上條勝久の発言 (本会議)
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○上條勝久君 自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま趣旨説明の法案に限定をいたしまして、総理並びに関係大臣に質問を行いたいのでありますが、まず冒頭に、当面する内外の問題について総理の御見解をただしておきたいのであります。
すなわち、米ソ核戦力制限交渉の成り行き、ソ連の大韓航空機撃墜事件、ラングーンにおける爆弾テロ事件による朝鮮半島の緊張、ソ連の核ミサイルSS20を含む極東での軍事力の増強等、わが国を取り巻く国際情勢はまさに緊迫の状況にあります。
このときに当たり、中曽根総理がレーガン、コール両首脳をわが国に迎えられ、両国との友好関係を深められるとともに、コール首相とは西側陣営の結束による世界の平和と安定の維持を確認され、さらにレーガン大統領とはサミット参加七カ国の安全保障は一体不可分であるとの五月サミット政治声明を再確認し、米ソ中距離核戦力制限交渉をめぐって、アジアを犠牲にしないことを再度確認されたことは、これを高く評価しなければなりません。
しかしながら、わが国を取り巻く緊迫する国際情勢の中にあって、国民の信託にこたえなければならない行政改革臨時国会が、一カ月有余の長きにわたって空転の状態にありましたことは、その理由のいかんにかかわらず、国民から預かっている国政審議権をみずから放棄するものであり、断じて許さるべきことではないと考えます。
政治倫理が国政の基本であることは、国民道徳が国民生活の基本であると同様に、きわめて重要であることは申すまでもありません。有権者の信託によって国会の一員となった議員の一人一人が、常に足元を見て行動し、いやしくも信託された有権者の批判を受けるようなことのないように自戒自重することが政治家の倫理であり、その集積が政治倫理であると確信するものであります。
このような状況のもとにおいて、今日の国際情勢に今後どのように対応されるのか、防衛、経済問題を含む首脳会談の結果をどう受けとめておられるか、さらには今国会の空転と政治倫理に対する考え方、人心一新のための衆議院解散、総選挙の意義について、この機会に国民各位に向けて中曽根総理の率直な所信を述べていただきたいのであります。
さて、行政改革は内政における最大の国民的課題であります。次の時代が創造力と活力に満ちた社会となるためには、社会経済情勢の変化に即応して、国、地方の行政全般について新たな角度から見直しを行って、時代の要請にこたえ、国民から見てむだのない効率的な行政をつくり上げることが必要であります。国民もまた、この行政改革にいまだかつてない関心と期待を寄せ、政府の取り組みと国会の対応を見守っております。わが党といたしましても、今般の土光臨調の五次にわたる答申を妥当な内容の提言と受けとめ、答申に沿った改革の推進に努力しているところであります。政府においては臨調答申を最大限に尊重するという基本方針を踏まえて、すでに国鉄改革や年金改革等に熱意を持って取り組んでおられることを多とするものであります。
しかしながら、言行一致の行政改革の断行は容易なものではありません。行革の成否は、一に今後における総理の強い統率力にかかっているのであります。前鈴木内閣における第二次臨時行政調査会設置以来、行革中曽根の名を広く印象づけられた中曽根総理が、内閣を率いて力強く行革の本土俵に上がられていることに対し、国民各位とともに大きな期待を寄せるものであります。
そこで、ただいま提案された行革法案は、新行革大綱に基づいて、今後政府が取り組む全体構想の中でどのような位置づけを持つものであるか、総理の御見解を承りたいのであります。
本来、行政改革は、機構、仕事、人、予算の合理的削減を図って、時代に対応できる簡素で効率的な行政を目指すことが基本的な目的であり、効果と考えます。しかるに、法案ではこの点が不明確であり、国民によく理解していただく意味において政府の説明を求めたいのであります。
まず、総務庁設置法案は、臨調の第三次答申を踏まえ、総合調整機能の強化方策の一環として重要な意味を持つものであり、本法案の内容は、同答申にある総合管理庁構想に比較して、若干多面的な機能を総務庁に付与するものであると考えます。そこで、総務庁構想が今後の行政改革の推進に真に寄与することになるのかどうか、さらには臨調答申の趣旨に沿った運用ができるのかどうか、再編成の基本的趣旨について総理の御所見を伺いたいと思います。
