立木洋の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、総理の所信表明に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
言うまでもなく、今国会の重要な任務は、ロッキード問題の徹底解明であり、同時に、国民生活の防衛であります。しかるに、一昨日、昨日の衆議院本会議で、また本日のこの会議においてでも、国会の演壇を党利党略の反共宣伝と個人攻撃の場にかえ、すでに決着済みの四十年前の治安維持法下の裁判事件を蒸し返し、わが党に不当な攻撃を加えてきた発言に対し、私は強く抗議し、断固として反論するものであります。(拍手)
先ほど、この席から公明党の多田議員が、昨日の衆議院本会議におけるわが党の不規則発言に対して非難をする発言を行いましたが、自席に座っておるわが党紺野議員に対し、本会議場で立ち上がり、演壇を背にして数回にわたって突くなど、あるまじき暴力をふるったのは公明党の正木議員であることは、テレビニュースでも放映されており、歴然としておることを明確に指摘しておきます。(拍手)
まず、彼らが持ち出している問題の大前提についてわが党の見解を述べておきます。
日本国の憲法は、その前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と述べ、また、「これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」と高らかに宣言しました。時の政府に気に入らない思想を死刑を含む重刑によって禁圧する治安維持法こそ、まさにこの人類普遍の原理に反し、平和と民主主義を求める国民を弾圧する希代の悪法でありました。(拍手)治安維持法は二回にわたり改悪されましたが、この悪法は、治安維持法の被告から控訴する権利も奪い、予防拘禁と称して無制限に拘禁し得るという残酷な扱いをしました。ちなみに、この天人ともに許さざる治安維持法改悪に民社党の創立者の西尾末廣氏なども加わり、満場一致で賛成したことや、同党の春日委員長が、戦時中兵器会社を経営したことなどは、二回にわたる質問の性格と無縁でないことを示しているのであります。そして、この悪法のために数十万人が検挙され、約七万五千人が送検されました。わかっているだけでも、拷問や虐待、長期投獄などによって死亡した者は千六百名以上にも上っています。日本共産党員であり作家である小林多喜二は、昭和八年二月二十日逮捕されて、わずか七時間後に拷問により死亡しました。治安維持法による犠牲者は、単に日本共産党とその同調者にとどまらず、故鈴木茂三郎氏や美濃部亮吉氏も逮捕され、宗教団体である大本教は二十名を超える人が獄中で死亡しています。戦前の反動権力は、この治安維持法によって国民の声を弾圧して、あの無謀な侵略戦争を拡大し、三百十万の日本国民の生命を奪い、幾千万のアジア諸国民にはかり知れない損害を与えたのであります。
そこで、私は、政府が治安維持法などによる犠牲者、遺族に対し、この壇上から謝罪する気があるかどうか、さらに、国が賠償することを義務づける国家賠償法を制定する意思があるかどうか、総理は明確に答弁を願いたいと思います。
次に指摘しなければならないのは、矢野議員や春日議員の質問と稻葉法相の答弁が、この治安維持法を前提とした暗黒裁判の判決を絶対化しようとしている点であります。
日本共産党は、国民に甚大な災厄をもたらすこの暗黒弾圧政治と侵略戦争に反対し、主権在民の民主主義と平和を主張して不屈に闘ったただ一つの政党であります。このわが党を破壊するために、特高警察は特に激しい弾圧をわが党に加え、スパイ挑発者を使って共産党の検挙を手引きするだけでなく、党の方針をねじ曲げ、銀行強盗などの反社会的犯罪行為まで組織したのであります。わが党の宮本現委員長は、日本共産党の指導者として、この弾圧政治とスパイ挑発政策と闘ったのであります。ところが、当時の特高警察は、この闘いの過程でスパイの調査中に生じた不幸な事態を利用して、党内派閥の指導権争いによるリンチ殺人などと称し、大宣伝をしたのであります。これに対して宮本氏は、自分の公判で全面的な科学的反論を行い、指導権争いだの、殺人だの、計画的なリンチだのというのが虚構にすぎないことを具体的に明らかにしたのであります。判決が外傷性ショック死としていることに対しても、今日の専門家による詳細な否定的批判も発表されております。
