広瀬秀吉の発言 (本会議)

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○広瀬秀吉君 私は、日本社会党を代表して、今日大きな怒りと不信の念を持って国政を見詰める国民とともに、大平内閣不信任決議案に対し、賛成の討論を行います。(拍手)
 第二次大平内閣は、昨年十一月六日、第八十九特別国会において、議会制民主政治の歴史と政党政治史において例を見ざる異常な状況の中で誕生しました。自民党内の血で血を洗う激しい抗争の果てに、五百十一名の衆議院議員中百三十八名の支持という、いわば四分の一内閣の十字架を負うて虚弱体質のまま発足したのであります。(拍手)大平総理は、よもや今日このことを忘れておらないと思います。
 越えて第九十臨時国会の所信表明において、首班指名投票の際の異例な方法によったことをみずからの不明として反省し、総選挙に示された国民の厳粛なる審判を謙虚に受けとめて、おごることなく国政を担当すると決意を述べられたのであります。大平総理が真にすぐれた政党政治家であるならば、あの時点において潔く退陣され、みずからの不明を国民に謝し、その政治責任を明らかにして、政治刷新の契機とすべきであったのではないでしょうか。
 あなたが総理になられたとき、国民は、四国の貧農に身を起こし、苦学力行を喜びつつ、弱者の涙をみずからのみがきの砂としてはい上がった庶民政治家、あえて華やかなピッチャーを選ばず、じみなキャッチャー型の政治家、しぶとい二枚腰を持つ大平正芳総理出現に、国民はひそかにある種の期待を抱いたのであります。
 石油ショックによって高度経済成長時代は終わり、物質文明の限界にぶち当たって未来への方向性を失い、混迷と激動の波にもまれていた国民に向かって、大平さんは文化の時代の到来を告げ、地球社会の時代に生きるわが国の進路を指し示し、汚職究明と政治倫理の確立を強調し、信頼と合意の政治を訴えました。また、物価の安定、雇用の拡大、資源エネルギーの確保を公約し、財政危機打開、財政再建に向けての決意をたくましく国民に呼びかけられたのであります。中でも、美しい言葉でつづられた田園都市国家の構想は、新鮮で魅力あるものと国民の目に映ったのであります。
 しかしながら、政治家の値打ちは、その人が何を語り、何を唱えたかによって決まるものではありません。何を行ったかによって真の評価が下されるのであります。(拍手)
 この意味から、大平内閣の一年有半にわたる具体的政策展開の実績を検証してみると、国民の切なる期待を裏切り、国民のささやかな夢と希望をもののみごとに打ち砕いてしまったことも指摘せざるを得ません。
 第一に、総理・総裁にとって何よりも必要な資質は、その高い指導性、すぐれた統率力ではないでしょうか。
 しかるに、航空機輸入問題特別委員会において、全野党が浜田幸一前代議士を証人として喚問したにもかかわらず、彼がすでに党の役職を離れ、議員辞職をしたのだからという理由にもならない理由を盾に、自民党は証人喚問を拒否しています。
 一方、三年間に五十八億円の交際費を使って不当な政界工作などを行ったKDD社の乱脈経理は、いま全国民の深い憤りの的であります。その不正経理の中から最も多大の金品を受けたと報道されております服部元郵政大臣の証人喚問も、自民党の妨害で実現をいたしません。このことは、大平内閣の指導性と統率力の欠如を最も端的に示すものであります。待ちの政治家などと澄ましておられることではありません。(拍手)
 政界浄化、政治倫理の確立を声高に提唱し、信頼と合意の政治を説いても、国民は信用いたしません。今日、国民の根深い政治不信と白けの原因がここにあることを警告し、大平総理のもとでは、金権腐敗の政治を一掃することは断じて不可能であることを指摘せざるを得ません。(拍手)
 第二に、大平総理は、議会制民主政治をみずから否定する数々の暴挙を行いました。
 議会政治は政党政治の上に成り立つのであります。この国会で四月二十五日、自社公民各党の国対委員長会談において、健康保険法と厚生年金法等改正法案を修正の上に成立を期するとの公党間の合意が、政府・自民党によってほごにされてしまいました。特に予算の実質修正の形で、自社公民責任者間で老齢福祉年金及び母子年金等への千円ないし千五百円の上積み修正を約束しておきながら、日本医師会等の圧力に屈した健保法案とともに年金法案を抱き合い心中させた暴挙は、公党間の約束を破ったもので、言語道断であります。(拍手)老人、母子家庭、身体障害者など、血の出るような願いを裏切った大罪は、断じて許すことはできません。
 大平内閣の議会政治軽視はこれにとどまりませんでした。すでに五年も前から国会開会の都度われわれが要求し続けた、大企業中心の乱開発によって引き起こされる環境破壊、公害から住民の生活を未然に守るための環境アセスメント法案を大企業の横やりで骨抜きにし、その骨抜きにした法案すらこの国会に提出しない、このことは、議会軽視ここにきわまれりと言うべきであります。
 人事院の勧告を受けた公務員の四週五休法案しかりであります。
 さらに、総理は、五年前、大蔵大臣当時、金融機関週休二日制について関係閣僚懇談会で提議し、一両年の間に結論を出し、実現の方向で最大限努力をする旨答弁をした。五年を経過した今日、いまだに政府の法案提出がサボられているであります。
 第三に、大平総理は、所信表明、施政方針を通じて、田園都市国家構想、家庭基盤の充実、日本型福祉社会の建設を公約いたしましたが、この一年半における政策の中で一体何が実行されたでしょうか。
