渡辺朗の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○渡辺朗君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題になりましたサミット報告に関連し、中曽根総理に対して、若干の問題につき、お伺いをしたいと存じます。
今回のロンドン・サミットは、世界経済の長期的な低迷と国際情勢の深刻な危機感の中で開かれたものであります。殊に米ソを中心とする東西関係が極めて悪化し、さらにイラン・イラク戦争はペルシャ湾へ拡大するなど、世界の平和が重大な局面を迎えているさなかでもありました。まさに人類が今抱いている最大の願いは、いかにして核戦争の危機を回避し、平和を維持するかということにほかなりません。
そうした観点から、私ども民社党は、サミットに出発される中曽根総理に対し、幾つかの提言を行いました。すなわち、今回のサミットの使命は対立している国際情勢を緊張緩和の方向に大きく転換させることであり、そのためには、東西関係の改善を図るとともに、中断されている米ソの核軍縮交渉を再開するためにあらゆる努力を払うべきことを要望したのであります。また、米ソの首脳会談を早期に実現することによって、暗礁に乗り上げている事態を切り開くことを私どもは積極的に促進しなければならないと考えました。そして、そのことを総理に要請をいたしました。
このような立場から、今回のロンドン・サミットに対しましては、私どもは、東側に対してサミットが対話拡大の柔軟な姿勢を打ち出し、軍備管理交渉にソ連の復帰を呼びかけたことに対し、これを建設的なものとして評価するにやぶさかではありません。その観点から、まず政治問題、特に東西関係の展望について幾つかお尋ねをいたしたいと存じます。
第一は、ロンドン・サミットと前後して開かれていたコメコン・サミットの評価についてであります。
この会議の性格及び発表された宣言あるいは諸文書をどのように読み取るべきでありましょうか。西側の呼びかけにもかかわらず、モスクワは依然としてかたく扉を閉じたままと見るべきでありましょうか。あるいは、表面の動きとは別に、緊張緩和に通じる何らかのシグナルを感知することはできないものでありましょうか。今日のぎりぎりした東西関係の中で、世界は今その一点に注目していると言っても過言ではないと思うのであります。総理はどのような分析をしておられるのか、この点についてお尋ねをしたいのであります。
第二は、米ソの首脳会談についてであります。
行き詰まった事態を首脳の会談によって打開した事例は、今まで既に幾たびかありました。今日の国際情勢の危機的な姿を認識するならば、この状況を打開するために米ソの首脳に決断を求めること、これが我が国として最優先の外交課題の一つであると存じます。総理は、米ソ首脳の会談の実現のために積極的に双方に働きかけるべきだと存じますが、決意のほどを聞かしていただきたいのであります。(拍手)
既にアメリカ大統領は柔軟な姿勢を示していると報道されております。他方、ソ連の指導者は、依然としてアメリカには厳しい態度を示しながらも、フランス、西ドイツの西側首脳に対しては、それと会談が予定されているのであります。加えて、国連事務総長による米ソ仲介の動きもあるやに伝えられております。そのように情勢が動いているときに、すべては大統領選挙後にまつとか、あるいはまた、周到な準備があり成功が確実なものでなければなどという条件をつけるべきではないと思うのであります。日本国民の願いを代表して、我が国の総理はみずから何かをなすべき時期に今あると思うのでありますが、総理、いかがでございましょうか。同時に、我が国は、政府のみならず議会及び民間のレベルにおける多様な交流を今、日ソ間に推し進めることが重要な意義を持っていると考えるものでありますが、この点について総理の所信をお伺いいたします。
第三に、核軍縮交渉の再開についてであります。
交渉のテーブルにソ連が復帰することは、国際緊張緩和のために不可欠のものであることは言をまちません。それはいかなる条件が熟すれば可能になるとお考えでありましょうか。一方が他方に対して軍事的に優越することによって相手を交渉に引き出すことができるという考え方もあります。だが、それでは米ソの限りのない軍拡競争の悪循環をもたらすことになるでありましょう。しかし、双方の間に優越ではなく均衡状態、すなわちパリティが生じているとする相互の認識があれば、抑止機能は生まれ、交渉の道もまた開けてくるのではないかと考えるものであります。現状の凍結を出発点としての交渉再開の展望はいかがなものでありましょうか。
今日、アメリカは、均衡を取り戻すという名のもとに強いアメリカヘの道を歩んでおります。それに対しソ連は、米国が配備済みの戦域核、ミサイルの撤去なくしては交渉に応じないという態度を主張しております。こうした状況を前にして、米ソ両国の軍事バランスを総理はどのように認識しておられるのでありましょうか。総理の言われるような均衡と抑止というものは、既に存在しているのではないでしょうか。米ソを交渉再開のテーブルに着けるために我が国としてどのような役割を果たし得るのか、この問題について総理の御所見を伺いたいのであります。
