和田春生の発言 (本会議)
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○和田春生君 私は、民社党を代表し、もっぱら大平総理の所信表明演説に焦点を合わせて質問いたします。
その第一は、自民党大平内閣の政治姿勢についてであります。
大平総理、あなたは「当面する緊急課題への対応」と題して、エネルギー問題への挑戦、財政の対応力の回復、政治倫理の確立の三つを取り上げられました。そこに盛られた内容の当否は別とし、民社党を初め、野党もまた問題意識の点では共通の認識に立つものであります。にもかかわらず、せっかくここに臨時国会を召集しながら、このような当面緊急とする政策課題に対し、大平総理、あなたはなぜ具体的な提案を行おうとしないのですか。国会の場を通し与野党間の論議を深め、課題解決の方策に関してコンセンサスをなぜ求めようとしないのでしょうか。
今夕にも衆議院解散は既定の事実とされていますが、緊急かつ重要な課題についての国会審議をたな上げし、ひたすら解散、総選挙への道を急がなければならない理由は何か、全く理解に苦しむところであります。大平総理初め与党首脳部では、早期解散によって総選挙を有利に取り運び、自民党が安定多数を制することすなわち政局の安定につながると唱えているようであります。もしそれが真意であるとするなら、長期政権の権勢に目がくらみ、眼中党略あって国民の利益なく、国会の責務を放棄して党利に走る自民党の独善ここにきわまると言わねばなりません。
解散と総選挙で緊急課題に対応するタイミングがずれ、加えて航空機疑惑に対する究明さえもこれをうやむやにせんとする底意が読み取れるとあっては、大平総理の所信表明中にある謙虚、信頼、合意といった言葉とはおよそ似ても似つかぬ党利党略本位の政治姿勢ではありませんか。単に政局一新といった抽象論ではなく、納得できる説明をお聞かせ願えれば幸いであります。
質問の第二は、エネルギー対策と財源問題についてであります。
総理の所信表明のごとく、十年後に第一次エネルギーの石油依存率を五〇%以下とする目標達成のためには、原子力、石炭、地熱、太陽熱など、そのいずれにつきましても、単に技術や安全の面だけではなく、環境問題、立地条件、廃棄物による第二次公害防止問題等々さまざまな難関が横たわっております。しかも、たださえ財政危機に直面している今日、先立つ資金動員をどのようにするのか、まずそれが重大な問題であります。多くのリスクを伴う石油代替エネルギーの開発について、もっぱら民間資本にのみ頼るわけにはまいりません。財政投融資や政府助成に当然大きなウエートがかかってまいりますが、その財源としてエネルギー新税などの構想が浮かび上がっているようであります。政府がこのエネルギー新税を考えているとするなら、それはいかなる内容で、どれほどの税収を見込み、その使途をどのようにするつもりか、あらましの構想をこの際明らかにしていただきたいと思います。
また、伝えられる一般消費税や所得増税とエネルギー新税との兼ね合いをどのように考えているのか、その点もただしておきたいと思います。
さらに、エネルギー対策の財源調達に関して、たとえば公共事業投資などの面においても、これまでは景気対策やそれらに関連する問題に重点が置かれていたため、土木建設を中心とする大型プロジェクトにとかく比重がかけられておりました。しかし、これからは省エネルギー産業構造への転換や代替エネルギーの開発など、八〇年代を展望し財政投融資のウエートを振りかえていく必要があると考えますが、具体的にどのような方策を考究しているのか、あわせてお答え願いたいと存じます。
質問の第三は、増税問題についてであります。
政府と与党の方針が昭和五十五年度中に一般消費税の導入を意図していることは、この国会における政府答弁がどうあろうと、これまで発表された文書などによって疑う余地はありません。政府・与党の思惑どおり一般消費税が実施され、消費者に税負担がすべて転嫁されるならば、紛れもなく物価上昇、インフレ促進の要因となります。税の逆進性と相まって弱者に負担を加え、不公平を助長するでありましょう。企業の競争条件のもと、購買者に転嫁できなければ、損益にかかわらず税は企業者負担となって、これまた弱い立場の企業をより一層痛めつける第二法人税的性格のものとなりかねません。また、価格体系や取引条件や流通過程においても収拾困難なさまざまの混乱を招くおそれも多分にあります。加えて、税務職員の大幅増員で行政改革に逆行する事態も生ずるわけであります。したがって、伝えられる一般消費税は、理念のみならず実施の面においても天下の悪税と考えられますので、これを断じて実施すべきでないと考えますが、いかがですか。
たとえ総選挙後であろうと、必要によってこれを実施したいとする考えがあるならば、この税制を可とする理由並びに必要とするゆえんを今次国会で明らかとすべきであります。それによって国民に信を問うのではなく、新たな負担というようないいかげんな表現で焦点をぼかしたまま総選挙に臨み、あわよくば国会の過半数を制し、白紙委任を取りつけたつもりで一般消費税の導入を図る魂胆であるとするなら、これほど有権者を愚弄する為政者の思い上がりはありません。
そもそも、一般消費税なるものは、従来なじんできた税制の手直しや上積みではなく、わが国税制の中に全く新しい体系を持ち込むものであって、シャウプ勧告以来の直接税中心、個別物品税等の間接税体系にもいわば革命的な変化をもたらすものであります。国民の納税義務と負担のあり方に直接結びつくようなこの重大問題について、あいまいな対応を許すわけにはまいりません。
