山崎竜男の発言 (本会議)

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○山崎竜男君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、政治姿勢のあるべき姿を初め、当面する内政、外交の重要課題にしぼって総理大臣に質問したいと存じます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 総理の著書「私の履歴書」によりますと、大平総理は、讃岐の農家の生まれで、小さいころから野良仕事に駆り出され、田植え、草取り、稲刈りはもとより、牛馬の世話に加えて副業の真田編みに追われ通しの毎日であったということです。私が少なからぬ感動を覚えましたのは、サトウキビを栽培して白下糖をつくる大平少年の思い出であります。「四斗樽につめられて固い結晶になるころ、町から商人が天秤棒をかついで買取りにくる。天秤棒は正直であるが、商人はかならずしも正直とはいえなかった。たくみに分銅をごまかして平然と重量を告げる。そのずるいやり方に対して、居合わせた大人たちはだれ一人なんの抗議もしない。幼い私には、それがとてもくやしかった。」とあります。為政者にとって最も大切なことは、このように不正を憎み、権力におぼれてはならないということであります。国民とともに歩んで、その痛みをともに分かち、どんな場合でも公正さを貫くことであります。華やかだった超高度成長の夢が去り、堅実だが控え目な経済政策への切りかえに伴って、分配が乏しくなればなるほど社会における公正さはより厳格に求められるようになります。それが政治に対して従来にも増して強く要求され、政治の要諦となるのは当然の帰結であります。
 大平総理の少年時代を語るエピソードは、力による支配を排し、何事にも公正であることをとうとぶ精神の重さを伝えています。その人が、今日、内閣総理大臣として、とりわけ総選挙に訴えてみずからの信を問うに当たり、信念とする政治理念とそれを支える政治姿勢のあるべき姿についてあなたは改めて国民の皆さんに語りかけるべきではないでしょうか。
 さて、総理、あなたは所信表明演説の中で曲がり角という時代認識を示しておられます。これは政治経済から文化に至るさまざまな分野で質的転換が強いられているいまの時代認識をあらわしたものと理解しますが、総理が曲がり角と言うのであれば、その先をどのように見通して八〇年代に向けてどんな国づくりを目指しているのか、まず最初にその指針を伺いたいと存じます。
 恐らく、総理に曲がり角と言わせた最大の根拠は、エネルギー情勢の根本的な改革をベースとした認識でありましょう。石油を中心とするエネルギーが極度に制限され、原油価格の値上げは天井知らずという今日の世界的な事態は、産業革命以来の近代文明がようやく行き詰まった深刻な姿と言えます。このことが象徴的に表現されたのがさきの東京サミットで、東京サミットがまさに石油サミットと呼ばれて世界の注目を集めたゆえんのものであります。今回の東京サミットは、従来の政治ショー的な先進国首脳による会談ではなく、第二次石油危機を背景にして各国首脳が懸命の話し合いによって合意点を見出しました。これは、石油をめぐる新たな国際協調、秩序の確立の上から、まことに意義深かったと言えましょう。特に、主要先進工業諸国が自発的に一九八五年までの石油輸入目標を具体的に設定したことは、東京サミットがエネルギー政策について歴史的な成果をおさめたことを物語っております。わが国の歴史に新たな一ページを飾る超弩級の国際会議を成功裏に導いた大平総理の献身的な努力を私は高く評価いたします。
 しかしながら、大事なことは、約束事を取り決めることではなくて、これをいかに実行するかであります。今後ともわが国の経済が安定成長路線に乗り、六%程度の成長を目指していくにしても、エネルギーなしにはこの成長を維持することはできません。多くの国民の最小限度の要求は、現在の家庭生活の水準を守ってまず生活を安定させ、将来にわたり徐々に充実させていくことであります。こうしたささやかな国民の願いも、エネルギーの安定供給の保証がなくてはかなえられるはずがありません。総理の主張する家庭基盤の充実と潤いのある生活設計の夢はもろくも崩れざるを得ないのであります。
