鈴木善幸の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
 最初に、政治倫理について一連の御意見、御質問がございました。
 私は、就任以来、政治倫理の確立は緊要な課題であるとしばしば申し上げてまいりましたし、そのための努力もいたしてまいったのであります。政治倫理の確立は、元来、政治に携わる者一人一人の自覚と良識にまつべきものであると思いますが、制度面からもそれを前進させるため、政治資金規正法や公職選挙法の改正などを行ってきているところでありまして、馬場議員の何一つしていないという指摘は納得できません。
 次に、先日のいわゆる全日空ルートの判決についてでありますが、判決は、司法当局が長い間慎重な審理を重ねた結果下したものであり、厳粛に受けとめております。
 判決の内容については、行政府の責任者である私が論評することは適当でないと思います。
 また、佐藤孝行議員の辞職勧告の問題につきましても、これは事柄の性質上本人が判断すべきものであって、他から強制すべきことではないと思います。この問題も、国会議員の身分に関することでありますので、行政府の責任者としては意見を申し上げるのは差し控えたいと存じます。
 次に、証人喚問の問題についてでありますが、この問題については、現行の議院証言法は人権上種々の問題があって、ここ数年来各党間で論議されていることは御承知のとおりであります。私は、自由民主党の総裁として、かねてから党執行部に対し、倫理委員会と議院証言法の検討などを要請いたしておりますが、この問題は国会の事項でありますので、議院運営委員会や議会制度協議会において、各党間で御協議を願って結論を出すべき問題であると考えております。
 また、航特委の復活、政治倫理委員会の設置、政治家資産公開法の制定など、いろいろ御提案がありましたが、これらの問題につきましても各党間で協議していただきたいと思います。
 次に、軍縮の問題についてお答えいたします。
 私は、かねてより、過剰殺戮の域に達したと言われる核時代の現状を深く憂慮いたし、核の惨禍が二度と繰り返されるようなことがあってはならない、核兵器のない世界を実現することを願う被爆国日本国民の悲願に思いをいたし、さきに国会で採択された決議を踏まえ、全国民的な立場に立って第二回国連軍縮特別総会に出席をし、軍縮を通じる平和の三原則を強く世界に訴えた次第であります。
 わが国は、核軍縮を初めとする軍縮の促進のため、あらゆる努力を払ってきているところでありますが、他方、現実の国際社会の平和と安全が力の均衡の上に保たれているということも否定し得ざるところであります。私は、かかる現実を踏まえつつ、この均衡の水準を少しずつでも引き下げていくよう、現実の国際関係の中で実現の可能な措置を一つ一つ積み重ねていくじみちな努力が肝要であると考えます。
 次に、いわゆる核不使用の問題についてお尋ねがございましたが、私は、世界の各国がこぞって軍縮に取り組み、核兵器が二度と使われることのないよう、実効ある措置を一歩一歩着実に積み重ねていくことが肝要であると考えております。このような努力を行うことによってこそ、世界の諸国民の願望である核不使用を確かなものにすることが可能になると申せましょう。
 私は、このような考えに立って、さきの国連軍縮特別総会で、米ソ間の戦略核兵器の制限及び削減交渉、中距離核戦力交渉の実質的進展を訴え、また、核実験の全面禁止条約の成立の促進、核不拡散条約の普遍性の確保などを訴えてまいりました。
 また、軍縮に関する諸決議につきましては、わが国も従来から国連等の場において、たとえば核実験の全面禁止条約の審議促進を求める決議案及び兵器用核分裂性物質の生産停止決議案等を率先して提案し、右決議案は多くの非核兵器国の支持を得て採択されるなど、積極的な努力を行ってきているところであります。
 なお、非核地帯構想に関しましては、一般的に適切な条件がそろっている地域において、その地域の国々の提唱により非核地帯が設置されることは、核拡散防止の目的に資し得るものと考えますが、その地域の政治、軍事情勢など地域的特性が十分勘案されなくてはならないと考えます。
