鈴木善幸の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(鈴木善幸君) 私は、今般、国会のお許しを得て第八回主要国首脳会議及び第二回国連軍縮特別総会へ出席し、さらにその後、ペルー、ブラジル両国訪問を終えて六月十八日に帰国いたしました。
 ここに、その概要を御報告いたします。
 まず、私は、六月四日から六日までベルサイユにおいて開催された主要国首脳会議に、櫻内外務大臣、渡辺大蔵大臣及び安倍通商産業大臣とともに出席いたしました。
 今次サミットにおいて、参加各国首脳は、現在世界経済の直面する失業、インフレ、保護主義の動き等の深刻な事態をいかにして打開し、経済の再活性化を実現するかについて真剣に話し合いました。この結果、サミット宣言に示されているように、将来に向けての協力を確認するとともに、行動の目標を定めることができたことは、大きな成果であったと考えます。
 私は、会議の冒頭発言において、世界経済の深刻な現状にかんがみ、各国が協調しつつ局面打開に当たるべきことを訴え、わが国が貿易、経済政策、南北問題等の諸分野において行っている諸施策に触れつつ、科学技術の振興、国際協力が世界経済の再活性化に果たすべき役割りを強調いたしました。また、各国が固有の伝統、文化を生かしつつ、多様性の中の結束を固めていく必要性を強く訴え、各国首脳の理解と賛同を得ました。
 次に、個別の議題について御報告いたします。
 第一に、科学技術の問題について、技術革新が世界経済の活性化のため不可欠であるとの認識に立って、これに積極的に取り組むこととし、作業部会を設置し、その具体的方策について協議を行うことが合意されましたが、わが国としてもその作業に積極的に貢献していく所存であります。
 第二に、経済政策一般、通貨問題に関しては、国際協力が重要であることが指摘されました。特に、通貨の安定がきわめて重要であることについては、私からも強調いたしましたが、通貨当局間の協力の一層の強化が約され、中長期的な観点から対応策を検討すべきことが合意されました。
 第三に、貿易について、開放された多角的貿易体制の維持強化が一層重要であり、十一月に開催予定のガット閣僚会議に向けて積極的に取り組むべきことに意見の一致を見たことは、保護主義の圧力が各地で高まりつつある現在、きわめて重要な意義を持つものと考えます。私からは、わが国の市場開放措置に言及しつつ、わが国として自由貿易体制の維持強化のために最大限の努力を払っていることを強調いたしましたが、いずれの国もわが国の措置を誠意あるものとして高く評価しておりました。
 第四に、南北問題については、援助の重要性を確認するとともに、国連包括交渉の早期開始と成功が期待されることにつき見解を一にいたしました。
 第五に、東西経済関係については、西側諸国は、対ソ、東欧諸国との金融関係に関して慎重な配慮をもって取り進めることが合意されました。
 また、今次サミットの機会に、フォークランド諸島問題、中東問題、東西関係等の政治問題等についても率直な意見交換が行われましたが、レバノン問題について、独立及び主権の侵害に対する重大な憂慮を表明し、この地域の平和と安全の保全を求めるアピールが発出されたことは、時宜を得たものであったと考えます。
 私は、アジア・太平洋地域からの唯一の参加者として、ASEAN及び大洋州諸国が等しく有している先進工業国の保護主義に対する懸念を強く訴えるとともに、中国の趙紫陽総理の訪日に言及しつつ、中国が開かれた中国を指向し、穏健な路線のもと、国を挙げて真剣に近代化に取り組んでいることを指摘いたしましたが、各国首脳はこれに大きな関心を示しておりました。
 なお、私は、フランス滞在中、ミッテラン・フランス大統領、レーガン米大統領を初めサミットに参加した各国首脳と個別に親しく会談する機会を持ちました。
 以上、私はサミット諸国の連帯と協調を図り、さらに他の諸国へも多様性の中の結束の輪を広げていくとの視点に立って積極的な働きかけを行った次第でありますが、わが国としての役割りを十分果たすことができたと考えております。(拍手)同時に、私は、世界経済の諸問題にわれわれが取り組んでいくに当たり、各国のわが国に対する期待と関心はまことに大きなものがあり、わが国の施策はもとより、その対応いかんがいまやきわめて重要な要素となっていることを改めて痛感した次第であります。
 私は、このような観点より、わが国の不断の地道な努力の積み重ねが重要であるとの感を深くするとともに、今次サミットの成果を実行していく上で、わが国の国際社会における責任を十分に果たすべく、なお一層の努力を傾注していく所存であります。(拍手)
 次に、六月七日から十日まで、私は、櫻内外務大臣とともに、ニューヨークで開催中の第二回国連軍縮特別総会に出席し、六月九日に演説を行いました。
 私が今回の特別総会に出席した目的は、現在の厳しい国際情勢のもとにあって、唯一の被爆国として平和憲法のもとに非核三原則を堅持し、平和国家としての道を歩むわが国独自の立場から、核の惨禍が二度と繰り返されることのないよう核軍縮を中心とする軍縮の促進を世界の各国に訴えることにありました。
