細谷治嘉の発言 (本会議)
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○細谷治嘉君 いま、国民は、不況とインフレから一日も早く抜け出したいと熱望しております。
福田総理は、かつて石油ショックと狂乱物価が日本国じゅうを覆っていたとき、日本経済は全治三年の重病であると診断したのでありますが、あれから三年以上過ぎたにもかかわらず、いまだにその出口を見出すことができず、八甲田山の雪中行軍のごとくさまよい続けております。(拍手)他方、国際経済の場では、世界の三つのエンジンの一つと自認しながら、経常収支の大幅黒字などから、失業輸出国日本と、厳しい批判と追及を諸外国から受けているのであります。総理が所信表明演説で述べたように、確かにわが国の目指すべきものは生きがいのある日本経済の建設と世界人類への貢献であり、そのため斬新な構想のもとに、新しい創造と取り組むべき重要なときであります。
私は、この認識と視点に立って、日本社会党を代表いたしまして、五十三年度予算編成を展望しつつ、補正予算を中心に内政問題に重点を置いて、以下、若干の質問を展開してみたいと思います。(拍手)
まず第一の問題点は、五十二年度予算とその背景となった経済の見通しが、現実との間に大きな乖離を生んでいることであります。
総理は、本年一月三十一日の施政方針演説において、「五十二年度予算においても、需要喚起の効果もあり、国民生活の充実向上と経済社会の基盤整備に役立つ公共事業等に重点を置くと同時に、雇用安定のための施策を充実することにいたしました。これによりわが国経済には六・七%前後の成長が期待されますが、この目標は先進工業国の中でも最も高い水準であり、国際社会におけるわが国経済への期待にこたえるものと考えます。」と述べたのであります。それから今日まで満八カ月以上が経過いたしましたが、現実は大きく食い違っております。だからこそ九月三日の総合経済対策の閣議決定を生み、今回の補正予算となったことは明白であります。
私が特に指摘いたしたい点は、実質成長率六・七%を守るため、従来同様の公共事業重点、地方財政、個人負担強化の手法を取り続け、何ら斬新な構想も新しい創造も見られない点と、国際社会への貢献という美名のもとで輸出に重点を置き、当初の経常収支七億ドルの赤字を今回六十五億ドルの黒字と驚くべき修正を行ったことであります。
本年度の国際経済を見ますと、OPEC諸国の黒字四百億ドル、日本の黒字約八十億ドルと見積もられ、経済的混乱はやがて政治的混乱に発展し、世界の安定と平和そのものを脅かす事態となることが憂慮されているのであります。
現に、過般のIMF、世界銀行の総会でブルメンソール米財務長官は、ことしの日本の経常収支の黒字は九十ないし百億ドル、貿易収支は百五十億ドルに上ると見通すとともに、「こうした膨大な黒字は国際的な調整過程を困難にするものであり、重大な懸念を抱いており、日本の黒字が早急に減らない限り、対米輸出に対する圧力は高まり、保護主義を正当化することになる」と強い調子で警告を発しており、また、ヒーリー英蔵相は、「日独の景気刺激策を歓迎するが、遅きに失した。黒字国は輸入を拡大し、輸出依存をやめてほしい。強い国の黒字縮小が進まないと弱い国は輸入制限措置をとりかねない」と強く批判しておるではありませんか。とりわけ私たちは、西ドイツに比し対日批判がはるかに強かった点に注目しなければなりません。
経済企画庁は、昨年度の成長率五・八%のうち、内需四・一%、輸出一・七%で、輸出重点であったが、今年度の六・七%は、内需六%、輸出〇・七%で、国内主導型拡大になるはずと言っていますが、総理の所信表明では「国際社会の一員として対外調整を図るための努力が必要と考えられる情勢にあります。」と述べただけで、春以来の見通しの誤りについては一片の反省の弁すらないことは、無責任の一語に尽きると思うのであります。(拍手)
