谷川和穗の発言 (安全保障特別委員会)

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○国務大臣(谷川和穗君) まずもって、最初にごあいさつを申し上げさしていただきたいと存じます。
 昨年十一月、中曽根内閣の発足とともに防衛庁長官に任命をされました谷川和穗でございますが、本日まで参議院安全保障特別委員会の諸先生方にごあいさつを申し上げる機会がおくれておりますことを、まことに恐縮に存じておる次第でございます。
 ひとつ今後ともよろしくお引き回し、御叱正お願い申し上げまして、それでは私より、最近の国際軍事情勢及びわが国の防衛政策につきまして、所信の一端を申し述べさしていただきます。
 最近の国際軍事情勢は、ソ連による一貫した軍事力の増強とこれを背景とする周辺地域及び第三世界への勢力拡張が顕著であります。アフガニスタンにおける情勢は、国際世論の厳しい中、依然としてソ連が約十万人に及ぶ兵力を投入し、同国に対する軍事介入を継続いたしております。このほか、中東における情勢としては、イラン・イラク紛争は解決の糸口を見出せぬまま推移し、さらにこの一年間にイスラエルによるレバノン侵攻が発生いたしました。また、イギリスとアルゼンチンとの間ではフォークランド紛争が生起し、さらに朝鮮半島及びインドシナ情勢も依然として緊張しております。
 ソ連は、グローバルな規模で軍事力の増強を行ってきていますが、極東方面におけるソ連軍の増強とこれに伴う行動の活発化も顕著なものがあり、わが国に対する潜在的脅威を増大させております。
 現在、ソ連はソ連全体の三分の一ないし四分の一に相当する核及び通常戦力をすでに極東地域に配備しておりますが、引き続き増強を続けておるものと見られます。特に注目を要するのは、最近目覚ましい極東地域におけるソ連の戦域核戦力の増強でありまして、わが国を含む広範な地域をカバーし得る戦域核配備を行っております。最近、グロムイコソ連外務大臣が、欧州における中距離核戦力交渉問題に関連して、中距離ミサイルのうち欧州地域で合意された数を超えるものは、西欧の目標に到達できないシベリアの線以遠に配備されることとなろうとの趣旨の発言を行ったと伝えられます。わが国としては、今日まで累次明らかにしてまいったとおり、中距離核戦力に関する米ソ間の交渉が実質的に進展し、グローバルなゼロ・ゼロオプションが実現することを希望しているのでありまして、ソ連が同交渉の結果として中距離ミサイルをシベリアに新たに移転させることを考慮しているのであれば、それは、アジアの緊張を増大させることともなり、これまでの極東ソ連軍の顕著な増強と相まって、この地域の平和と安定にとって大きな影響を与えることになります。
 そもそもわが国が進めているのは、必要最小限度の防衛力の整備であり、このようなわが国の防衛力の整備を理由にソ連の核兵器が極東に移動されるというのであれば、それはまことに当を得ていないと言わざるを得ません。
 近年、西側諸国の防衛努力は総じて比較的低調でありましたが、ソ連は、伝えられる最近の経済不振や食糧不足にもかかわらず依然として大幅な軍事支出を行っているものと見られ、その結果として、東西間の軍事バランスはこのまま放置すればソ連に優位に傾く趨勢にあることから、抑止力の信頼性を回復するため、実態に即した現実的な対処の仕方として、西側諸国が連帯してそれぞれの防衛努力等を図ることが肝要であり、さらにこのような努力と並行してソ連との間に戦略兵器削減交渉及び中距離核戦力交渉等を行い、実効的かつ検証可能な軍備管理、軍縮条約交渉を推進すべきであるという方向へ西側の理解は進んできております。
 おおむね以上に申し上げたような情勢認識を背景に米国は、厳しい財政事情のもと、歳出全体の伸びを実質ゼロに抑える中で、八四会計年度の国防省費については実質約一〇%増の二千三百八十六億ドルを充て、核及び通常戦力の両分野において全面的な近代化及び態勢の強化を図りつつあります。さらに米国は、同国のみでは十分でないとの認識から、わが国及び西欧等の同盟諸国に対し
てもそれぞれの地域において一層の防衛努力を強く期待しておるところであります。
 このような国際情勢のもとにあって、わが国がみずからの平和と安全を確保するために総合的な安全保障の立場から各種施策を推進しつつ、わが国に対する侵略を未然に防止するという基本方針に基づき、そして万一侵略が生起した場合には、これに有効に対処し得る実力を保持するため、自衛のために必要な最小限度において、質の高い防衛力の着実な整備に努め、日米安全保障体制を堅持しつつ、その円滑な運用に努めているところであります。
