安倍晋太郎の発言 (安全保障特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○国務大臣(安倍晋太郎君) このたび外務大臣に就任をいたしました安倍晋太郎でございます。
 非才でございますが、委員長初め委員各位の皆様の御指導と御鞭撻のほどをお願い申し上げる次第であります。
 さて、安全保障特別委員会の開催に当たりまして、わが国の安全保障問題につき所信の一端を申し述べさせていただきます。
 わが国の安全保障政策は、わが国をめぐる国際環境をできるだけ良好で安定的なものとするよう積極的外交を展開するとともに、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に努めつつ、節度ある質の高い防衛力の整備を図るという三つの柱から成り立っております。
 本日は、このようなわが国の安全保障政策の三つの柱につきまして、私の率直な考えを明らかにし、皆様の御理解を得たいと存じます。
 相互依存関係の深まった今日の国際社会においては、世界の平和と安定なくしてはわが国の平和と繁栄を確保することはできません。とりわけ、現下の厳しい国際情勢のもとでは、わが国は、その国際環境をできるだけ良好で安定的なものにするための外交を広範な分野で積極的に推進していく必要があります。
 その際、わが国は、今後とも、日米友好協力関係を外交の基軸としつつ、西側先進民主主義諸国との連帯と協調を図るとともに、わが国に対する期待にこたえ、わが国の立場から積極的にその国力にふさわしい政治的、経済的役割りと責任を果たし、もって世界の平和と安定に一層貢献していく所存であります。
 かかる観点から、今般の中曽根総理大臣の訪米を通じ、同盟関係にある日米両国の信頼関係が一層強化され、また私の訪欧の結果、わが国と西欧諸国との間の相互理解が一段と深められたことはきわめて意義深いものであると考えます。
 また、わが国がアジアの一員として、アジア諸国との間に緊密な友好協力関係を発展させていくことは、わが国が積極的な外交を展開するための基盤としてきわめて重要であります。私は、今後ともこれら諸国との相互理解を一層深め、その発展と繁栄に寄与し、もってアジアの平和と安定に貢献すべく努力する所存であります。
 世界の平和と安定を確保していくためには、現在の東西関係をより安定した軌道の上に乗せる必要があり、わが国を含めた西側諸国が結束を維持しつつ、力の均衡を維持する努力を続けるとともに、他方において、このような均衡の水準を可能な限り引き下げていくための努力を推進していく必要があります。
 かかる観点から、わが国としては、核軍縮を中心とする具体的軍縮措置の着実な実現に向けて、国連、軍縮委員会等の場を通じ、貢献していく考えであります。また、わが国は、現在米ソ間で行われている核軍縮交渉の結果、核兵器が大幅に削減されることを期待しており、米ソ両国に対し、
戦略兵器削減交渉及び中距離核戦力交渉の実質的進展を図るよう強く求めてきております。
 特に、わが国は、かねてより極東を含むソ連全域においてSS20に代表される中距離核戦力の撤廃をソ連に求めてきておりますが、最近のソ連指導者の発言にあるように、中距離核戦力交渉の結果、ソ連が、極東に現存する中距離ミサイルに加え、新たなミサイルを同地域に移転する場合は、この地域の平和と安定を一層脅かすものであり、去る一月二十五日、ソ連側に強い遺憾の念を表明したところであります。
 政府としては、今後とも欧州はもとより極東の安全保障を損なうことのない形で同交渉の解決が図られるよう訴えていく所存であります。
 世界経済の健全な発展は世界の繁栄に不可欠であります。わが国は、世界経済の再活性化、自由貿易体制の維持・発展のため積極的な貢献を行っていく所存であります。
 また、第三世界の安定は、世界の平和と安定の確保にとって重要であり、なかんずく、開発途上国との相互依存関係がとりわけ深いわが国の平和と繁栄の確保にとり欠くことができません。わが国は、政府開発援助の新中期目標のもとで、開発途上国に対する経済協力を拡充し、これら諸国の政治的、経済的、社会的強靭性の強化に貢献するとともに、平和維持や民生安定のための国連等の諸活動に対して積極的に参加していくことによって、第三世界における紛争や対立を未然に防止し、またその平和的解決に資するよう政治的、経済的役割りを果たしていく所存であります。
 日米安保体制は、わが国の安全保障政策の重要な柱であり、わが国の平和と安全の確保を図っていく上で欠くことができません。
 日米安保体制の信頼性を高めるためには、日米双方において日米安保体制の抑止力の維持・向上のための努力を継続するとともに、わが国としては、米国民をしてわが国を防衛することが、その基本的国益に沿うゆえんであると信ぜしめるような良好な日米関係を維持することが重要であります。
 かかる観点からも、政府としては日米友好協力関係を一層緊密なものとするよう、今後とも真剣に努力を進めていく決意であります。
 対米武器技術供与の問題については、政府部内で慎重に検討を重ねてまいりましたところ、防衛分野における米国との技術の相互交流を図ることは、日米安保体制の効果的運用を確保する上で、きわめて重要となっていることにかんがみ、今般政府は、かかる相互交流の一環として、米国に対し武器技術を供与する道を開くこととし、その供与に当たっては武器輸出三原則等によらないことを決定いたしました。
 この場合本件供与は、日米相互防衛援助協定の枠組みのもとで実施することとし、これにより国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての理念は確保されることとなります。
 なお、政府としては、今後とも基本的には武器輸出三原則等を堅持し、昭和五十六年三月の武器輸出問題等に関する国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。
 わが国は、日米安保体制のもとで、憲法及び基本的防衛政策に従って、自衛のため必要最小限度の防衛力の整備を図ることとしておりますが、この努力は、わが国の平和と安全を確保する上で重要であり、また、自由主義国の有力な一員としてのわが国の責務であります。
 なお、かかる防衛力整備は、専守防衛に徹したものであり、近隣諸国に脅威を与えるようなものではないことは言うまでもありません。
 以上、わが国の安全保障政策のあり方につき所信の一端を申し上げました。政府は、今後とも国民の皆様の御理解を得つつ、わが国の平和と安全の確保に真剣に取り組んでいく所存であります。
 ここに改めて、本委員会の皆様の格段の御指導と御鞭撻を賜りたく、お願いを申し上げます。

発言情報

speech_id: 109813818X00219830302_005

発言者: 安倍晋太郎

speaker_id: 29148

日付: 1983-03-02

院: 参議院

会議名: 安全保障特別委員会