しかしながら、当時の裁判所は、さすがに殺人、殺人未遂という筋書きをそのまま認定し得なかったが、宮本氏の主張にほとんど質問も反論も行わず、遺体の鑑定人を含め証人喚問を全部却下するなど、それだけでも今日の刑事訴訟では判決が破棄されるような暗黒裁判によって一方的に有罪としたのであります。それは、治安維持法によって日本共産党の活動自体を重罪とする前提に立って、スパイ挑発者を調べる党活動自体をも犯罪視し、その過程で生じた事態をすべて党活動による犯罪とみなして、治安維持法違反と一体のものとして、さまざまの刑法上の罪名をも付加したものであります。法律的には観念的競合とし、宮本氏は治安維持法に基づいて、まさに非転向のゆえに無期懲役を科せられたのであります。
故宮澤俊義氏が言うように、「戦前の特高時代の裁判はどこまでが本当かわからない、これを正しいという立場で取り上げるのは適当ではない」というのが現憲法を尊重する者の当然の見地であります。この裁判の当事者である宮本氏や日本共産党が判決を批判するのもきわめて当然であります。この点で、判決の言うごとき犯罪事実があったと見るのが常識などという稻葉法相の答弁や、わが党が治安維持法裁判の判決を批判することがいけないという春日議員らの質問は、治安維持法をもとにした判決を絶対化するものであって、現憲法の精神に反するものであります。(拍手)
次に、戦後の日本の民主化の過程と宮本氏の釈放、復権の問題についても触れておきます。
戦争終了時にわが国が受諾したポツダム宣言は、戦争犯罪人の処罰などととも一に、言論、宗教、思想の自由など基本的人権の尊重を高らかにうたっています。これは、民主主義の一かけらも認められなかった戦前の暗黒政治を清算し、平和と民主主義の日本を再建するための土台となったものであり、現憲法の出発点ともなったものであります。政治犯として投獄されていた宮本顕治氏が、このポツダム宣言に基づく昭和二十年十月四日付覚書、同年十二月二十九日付勅令第七月三十号によって釈放、復権されたのは、民主主義を是とするならば全く当然であります。
宮本顕治氏の釈放について、稻葉法相は、病気を理由とした執行停止であって、政治犯としての釈放ではなかったかのように説明していますが、これは驚くべき詭弁であります。敗戦直後釈放された政治犯が、すべて執行停止の手続で出所しており、政治犯として釈放された者がすべて勅令七百三十号で復権すべきことは、連合国司令部の覚書に明記されたとおりであります。稻葉法相は、勅令第七百三十号第一条の本文の、「刑ノ言渡ヲ受ケザリシモノト看做ス」という規定について、一般の恩赦法と同様のもので、復権までの判決や刑の執行が有効だったとしています。しかし、「受ケザリシモノト看做ス」という、過去にさかのぼって否定するこの文言は、勅令第七百三十号に特有で、恩赦法にはないものであります。これは、治安維持法によって国民を検挙、投獄した者の責任の法的追及や国家賠償まではしないが、過去の治安維持法裁判の判決や刑の執行を有効として済ますことはできず、事実上、国自身が過去の誤りに一定の反省を加えざるを得なかったという当時の政治情勢を反映したものであって、勅令七百三十号は、不徹底ではあるが一定の民主化措置の法令なのであります。戦後の民主化措置に対して当時の政府は無理解と抵抗を示し、特に非転向で闘った宮本顕治氏については極力復権の措置をサボってきました。宮本顕治氏らが「われらは抗議す」と題する文書を発表し、司法当局に抗議したのはそのためであります。