 次に、私の国連での軍縮演説とわが国防衛費との関係についてお尋ねがありました。
 軍縮演説の中でも述べましたように、今日の国際社会においては、その平和と安全が国家間の力の均衡により保たれていることは否定し得ないところであります。すなわち、今日の国際社会におきましては、各国はみずからの防衛力によって、あるいは他国の協力を得てみずからの安全を確保せざるを得ないのが現実でありまして、わが国の場合、専守防衛に徹する必要最小限度の防衛力を保持するとともに、米国との安全保障体制を堅持することによって国の安全を確保することとしていることは、一貫して国民の皆さんにも申し上げてまいったところであります。
 このような観点から、わが国の防衛費につきましては、「防衛計画の大綱」に従い、必要最小限度の経費を計上してきているところであり、今後ともこのような方針のもとに経済、財政その他各般の施策との整合性を確保しつつ、防衛費の規模を適切なものとしてまいります。
 もとより、わが国の平和と安全は国際社会の平和と安全のもとにこそ確保できるものであります。わが国は、そのための努力の重要な一環として、今後とも国連等の場を通じ、国際的な軍縮、軍備管理の促進を強く訴えてまいる所存であります。
 次に、憲法前文に触れつつ、非核三原則、防衛費のGNP一%以内の原則及び現行憲法のそれぞれの堅持について御要請がありました。
 私は、これまでも国会で再三再四明らかにしておりますように、鈴木内閣におきましては、現行憲法並びに非核三原則を堅持してまいりますし、防衛関係費が当面GNPの一%を超えないことをめどとすることという昭和五十一年の閣議決定を現在変更することは考えておりません。
 次に、私のハワイでの演説についてのお尋ねがございましたが、あの演説は、太平洋地域の大きな可能性を世界全体の平和と繁栄のために最大限に引き出していくには、この地域諸国の連帯と協力が必要であることを訴えたものであり、米国の軍事戦略への追従といった趣旨のものでは全くありません。誤解なきようにお願いをいたします。
 次に、農水産物の自由化についてのお尋ねでありますが、これは関係国との友好関係に留意しながら、わが国の農業、漁業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが必要であります。
 このため、相手国に、まずもってわが国農業、漁業の実情をよく知ってもらわなければなりません。また、わが国がこれまでに行ってきた市場開放措置もよく理解してもらわなければなりません。そして、相手国の理解を得ながら適切に対処してまいりますが、その際、食糧自給力強化に関する決議の趣旨を踏まえ努力してまいりますことは当然でございます。
 次に、財政問題に関する御質問にお答えいたします。
 まず、五十六年度税収でありますが、御指摘のとおりかなりの規模の減収を覚悟しなければなりません。まことに残念な事態でありますが、これは長期に及ぶ世界経済の停滞、予想外の円安、物価の安定など経済情勢が著しく変化したことによるものであります。
 粉飾というようなお言葉がありましたが、税収見積もりをいいかげんにしておいて、いたずらに歳出をふくらませたというようなことなら粉飾と言われてもいたし方ないと思いますが、五十六年度も五十七年度も、この二十年来例を見ないほど歳出増の抑制に努めているのでありますから、そのような御批判は当たらないと存じます。
 行財政改革の目的は、高度成長下で肥大体質になった行財政の体質改善であります。したがって、最も重要なことは歳出の抑制でありまして、経済情勢の変動から財政収支の改善が一時的に思うように進まないからといって、行財政の合理化、歳出の膨張の抑制という本来の目的を見失うようなことのないよう努力を続けてまいる所存であります。
 当面五十六年度の歳入不足については、現行制度にのっとり、国債整理基金からの繰り入れを含む決算調整資金からの繰り入れによって対処してまいります。
 また、五十七年度予算につきましては、五十六年度税収の落ち込みが五十七年度税収にも影響することは否定できないと思いますが、何分にも五十七年度はまだ始まったばっかりでありますから、税収動向について論議し得る段階に至っておりません。今後の経済動向を見守ってまいりたいと存じます。