 六月九日に行った演説においては、このような基本的立場に立ち、さきに本院で採択された国会決議を踏まえ全国民的立場から、軍縮を通じる平和の三原則を提唱したのであります。
 すなわち、第一に、国家間の相互信頼を深めて、軍縮、とりわけ核軍縮を促進すること、
 第二に、軍縮により生じた余力をもって諸国民の民生の安定、経済の発展を図ること、
 第三に、国連の平和維持機能強化を図ることがそれであります。
 また、国連事務総長との会談では、世界の平和と安定のために、国連加盟国が国連の平和維持努力に対し、できる限りの協力と支援を行うことが重要であることを再確認しました。
 さらに、櫻内外務大臣は、先般国会で御承認いただいた特定通常兵器使用禁止制限条約の受諾書及び環境改変技術使用禁止条約の加入書を国連事務総長に寄託し、また、これに先立ち六月八日に生物兵器禁止条約の批准書を米国政府に寄託いたしました。
 唯一の被爆国であるわが国が軍縮分野で果たし得る役割りに対しては、ひとりわが国国民からのみならず、世界の各国から大きな期待が寄せられております。私は、今回の演説を通じて、みずから平和国家に徹し、世界の平和と軍縮促進に向けて努力しているわが国の積極的姿勢を内外に明らかにすることができたものと確信しております。(拍手)
 政府としては、今後とも国民の皆様とともに、核軍縮を初めとする軍縮の促進に向けて努力してまいる所存であります。
 次いで、六月十日から十五日まで、田澤農林大臣とともに、ペルー及びブラジルを公式訪問いたしました。両国は、中南米においてそれぞれ重要な地位を占め、その国際的地位も近年とみに向上しております。また、わが国との関係についても、経済的に相互補完関係にあり、また、多数の日系人社会を擁することもあって、きわめて緊密であります。このような両国への今次訪問は、首脳レベルの訪問がしばらくとだえていた後だけに、特に大きな意義を有するものでありました。事実、私たち一行は両国において官民挙げての歓迎を受け、訪問先各地の日系人社会よりも心のこもった歓待を受けました。
 ペルー訪問においては、ベラウンデ大統領及びウヨア首相と二国間関係及び国際問題について有益な意見交換を行うことができました。その際、私は議会制民主主義のもとで、ペルーの政府及び国民が進めている経済社会開発の努力を助けるため、わが国より各種の経済技術協力を供与する用意がある旨を表明し、また、文化交流の一層の推進を図るため、文化協定の締結に関する交渉を開始することで、ペルー側と意見の一致を見ました。
 ブラジル訪問においては、フィゲイレード大統領と二度にわたり会談し、幅広い問題について、率直な意見交換を行いました。その際、私は、同国のセラード地域の農業開発について、今後ともできる限りの協力をする用意があることを明らかにいたしました。ブラジルは膨大な食糧増産の可能性を有しておりますが、わが国の協力により未開発地域の開発が一層推進されるならば、ブラジルの経済の発展に役立つのみならず、ひいては世界の食糧問題の解決にも大きな貢献を期待できるものと信じます。また、私は、ブラジルと科学技術協力協定を締結するための交渉を進める用意がある旨表明いたしましたが、これは、私がさきにベルサイユ・サミットで明らかにした世界経済活性化についてのわが国の考え方につながるものであります。
 なお、ベラウンデ、フィゲイレード両大統領に訪日を招請いたしましたところ、両大統領ともこれを快諾されました。
 私は、今次訪問を通じ、これらの諸国とわが国との友好協力関係を一層増進することを希望しており、また同時に、それによって、広く中南米地域に対するわが国の関心と南北問題に対する積極的な姿勢を示すことをも願っておりましたが、これらの所期の目的は十分達成できたと確信いたしております。
 私は、今回の一連の旅行の帰途、ハワイに立ち寄り、太平洋の中心に位置する同地において、「太平洋時代の到来」と題する講演を行う機会を得ました。
 このスピーチにおいて、私は、太平洋地域が、世界の中でも最も活力とダイナミズムにあふれ、かつ、一層の発展の可能性を秘めた地域であり、この地域の活力及びその発展が、世界経済の再活性化、世界の平和と繁栄を確保していくための原動力となり得ることを強調いたしました。そして、そのためには、各国が現実に進めつつある協力関係を一層助長し、連帯の域にまで高める努力をする必要があることを訴えました。
 私は、今回の歴訪を通じ、わが国が国際社会の責任ある一員として、世界の平和と繁栄のためにその国力、国情にふさわしい役割りを積極的に果たしていかなければならないことを改めて強く認識するとともに、西側先進民主主義諸国の一員としての立場を堅持しつつ、あわせて、開発途上諸国のわが国に寄せる熱い期待にこたえて南北問題に一層積極的に取り組む必要性を痛感した次第であります。
 私は、今回の歴訪の成果を今後の政策運営に十分反映させていきたいと考えております。国民各位の御支援と御理解をお願いいたします。(拍手)
     ————◇—————
 内閣総理大臣の発言(帰国報告について)に対する質疑

発言情報

speech_id: 109605254X02619820621_003

発言者: 鈴木善幸

speaker_id: 1360

日付: 1982-06-21

院: 衆議院

会議名: 本会議