古田精司の発言 (予算委員会公聴会)

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○古田公述人 慶応義塾大学の古田でございます。
 昭和五十三年度予算案と日本経済の現状、それに五十二年度予算案と租税政策、この二点にしぼりまして、簡単に私の公述人としての責を果たしたいと考えております。
 まず、いわゆる一〇%高度成長から六−七%の安定成長路線へというスムーズな転換が可能かどうかという問題を考えますと、答えは、スムーズな転換は困難ではないか、したがって現在は過渡期ではないか、そういうふうに考えられます。
 その理由でございますが、御承知の昭和五十年代前期経済計画の描く構想ですと六−七%の安定成長路線を考えているわけですが、計画では、民間設備投資の伸び率が七%、消費が五%強となっております。これはいずれも実質でございます。それに対して高度成長期には、民間設備投資の伸び率がほぼ一五%でございます。それから消費は九%弱でございます。これはいずれも実質でございます。ところが、現状では民間設備投資の伸び率は、これは推測でございますが三%程度、消費も一一%程度、これはいずれも名目でございます。いずれにしましても、消費と投資の足並みというのはふぞろいでございまして、明らかに逆転いたしているわけでございます。
 そうしますと、いわゆる高度成長期におきまして設備投資主導型あるいは鉄などの基礎資材産業とか一般機械産業主導型の成長パターンから、安定成長期へどのように転換するかというときに、私の考えでは、低下した操業度をどうやって引き上げるか、これが先決ではないかと考えます。この課題が達成されたときに現在の過渡期が終了したのだというふうに考えております。
 そうしますと、過渡期の中の五十三年度予算案はどうあるべきか。まず手がかりといたしまして、政府が発表された経済見通しがございます。五つの政策目標がそこでは挙がっております。第一番目、これは皆様先刻御承知のことでございますが、内需の振興、第二に雇用の安定、第三に対外均衡の回復、そして第四に消費者物価の安定、そして第五番目に、これは中長期政策目標と申しますか、資源エネルギーの安定供給の確保、この五つが挙げられております。
 私の理解では、これらが日本経済が直面する課題に違いないというふうに理解しておりますが、そういたしますと、問題は、このような目標を達成するためにどのような政策手段をとるべきか。ここでは一般会計に限定して申し上げますと、第一と第二の政策目標、内需の振興、雇用の安定に対しては、今年度の一般会計の予算規模は前年度対比で申しますと二〇・三%増となっております。その点評価できるのではないかと考えております。ただ、いわゆる公共投資主導型の予算ということで、減税よりも確かに乗数効果が大である、かつまた確実であるということはそのとおりなんですが、内需の誘発効果という点では、大型公共投資事業、これが乏しいという現状を考え合わせますと、民間投資への波及効果は高くないのではないか。私の考えでは、内需を誘発するためには教育なり住宅なり医療などの社会福祉的な事業を重点的にむしろ拡大しまして、一方では内需の誘発を図り、そして他方では、消費者の将来に対するリスク予想、これを解消させることによりまして、現在問題になっておりますところの貯蓄率の引き下げに寄与するのではないか、いわば一石二鳥の役割りを果たすのではないか、そのように考えております。
 第二の論点といたしまして、租税政策につきまして簡単に申し上げます。
 第一に、今年度の租税印紙収入の予算額は二十一兆四千五百億円でございます。しかし、昨年度の見積もりですと当初予算額は十八兆二千四百億円でありましたが、補正後の予算額では十七兆一千三百四十億円に低下いたしております。その点、租税見積もりという点で、これは景気調整との絡み合いになりますが、果たして万全を期しておられるのかどうか、この点少し気がかりになっている点がございます。