 今日、わが国の農業は油づけ農業と言われております。石油で育つ野菜や果物の温室栽培面積はいまや世界一になっています。狭い耕地で安定収益を図り、食生活の多様化に対応する農業のあり方として当然の姿でありますが、今後の油不足の状況いかんによっては石油に依存した農業が打撃を受けないとも限りません。このことは、ひとり農業だけでなく、漁業もまた例外ではありません。幸いいまは適度の供給によって需給のバランスが保たれていますが、構造的な石油不足時代が到来してきている中で政府は今後の石油輸入の確保についてどのような見通しと対策を持っているか、見解を承りたいと存じます。
 エネルギー対策の第一は、省エネルギー政策の推進であります。
 政府は、IEAの申し合わせや東京サミットの精神に基づいて、石油消費の節約を達成するため、三月以降省エネルギー運動を展開しているようでありますが、江崎通産大臣の省エネルックばかりが目立って、その割りには効果が上がったという報告を聞かされておりません。エネルギー危機に対する国民や産業界の受けとめ方にもいま一つ緊張感を欠いた印象を受けますが、これでよいのでしょうか。省エネルギー政策の根本は、エネルギー制約時代に見合った産業構造への切りかえを柱に、省エネ製品の開発、企業や家庭、学校での省エネ教育の徹底などによる生活様式と生活意識の転換にあります。これは省エネ時代の文化のありようを問うきわめて重要な課題であり、二十一世紀における文化の創造につながる文化の質的転換を促すものと考えますが、総理の認識をお聞かせ願いたいと存じます。
 第二は、石油にかわる代替エネルギーの開発と導入を促進する問題であります。
 技術的には、さしあたって石炭液化を中心に石炭の利用を拡大すること、原子力発電施設の増設を柱とする原子力の平和利用を拡充していくこと、LNG——液化天然ガスの開発輸入、長期計画に基づく水力、地熱、太陽エネルギーの再開発と利用などが指摘されています。
 このうち、一つ指摘しておきたいことは、酸素資源を節約しなければならぬ時代が遠からず来るのではないかと思われることです。世界的な森林資源の減少、それに加えて海洋汚染による植物プランクトンの死滅、人口の増加等を考えれば、石油、石炭、ガス等、いずれも酸素を消費するエネルギーを未来永劫使用するということが不可能になる時代が来ないという保証はないと考えられます。その意味でも、酸素を消費しない水力、地熱、風力、波力、太陽熱等、いわゆる脱石油、脱化石エネルギーの利用の開発と、それまでの間の原子力利用ということは、酸素を消費しないエネルギーであるという点で非常に大事なことであると考えられます。政府は、これらの代替エネルギーのホープと目されているものに対してどのような考えを持っているのか。さらに、代替エネルギーによって石油の依存率を八〇年代の終わりまでには七五%から五〇%に引き下げると言っていますが、どうやって実現するのか、所見を承りたいのであります。
 いずれにいたしましても、代替エネルギーの開発推進には莫大な財源が必要であり、このための国民的合意の形成が重要になってまいりました。エネルギー新税構想や道路財源となっている揮発油税の見直し論が伝えられるのもこのためだと思われます。脆弱なわが国のエネルギー基盤に対して将来のエネルギー供給の安定化を図るには、代替エネルギーの研究開発とその実用化の促進に思い切った投資を行うべきだと考えますが、総理はこのエネルギー対策財源の確保についてどのようにお考えでしょうか、承りたいと存じます。
 この問題について財源措置と並んで重要なことは、一つは安全性の問題であり、いま一つは新たな公害発生の懸念とそれに伴う環境対策であります。原子力発電所の建設一つを取り上げてみても、地域住民との信頼関係がなくては何事も進展いたしません。科学技術に裏づけられた完璧なまでの安全性と万全の環境対策を整備して国民の理解と信頼を得るための仕事は政治が分担すべき課題であります。政府はこの分野の認識をいかに厳しくしても厳し過ぎることはないと信じます。
 制約を受けるのは、エネルギーだけではありません。各種の資源、食糧の制約が一層厳しくなることが予想されます。政府は、これらの制約から国民生活を守るため、万全の施策を講ずる必要があります。特に重要なのは食糧問題だと思われます。この際指摘しておきますが、政府は五十五年度、今年度より五〇%も上回る減反を農家に強いる予定であると聞いております。なるほど米の生産過剰は周知の事実でありますが、今年度、品質問格差の導入を図り、農家の実質収入減につながる政策を打ち出した上に、さらに来年度大幅な減反計画を強行されることになります。これは農家の農政不信にさらに拍車をかけることになるばかりでなく、農家の生産意欲を鈍らせ、その生計の基盤すら失わせる可能性のある重大な決定になるおそれさえ予想されます。政府は、農家の収入が実際に減少することのないように十分の配慮をする等、愛情のある慎重な検討を重ねるよう、注意を喚起しておきます。
