寺前巖の発言 (本会議)

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○寺前巖君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、日ソ漁業暫定協定について質問をいたします。
 この協定は、関係漁民の二カ月に及ぶ休漁など大きな犠牲の中で締結されましたが、率直に言って、その内容は、領土問題やわが国漁業の今日と将来について、国民に大きな疑点と不安を残すものになりました。これは、千島列島をめぐるソ連側の大国主義的な態度に根本があります。同時にそれは、自民党の先輩たち、吉田内閣がサンフランシスコ条約において千島列島を不当にも放棄したことからくる弱みがつくった結果と言わなければならないのであります。
 日ソ交渉に当たり、わが党は、ソ連側に、一、日ソ漁業条約の尊重と漁獲量の急減を強いる措置の中止、二、わが国領海内操業要求の撤回、三、漁業と領土を正しく切り離すとともに、南北千島列島沖合いでの二百海里線引きの保留を初め、領土問題に関する公開書簡を出すなど、再三にわたり申し入れの措置をとってきました。
 また、わが国政府に対しても、一、領土問題の現状追認をすべきでないこと、二、漁業関係者への万全の補償、三、魚価の値上がりを防止することなどを要求するとともに、領土問題の正しい解決方向を示してきたのであります。
 そこで、まず第一にお尋ねしたいのは、本協定と深く関連する領土の問題についてであります。
 千島列島周辺水域について、協定第一条ではソ連側の二百海里線引きのみが認められ、第五、六、七の各条項で拿捕権などソ連の主権的権利が明記されております。
 政府は、第八条によって相互に関係する諸問題について、いずれの政府の立場または見解を害するものではないとしておりますが、この条項が政府の言うように、いわゆる北方領土の領有権主張は害されなかった、ソ連による千島領有の現状を追認しなかったとする根拠は一体どこにあるのでしょう。この点の明確な解明のないままで、ソ日協定、長期協定に進んでいくとすれば、国民はますます不安を持たざるを得ないのでありますが、総理並びに農林大臣のしかとした答弁を求めるものであります。
 さらに、交渉のさなかに出されたソ連政府に対する総理書簡はどういう内容であったのか、あわせて明快な答弁をいただきたいのであります。
 また、この際、私は千島問題について伺います。
 一九五六年の日ソ共同宣言で、平和条約締結時に歯舞、色丹両島は日本へ返還すると約束されているのにもかかわらず、日本政府は択捉、国後の南千島との一括返還論を固持しました。またソ連政府も、日米安保条約がある間、米軍基地にされるおそれがあると言っていることが、実際上この約束を実行し得なくさせています。
 しかし、今回の日ソ漁業交渉に見られるように、この問題の解決は緊急の課題となっているのであります。わが党は、ヤルタ協定にいう千島にも含まれず、北海道の一部をなすことが明白なこの二島は、日ソ平和条約を待たずに実現すべきものと考え、ソ連側に対しても公開質問書でこのことを提案しました。日本政府がこの二島には自衛隊、米軍を問わず、軍事基地には絶対提供しないことを明確に保証することは、二島返還を促進する上で必要だと考えますが、総理の見解を求めるものであります。
 さらに、千島列島について言えば、政府の態度ば、わが国の歴史的領土である北千島の放棄を当然としており、日本国民の立場からいって、断じて容認することのできないものであります。対外交渉においても、千島放棄条項をそのままにしておいて、択捉、国後は千島に含まれないと言っても、これは国際的に通用しないものであります。
 一九五一年十月十九日、サ条約国会審議の際、西村外務省条約局長は、条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両島を含むと、明確な答弁を行っています。だからこそ、公正な解決のためには、千島を放棄したサ条約第二条(c)項の廃棄が必要なのであります。
 総理、この千島放棄条項の廃棄を、いまこそ真剣に検討する考えはないのですか、所見を伺います。(拍手)
 第二に、協定第二条では、ソ連のわが国の地先沖合いにおける伝統的操業を継続する権利を認めておりますが、これはソ連の日本領海内操業を容認する余地を残しているものではありませんか。ソ日協定交渉では、きっぱりとこのソ連の不当な要求を拒否するのかどうか、明確に御答弁願います。
 第三は、わが国の操業実績がどれほど尊重されたかという問題であります。
 今回の協定に基づく割り当て量は、昭和五十年のこの水域での百七十万トンの漁獲実績が、六割に抑えられてしまいました。そして、スケトウダラやカニは三八%に、ニシン、サケ・マスに至っては全面禁止となりました。これは、現に存在しているサケ・マス、ニシンの日ソ漁業協定を無視し、毎年更新してきたカニ・ツブ協定や、日本漁民の実績を考慮したものでないことは明らかです。
