有馬元治の発言 (本会議)
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○有馬元治君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました日ソ漁業暫定協定につきまして、福田総理並びに関係閣僚に質問を行おうとするものであります。
今回の日ソ漁業交渉は、二百海里時代を迎えて、北洋におけるわが国の父祖伝来の漁業権益を守るというきわめて重要な交渉でありました。しかも、二月二十四日付閣僚会議決定で、北方四島周辺に線引きを行うことによって本件交渉に領土問題を絡めてきました結果、交渉はきわめて難渋をきわめ、重苦しい交渉でありました。
今次交渉において、ソ連側がきわめて強硬な態度に出た背景として、巷間、昨年のミグ事件を云々する者がありますが、これはむしろ近視眼的な物の見方で、その根源はもっと深くかつ広いと考えるのであります。
すなわち、近年ソ連外交は、中東、インド亜大陸等で必ずしも順調ではなく、また、対米、対西欧関係におきましても、人権問題、ユーロコミュニズムの台頭、対外債務の累積等、守勢に立たされているのが現況であります。
一たん守勢に立った場合、きわめて強硬な姿勢をとるのはソ連外交の常道であり、わが国に対して領土問題で強硬な姿勢をとったことは、まさにソ連外交の置かれた現況と、このような情勢に対する反応の一環と見ることができるのであります。
このような認識のもとに、政府が漁業と領土は別の次元の問題としてこれを切り離し、純然たる漁業問題として協定の締結を試みた態度は正しいものと考えるのであります。
問題は、このような態度ないし立場が協定の文面に貫かれたかどうかであります。
協定第一条は、直接的ではありませんが、明らかに二月二十四日付閣僚会議を引用しているものと読めるのでありますが、これによってわが国は北方四島周辺の線引きを認め、領土問題について譲歩したことにはならないのでしょうか。
協定第八条は、この協定のいかなる規定も、相互関係における諸問題について、いずれの政府の立場または見解を害するものとみなしてはならないとなっておりますが、この条項によって、第一条の条文にもかかわらず、領土問題に関するわが方の立場は守られていると断言できるものでしょうか、総理の明確な御答弁をお願いいたします。
次に、近年において、ソ連漁船がわが国沿岸で多数操業を行っておる結果、わが国沿岸漁業に漁具、漁網の破損、漁場の汚染等、甚大な被害を与えております。今般わが方が領海法を成立させ領海の幅員を十二海里に拡大したのは、まさにわが国の水産資源と沿岸漁業者の保護を図ったためでございました。
しかるに、協定第二条は、ソ連にわが国十二海里領海内での操業を許さないという点については、はなはだあいまいな規定であります。ソ連は、果たして、わが国十二海里内での操業を断念したのか、もしソ連が、次のソ日協定において十二海里内での操業を要求した場合、いかなる態度、で臨むのか、政府の御見解と御決意のほどをお聞かせ願います。
いまや、世界の漁業秩序は急速に二百海里時代を迎えており、すでに二百海里漁業水域を設定した国は、アメリカ、カナダ、ソ連を初め多数に上り、領海二百海里を設定している国などを合わせますと三十数カ国、さらに、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、パプア・ニューギニアなど、日本の遠洋漁業が深く依存している国々も、近い将来二百海里水域の設定に踏み切ろうとしていることが報じられております。
わが国の総漁獲量約一千万トンのうち、約四割を外国の沖合い二百海里内で漁獲してきたわが国といたしましては、きわめてゆゆしき事態となっております。まさに、わが国漁業は一大転機に立たされていると言っても過言ではございません。
さらに、国民の摂取する動物性たん白質の過半を供給しておる漁業がかかる事態に直面しておりますことは、単に漁業者のみならず、国民の食生活、ひいては国民経済上きわめて大きな問題を提起していると言わざるを得ません。
このような局面に臨んで、外にあっては海外漁場の確保を初め、内にあっては沿岸漁業の振興、加工流通面の合理化等、種々の分野においていかなる政策を講じようとしておられるのか、政府としての基本的考え方とその決意のほどをお伺いいたします。
また、日米漁業交渉に引き続き、二百海里時代の幕あけとも言うべき日ソ漁業交渉は、領土問題という戦後未解決の問題が絡んできわめて難航し、漁獲量については従来実績の三六%減、操業水域についても、従来に比べてきわめて限定されております。
この結果、操業隻数の削減は避けがたいものと思いますが、どの程度の隻数と見込んでおられるのか、また、これに伴い、漁船の乗組員の離職対策も必要となり、さらには北洋水域での漁獲物を原料とする加工業者など関連業者に与える影響も甚大であると考えますが、これらに対する対策はどうなっているのか、減船補償、離職者対策等、政府が講ずべき緊急の施策について御答弁をお願いいたします。
最後に、冒頭にも申しましたように、難渋をきわめ、重苦しい今回の日ソ漁業交渉に際し、三たびモスクワに使いし、この協定を取りまとめられて重任を果たされました鈴木農林大臣に対し、深く敬意を表しますとともに、今月に予定されているソ日協定の締結に当たりましても、粘り強い交渉を期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