鈴木善幸の発言 (本会議)
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○内閣総理大臣(鈴木善幸君) お答えいたします。
最初に、今回の判決に関連して政治倫理の問題について種々御意見がありました。
まず判決についてでありますが、これは司法当局が慎重な審理を重ねた結果下したものであり、厳粛に受けとめております。私は、政治倫理を確立し、政界の浄化を図り、政治に対する国民の信頼を確保することが議会制民主主義を守っていく原点であると考え、先ほど来申し上げましたように所要の法改正もいたしております。過去において国民の皆さんから御批判を受けるような事態が発生したことは遺憾なことでありますが、私も含めて政治家は、それを反省の糧として、各人が身を正し、常に自粛自戒して努力していくことが必要であると考えております。
次に、佐藤孝行議員の辞職勧告案につきましては、先ほど申し上げたとおり本人自身が判断すべき問題であって、他から強制すべきことではないと考えます。
なお、この問題は、国会議員の身分に関することでありますから、行政府の責任者である私が意見を申し上げるのは適当ではないと存じますので、御了解を願いたいと存じます。
次に、証人喚問と倫理委員会の設置につきましては、これも先ほど申し上げましたように、私は自由民主党総裁として、かねてから党執行部に対し倫理委員会の設置と議院証言法の検討などを要請しておりますが、この問題はまさに国会の重要事項でございますので、各党間で御協議をいただきたいと存じます。
なお、航特委の復活については、いわゆる航空機輸入に関連して指摘された疑惑に関しては司法当局においてすでに解明が終わったと承知いたしておりますが、復活問題は引き続き議院運営委員会で協議するとの了解になっている由、伺っておりますので、各党間で御協議いただきたいと存じます。
次に、企業献金を禁止するように政治資金規正法を改正せよというお話でありますが、企業も一つの社会的実在としてその政治活動の自由は保障されているのでありますから、最初から企業献金が悪であると決めてかかるのはいかがかと存じます。
企業献金の問題も含め政治献金のあり方の問題は、選挙制度のあり方の問題と密接な関係を持っているだけでなく、各党のよって立つ財政基盤がそれぞれに異なっておりますから、現実問題として、今後の各党の政治活動そのものに直接関連してくる問題でございます。したがいまして、まず各党間で十分議論を煮詰めていただきたいと考えるものであります。
次に、参議院全国区制の改革についてでありますが、私は、就任以来、政治倫理の確立を図るためには金のかからない選挙制度の実現が急務であると考え、その一環として、参議院全国区制の改革につき各党各会派の大局的な立場での検討をお願いいたしてまいりました。その後、御指摘のような問題についても十分検討を行った上で、自由民主党案が現在国会に提出されており、社会党案も提出されているのは御承知のとおりであります。また、他の各党におかれてもこれまで鋭意検討がなされてきていると承知しており、今後さらに各党各会派で討議が重ねられ、金のかからない選挙制度の実現、ひいては政治倫理確立の一助として、ぜひとも今国会で参議院全国区制の改正が実現されますように切望いたすものであります。
なお、今国会の大幅な会期延長をお願いいたしましたのも、それにより各党各会派の十分な討議が行われるよう念願したためであります。
次に、経済財政問題についてでありますが、深刻な世界的景気後退の中にあって、各国とも成長の停滞、インフレ、失業、財政赤字の拡大等に悩まされております。このため、サミットでは、世界経済をいかにして再活性化するかについて真剣な議論が行われたのでありますが、総体的に見ますればわが国経済の情勢は最も良好であり、先進諸国もこれを評価しておるところであります。その中にあって、御指摘の歳入欠陥の問題など財政状況だけは他の先進諸国に比して悪い状態にありまして、就任以来財政再建に全力を注いでいるのもそのためであります。
しかしながら、先ほども申し上げましたとおり、高度成長下で肥大化した歳出の抑制については成果を上げてきておりまして、その努力は、五十八年度予算編成に当たってもさらに一段と強めてまいりたいと考えております。
なお、財政再建の名のもとに福祉の切り捨てをするとかの御批判がございましたが、第一次石油ショックによる景気停滞、税収の落ち込みの中にあって、公債の大量発行によって福祉政策をさらに推進した結果が、今日の財政の窮状の一因となっていることも否めない事実ではないかと思います。しかし、厳しい財政事情の中にあっても、社会的、経済的に真に恵まれない立場にある人々に対しては一層きめ細かな配慮をしていきたいと考えております。
五十九年度に特例公債依存の体質から脱却するという考えは政府の基本方針であり、その実現に向け最大限の努力をしてまいります。現段階で五十九年度までの財政事情をお示しすることは困難ではありますが、いずれにせよ、財政再建を進めるに当たっては、何よりも歳出の節減合理化を第一に考えてまいります。したがって、まず、大型増税などは念頭に置くことなく、歳出の節減合理化に最大限の努力を傾けたいと考えます。また、税外収入等歳入面においても広く見直し、検討に努力してまいりたいと存じます。
五十八年度予算編成に当たっても、ただいま申し上げた方針と同様に考えておりまして、当面予算要求枠につきましては、昨年よりも一層厳しいものとするよう検討、指示いたしております。
経済見通し、内需不振の様相についての認識、またこれにどう対処するかとの御質問がございましたが、先ほど馬場議員の御質問にお答えいたしましたとおりでありますので、詳細は河本経企庁長官から、また渡辺大蔵大臣から答弁をいたさせます。