さらに、総理が述べているように、果たしてわが国経済は緩やかな拡大基調にあるのでしょうか。企画庁発表の景気動向指数は、五月以降五〇%ラインを下回り、七月には二〇%に落ち込み、GNPの四—六月は前期比一・九%と全く逆の方向を示しております。GNP重点主義の誤りを示し、景気の深刻さを証明するものと考えなければなりません。総理の確たる答弁を願いたいのであります。
第二は雇用の問題であります。この点に関してはすでに高沢君の質問がありましたので、私は、別の側面から論及してみたいと思います。
総理は、経済対策の中でも特に重視しているものは雇用問題であるとし、「若年労働者にその能力を発揮せしめ、中高年齢層に対し、再就職の機会を与え、いやしくも雇用不安を生ずることがないよう雇用安定資金制度を積極的に活用し、職業訓練を機動的に実施します。とりわけ構造的な問題を抱えた不況業種の離職者に対し、周到な対策を講じます。」と結構な言葉でつづっているのでありますが、実態は安易なものでなく、総理の認識不足を物語っております。一体全体、今度の補正でどれほどの雇用機会が確保されるのか、まず具体的に明らかにしていただきたいのであります。
政府は公共事業の上期七三%の前倒しを推進した結果、八月末の契約率は前年同月の五八・八%を上回り六五・三%、また地方執行の公共事業は五八・五%と順調に推移してきた模様でありますが、全体としてなお停滞色に覆われており、地方経済に暗い影を落としておるのであります。
八月の有効求人倍率は〇・五三と前月をわずか上回っておりますが、たとえば神戸市のそれは〇・三五まで下がり、京都府では、来春中卒予定者に対する求人者数は、七月末現在で前年同月比二六・九%の減少で、かつての金の卵ではないのであり、特に中高年齢者の場合は深刻であります。加えて、繊維、平電炉、造船など、不況業種を抱えた地区は景気回復の足取りは見られないのであります。しかも、新幹線型と言われる景気情勢で、公共事業の発注額は、四—六月、全国で一二・一%、近畿〇・八%、九州ではマイナスの伸びであり、追加公共事業は、全国各地域の景気実態に即応し、財源措置も含めた配分、執行が要望されておるのであります。加えて、深刻な雇用情勢に対応し、政府は、責任ある政策を進め、必要に応じ雇用対策臨時立法をも考慮すべきであります。
九月二十八日、通産省は、危機に直面する石油化学業界を救済のため、ナフサ輸入枠を当初計画より百五十万キロリッター拡大し、九百万キロリッターとする方針を固め、また息切れ倒産防止の緊急策として、水産かん詰め、ゴム製履物など二十三業種の追加指定をし、中小企業連鎖倒産防止共済制度の立法化等の対策を進めているようでありますが、果たしてこれで総理の言う周到な対応ができるでありましょうか。御所見を伺いたいのであります。
申すまでもなく、雇用機会を継続的に創出していくためには、新しい需要を掘り起こし、国民のニーズに即応し、国際関係などを考慮した新しい産業構造と深い関係があることは申し上げるまでもありません。
産業構造を考える場合、わが国にとってきわめて重要な基本問題が資源エネルギーであることは言をまちません。エネルギーは、長期的課題であると同時に、当面の問題でもあります。政府は、石油代替エネルギーの重要な柱として原子力発電に力点を置き、核燃料サイクルの確立などを推進していますが、安全性、稼働率の極端な低下によるコスト高など、技術的、経済的に多くの難問題を残しております。したがいまして、当面は省エネルギー、サンシャイン計画を推進するとともに、国内唯一のエネルギー資源である石炭の確保を前提に、外国炭の活用等、強力な政策が大切だと信ずる次第でありますが、総理の所信を伺いたいのであります。
第三は、行政改革であります。
今年二月、総理は、内閣記者会との懇談で、夏までには行政改革の成案を得て来年度予算に盛り込みたいとの決意を表明し、八月二十日には、「省庁統廃合を中心に行政改革を断行したい」と言明いたしましたが、八月末に閣議決定を見た行政改革大綱を見ますと、初めの積極姿勢は完全に消えうせ、具体性のないものに後退してしまいました。総理の決意と指導力が問われているゆえんであります。