昨日の衆議院本会議において、稻葉法相は、宮本顕治氏の復権が超法規的措置であり、連合軍最高司令部のおかげで助かったなどと言って、あたかも本来行うべきでない不当な措置を連合軍が指示したかのように答弁したが、宮本氏の復権は、ポツダム宣言に基づく民主化措置として当然のものであり、なすべからざることを、ある種の恩恵として、あえて行ったという性質のものでないことは言うまでもありません。もともと、婦人参政権など当時の一連の民主化措置は、すべて明治憲法やそれに基づく旧法令を超えているのであります。「おかげ」などという言葉で、あたかも宮本氏が特別の恩恵を受けたかのような印象を与えようとする稻葉答弁は、宮本氏らの抗議と、連合軍の具体的指示があるまで宮本氏の復権をおくらせてきた日本の司法当局の責任を回避するものであり、戦後の民主化措置の本質を理解しないものであります。
この際、総理にお聞きしたいが、治安維持法廃止などポツダム宣言に基づく戦後の一連の民主化措置は、本来なすべからざるものと考えるか、それとも、人類普遍の原理として基本的人権と民主主義の当然の発展の過程と考えるか、三木総理の明快な答弁を求めるものであります。(拍手)
次に、わが党が治安維持法に基づく暗黒裁判の不当性を国会外で主張しているから、あるいはそれが異常だから、過去の治安維持法裁判事件を国会に持ち出すのだという公明党の矢野議員や民社党の春日議員の主張についてであります。
もともと民社党の幹部たちは、人殺しだの、刑期が終わっていないなどという誹謗、中傷の発言を新聞雑誌などでしきりに繰り返し、公明党も各地の演説会などで同様の個人攻撃を繰り返しております。こうした、それこそ異常な状態に対して、わが党がしかるべき反撃をするのは、むしろ革新政党としての責務でさえあります。わが党のこの当然の反論を云々するのは、治安維持法裁判の判決の絶対化を重ねて示すものにほかなりません。
さらに、国会の外で裁判を批判したり、判決の当否を論じたりすることは、すべての国民に保障された言論の自由に基づく当然の権利に属するところであります。他方、国会において判決の当否を論ずることは全く別の問題であります。国会外での論議を口実としてこれを国会の場に持ち込むことは、国会議員の言論の権威などと称して、国会を事実上再審の場にするものであって、このようなすりかえは絶対に許されないのであります。
春日議員らは自己の質問が違憲ではないとの弁明を試みているが、春日議員らが過去の判決の事実認定が真実かどうかの判断を政府に質問し、国会で審議しようとするものであって、三権分立の原則に反し、違憲という非難を免れることはできないものであります。
また、稻葉法相は、前国会でも、あるときは判決の当否を言う立場にないと答えながら、昨日また、判決の言うごとき事実があったと見るべきだと、判決の当否について行政が一方的認定を行う答弁をしているのは憲法違反を重ねるものであります。
ところで、民社党春日一幸議員は、三月十一日付イギリスの新聞ガーディアン紙で、次のように述べています。「国会は、ロッキード事件でハイジャックされているが、一、二週間もすれば騒ぎは静まる、そうしたら共産党事件を取り上げることができる」と言っているが、この点は、春日議員の一番の執念がどこにあったかを語っているものではありませんか。金権、戦犯、売国の政治と一貫して闘ってきた日本共産党は、このような策謀を断じて黙過し得ないことを、ここに明らかにするものであります。(拍手)
さて次に、私はロッキード問題について質問をいたします。
言うまでもなく、今日のロッキード事件の解明は、わが国民主政治の再生、国民生活の防衛、国の真の独立を守る立場から徹底的に行わなければなりません。昨日、衆議院本会議において、以上の見地から総理のその解明を迫ったわが党金子議員が、この事件は自民党政治と大企業の癒着した金権政治がとめどもなく広がり、アメリカの多国籍企業とまで結びついたものであり、大企業と政界、官界との癒着を断ち切ることが必要であると指摘したのに対し、総理は、金子君は共産党の立場から分析したものであると述べるとともに、政治に金がかかり過ぎることも背景だなどと答弁しました。
