上田耕一郎の発言 (本会議)

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○上田耕一郎君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 本臨時国会は、慣例を無視して、政府による一方的な早期召集という異常な事態のもとで開かれています。それが党利党略的な衆議院解散のためであることは周知のところであります。衆参両院の代表質問も示しておりますように、国会が論議すべき問題は山積しているのに、本日衆議院解散を強行しようとする計画が進んでいる理由は何なのですか。
 許すことができないのは、今回の異例の早期召集の真の動機が、総選挙の投票日をあの日商岩井の海部八郎の初公判の日十月十二日よりも前に設定することによって、航空機疑獄と金権政治に対する国民の怒りを少しでも避けようとすることにある疑惑がきわめて強いことであります。ここには、自民党多数支配の復活強化のためにはいかなる策略も恥じないという総理の政治姿勢が隠しようもなく浮き出ているではありませんか。そうでないと言われるのなら、直ちに党略的解散を中止していただきたい。いわれなき誹謗だと言われるのなら、あなたが強行しようとする総選挙の投票日を海部初公判以降とすることが李下に冠も正すべきでない政治家の最小限のモラルと言うべきでしょう。
 しかも、もし投票日が十月十日以前になると、公選法第二十二条の規定によって、憲法で保障された選挙権を行使できなくなる新有権者が十五万人も生まれるという重大事態になるのであります。こういう行政権の乱用は当然避けるべきであります。政治倫理の確立を第三の課題と述べた大平総理の、もって範とするに足る倫理的な答弁を強く求めるものであります。
 さて、総理は、所信表明の冒頭、「八〇年代を展望する曲がり角に立つ」云々の時局認識を示されました。振り返ってみますと、一九五一年の講和問題、六〇年の安保改定、沖繩返還にかかわった七〇年問題と、くしくも日本の政治はほぼ十年ごとに鋭い選択を問われてまいりました。八〇年代を迎えようとして、いままた日本は歴史的な選択に直面しております。インドシナや中東での新たな緊張、第二次石油ショックに見る資本主義世界の深刻な危機、インフレと財政破綻、子供たちを襲っている不幸な教育環境、そういう情勢の中で、総理は国民に八〇年代の明確なビジョンと政策、具体的プランを示すべきでした。ところが、あなたの所信表明で明確なものと言えば、日米安保体制の強化と国民の新たな負担、増税意欲だけではありませんか。
 日本共産党は、すべての事態は、自民党が一部野党の協力で進めてきた路線と政策の完全な破綻と危険を示しており、その根本的転換の必要をいよいよ焦眉の急にしていると考えるものであります。危機の中で政策選択の幅が狭くなったという一部野党の主張は、自民党政治を補完しようとする新与党化の口実でしかありません。そうではなく、今日の危機の中から一層鮮明になってきたものは、腐敗し反動化した自民党政治をやめさせて、八〇年代に国の政治を革新するという歴史的事業の必要であります。すなわち、すべての革新勢力を結集して、一、大資本中心でなく国民本位の経済政策、二、軍国主義復活反対と民主主義の確立、三、日米軍事同盟と手を切った中立化という革新三目標を実行する国民的課題であります。
 総理の言う曲がり角とは一体何から何への転換なのか、日本の政治の方向を息を詰めて見守っている国民に対し責任ある構想を明らかにしていただきたい。
 大平内閣が目指す曲がり角とは、たとえば安全保障、外交問題では、軍事大国と米日中韓の四国同盟への曲がり角にほかなりません。今日、インドシナを新しい焦点としてアジアの緊張が激化している根源は、山下防衛庁長官が時に訂正しながら強調し続けておられるソ連の軍事的脅威なるものではなく、米日中に韓国を加えた反動的四カ国同盟の危険な策動にあります。ベトナム侵略戦争で敗北したアメリカ帝国主義は、その大失態を取り戻すべく、米日中同盟を背景にして、中国のベトナム侵略を利用し、さらにいま難民問題の政治的キャンペーンを展開して反攻作戦に出ております。
 ジュネーブでのインドシナ難民問題国際会議の際、わが党が派遣した監視団の橋本敦参議院議員に対して、園田外相は政治的キャンペーンの場にしないことに賛成されました。アメリカと中国のベトナム侵略こそインドシナ難民をつくり出した歴史的原因であるにもかかわらず、逆に難民問題を利用してベトナム非難のキャンペーンを行っているアメリカや中国の行動に対し、政府は一度でも抗議と反対の意思表示を行ったことがあるのか。また、カンボジアの大量虐殺に対する見解、そのポル・ポト派を政権として承認し続けている理由についても外務大臣の見解をお伺いしたい。