次に、行政改革の問題でありますが、お尋ねの部会報告は、臨調内部の報告でありまして、政府に対するものではありません。部会報告につきましては、調査会において慎重に審議を進めている段階でありますので、財政効果の点を含め、いまの時点で政府としてコメントすることは差し控えたいと存じます。
なお、七月に予定されている答申につきましては、答申を受けた段階で速やかに政府としての施策の検討を急ぎ、所要の施策について、その立案、推進に取り組んでまいります。
次に、わが国の市場開放対策に関連して、いわゆる第三弾はあるのかというお尋ねがございましたが、わが国がこれまでとってきた一連の市場開放対策は、ベルサイユ・サミットにおいても、出席した各国首脳から誠意ある行動として高く評価されたところであります。私は、現在重要なことは、これら市場開放対策が所期の成果を上げるよう十分フォローアップをしていくことであると考えており、今後はできるだけガットの場などでの多国間の協議に重点を置いていくべきであると考えております。
なお、対ソ信用供与制限の問題についてお尋ねがございましたが、今回のサミットにおいては、昨年のオタワ・サミットにおけると同様、東西経済関係を西側の政治、安全保障上の利益と合致した形で進めること、さらに、このため各国は戦略物資の輸出規制制度の改善のための協力、輸出信用を制限するに当たっての商業上の慎重さの必要を含め、ソ連、東欧諸国との金融関係を健全な経済的基盤に基づいて注意深く取り進めることについて合意を見ております。
次に、反核運動についての私の考えについてお尋ねがございました。
私としては、多くの日本国民が平和、軍縮運動に熱心に取り組んでいることを真摯に受けとめており、御指摘の各団体の運動についても、核兵器のない世界を実現することを願う日本国民の悲願の表明であると受けとめております。
私は、第二回国連軍縮特別総会においても、このような国民の強い願望を体して、核軍縮を中心とする軍縮の促進を世界に向けて強く訴えてまいったところであります。
次に、矢野議員より、先般の私の国連での演説に触れて、国家間の相互信頼関係の醸成に係るわが国の役割りについてお尋ねがございました。
わが国は、平和憲法のもと、非核三原則を堅持し、軍事大国にならないことを決意し、平和国家としての道を歩んできております。
わが国は、このような独自の立場に立って、世界経済の発展、南北問題や第三世界における地域的紛争の解決などの面で、国力、国情にふさわしい貢献を行い、また、国際的な軍縮に向けて外交を展開してきておりますが、かくすることにより、わが国自身が安定した平和国家として各国からの信頼を得、その結果、ひいては世界的な意味での国家間の相互信頼関係の醸成にもつながるものと考えております。
次に、軍縮で生じた余力を経済開発に向けよという私の主張についてお尋ねがございました。
今日の世界では、一方では莫大な軍事支出が行われ、各国の社会、経済に大きな負担となっている反面、他方において極端な貧困が存在し、社会不安や地域紛争の誘因となりかねない状況となっています。私は、世界的な相互依存関係の深まりの中で、開発途上国の発展と世界経済の調和のとれた拡大を図り、ひいては世界の平和と安定を図るべきであると考えるものであります。
私は、今次国連における総会においても、国際社会全体がこのような認識に立って軍縮を推し進めるよう訴えてまいりました。わが国としても、自由世界第二位の大きな経済力を有する国として、世界経済の発展及び世界の平和と安定に貢献するとの観点から、今後とも新中期目標のもとに経済協力の着実な拡充に努めていく所存であります。
私としては、核兵器が二度と使用されることのないようにするためには、核軍縮のための実効ある措置を一つ一つ積み重ねていくことが肝要であると考えます。
かかる観点から、さきの国連における演説においても、米ソ間の戦略核兵器の制限及び削減交渉並びに中距離核兵器に関する交渉の実質的進展を訴えるとともに、核実験の全面禁止の早期実現及び核不拡散体制の強化を訴えてまいりました。私は、このような着実な努力を積み重ねていくことが、核兵器の先制的不使用を含め、核の不使用を確かなものにしていくゆえんであると考えております。
御指摘の核兵器不使用決議につきましては、このような考え方に立ちつつ、具体的な提案の内容を検討した上で適切に対処していく所存であります。
次に、今年八月予定のいわゆる日米ハワイ会談に臨む方針についてでありますが、米国がわが国の防衛努力について期待表明をしていることは御承知のとおりであります。わが国としては、わが国が防衛努力を行っていくに当たっては、米国の期待を念頭に置きつつも、憲法及び基本的な防衛政策に従い、あくまでも自主的に進めていく考えでありますが、防衛、安全保障問題について、日米で意思の疎通を図り、相互理解を深めていくことは重要なことでありますので、今後とも憲法及び基本的防衛政策を踏まえ、率直な意見交換をしてほしいと思っております。
最後に、防衛費についてお尋ねがございました。
防衛力の整備に当たっては、憲法及び基本的な防衛政策に従い、そのときどきの経済、財政事情などを勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、質の高い防衛力を着実に整備することとしております。五十八年度予算の編成に当たっても、このような基本方針のもとに「防衛計画の大綱」の水準をできるだけ早く達成する必要があること、財政再建が緊急の課題であることなどを総合的に勘案しながら慎重な検討を行い、わが国防衛のために必要最小限度の経費を計上してまいるつもりであります。
残余の質問につきましては、所管大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
〔国務大臣坂田道太君登壇〕