そこで、明確にお尋ねします。大平総理、あなたは一般消費税を実施するつもりか、それとも実施しないつもりか。あなたの所信表明演説の結びにある「率直に真実を国民に語る」という言葉どおりに答弁していただきたいと思います。
〔議長退席、副議長着席〕
質問の第四は、不公平税制の是正についてであります。
総理の所信表明の中では、「租税特別措置の見直しを行うなど税負担の公平化を進める。」とただ一行だけ触れているにすぎません。
そこで、具体的に伺います。あなたが見直すと言われる租税特別措置などは、何と何を指すのか、その主なものを例示願いたいと思います。
それとともにぜひ伺っておきたいことがあります。最近、大平総理は、一般消費税がいけないなら、年収二百万円から三、四百万円の中堅所得層の所得増税を考えたいと言われました。わが国の税負担の対比において、都市勤労者が圧倒的多数を占める年収二、三百万円クラスの所得者が、賃金俸給生活者以外の他の諸階層に比べて低過ぎる税負担で不公平に優遇されていると大平総理あなたは本気でお考えなのでありましょうか。総理は、税制や社会保障や住宅費負担など、比較条件において当然考慮すべき諸要件を度外視し、為替相場で換算した外国の同水準所得層の税負担率を例に引いておられました。大蔵省御出身の首相とは思えぬとんでもない見当違いと言わねばなりません。税負担の公平化は国内における対比の問題であります。特に年収二、三百万円の勤労者サラリーマンをねらい、ことさらに増税の対象として取り上げた意図を納得できるように説明してほしいと存じます。
質問の第五は、行財政の改革についてであります。
大平総理、あなたは増税か国債かの選択を国民に求めるということを解散をもくろむ臨時国会前にたしか口にされたはずであります。これはまさに不当きわまる政治的恫喝以外の何物でもありません。累増し過ぎた国債依存のゆえに、もうこれ以上国債の増発はできないし、それに頼ってはいられないというのが財政危機の命題ではありませんか。その国債を引き合いに出し、増税との選択を迫るというのは、いかにせっぱ詰まったとはいえ、一国の総理として断じて口にすべきことではありません。私に言わせれば、財政危機に直面している今日、行財政の改革か増税かが当面の中心的な命題であります。
第一次オイルショック以来五年越しの不況の中で、民間企業は減量経営の合理化のために血のにじむような努力を払ってまいりました。減収や雇用不安にさらされた多くの民間勤労者家庭においては、家計費の切り詰めに苦心惨たんしてきたのであります。いま財政危機に直面する政府においてもその例外たることは許されません。一口に言えば、減量行政、減量財政に身を削る努力を行うのが先決であります。行財政の改革にベストを尽くし、しかる上で必要とする行政サービスや国民の利益のための政策財源についてどうしても不足するものがあれば、その事実と理由を明らかにして国民に応分公平な負担を訴えるのが政治の筋道であると思います。増税論の先走りは、財政を国民生活よりも重しとし、官を民より上にしようとする、まさに逆立ちした官僚的発想の典型であります。大平総理は、このような批判をかわすためか、肉を切り骨に達する行政改革を行うと言われましたが、どこまで本気で取り組むつもりなのか、はなはだ疑問であります。
そこで、抽象論を避けまして、具体的に質問をいたします。
行政改革を行おうとする最高の責任者総理自身が肉を切り骨に達すると言われる以上、どこの肉を切ってどの骨にメスが達するのか、当然に見当をつけておられるはずであります。行政改革や歳出の見直しについて、末梢的なひげや爪先や皮の部分ではなく、切る肉と刃の達する骨の部分が一体どことどこなのか、この際その三、四をぜひ具体的に例示していただきたい。もし総理のそのような説明を聞かれれば、恐らく大多数の国民も大平総理のやる気を信ずるものと思います。
また、その一々を列挙するいとまはありませんが、私たち民社党は、地方財務局など国の地方出先機関の廃止、公社公団の統廃合、補助金の徹底的な見直し、公務員の定年制実施や配置転換合理化など、行政改革の具体的な方法を掲げ、その実現を主張してまいりましたが、わが党の行政改革案と照らし合わせ、大平総理の説明がありますならは与野党の立場を超えて協力すべき目標が定かとなり、施策の実行にとってもプラスとなるでありましょう。ぜひこの際、大平総理並びに関係閣僚の誠意ある所見を承りたいと存じます。
以上取り上げた以外にも、外交、防衛を初めただしたい課題がなお山積いたしておりますが、きわめて限られた時間がすでに尽きようといたしております。なお、私のこの質問は、昨日の衆議院本会議でわが民社党佐々木委員長が行った質問と重なる部分があります。しかし、そのいずれについても、大平総理は、レトリックで事の本質をはぐらかそうとしたり、まともには答えていないものばかりであります。
大平総理、あなたは数時間の後には衆議院を解散し、ともかく国民に信を問おうとしているのではありませんか。それならば、なぜもっと率直に、もっと具体的に、本院議員のみならず、耳目をそばだてている国民の皆さんにもよくわかるように語ろうとしないのですか。それが語れないとするならば、国政の最高責任者でありながら真の抱負経綸なく、政権の延命を図らんとする権力欲がもっぱらあなたの心を占拠しているとしか考えられません。大平総理が所信演説の結びで用いた謙虚、信頼、合意という美しい言葉は、不遜と不信と、そして対決の政治と読みかえなければなりません。
自民党の長期政権がもたらした政治の退廃にどっぷりとつかりながらそれに気づかず、政治不信を一層助長するような姿勢に強く反省を促し、的確な答弁を重ねて求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