総理は、「新しい時代への転換期に当たって、政府みずからも率先して各機関における冗費節約と能率的な行政の遂行に努め、中央、地方を通じ行財政の積極的な改革を行うことは当然で、今後、関係法律案を逐次国会に提出する考えだ」と言明しておりますが、大山鳴動ネズミ一匹の感がいたすのであります。
過般の政府主催の全国知事会議で、奥田知事会会長が、「今回の行革に際しては、国の地方出先機関の整理、許認可事務の合理化、補助金制度の改善、地方事務官制度の廃止などについても抜本的改革を断行してほしい」と要望したのに対し、政府答弁は何ら具体性がなかったと報ぜられております。
かつて、私は、総理が行管長官の職にあったとき、「地方事務官制度の改廃なくして行政改革はない」と断言されたことを思い出し、「別途検討する」と述べられたことに対し、さびしさを感じたのであります。
私は、総理の行政改革に対する基本認識に重大な欠陥があると思うのであります。そもそも行政は国民生活と不即不離のものであり、わが国経済社会の発展に即応して、機能的に対応できる組織と運営でなければなりません。三十年代以降、国の経済は寡占化、独占化の傾向を進め、行政もまた中央集権化を進めてきたのでありますが、いまや、福祉国家建設を国是とする以上、中央と地方との任務、責任を明確にすべきときであります。行政改革は、単なる機構いじり、安上がり、省庁間のなわ張り争い、いわんや権力者の政治宣伝では断じて済ますことができないのであります。(拍手)
以上について、総理の決意を承りたいのであります。
第四は、来年度税制改正を中心に、あわせて地方財政の問題について質問をいたします。
すでに一般消費税については高沢君の質問がありましたが、私もまた、税制改正の方向は当面不公平税制の抜本的改革がすべてであり、逆進性の著しく高い一般消費税には絶対に反対するものであります。(拍手)
ところで、新聞の報ずるところによれば、坊大蔵大臣は二十七日、ワシントンでの記者会見で、一、中期税制の答申を受け、経済情勢と突き合わせて、来年度の税制計画について考えてみたい、二、健全財政を打ち立てるために増税を避けることはできない、三、直接税だけでは税率引き上げが高過ぎる、消費税だけでは新税のウエートがかかり過ぎる、どう配分していくかは、国会の場で国民の選択を願いたいと述べ、来年度一般消費税の創設を示唆したと伝えられております。
一方、福田首相は、三十日の国民生活審議会総会において、景気と物価の現状を見れば、すぐやるということではなく、慎重に対処したいと述べ、両者の間に意見の差があるようであります。問題が重要なだけに、まず真意を伺っておく次第であります。
次に、この一般消費税と地方財政との関連であります。
一昨四日、税制調査会の答申は、具体的対処の方向として、(イ)国税において新税を創設するに際し、その一部を売上高、従業員割その他適切な基準により都道府県に配分する方向、(ロ)地方財源として配分される新税のうち地方税とされる部分については、事業税の一部にこれを加えることとし、現行の所得課税方式と併用する方法の二案が併記され、市町村の税源充実の必要性などを含めて、新税導入時までに最終的な結論を得ることとされております。
そこで、お伺いいたしたい点は、仮に一般消費税が創設された場合、いずれをとるべきかであります。私は、地方自主財源充実の観点から、後者を採用すべきであり、また、現行制度のたてまえから、国税部分は地方交付税の算定基礎に加えるべきであると思うものであります。総理初め関係大臣の率直な考えを伺いたいのであります。
さらに、全国知事会は、財政収入の安定化を図るため、法人事業税の性格に基づき、昨年十二月、外形課税を導入することを決意し、激変を避けるため、いわゆる所得、外形課税の折半方式を決定し、五十三年度から全国一斉に実施する方針を決めています。