次に、国家行政組織法の一部改正法案は、国の行政組織に関する規制に幅を持たせることによって、行政需要の変化に敏速に対応できるよう、行政組織の機動的再編を促進することをねらいとするものであり、激動する今日の社会経済情勢のもとで、行政がこれに順応する体制をつくることはまことに時宜にかなったものであります。このことに対し、国会による統制機能を妨げるものとの立場から反対の意見もありますが、行政組織の根幹をなす省庁の設置については当然として、その内部部局についてまでも法律事項とされている現行制度については、この際改めることが適当であると考えます。その点について政府の所見を伺います。問題は、今回の改正を生かして、今後どのようにして時代の変化に対応し得る機構の簡素化及び合理化のための再編が行われるかどうかということであります。臨調の最終答申では、八省庁に及ぶ内部部局の再編や、ブロック機関の整理合理化の提言が行われておりますが、この点、今後どのような手順で進められるのか、総理の御見解を伺います。
次いで、府県単位機関の整理法案について伺います。
これにより、出先行政機関の局や部の一部が事務所に改められることとなっておりますが、問題は名称ではなく、行革の本旨にのっとり実質的にも各機関の整理合理化が行われなければなりません。この点についてはわが党としても今後厳しく見守ってまいりますが、この際、行政管理庁長官の見解をただしておきたいのであります。
また、国民の活力に深い関係を持つ行政事務簡素合理化法案においては、臨調最終答申で提言された許認可の整理合理化のうち、早急に措置すべき事項を取り上げておりますが、政府は、今般積み残されたものについて今後どのような手順で実施に移されるのか。許認可整理については、臨調の指摘をまつまでもなく、即時即応の構えで政府において積極的に取り組むべきものであると考えますが、あわせて長官の見解をお伺いいたします。
次に、財政改革関係について質問をいたします。
わが国の財政はいまや破綻に瀕し、国債発行残高は今年度末には約百十兆円に達しようとしており、その歳出規模が五十兆円を超える一方で、租税収入は三十二兆円と、その三分の二にも満たない状況であり、しかも歳出のうち八兆円が国債の利払いに充てられているのであります。単純にたとえて言えば、三十二万円の月収で月々五十万円以上の支出をしており、そのうちの八万円は借金の利子であるという、まことに異常な事態にあると申せましょう。
巨額の公債は財政のみの問題ではなく、将来にわたって国の経済や国民生活にいろいろな弊害を引き起こす心配もあります。公債の償還は結局は税金によることからすれば、公債発行は負担を後世代に転嫁することとなりますが、彼らの時代をみずからの選択で形成できる形で財政を引き継ぐべきであって、子や孫に借金を背負わせるようなぶざまな事態は断じて避けなければなりません。したがって、財政改革を推進し財政の対応力を回復することは、国の発展と安定上ぜひともやり遂げなければならないこれまた大きな国民的課題であります。
これがためには、行政府、国会、政党、さらには国民各層各位が、総論賛成各論反対に陥ることなく、痛みを等しくするとの見地に立って、制度、施策の根本にメスを入れ、歳入歳出構造の見直しを行うべきものと考えますが、この点に関し総理及び大蔵大臣の御決意のほどを伺います。
さきに政府は「一九八〇年代経済社会の展望と指針」において、「対象期間中に特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引下げに努める」との努力目標を設定しましたが、これは財政改革に対する意気込みを示すものとして評価するとともに、当局がこの目標に向けて最大限の努力を傾けることを強く期待するものであります。
そこで、この努力目標達成の具体的計画の策定は流動する経済情勢の中では困難であるといたしましても、財政改革を進める手がかりとなる何らかの中期的な財政展望は示すべきであると考えます。この点、大蔵大臣の御所見を伺います。
関連をして、行政改革と財政需要の問題でありますが、行革を進めるに当たっては国の規制や関与は極力これを緩和し、行政が個人の自立や民間の邪魔をしないで、自主的活力を引き出すことが重要なことは申すまでもありません。政府は、行財政改革を強力に推進する中にあっても、国民生活の安定、国の安全保障、社会資本の充実、科学技術の振興、国際関係等の見地から特に必要な行政需要にはこたえる責務があります。すなわち、民間活力を導入した行革を断行して、行政需要は全体として抑制しながらも、真に必要な需要については財政で措置しなければなりません。
わが国の財政は、六十五年度赤字国債依存脱却を目指していよいよ厳しくなることが予想されますが、政府は財政再建下の行政改革と、真に必要な行政需要との関係にどう対応されるのか、総理及び大蔵大臣の見解を求めたいのであります。
終わりに、行政改革は、当面する財政再建とともに国家将来の政治的大計であります。変転と進歩の激しい時代には、従来の発想や慣行、手法にとらわれることなく、時代を先取りした展望を開くことが緊要であります。このためには、多少の犠牲、痛みもありましょう。しかしながら、政府施策の内容を広く国民に伝え、国民各位の理解と協力があれば、この困難は必ず乗り切れるものと確信をいたします。
中曽根内閣は、この国民的課題である行政改革達成のために、格段の決意で当たられ、国民各位の強い期待にこたえられんことを切に希望して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