 しかし、第二の点として、税制改正の面で租税特別措置がかなり今年度は整理合理化に向かっておりまして、平年度で四百九十億円増収見込みとなっております。この点が評価できるのではないかと考えております。その理由ですが、特別措置につきまして私どもは、それがもたらす非能率とそれから不公平といった、いわばこれはコストでございます。それともう一つは租税特別措置が国民一般の目につきにくいという、この二点を考慮しますと、租税特別措置よりもむしろ補助金の方がベターであるというふうに考えております。したがいまして、昭和五十五年度に租税特別措置の多くが期限切れになりますけれども、その際、厳密なテストを行っていただきたいと考えております。
 その基準は三つほどございます。第一は、特別措置が真に公共目的にかなっているのかどうか、これが第一番目でございます。第二は、特別措置がもたらす公共利益がコストと比べてそれを上回っているのかどうか、これが二番目の基準でございます。三番目は、特別措置が同一の公共目的を達成する場合に、他の措置に比べてまさっているのか、最善の措置なのかどうか、この点の検討をお願いしたいと考えております。
 個々の税金について申し上げますと、まず所得税ですが、この所得税につきまして、いわゆる三大不公平税制と言われております利子配当所得、医師所得、土地譲渡所得に対する課税上の優遇措置がございますが、これはいま申し上げましたようなテストがまず要求されるのじゃないか。株式の譲渡所得の課税、これも同様に考えております。
 それで、あり方としましては、やはり総合所得課税の理念を生かす方向に持っていくべきではないか。換言いたしますと、課税ベースを拡大いたします。そして税率はそれに合わせて調整する。もし税収を一定といたしますと、税率を引き下げる方が望ましいと考えております。
 特に、所得税に関連しまして、資産所得課税方式の再検討がここで必要なのではないか。特に高額所得者の租税回避のためのいろいろな抜け穴がございます。これをできるだけ除去する方向に努めていただきたい。例を挙げますと無記名預金とかあるいは無記名債券、これはできるだけ認めるべきではないのではないか、そういうふうに考えております。
 要するに、所得税につきましては、ここで強調するまでもございませんが、一つには公平、いま一つには効率、つまり勤労意欲とか貯蓄意欲、投資意欲を阻害することの少ないようなそういう所得税体系の整備を図る余地がまだまだ残されているというふうに考えております。
 次に、法人税につきましてですが、五十三年度予算案では法人税にかかわる特別措置の合理化が進んでいる点、評価できると考えられます。特に法人税にかかわる租税特別措置の整理は、一方では財源確保という点に寄与いたしますが、もう一つは、企業間の競争条件の障害を排除するという点で、やはり一石二鳥と考えられるのではないか。ここでは法人税制の基本的あり方について触れる余裕もございませんので、ただ、シャウプ税制をもう一度見直していただきたい。私の考えでは、できればシャウプ税制に戻ることが望ましいのではないかというふうに考えております。
 最後に、消費税につきまして、租税政策の基本方針といたしまして戦後一貫してとられてまいりました直接税中心主義を維持するということ、これについて私は異論を持ち合わせておりません。ただ、現在の個別消費税制度は見直すべきではないか。現状では一般消費税への移行は確かに困難かとは思いますが、物品税につきまして申しますと、物品税の課税範囲を拡大いたしまして、そして税率の調整はできるのではないか。
 この考え方は、ガルブレイスが申します社会的アンバランスの回復という点で、アメリカと同様に日本でも私的財が豊かでございます。そういう点でわれわれの社会も豊かな社会になっていると思いますが、しかし公共財の面ではやはり貧弱なのではないか、そういたしますと、この社会的アンバランスを回復する手段として消費税を活用するということがもっと考えられてよろしいのではないか。要するに、租税の選択とそれから運用に関しまして、それを財源といたしまして政府支出がどのように使われるか、これに依存するということもお考え合わせいただきたいというふうに考えております。
 細かい点は、かなり省略いたしましたので、御理解しにくかった点が多々あったかと思いますが、公述人としてのお話はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 古田精司

speaker_id: 22273

日付: 1978-02-10

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会