大橋敏雄の発言 (本会議)
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○大橋敏雄君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま趣旨説明がありました老人保健法案に対し、若干質問をいたします。
初めに、総理大臣にお尋ねいたします。
わが国の医療保険制度は、九種類にも乱立し、負担も給付もばらばらという欠陥だらけの制度であります。当然、野党は政府・自民党に対し、抜本改正を厳しく追及してまいりました。
いまから四年前、昭和五十二年十一月、当時の渡辺厚生大臣は、野党のこの追及に答える形で、「医療保険制度改革の基本的考え方について」と題して十四項目の柱を立てて、抜本改正への具体的公約を提示したことは周知のとおりでございます。
その後、付添看護、差額ベッド、歯科差額など保険外負担の解消問題あるいは薬価基準の改定等々、不十分ながらも対処してきてはおりますが、あの十四項目中、目玉と高く評価された、予防、治療、リハビリテーションと一貫性を持つ老人保健制度の創設につきましては、約束の時期が大幅におくれており、その責任はきわめて重大であります。
わが党は、かねてから医療保険体制は地域保険、職域保険、老人保健の三本立てを主張してまいりましたが、総理は、現在の問題だらけの医療保険制度に対し、どう対処していかれるのか。また、この老人保健制度の創設に関係して、いかなる御見解をお持ちなのか、承りたいのであります。
老人保健法の創設は、その趣旨の重要性にかんがみ、法案の内容については慎重かつ十分に審議する必要があります。とかく医療保険をめぐります審議は、医師と患者と支払い機関の三者の利害が相反する立場にあることから、一致点を見出すことはきわめて困難であります。最終的には三者三泣き、痛み分けといった形で決着が図られたケースが多いのであります。しかし、医師会寄りとか支払い機関寄りというのではなく、まさに国民寄りの立場から英断を下していくべきであります。
この法案の重要ポイントの一つに、老人保健審議会の創設や支払い方式に関する問題などがありますが、これらに対して自民党と医師会との間では、すでに医師会寄りの修正話が約束されたとか、されなかったとか、うわさが飛んでおりますが、これが事実ならば重大問題であります。このポイントこそ慎重かつ大いに論議を重ねねばならぬところであり、国会軽視、国民不在の姿勢は断じて許されません。
この点について、自民党総裁という立場も含めまして、総理の責任ある御答弁を求めるものであります。
さらに、本法案の特徴は、医療部門のほかに予防、リハビリといった総合的な保健事業があります。
当局の説明によれば、実に広大な構想を描いているようでありますが、それを支える施設整備並びにマンパワー等の対策はきわめて重要な課題となってまいります。機構の充実強化、要員の確保は避けて通れませんが、この点、行政改革の方針との絡みをどう考えておられるのか、総理の御所見を承りたいのであります。(拍手)
次に、厚生大臣にお尋ねいたします。
その第一は、老人対策の基本的な考え方であります。
病院のサロン化が言われ、入院、通院等、医療問題のみにその責めを負わすことはできません。高齢化に向かって急増する老人対策は、単なる施設福祉のみではなく、在宅福祉としての在宅看護そのほか福祉サービスが十分でなく、あるいは自立できる生活環境に整備されていないなどが主な理由に挙げられます。要するに、特別養護老人ホームや、病院と家庭との中間施設の整備や、訪問看護の制度化など、早急に整備する必要があります。
そこで厚生大臣に、総合的な老人対策の展望と、この老人保健法案の位置づけについての御見解を承りたいと存じます。
次に、本法案に関する医療費の負担内容が、その全体の約三割を国、県、市町村の公費負担とし、残り七割相当分については各種医療保険の保険者から拠出を求め、運営することとなっております。一口に言えば、現在の各種保険制度が抱えております老人関係部分における、いわば相互連帯、財政調整であります。
したがって、比較的財政の豊かな組合健保や共済保険制度からは、かなりの拠出金の持ち出しとなるわけであります。それだけに、保険者にとりましても、持ち出しがいのある、魅力ある法律として運用されていかねばならないと考えます。
しかし、この法律案では、各保険者に対する費用分担のあり方は具体的に明示されておりますものの、持ち出しがいの裏づけになると思われる老人保健審議会の機能につきましては、ただ診療報酬に関する事項、その他この制度運営に関する重要事項の調査審議を行うというだけで、具体性に欠けております。これでは片手落ちです。せめて重要事項とはどんなことを想定しているのか、説明をお願いしたい。
なお、診療報酬に関する審議は現在中医協で行われているわけでございますが、この関係性はどうなるのか、あわせて御答弁をお願いしたいのであります。
次に、現行の老人医療費の支給制度では、公費負担を七十歳、寝たきり老人は六十五歳以上としておりますけれども、この法案では、健康手帳の交付対象を、七十歳以上と、もう一つは四十歳以上七十歳未満のうち必要と認められる者と二段階に分けております。いかなる理由によるものか。また、六十五歳以上の寝たきり老人はどうなるのかなど、「必要と認められる者」の範囲について、この際明確にしていただきたい。
次に、一部負担についてであります。
当局の試算によれば、約九百億円が浮く計算になっておりますが、その金額は結果的には、そのまま保険者の負担の軽減につながるわけではありますが、この点について、老人医療の無料化の大幅後退という厳しい批判が集中しております。いわば制度の大転換であり、これは断じて反対であります。
この一部負担の導入について、外来初診時五百円、入院一日三百円で四カ月間とした理由と、その根拠は一体何なのか、明確な御答弁を求めるものであります。
次に、この法案の目的の中に「疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的に実施し、」云々とあります。この趣旨には大いに賛同をしたいところでありますが、その費用は国、県、市町村がそれぞれ三分の一ずつ負担することになっております。しかし、健康診査、健康教育、健康相談等の予防の面から、これらの事業はどのように、またどのくらい行われるのか。この点、職域では労働安全衛生法あるいは労働基準法の規定に基づいて手厚い保健対策の恩恵に浴するなど、健康管理が行われ、医療費にその効果が顕著にあらわれているところからも、一層の強化が望まれるところであります。具体的な説明をいただきたいのであります。
次に、保健事業の事業効果を高めるためには、現在の保健所の機能では不十分であると考えます。医師の確保から保健婦、理学療法士等々、マンパワー対策が事業推進のかぎとなると考えますが、いかなる方針、計画で対処をされる考えか、お聞きしたいのであります。
さらに、健康相談や健康診査に関してでありますが、従来、成人病の検診やがん検診など、その受診率が低いとの指摘があります。これを高める行政努力、また目標数値並びに財政措置などについて、その考えをお聞きしたいのでございます。
また、保健事業を推進するに当たり、現実の対応において市町村間においてはかなりの格差があると考えられますが、この格差解消の方策など承りたい。
最後に、自治大臣にお尋ねいたします。
この老人保健法案の実施主体は市町村であります。保健事業では、費用の三分の一を負担し、健康教育を初め健康相談、機能訓練施設の整備など、市町村の事業量が急激に増大するものと予測されますが、その受け入れ体制についてどのようなお考えをお持ちなのか。
また、言われております自治体における上積み福祉について、現行の老人医療費支給制度における都道府県の単独事業として、すなわち、六十五歳以上七十歳未満の方に対する老人医療無償化措置等を実施していることについて、その御見解を聞きたいのでございますが、絶対に後退させてはならないと思うのでございます。
今後の方針についての御見解を賜りますよう、誠意ある御答弁をお願いして、私の質問を終わることといたします。(拍手)
〔内閣総理大臣鈴木善幸君登壇〕