事業税は、都道府県税収の四割程度を占める重要な税目であります。しかるに、税調答申は、一般消費税の実現と同時に、現行の外形課税の道を閉ざす意図があることは明白であります。これは事業税の生い立ちと性格を忘れ、地方の課税自主権を侵害するものと断ぜざるを得ないのであります。しかと関係大臣の見解を承りたいのであります。
ここで、私は、五十三年度地方交付税について伺っておきたいのであります。
今回の補正で地方交付税額は九百六十億円削減され、借入金で穴埋めされております。周知のように、地方財政は、ここ三年続けて大きな財源不足に見舞われたのでありますが、いずれも緊急避難の名で、主として借入金で措置されてまいりました。いまや地方交付税法第六条の三第二項は完全に死文化し、法違反がまかり通っております。来年度もまた二兆円前後の財源不足が見込まれております。制度を改正するか、交付税率を引き上げる以外に道はないのであります。総理及び関係大臣の確たる見解を伺いたいのであります。(拍手)
次に、土地課税緩和の動きであります。
総理は、過般、土地政策の見直し、特に土地譲渡益重課税、特別土地保有税の軽減、市街化調整区域の見直しを指示したと伝えられております。狂乱物価の際、土地を買いあさった企業の救済だとも言われております。
かつて、宅地供給を促進するという名で土地譲渡税の軽減が行われ、その結果、地価はかえって上昇し、地主だけが暴利を得たことは記憶に新しいところであります。いま再び地価高騰の兆しが見えるとき、二度と過去の失敗を繰り返すべきではありません。総理の明快なお答えを得たいのであります。
なお、この際、住宅政策の基本について簡単にお伺いいたします。
今回の補正による十万戸の融資住宅は、景気対策の大きな柱となっておりますが、現在、ミニ開発の問題、あるいは狭小劣悪な住宅に住み、所得の三割以上の家賃を支払う低所得者が三百万世帯もいることを忘れてはなりません。近年、公営住宅、公団住宅の計画と実績は、いずれも後退を続けております。私は、住宅政策の柱は公共住宅、特に公営住宅に置くべきだと思いますが、総理、いかがでございますか、改めてお答えを願いたいのであります。
第五は、三全総に関してであります。
今年八月二十五日、国土庁は試案を発表いたしました。試案は、従来の失敗にかんがみ、地方公共団体と住民の意向をしんしゃくし、生活、環境にウエートを置いた下からの計画方式をとり、その限りにおいては賛成でありますが、定住構想の裏づけとすべき産業構造政策等がほとんど欠如し、絵にかいたもちの感がいたすのであります。とりわけ、今後十年間、公共投資二百四十兆円と見込まれていますが、「地方財源の確保、安定について適切な措置を講ずる」とされ、全く具体性を欠いておるのであります。地方財政の実態はすでに述べたとおりであり、また、自治省の地方財政長期見通しによれば、租税負担率を三%引き上げた場合でも、昭和六十年度には十三兆円の公共投資額が不足するとされていますが、自治大臣としていかがお考えでしょうか。
また、二次全総計画にのっとって進められた苫小牧東部や、むつ小川原の大規模工業基地開発では、笛吹けど企業の誘致は行われず、その推進体である第三セクターは莫大な借金で利子も支払えず、破産寸前と言われております。試案の段階だと逃げないで、過去の失敗を繰り返さないよう、慎重な配慮と実現可能な具体的計画の作成を望んでやまないのであります。(拍手)
最後に、総理の所信表明では一言も触れられていない点、まことに遺憾に存ずるのでありますが、過般の北海道有珠山噴火は、予測し得ない異常かつかつて類を見ない甚大な被害を生じておるのであります。私は、心からお見舞い申し上げると同時に、その対策として、政府は現行法を最大限に活用するとともに、特別立法をもってきめ細かい救済対策を講ずべきであることを強く要請いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