 ところで、日本国民にとって重大なことは、四カ国同盟の軍事的な柱として日米安保体制が急速に強化拡大されつつあることであります。たとえば、昨年十一月二十七日、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインが合意されて以後、米軍の指揮下で自衛隊に実戦的能力を身につけさせるための日米共同演習が一斉に拡大されてまいりました。従来、海上自衛隊と米海軍とのみだったものが、航空自衛隊と米空軍の共同演習が開始され、本年七月には月例化されました。訪米した山下長官とブラウン国防長官との間で共同演習を陸のレベルにも広げることが確認されております。フォートレス・ゲールという戦後最大規模の米軍の沖繩上陸演習には、陸海空の自衛隊制服幹部が見学と称して参加しました。米政府は日米の陸海空の三軍統合演習を希望していると報道されています。
 自衛隊増強も急ピッチです。七月十七日、防衛庁は、五十五年度から五十九年度までの中期業務見積もりをまとめましたが、これは事実上の第五次防衛力整備計画にほかならないではありませんか。永野陸幕長は、すでに五十一年に閣議決定した防衛計画の大綱は修正すべきだと公然と講演しています。
 そこで、自衛隊の最高の指揮監督権を持つ大平総理と防衛庁長官にお聞きしたい。
 第一、総理は、これら日米共同演習をどういう方針のもとに承認しているのか。
 第三、沖繩県民は、三十四年前、米軍上陸による沖繩戦という、十万の犠牲を出した悲惨な体験を背負っています。総理は、沖繩県民の気持ちをどのように理解して今回の上陸演習にイエスを言ったのか。
 第三、政府は従来集団自衛権の行使は憲法上許されないという見解をとってきていますが、安保条約に基づく日米の陸海空統合演習は当然集団的自衛権の行使を前提としたものではないのか。
 第四、防衛計画の大綱は修正する方針なのか。一体どこまで自衛隊増強を推し進めるつもりなのか。
 戦前の日本は、一歩一歩軍国主義の道を進んで太平洋戦争に突入しました。有事立法、ガイドライン、君が代と軍人勅諭、元号法制化、沖繩上陸演習と、中国や一部野党の安保条約支持への態度変更をも利用しながら、憲法をじゅうりんして、異常なテンポと規模で進んでいる軍事大国への歩みは、いまにして阻止しなければ再び取り返しのつかない事態を招きかねません。日米安保条約がある限り、こうした事態は避け得ません。日本共産党は、日米安保条約廃棄による日本の平和中立化、日米軍事同盟から非同盟への転換が切迫した国民的課題となっていることを強く指摘するものであります。
 次に、当面する経済問題について質問します。
 第一に、石油の値上がり問題とエネルギー政策です。
 きわめて異様なことは、第一次石油ショックのときと異なって、今回は総理が政府の介入はしないとして大企業の便乗値上げを野放しにしていることです。わが党の試算によると、一かん八百円前後以上は便乗値上げというのに、早くも一千円灯油が普通です。消費者も中小企業も農漁民も悲鳴を上げています。他方、元売り十三社のぬれ手にアワの大もうけは、二カ月余で八百億円に達するとも報道されています。消費者を犠牲にし大企業の暴利に奉仕するこの野放し政策をなぜやめられないのですか。その理由の大きな一つに、去る六月にIEA国際エネルギー機関が日本に対して行った、灯油価格の引き上げを含めエネルギーの節約や燃料転換を促す価格政策をとるべきだという勧告があるのかどうか、明確にしていただきたいと思います。
 エネルギー問題の八〇年代の展望について触れれば、要請されているのは、大企業に対する政府の介入を放棄するのではなく、逆に、メジャーのエネルギー支配を抑制し、国家百年の計に立って、石油、石炭、電力、ガス、原子力など、主なエネルギー産業の私的大企業を国有化して、民主的に管理される総合エネルギー公社設立を図ることにあるとわれわれは確信するものであります。
 第二は、財政再建と増税問題であります。
 総理の所信表明は増税計画の中身に触れませんでしたが、財政収支試算で言う五年間に新規増税だけでも九兆一千億円、累計では二十八兆二千六百億円という大増税計画の中身が、一つは一般消費税であり、もう一つは年間所得二百万円から三百万円の低中所得者層への課税強化であることは、すでに総理自身が明らかにしたところであります。まことに戦後最悪の苛斂誅求内閣と言わなければなりません。