 しかも、操業区域については、いわば漁場を釣り堀方式とでも言いましょうか、七つに限定し、カムチャッカ周辺のスケトウダラ、貝殻島周辺のコンブは全面締め出しとなってしまいました。
 国連海洋法会議の大筋合意は、慣習的に漁獲を行ったり資源の調査などに努めた国に対しては、経済的混乱を最小限にとどめるよう考慮すると言っているではありませんか。今回の交渉では一体これがどのように協議されたのか。
 農林大臣、国民のために漁獲量や区域設定について追加交渉をするとともに、長期協定においては改善されるよう要望するものであります。明確な答弁を願います。
 第四は、休漁や減船等に対する緊急対策についてであります。
 三月一日以降休漁を余儀なくされている八十一隻のニシン漁などの中小漁業者や、今後サケ・マスを含めて一千五百余に上る減船を余儀なくされる漁業者は、まきに去るも地獄、残るも地獄の事態に追い込まれているのであります。一杯船主に対するくじ引きによる減船の押しつけや、仲間内の共補償などは絶対にやめ、国の責任で措置すべきであります。
 また、漁業労働者の生活と権利を守るため、大手水産会社の不当な便乗解雇を禁止し、適正なローテーションの実施、予備員制度などによって企業の責任で職場確保を行わせ、他産業に就職を希望する労働者については漁業離職者臨時措置法を制定し、国が責任を持って職場の確保と生活補償をするとともに、沿岸漁場の浄化などの自給率を高めるための職種に再配置すべきであります。
 さらに、八百余工場に上る中小水産加工業者や関連業者、労働者に対する損失の補償と救済措置をとることが緊急に必要と考えるが、総理並びに関係大臣の具体的な答弁を求めます。
 第五は、新しい二百海里時代に対応した漁業政策についてであります。
 今日求められているのは沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へというこれまでの遠洋漁業最優先の漁業政策を転換し、沿岸・沖合い漁業を重点に、水産物の基本的自給体制をつくり上げることであります。日本の二百海里水域は世界で第七番目の広さであり、有数の好漁場に恵まれています。
 しかるに、わが国沿岸の浅海水域三千万ヘクタールのうち、漁場として整備されているのはわずか三%にすぎず、また、政府の沿岸漁場整備開発計画では、七年間で整備に適した面積千二百万ヘクタールのわずか一%をこなすにすぎないのであります。これでは百年河清を待つことに等しいのであります。
 いまこそ、この計画を全面的に見直し、七年間で二千億円などと言わずに、一年で二千億円程度の国費を投入して整備開発をすべきではありませんか。
 さらに、生産者価格安定制度の創設、漁港整備の促進などを強力に進め、水産業を国の基幹産業として位置づけるために水産省を設置すべきであると思うが、総理並びに関係大臣の答弁を求めます。
 第六に、私は、この機に便乗した大手水産会社や巨大商社による不当な魚価つり上げの悪徳商法について触れざるを得ません。
 国民の食生活に欠かすことのできない塩ザケ、タラコなどは昨年価格の実に二倍に、また、かまぼこの原料のスケトウダラは産地価格でも一月から三月までの三カ月に実に二・七倍に、一昨年平均の五・一倍に高騰しているのであります。これは大手水産会社の魚転がしの結果であります。
 政府は、魚価は鎮静化しているなどと言っていますが、不当につり上げられた価格が高値安定の傾向を見せ始めただけであります。即刻在庫量や値動きなどを調査するために価格調査官を配置し、買い占め売り惜しみ防止法や国民生活安定緊急措置法を発動すべきであります。
 今日、二百海里時代の幕あけに伴い、新しい海洋秩序と制度を求め、国連海洋法会議でその努力が行われております。にもかかわらず、アメリカは、二百海里漁業水域の一方的設定と他国への押しつけを行い、今日のように世界各国に混乱した事態をつくり出してきているのであります。これは新たに海洋資源の帝国主義的専有を意図する海洋分割行為と言わねばなりません。海洋資源の全人類的な有効利用を目指す真に公正な海洋国際管理制度が将来に展望される今日、このような大国主義的態度こそ強く批判されねばなりません。
 同時に、状況対応型と言われるわが国政府の外交姿勢も批判されねばなりません。
 わが党の提起した乱獲規制を前提とした北洋海域の共同管理方式の実現を図ることなど、新しい時代に対応した施策を進めることが今日強く求められているのであります。
 総理並びに関係大臣の答弁を求めて、私のを終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕

発言情報

speech_id: 108005254X03219770603_025

発言者: 寺前巖

speaker_id: 9886

日付: 1977-06-03

院: 衆議院

会議名: 本会議