのとうてい認めるところではないのであります。
また、公債残高の増大は、償還や利払いなどのために負担の増加をもたらし、四十一年度一般会計の〇・九%にすぎなかった公債費は、五十年度一兆円を超え、このまま推移すれば、昭和五十五年度は歳出の一〇%を超えることは明らかであり、公債自体、財政圧迫の大きな要因をつくることになるのであります。
現在の財政法は、戦前の反省の中から財政運営の基本を示し、とりわけ五条で日銀の公債引き受けを禁じておりますが、現実には、一年を経て日銀の買いオペの対象となり、大半が日銀にたらい回しされ、現在、政府、日銀保有で、合わせて七二・七%という異常な姿となっており、市中消化といっても一〇%程度にすぎません。
結局、規制金利下での大量発行は、事実上は日銀信用に依存せざるを得ず、日銀が独自的な立場から貨幣供給量をコントロール化し、適切な有効需要管理政策を行い得る余地を狭めて、金融政策は公債政策に従属することになり、インフレ再燃の危険性は火を見るより明らかであり、われわれの認めるところではないのであります。(拍手)
いま国民が求めているのは、大企業利潤の拡大でもなく、財政の縮小による福祉の切り捨てでもなく、ましてインフレでもありません。年金を初め、公平な所得の再配分を確実に実行し、企業のための国家財政を、生活のための財政に転換させることであります。それを実現し得ず、財政の重大な分かれ道の選択を数をもって強行した自民党では、もはやその担当能力のないことをみずから示したものと言わなければなりません。(拍手)
そのことを指摘をいたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)