 わが党は、すでに、一般消費税が財政再建の切り札として何ら役立たないことを具体的に指摘してきました。今回発表した「徹底研究 一般消費税と国民生活」では、さらに、導入時の物価上昇により、平均世帯で約十万円の貯蓄の目減りが生まれること、低所得者ほど負担割合が大きいこと、売り上げ一千万円当たりで資本金二百万円未満の零細企業は約十二万円納税しなければならないのに、資本金十億円以上の大企業は合理化が進んでいて人件費比率が低いため約半分の六万六千円の納税で済むというように驚くべき逆累進課税となり、転嫁の困難な中小零細企業は大きな打撃を受けることになることなどを明らかにしました。これらの新しい問題点について大蔵大臣の答弁を求めます。
 日本共産党は、このような最悪の大衆課税によるのではなく、不要不急経費の削減と、大企業、大資産家優遇の不公平税制の抜本的見直しを断行して約四兆円の新財源を生み出し、国民本位の財政再建を実行することを強く提唱するものであります。
 第三に、外国農産物の輸入規制について。
 総理は、需給動向に即して農業の再編成を図るとしておりますが、さきの日米農産物交渉や東京サミットで約束した農産物輸入拡大を前提にした需給動向のもとでは国内農業の縮小再編成にしかならないではありませんか。四〇%にまで低下した穀物の自給率を高め、日本農業を再建するには適切な輸入規制はどうしても必要だと考えますが、真剣に自給率向上に取り組む気があるのかどうか、総理の決意をお聞きしたい。
 第四に、スモン問題について。
 薬事二法の成立で一定の前進は見られることになりますが、行政の責任はいよいよ大きくなっております。重症者への介護手当、健康管理手当を初め、すべての被害者の恒久的救済対策についてどのような方針で臨むのか、厚生大臣の具体的な答弁を求めるものであります。
 最後に、私は、政治倫理と民主主義の問題を取り上げたい。
 総理は、航空機疑惑問題等防止対策に関する協議会について触れられました。しかし、一昨日発表された提言には、諸悪の根源である企業献金の廃止について一言も触れられておりません。反対に、企業に対する監視は自主的にやらせるなどという余りに安易な内容をも含んでおります。日本共産党は、先日、企業献金の廃止、行政監視院、企業監査委員会の設置、情報公開法制定など、十二の法案大綱を再発防止策として公表しました。再発防止も政治倫理の確立も、航空機疑獄の徹底解明なしには、また大企業の政治献金の廃止を軸として金権政治の根絶なしには、紙の上の欺瞞となってしまうでしょう。齋藤自民党幹事長は反対に企業献金の規制緩和を述べておりますが、総理の見解を重ねて問うものであります。
 さらに、所信表明には、金のかからない選挙実現という口実で選挙制度の検討が取り上げられています。これはきわめて重大な発言であります。あなたは疑惑隠しの上にファッショ的な小選挙区制までねらおうというのですか。本年の通常国会で、総理は、わが党の宮本顕治議員の代表質問に対し、小選挙区制は考えておりませんと答弁されました。いまも将来もこの態度に変わりはないか、国民の前で明確にすることを求めるものであります。
 総理はまた、田園都市国家の構想についても述べられました。この構想は、総理が七月八日高松で、大都市は余り住むに値するところではないようだとして述べた東京三代目白痴論、すなわち東京で育った人が東京で生まれ育った人を嫁にもらって子供を産むと三代目には白痴の子ができるそうだという認識と結びついているのですか。私は、東京地方区選出の議員の一人としても、大都市の深刻な環境の改善を放棄し、都民を怒らせた、一国の首相としてあるまじきこの暴言の正式な取り消しと謝罪を求めるものであります。
 以上、一つ一つ問題点を取り上げていくとき、総理が目指す八〇年代の構築とは、文化の時代でも地方の時代でもなく、落ちつきと思いやりに満ちた家庭基盤充実でもなく、それらを根底から崩していく危険な軍事大国化と反動化、国民生活圧迫以外の何物でもないことが浮き彫りになってきます。大平内閣が圧倒的大多数の国民の心を踏みにじるこのような道を進むのは、大平内閣と自民党が、安保条約の誠実かつ効果的な運用をアメリカに誓っているからであり、大資本、財界の代弁者であるからであります。深刻な危機を克服して八〇年代の希望に満ちた日本をつくる道は、対米追従と大資本擁護と縁を切った政権、日本共産党が提唱している革新統一戦線の結成と民主連合政府樹立以外にありません。そのために国民とともに奮闘する決意を表明して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 108815254X00419790907_009

発言者: 上田耕一郎

speaker_id: 18354

日付: 1979-09-07

院: 参議院

会議名: 本会議