 次に、財政の再建について伺います。
 わが国の財政が大量の国債に依存してきわめて不健全な形になっていることは周知のとおりであります。歳入の不足を赤字国債で補うという安易な予算編成を繰り返した結果、国債の発行残高は今年度末には五十九兆円にも上るものと予想され、巨額な国債の発行はすでに市場における消化の限界を超えるに至っています。もしこのまま大量の国債依存を放置するならば、遠からずして悪質な財政インフレを招き、産業経済に取り返しのつかない打撃を与え、生活設計を根底から覆し、その損害ははかり知れないものがあります。さらに、インフレは、社会的に恵まれない立場の人々にとりわけ厳しい影響を及ぼし、社会的公正を著しく損なうことにもなりかねません。そうした意味からも、年々拡大の一途をたどる公債に依存するわが国財政を速やかに健全財政へ脱却させるための財政再建は、一日も早く達成されなければなりません。
 財政の建て直しには、まず何よりも現在の歳入、歳出の徹底した見直しが必要だと考えます。歳入面では、現行税制のもとで税負担の公平が徹底して貫かれているか、徴税漏れがあるのではないか、洗い直しをしっかりやる必要があります。一方、歳出面では、健保・米・国鉄のいわゆる三K問題解決への足がかりを含め、財政支出の徹底した合理化と効率化を図ることが財政再建の第一歩であります。政府は、五十五年度予算編成に当たり、財政の再建を目指して既存の歳入、歳出についてどのような見直しを行ってその第一歩を開こうとするのか、見解を伺いたいのであります。
 申すまでもなく、財政再建は、単にインフレ防止という消極的な理由にとどまらず、国民生活を守り、国民のニーズにこたえて適時適切に手を打っていく、みずみずしい対応力を持つための必須条件でもあります。このためには財源の充実が必要でありますが、景気回復の定着による税の自然増収を図ることが先決だと存じます。したがって、景気対策は、物価対策との兼ね合いから極端な追加措置は見送るとしても、引き続き手を抜いてはならない施策の一つであります。
 そこで、総理に伺いたいのは、新たな負担の可否の問題であります。これまで、政治は、とかく目先の利益にとらわれて国民におもね、迎合を繰り返してきたきらいがあります。国民もまた、それになれて安易に政治に依存するという風潮が続いてきたことは否めない事実であります。こうしたことから見ても、政治家ならだれも好きこのんで評判の悪い新たな犠牲を国民に強いるようなことはしたくないはずです。それにもかかわらず、総選挙を前にしたこの時期に、何ゆえ増税と誤解されるような問題提起をするのか、いま一度わかりやすい御回答を求めたいと思います。
 財政再建は、新たな負担をしなければ必ずしも達成できないものとは限りません。歳入、歳出の両面にわたってあらゆる努力を試みた結果、どうしても必要に迫られた場合に、政府もこれこれしかじかの努力をしたがまだ少しお金が足りないので、そこで物は相談だが国民の皆さんの理解をいただける範囲で新たな負担をしていただくことになるかもしれませんというのが総理の真意ではありませんか。改めて明快な答弁を求めます。
 そこで、財政再建に関連して、その踏み絵とも言うべき行政改革について伺いたいと思います。
 就任当初、行政改革に積極的とは言えなかった総理が、肉を切って骨に及ぶ覚悟でやると言うまでになりました。これは、当座の手直しにとどまらず、本格的な簡素で効率的な政府を目指す方針を示したものと受け取れます。自由民主党は、これまで、行政改革の重要性を繰り返し主張し、具体的な提案をしてまいりましたが、最近ようやくこれを受けて厳しい定員管理、定年制の具体化、高齢者給与の抑制、各般にわたる行政事務の整理、特殊法人の整理統合などの改革が進められようとしております。しかし、パーキンソンの法則にもありますように、ほうっておけば膨張する官僚機構にメスを入れることは、当事者の役人だけでなく、与野党の抵抗、反対が必至であり、それだけに万難を排して実行に移す強固なリーダーシップと勇断が要求されます。オリンピック記念青少年総合センター法改正案という特殊法人整理法が二度の通常国会と二度の臨時国会を経ていまだに審議未了となっている実情を見るとき先が思いやられますが、この厄介な問題に真剣に取り組む総理の決意を改めて求めるものであります。
