坂口力の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○坂口力君 ただいま議題となりました昭和五十年度の公債の発行の特例に関する法律案に対して、公明党を代表して、反対の討論を行います。
 いわゆる赤字国債発行の財政特例法案について具体的な反対理由を述べます前に、去る三日行われました大蔵委員会における政府・自民党の強行採決を断じて許すわけにはいかないのであります。今国会だけで、実に衆参合わせて八回目、大蔵委員会で二回目の強行採決であり、対話と協調、議会の子を標榜した三木内閣の本質は一体何であったのか。この議会制民主主義の破壊者に対し、わが公明党は、国民とともに激しく、かつ、厳しくその政治姿勢を糾弾するものであります。
 また、二兆二千九百億円にも上る巨額な赤字国債を発行せざるを得ない事態を招いたことも、もとをただせば、この野党との対話と協調をかなぐり捨てた三木内閣の政治姿勢そのものにあったと言わざるを得ないのであります。
 巨額な歳入欠陥に象徴されるわが国の不況は、百万にも上る人々から職を奪うことを初め、企業倒産もその件数、金額において戦後最大の規模となるほど、国民生活に莫大な被害を及ぼしております。この不況の最大原因が、政府・自民党の経済政策の失敗にあることは明らかであります。それは経済政策に先見の明を欠く、海外要因の対応策の失敗もさることながら、国内的にも高度成長期の経済体制の転換をせずに、物価さえ抑えればよいという一点集中主義的な総需要抑制策に固執し、経済の調整期に必要なきめの細かい景気対策を講じなかったことによるものであります。
 しかも、わが党は、かねてより再三再四、国民生活を優先する景気対策の実施など、経済政策の転換を要求してまいったのであります。しかしながら、三木内閣は、こうした国民の声に耳を傾けないばかりか、逆に背を向け、いまもって、その政策に誤りはなかったと、いたずらに居直りの強弁を繰り返しております。
 また、巨額の歳入不足に対する補てん策も、大蔵大臣みずからが選択的増税なる構想を打ち出しておきながら、実際に行ったのは、金融機関の貸し倒れ引当金の繰り入れ率の引き下げについて、当初の予定から大きく後退して、わずか千分の九・五に引き下げたのみであります。しかも、その税収も巨額の歳入不足から見るならば、まことにわずかな額であり、糊塗的な歳入補てんとしか言えないのであります。
 三木内閣は、歳入確保の努力、たとえば政令改正で行える法人税の各種引当金、準備金の縮小あるいは租税特別措置の一部改廃など、不公平税制の是正や不要不急の歳出費の削減などを全く行わないばかりか、歳入欠陥を補てんするためには赤字国債の発行は当然であるとの考えから、巨額の赤字国債を安易に発行しようとする政治姿勢は、まことにもって不見識であり、もはや国民の信頼を得られるものではありません。
 以下、赤字国債発行の特例法案に反対する理由を申し述べます。
 第一は、財政法の基本的精神についてであります。
 三木内閣は、巨額の歳入欠陥を埋めるため、赤字国債の発行は当然であるとの見解を示していますが、わが国の財政法のたてまえはあくまで健全財政主義であり、赤字国債の発行は予定していないのであります。このような行為を平然として行う姿勢を許すわけにはまいりません。しかも、政府は、本年四月に、本来なら五十年度の歳入に該当する四月分の歳入を一方的に四十九年度の歳入に繰り入れることにより、財政民主主義の原則を破るばかりか、いままた、赤字国債の発行期間を五十一年五月末日までとし、単年度会計の原則を踏みにじり、健全財政を尊重する意思など全く見せておりません。このような財政の原則や基本的精神を犯したり、大きくゆがめる法案は断じて認めがたいのであります。
 第二は、償還についてであります。
 政府が国会に提出した赤字国債の償還計画及び財源は、借りかえなしの十年で、国債整理基金特別会計、剰余金、予算繰り入れなどで行うとしています。しかし、政府の計画はあいまいで、著しく具体性を欠くものであります。
 すなわち、国債整理基金特別会計の繰入額が発行額の百分の一・六であることから、その実質繰入額は、九年間で三千二百九十七億円にしかならないこと、剰余金も、今後の経済動向から見て、ほとんど期待できないことや、予算繰り入れについても、現在ですら財政需要の増加を抑え切れず、また、社会保障に消極的で冷たい政府の態度から、今後ますます社会保障費の後退や財政硬直化につながることは明らかであります。しかも、歳入確保に不可欠な不公平税制の是正に全く手をつけようとしないのであります。
 したがって、政府の意図する赤字国債の償還財源とは、消費者や中小零細企業を圧迫する付加価値税の新税創設などであり、歳入欠陥を盾とする福祉の後退であります。
 このような、将来への展望を欠き、さらに現在の不公平がさらに拡大し、低福祉高負担を推進し、国民に新たなる負担と犠牲を強制する赤字国債の発行を許すわけにはいかないのであります。
 第三は、国債の市中消化についてであります。
 政府は、今回の補正予算で赤字国債を含め、三兆四千八百億円にも及ぶ国債のうち、三兆六百億円を市中消化することを打ち出しています。すでに政府は、公定歩合、預金金利、預金準備率の引き下げを実施し、今後すでに発行された国債、政保債の日銀買いオペを計画するなど、市中消化の条件づくりに奔走しているのであります。
 しかも、本来の市中消化は、個人消化を促進するために公社債市場の健全な整備と利率の引き上げなど、魅力ある国債にすることは不可欠であるはずであります。しかし、政府はこの十年間こうした努力を全く行わず、大量の国債発行をしようとしているのであります。この安易な市中消化が今後、民間金融、中でも中小零細企業やマイホーム建設資金を圧迫し、被害のしわ寄せを受けることは明らかであります。
 また、日銀の買いオペによる通貨供給量の増大は、ただでさえ一連の公共料金の値上げ含みに加えて、再びインフレを招くことは必至であります。
 このように、国民生活に二重、三重の被害をもたらす不健全な市中消化を促進する赤字国債の発行は容認できないものであります。
 最後に、政府は、来年度以降も赤字国債の発行は避けられないとの意向を示しておりますが、先に述べたとおり、わが国財政法のたてまえは、あくまでも健全財政であり、巨額な赤字国債にのみ込まれた財政を志向しているものではありません。
 したがって、政府は一日も早く健全な財政に戻す方途と努力を早急に国民の前に明らかにすべき責任があるにもかかわらず、いまもって何ら示さないのは、まさに国民に対する背信的行為そのものであり、納得できないのであります。
 以上申し述べました理由により、昭和五十年度の公債の発行の特例に関する法律案に強く反対するものであります。
 以上をもちまして、私の反対討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 107605254X01719751205_011

発言者: 坂口力

speaker_id: 22554

日付: 1975-12-05

院: 衆議院

会議名: 本会議