しかし、大企業と癒着した金権政治を断ち切ることは、ひとり共産党のみならず、広範な国民の常識であります。現に、総理自身も八月十八日の自民党地方代表者会議の席上、激しいやじの中で、金力万能の政治を一掃する、政・官・財界の癒着の解消を図ると述べたではありませんか。それにもかかわらず、なぜこの点をことさらに避けた後退的答弁を行ったのですか。もし総理が自民党代表者会議での発言に偽りがないとするならば、現職議員の証人喚問や灰色高官の氏名の公表、政治的道義的責任の解明、企業献金の禁止などは、何はばかることなく、堂々と積極的に、総理・総裁の責任と権限においてできることではありませんか。いまや問題は、あれこれの個々の問題でなく、総理の政治的基本姿勢そのものにあるのであります。ロッキード解明に政治生命をかけるとまで言ったあなたが、なぜこれを実行できないのか、その障害はどこにあるのか、この点を明確に答弁されるとともに、この国会でどこまで真相を解明する決意があるのか、具体的に答弁してもらいたいのであります。(拍手)
なおこの際、田中金脈についてもただしておきたいと思います。田中前総理の金脈問題について、三木総理は、田中本人がこれを明らかにし、公表すると国会で答弁しましたが、いまだにこれがなされていません。その後この問題はどうなっているのか、国会における三木総理の発言であるので、伺っておく次第であります。
次に、いま長引く不況のもとで、労働者の失業問題はきわめて深刻になっております。特に五十五歳以上の失業者は一昨年の三倍に達するという状態であります。総理は、雇用情勢も改善傾向にあるなどと言われましたが、あなたには、物価値上がりや貧しい社会保障などによる生活難のために老後も働かなければならない人たちの失業の苦しみが見えないのでしょうか。
政府は、十月一日から高齢者の雇用率を六%以上とする制度を発足させるなどと述べています。しかし、この制度には強制力もなく、もともと高齢者雇用率の低い大企業は冷淡な態度をとっています。五十五歳前後と言えばまだ働き盛りであり、家庭の中心であります。政府は、大企業に対し、雇用率達成計画書を提出させて厳正に実行させ、また定年制を延長させるなど、積極的な指導を行うべきであります。
では最後に、職場における思想、信条を理由とした差別と非人道的な扱いの問題について質問いたします。
憲法は個人の尊重をうたい、第十九条において、思想及び良心の自由は何人も侵してならない基本的人権として保障されることを明らかにしています。ところが、職場の活動家であることを理由に、六名の婦人労働者をガラス張りの小部屋に入れ、他の労働者から隔離し、警備員が始終、胸のネームが曲っている、なぜ笑ったと、いじめ抜いて、終日監視するという、基本的人権を無視した行為が東京の日立製作所武蔵工場で三年間にわたって行われていたという信じがたいことが、労働者の告発によって明らかにされました。このような事実は、決して特殊の例外ではなく、全国各地に発生しているものなのであります。さらに、活動家に対する不当解雇、配転や賃金、資格差別は枚挙にいとまがありません。これは人間の尊厳に対する重大な侵害であり、日本国憲法では絶対に認められるものではありません。このような暴力支配が放置されることは、戦前の暗黒政治のもとにおける労働者の無権利状態をほうふつとさせるものであります。
政府は、こうした事態を速やかに調査し、憲法違反の人権侵害を直ちにやめさせるための措置をとるべきであると思いますが、その意思があるかどうか、明確に答弁を求めるものであります。(拍手)
いま自民党は、ロッキード問題で深刻となるその支配の危機を切り抜けるために、小選挙区制制定の企てを公然と示すなど、一層危険なファシズムヘの道を進もうとしております。日本共産党は、創立以来の不屈の伝統に立って、自由と民主主義、清潔な政治、そして国民本位の政治を実現するために一層奮闘するものであることをここに明らかにして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