 今日、地方の時代と言われますが、総理の提唱する田園都市構想ともマッチして地方分権が一層徹底され、市町村の自主性を深め、自治能力が高められるのは結構なことと存じます。それと同時に、地方自治体でも、地方公務員の定員管理や定年制、国家公務員をはるかに上回る給与や退職金、さらには後を絶たないやみ給与の支給など、多くの問題が解決されないままになっているのも事実であります。政府は、適正を期すべきこれらの問題に今後いかに対処していくつもりか、伺いたいのであります。
 私は、これまで主としてエネルギー政策と財政再建を取り巻く課題についてさまざまな問題を提起してまいりました。そして、いずれもかってない困難な政策転換や理解されにくい政策の遂行が迫られている問題ばかりであることも明らかになりました。それにいたしましても大事なことは、どの課題を取り上げてみても、国民の信頼と合意、理解と英知の結集がない限り実行不可能だということであります。これは政治に対する国民の信頼がない限りだめだというのと同じことであります。すべての根幹は政治への揺るぎない国民の信頼感にあります。航空機疑惑が政治と国民をつなぐ信頼のきずなを阻害したことは否めません。その回復にどう対処するかは、ひとり政府にとどまらず、政党、党派を超えて政治が真っ先にこたえるべき最重要の課題であると存じます。政府は、きのう、航空機疑惑問題等防止対策協議会から、政治倫理の確立を目指す提言を受けたと聞いておりますが、言葉の遊戯に終わらせることなく、現実の政治に確実に反映させていく総理の決意を承っておきたいのであります。
 さて、外交問題であります。
 日米関係につきましては、短期間のうちに総理の訪米とカーター大統領の来日というビッグイベントが実現したことに象徴されますように、農畜産物の扱いや政府調達をめぐってぎくしゃくした当時の不安は一掃され、日米相互の協調体制はかつてない良好なものと見受けられます。
 そこで、一つ伺いますが、伝えられる総理の年内訪中は事実でしょうか。隣国との友好を一層確かなものにすることに異論はありませんが、わが国にとってソビエトとの関係改善も同様に重要な外交案件であります。年内の中国訪問が事実とすれば、その目的と合わせて対ソ外交の進め方についても総理の基本的な考え方を伺っておきたいのであります。
 隣国と言えば、朝鮮半島の動向もわが国にとっては気がかりであります。日韓友好の増進に一層の努力を払うとともに、朝鮮半島の平和と安定に寄与すると所信表明演説で言明された方針に沿って政府が引き続き努力するよう期待いたします。
 また、特にASEAN諸国とは、同じアジアの民として、心の触れ合いを持って平和と繁栄を分かち合うパートナーであり、わが国はその国づくりに協力すべき立場にあります。園田外務大臣の言うとおり、わが国のためにASEANがあるのではなく、ASEANのために日本があるのであります。総理はUNCTADの演説において開発途上国の人づくりを強調され、このための奨学資金を毎年百万ドル、向こう十年間供与することを明らかにされたほか、福田ドクトリンを忠実に守っていくことを約束されました。政府がこうした方針に基づき具体的な施策として約束を着実に実行していくことを期待いたします。
 いずれにしましても、地球社会の到来の中で、国と国との交わりは一層大切になると同時に、複雑でむずかしいものになってきています。万誤りのなきよう慎重な展開を政府にお願いしておきます。
 戦後三十有余年、国民の皆様のたゆみない努力と国民の強い支持のもとに政権を担当してきた自由民主党内閣の実績により、私たちは世界にかつて例のない豊かな社会を築き、国際社会における重要な責務を背負うまでに成長いたしました。わが党は、この事実に思い上がることなく、常に謙虚に反省し、国民の合意の上に立ってさらに研さんを積み、民族の英知を結集して八〇年代の危局を乗り切り、二十一世紀への展望を切り開いていくことを国民の皆様にお約束して、私の代表質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 108815254X00319790906_009

発言者: 山崎竜男

speaker_id: 12482

日付: 1979-09-06

院: 参議院

会議名: 本会議