 次に、経済成長に関する御質問でありますが、五十七年度のわが国経済を取り巻く内外環境を見ますと、国際的には多くの先進工業国において、ようやくインフレの収束と景気の回復が見込まれております。
 また、国内的にも物価の安定を背景として、個人消費を中心に明るさを取り戻してきており、第二次石油危機の影響が強く残った昨年度と比べて、内需を中心とした経済成長を可能とする条件が整ってきていると思います。しかしながら、先般発表になった五十七年度一—三月期の国民所得統計速報を見ますと、まだ景気回復のテンポは緩やかなものにとどまっている状況でありまして、政府としては、先般五十七年度の公共事業等について上半期の契約割合の目途を七七・三%とするなど内需の回復を図って経済運営を行ってきておりますが、今後とも経済動向に応じた機敏かつ適切な対応を図り、国内民間需要を中心とした着実な景気の維持拡大に取り組んでまいりたいと存じます。
 御指摘の所得税減税については、わが国財政の現状及び個人所得に対する所得税負担の割合が国際的にはなお低位にあることなどを考え合わせなければなりませんが、いずれにせよこの問題は、衆議院大蔵委員会に設置された減税問題に関する特別小委員会において検討が行われているところであります。
 なお、仲裁裁定につきましては、先般国会に付議して御審議をお願いしているところでありますし、賃金の引き上げにつきましては、労使が自主的に決定すべきものであります。
 次に、五十七年度補正予算をこの延長国会に提出するかとのお尋ねでありますが、技術的にも困難でありますし、五十七年度に入ったばかりの現段階で予算補正の時期を申し上げることは困難でありますが、いずれにせよ、今後の経済情勢を慎重に見定め、必要があれば適切に対処いたしたいと考えます。
 なお、先日、私が自由民主党の総裁選挙に意欲を示したと伝えられた件につきましては、今回の外遊の帰国に先立って行われた記者会見で、総裁選挙に関する質問がありましたので、党の総裁公選規程の手続を説明するとともに、この問題は党員が決めることであり、自分は自然体で、一切党員の皆さんに任せる、それよりも、むずかしい問題が山積している国政に毎日全力投球をしていきたいという趣旨のことを述べたまででございます。
 次に、五十九年度に特例公債依存の体質からの脱却という政府の基本方針に変わりはありません。五十八年度予算の編成に当たっても、その実現に向け最大限の努力をいたしたいと存じます。
 五十八年度予算の編成に際しては、何よりもまず歳出の一層の節減合理化に努力する必要があると考えます。このため、予算要求枠については昨年よりも一層厳しいものとするよう検討を指示しているところであります。
 また、税外収入など、歳入面におきましても広く見直し、検討に努力してまいりたいと存じます。
 臨時行政調査会の審議に行き過ぎがあるのではないかとのお尋ねでありますが、臨調は行政の制度及び運営について抜本的改革案を策定することを任務としており、その審議に当たっては、行政施策の基本的あり方についても、行政全般の立場に立った総合的見地から検討することが必要であると考えます。したがって、臨調の審議姿勢について問題があるとは思いません。
 最後に、総理・総裁として、平和憲法に貫かれた政治を行うことを約束しろとの御意見でありますが、自由民主党は、政権を担当して以来、ずっと一貫して憲法を遵守し、誠実に実施し、その結果、世界にも誇り得る平和で自由な国家の形成に寄与することができたことを誇りとしております。また、国民の皆さんからも、そのように評価していただいていると確信いたしております。自由民主党が政権を担当する限り、平和と民主主義、基本的人権の尊重の基本理念を掲げる現行憲法にのっとり、誠実に政治を行ってまいりますので、馬場議員の御懸念は無用かと存じます。(拍手)
    —————————————

発言情報

speech_id: 109605254X02619820621_009

発言者: 鈴木善幸

speaker_id: 1360

日付: 1982-06-21

院: 衆議院

会議名: 本会議