佐藤観樹の発言 (大蔵委員会)

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○佐藤(観)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案に対し賛成、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案に対し反対の立場を明らかにいたしたいと思います。
 まず、現在のわが国の財政の状態は、巨額な赤字公債の発行を余儀なくされ、まさに危機的状況にあると言っても過言ではありません。このことは、政府の発表しました五十二年度財政収支の試算においても明らかであります。すなわち、政府の試算は、前提として三%の税負担の上昇と一・八という高度成長期にもなかった高い税収の弾性値を見込んでさえ、昭和五十五年度には公債残高五十五兆円にも達するのであります。
    〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
政府はこうした危機はすべて昭和四十九年に生じた石油ショックに由来すると申しておりますが、同じ状況下にありながら、西ドイツにおいては、わが国のような財政危機にも著しい物価高にも見舞われずに済んでいるのであります。
 このように見てきますと、今日わが国が置かれている困難な状況は、多分に政府の施策のまずさ、とりわけ税法上優遇されている大企業、資産家に対する不公平の是正に取り組まず、財政欠陥を拡大させていることに起因すると言わざるを得ません。
 しかるに、政府は、今日の状態を反省することもないまま赤字公債を発行し続け、財政危機を叫び、その始末を大増税という国民の犠牲において成し遂げようとしているのであります。
 このように断ずる理由の第一は、不公平税制の是正が一向に進展を見ていないことによるものであります。税制において公平は最大の命題であります。早くから課税負担の公平を損なうものとして世論の指摘を受けている利子配当所得の分離課税選択制度が存続され、今回の改正でわずかに税率が五%引き上げられるにすぎません。政府は、その漸進的改正の理由を、国民に資産運用の指針を急に変えて混乱を与えないようにするためと申しております。しかし、利子所得について見ますと、国民の大部分は所得税法本法の少額預金の利子の非課税制度で十分カバーされる程度の資産しか有していないことば国民の貯蓄統計の示すところであります。また、三五%以上の税率が適用される課税所得金額は八百万円を超える部分であり、このような高額所得を有する階層は納税者のわずか一〇%余にすぎないのであります。このように見ますと、政府の言う国民に混乱を与えるとの「国民」は一部の富裕階級を指すのにすぎないのであり、そのような実態を国民の名をもって覆い隠しているのであります。このような利子所得の分離課税は、インフレと不況により富の偏差がはなはだしくなってきている現在、貧富の格差を一層増大するものであります。このような傾向は配当所得の分離課税についても同様であります。政府は、税法に関する野党の諸提案について、所得税法の特質である税率の超過累進構造を損なうとして指摘するのでありますが、実はそれを大々的に破壊しているのは政府そのものであります。
 次に、不公平の第二として指摘したいのは、著しい企業偏重の優遇措置であります。特別償却、各種準備金など、日本の租税特別措置法の中には世界じゅうの各国で行われている企業優遇税制がすべて含まれていると言われるほどであります。改正したというものの、相変わらず金融保険業の貸倒引当金は実損と全くかけ離れた繰入率が維持されていますし、価格変動準備金の積立率もこのインフレ下にあっても必要のないほどの非常に高い積立率が認められています。そしてこれらの準備金、引当金の膨大な累計が法人税を逃れているのであります。果たしてこのような優遇を政府は中小所得者や国民大衆に関する税制について示しているでありましょうか。否と言わざるを得ないのが実情であります。
 政府は、租税特別措置が採用される場合というのは、たとえ課税の公平が損なわれても、その政策誘導が税制により達成されることにより、重要な意義を見出せる場合としておりますが、果たしてそのような審査が厳密に行われて導入されているのかきわめて疑問であります。政府の答弁でも明らかなように、大多数の政策税制の効果測定は不可能であります。効果の測定しようのないものを導入するのは非常に容易であります。一応それらしい理由があり、関係官庁なりがキャンペーンをすれば名目が成り立つのであります。そして一度導入されれば、効果が測定されないまま長い間存続することになるのであります。このような形で来たからこそ、高度成長時代に多く設けられた制度が低成長時代に入った今日もなお存続せしめられているのであります。そして、一度手に入れた特典は既得権化し、その縮減整理は遅々として進まぬことになるのであります。このことは、政府が全般的に特別措置を見直しているとは言いながら、ここ数年特別措置による減収額が四千億から五千億の間を往来していることにもよくあらわれております。
 このような状況から、企業関係の特別措置については一度全部廃止して見直すといった方法も必要かと思われますが、政府はこれに対して非常に消極的であります。
 最後に、交際費課税について述べたいと思います。
 交際費課税については今回の改正案で資本金割合と損金不算入割合について強化されたのでありますが、国を挙げて財政困難の解消のためそれなりの犠牲が強いられようとしているときに当たり、社会的冗費と目される交際費が二兆円余と増大の一途をたどるのは好ましからざる現象と申さねばなりません。ことに、支出者側の経費として課税の対象外に置かれたものによって利益を享受する者が課税を免れていることを考え、また、下請企業のリベートが交際費にカムフラージュされていることを考えれば、この分野にも公平を乱す要因があると言わざるを得ません。交際費課税のより一層の強化が図られるべきであると考えます。
 以上指摘した点につきましては早急に改善が望まれるのであります。政府が示しますように昭和五十五年度において赤字国債をなくするためには大増税が五十三年度から必要であるとするならば、少なくもまず不公平税制の是正をより積極的に行うべきであります。負担の増加のみが早々とちらつかされているのに税制の公平の保証が確実になされていないのでは、国民は納得しがたいのであります。わが党がただいま提案の理由を説明いたしました法人税法、租税特別措置法、有価証券取引税法の各一部改正案の方がよりこの方向をはっきりさせております。
 以上の観点から、今回の租税特別措要法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案については反対するものであります。
 なお、租税特別措置法による減免税措置それ自体が税制の公平に反するものであることは言うまでもありませんが、不公平税制の是正の観点から見た場合、現行の所得税制に多くの問題があります。
 特に、勤労者の生活費非課税の原則に立った所得税減税の実施の必要なことは、慢性的な物価上昇のもとでは物価調整のためだけからしても欠かせません。その点からして、政府の今回提出の所得税減税案の内容は、その減税規模及び所得控除の引き上げによる減税方式など従来どおりの発想に立つもので、今日の情勢のもとでの減税のあり方としては適切さを欠いております。
 しかし、勤労国民の強い要望を担い野党の一致した要求で来年度三千億円の追加減税の実現を見ることは、一兆円所得税減税の要求からすればその額において六千五百三十億円と決して満足し得るものではありませんが、低所得者層に減税効果の大きい税額控除、すなわち戻し税方式が採用されることは減税方式として一つの前進であり、前向きの評価をするものであります。同時に、今回の措置が今後の不公平税制の是正のための一つの布石となるものであり、このような基本的な立場から、野党の要求で実現した三千億円の税額控除方式による追加減税法と政府提出の所得税法の一部を改正する案をワンセットと考え、本年は賛成するものであることを申し添えて、私の討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 108004629X01419770325_011

発言者: 佐藤観樹

speaker_id: 20147

日付: 1977-03-25

院: 衆議院

会議名: 大蔵委員会