 政府は、このような考え方のもとに、昭和五十一年に閣議決定された「防衛計画の大綱」に従い、防衛力整備に努めてきたところでありますが、現状ではその規模において防衛計画の大綱の水準にまで至っておらず、質的に見ても、装備の老朽化、抗堪性、即応態勢及び継戦能力等の面で改善を要する点が多く残されており、現在防衛計画の大綱に定める防衛力の水準をできるだけ早く達成することが肝要であると考えております。厳しい財政事情のもと、昭和五十八年度の防衛予算につきましては、以上のような観点から、五六中業の初年度として、引き続き質の高い防衛力の着実な整備を図るという考え方のもとに、国の他の諸施策との調和を図りつつ、ぎりぎり必要な経費を計上いたしたのであります。
 さらに、諸外国の技術の動向に対応し得るよう装備の質的な充実向上を図るとともに、わが国の地勢、国情に適した装備を整備するため、装備の研究開発に力を入れ、引き続き、地対艦誘導弾等の開発を推進するほか、新対潜ヘリコプターシステム等の開発に着手いたしたいと考えております。
 日米安保条約によってわが国を防衛する立場にある米国がわが国の防衛に関心を有し、期待を表明することは当然のことと存じますが、わが国といたしましては、かかる米国の期待を念頭に置きつつも自主的判断に基づき、憲法及び基本的防衛政策に従って、防衛力の整備に努力してまいる所存であります。
 米軍との共同訓練につきましては、自衛隊の練度の維持向上、ひいては日米安保体制の円滑な運用に資すべく可能な限り実施してまいりたいと考え、さらに五条事態の発生に伴う日米共同対処の場面を想定して引き続き日米防衛協力のための指針に基づく共同作戦計画等の研究を推進させるとともに、在日米軍の駐留を実効あるものとして維持するため、駐留経費負担について、地位協定の範囲内においてできる限りの努力を続けてまいる所存であります。また、防衛施設の安定的使用は、わが国の防衛にとって必要不可欠なものであり、従来から関係地方公共団体、住民等の理解と協力をいただいて行ってきたところでありますが、今後とも防衛施設の設置運用と周辺住民の民生の安定との調和を図るべく、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する諸施策を講じてまいりたいと存じます。
 多年研究が続けられてきた有事法制の研究については、第一分類として区分している防衛庁所管の法令についての問題点についてはすでに国会に対して中間御報告を申し上げるところまで検討されてきておるのでありますが、引き続き第二分類の他省庁所管の法令に重点を置いた検討が進められております。これについては関係する法令もきわめて多く、なお時間を要すると思われます。
 最後に、米国に対する武器技術の供与の問題について申し上げます。本件は、大村長官が訪米した際、米国側から要請のあった日米間の防衛分野における技術の相互交流の一環としての問題でありますが、一年半にわたり政府部内で慎重に検討を重ねてきた結果、政府として防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることが、日米安全保障体制の効果的運用を確保する上できわめて重要となっていることにかんがみ、このたび、相互交流の一環として日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとで米国に対し武器技術を供与する道を開くこととし、その供与に当たっては、武器輸出三原則等によらないこととすることを決定いたしました。同協定においては供与される援助について、国際連合憲章と矛盾する使用、第三国への移転等に関し、厳しい規制を課しているところであります。
 したがって、この措置は、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念を確保しつつ行われるものであります。政府としては、今後とも基本的には武器輸出三原則等を堅持し、国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。
 以上申し述べましたごとく、現下の国際情勢のもと、国の独立と安全を確保していくことはきわめて重大であり、国の安全保障は国の最重要課題であると同時に、国民一人一人が真剣に取り組んでいくべき国民的課題であると考えます。
 堀江委員長初め委員皆様方の一層の御指導を賜り、万遺漏なきを期せますよう切にお願い申し上げ、国際情勢の報告並びにわが国の防衛政策についての所信の表明とさせていただきます。

発言情報

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発言者: 谷川和穗

speaker_id: 18568

日付: 1983-03-02

院: 参議院

会議名: 安全保障特別委員会