 この構想を言うのであれば、その前に、少なくとも一九八〇年を一大転機として、分権、自治、参加の地方自治確立に向けて、政策転換の集中的努力がなさるべきであります。総理は、地方自治の振興に向けて、いかなる具体的方策を実行しましたか。国の政策の犠牲となった地方財政危機の打開のため、何ほどかでも税財源について自主性強化の方策を講じられましたか。何もしないのであります。まさに田園都市国家構想は、そらぞらしい言葉でしかなかったのであります。
 家庭は社会の原点、個性豊かな落ちつきと思いやりの場であると言いながら、家庭の基盤である住宅政策に見るべきものがありましたか。宅地価格の高騰を野放しにし、見当違いの土地税制を緩和して、不動産屋をもうけさせただけではありませんか。(拍手)
 高・遠・狭の不評な公団住宅に対しても全く無為無策でありました。住宅規模拡大、三世代向け住宅などの公約実現どころか、低家賃の公営住宅建設戸数を前年比一万戸も減らして、何が家庭の充実でありましょうか。
 日本型福祉に至っては、国が当然負担すべき老人福祉や乳幼児の保育、病人の看護などを家庭婦人に肩がわりさせ、社会福祉に対する公的責任を回避せんとするだけのものであることが明らかになりました。
 子供は未来への使者、文化の伝承者である。まさに大平総理の名言であります。ところが、総理は、今年度予算編成の過程で、児童手当の支給制限、義務教育生徒の教科書無償配付制度の取りやめを図ろうとしました。四十人学級の早期実現の態度もあいまいであります。
 かくのごとく、まさに有言不実行、公約違反の無責任体制に対し、未来への使者たちにかわって弾劾するものであります。
 国民生活にとって物価問題は重要であります。大平内閣は、五十四年度の消費者物価を四・八%程度に抑え込んだ、これをいいことにして物価政策に熱意を示さないで、次々にこの面で失政を重ねてまいりました。イラン石油の輸出停止を招くなど、石油輸入価格上昇への外交対応を誤ったばかりでなく、国内における便乗値上げ防止についても無策でした。われわれがいち早く要求した生活二法の発動に全く耳をかさず、石油価格は市場メカニズムによって決まるのだ、このことを強調し、便乗値上げを放任、助長するかの態度をとった責任は重大であります。
 今年に入ってからも電気・ガス料金の大幅値上げ、米麦価、国鉄運賃、たばこなど、公共料金は値上げラッシュで、国民生活は名目所得の増加の中で実質的には一・二%も低下しました。しかも、二、三月で前年比七、八%上昇した消費者物価指数は、最近発表された卸売物価年率三七%という狂乱時代に近い上昇のはね返りを考えれば、年度を通じ、二けた上昇の脅威を示しております。
 しかるに、大平内閣は、予算修正絡みの五百億円の物価対策支出にも不熱心、政府見通し六・四%を超えた場合の物価調整減税の要求についても拒否を続けています。これこそ勤労大衆いじめの冷酷な大平内閣の性格を浮き彫りにしたものであります。一般消費税を先頭とする大衆増税構想とともに、勤労大衆からの不信任告発を免れ得ない点であります。
 最後に、大平内閣の危険な方向に急速に傾斜した外交姿勢と平和憲法擁護姿勢の欠落について糾弾いたします。
 総理は、今日の国際関係を地球社会の時代と規定し、その認識を明らかにしました。果たしてしかりとすれば、われわれが常々主張してきた非同盟中立政策をいまこそ大胆に受け入れて、いずれの国とも友好関係を維持することを外交の基本に据えるべきだと信じます。資源エネルギーのほとんどを海外に依存するわが国にとって、これはまことに大事なことであります。
 しかるに大平総理は、地球社会の中で米国との友好関係にだけのめり込んで、先般の訪米に当たっては、従来のパートナーシップから同盟関係にエスカレートさせました。その上、ソ連、イランヘの経済制裁など、米国の世界戦略に積極的に加担するという危険な方向に転換したことは、すでにIJPC、イラン石油化学への投融資などの問題について、二千億に近い国家損失を覚悟しなければならないという事態を予想させております。日米安保条約の範囲を中近東にまで広げる、こういうこともしようとしております。また、米大統領に対して、防衛庁の中期業務見積もり早期達成と防衛費の増額を約束しました。このことは、まさにアメリカの世界戦略の一翼を担って、わが国をアメリカの引き起こす戦争に大きく引きずり込む危険をはらんでおります。
 同時に、軍事費の拡大は、財政再建を一層困難にするものであります。まさに精神分裂症的行為であると言わなければなりません。(拍手)平和と生活の安定を希求してやまない国民の名において、かかる態度は断じて容認することはできません。
 大平総理は、元号法制化を初め、靖国神社への公式参拝、戦争を想定する有事立法への作業を露骨に進め、リムパック合同演習への参加など、日本国憲法に挑戦するかのごとく、特にイラン、アフガン問題発生以来、とみにエキセントリックなまでに反動的態度をとりつつあります。大平総理は、いまこそ野に下って、腰を据えて日本国憲法の前文、第九条及び第九十九条を、心眼を開いて熟読玩味しなければならぬと思います。(拍手) 大平総理は、かつてあなたの師匠であった故池田勇人氏が総理のいすを得られた折、池田さんに対して、予期せざる拾い物の総理・総裁のいすに恋々とせず、長期政権などと言わないでくださいと直言した旨「鈍牛待望論」は書いています。今日こそ、大平総理、いまこそあなた自身にこの言葉を言い聞かせて、わが党の提出した不信任動議を神の声、天の声として受け入れ、採決を待たず、みずから野に下られ、飛鳥田委員長を首班とする革新連合政権に道を開かれんことを求め、私の賛成討論を終わる次第であります。(拍手)

発言情報

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発言者: 広瀬秀吉

speaker_id: 26157

日付: 1980-05-16

院: 衆議院

会議名: 本会議