次に、サミットにおける経済問題の幾つかについて質問をいたしたいと存じます。
サミットの経済宣言には、景気回復は定着したという楽観的な認識が述べられております。だが、欧州の多くの国々は高い失業率に悩み、経済の再活性化を求めて苦しんでいるのが実情でもあります。また、ヨーロッパ経済がアメリカの高金利によって足を引っ張られていることも事実であります。そうした情勢は、必ずしも日米欧が一枚岩ではなく、深刻な利害の対立を内包しているという情勢と考えるべきではないでしょうか。サミットにおいて採択された経済宣言は、抽象的な合意を盛り込むにとどまっております。それは、各国の意見調整が難航し、重要課題に対しては具体的な施策で一致を見ることができなかったからではないでしょうか。
そうした中で、第一にお伺いをしたいと思いますのは、我が国が提案した新ラウンドについてであります。
もとより、保護貿易主義の台頭を抑制し自由貿易体制を維持発展させるために、新たに先端技術の分野、サービス貿易などに関するルールづくりを含めた新ラウンド、これは極めて重要な意義を持つものであり、各国と協調の上にその実現が図られるべきものであると考えます。しかし、それにもかかわらず、開始時期についての合意を得ることができなかった理由は一体何でありましょうか。伝えられるように、日本の経済力を警戒するヨーロッパ諸国の反対のゆえでありましょうか。あるいは、いわゆる太平洋の時代なるものが余りにも喧伝され、その中において日米の協調ぶりがヨーロッパの反発を招いたからではありませんか。そうした事情について明らかにしていただきたいのであります。
なお、これに関連して、総理がロンドンの国際戦略研究所で行われたスピーチの中で、日米欧三極の政治的、経済的連帯の実現を述べておられることについてであります。ここでいう、総理の言われる連帯とはいかなる内容のものであるのかを明らかにしていただきたいと存じます。また、我が国の提唱した新ラウンドに対してすらあのような風当たりが生じている中で、日米欧の三極連帯をどのように築いていかれようとするのか、総理の描いておられるシナリオを国民にお示し願いたいと存じます。
さて第二に、途上国が直面している累積債務問題についてであります。
これは今も触れておられましたけれども、八千億ドルにも及ぶ累積債務を抱える途上国は、今先進諸国の銀行への年内返済分はもとより、金利の支払いさえも難しい状態になってきているのであります。同時に、これらの国々は、厳しい経済調整策をとることによって、国民の生活水準は極度に切り下げられておるのが実情であります。今後さらに高金利によって債務国の負担が増大すれば、経済不安や社会不安を招き、ひいては国際的な金融混乱が生じることを憂慮するものであります。
このような事態を避けるためには、アメリカの高金利の是正措置をも含め、幾多の有効な措置が講じられなければならないと存じます。この問題に対し、我が国政府としていかなる施策を展開していかれようとするのか、総理の御所見を聞かせていただきたいと存じます。
第三は、我が国の政府開発援助、ODA問題についてであります。
総理は、みずからアジアの一員としての立場を強調し、サミットに臨まれました。だが、我が国の国際的に公約した対外接功費は、残念ながらその言葉と相反するものとなりかねません。確かに本年度の予算においては、厳しい財政事情の中にもかかわらず、ODAについての配慮がなされた点は認めるものであります。だが、それをもってしても、我が国のODAはDAC十七カ国の平均を下回っており、目標からはるかに離れたものであることは御存じのとおりであります。
しかも来年度は、五カ年間にODAを倍増するという国際的な我が国の公約の最後の年度になるわけであります。この公約は、現状のままでは到底その達成がおぼつかないのではないでしょうか。もし、理念だけが語られて実行が伴わないことになれば、せっかく高まってきている我が国の国際的信用は著しく傷つけられるものになることを私は恐れるのであります。しかも、途上国への協力問題は我が国にとって重要な平和戦略として位置づけられ、いわば国策と言えるものであります。途上国に対して協力関係を強めていくという決意をみずから語られた総理として、どのような方針を持って来年度に臨もうとしておられるのか、お尋ねを申し上げる次第であります。(拍手)
さらに、最近、国連の機関であるユネスコからアメリカが脱退を決定し、英国、西ドイツがこれに続くのではないかと伝えられている問題についてお伺いをいたします。
このような事態をもたらした理由は多々あるでありましょう。だが、サミットの中ではこの問題の打開策が協議されなかったのでありましょうか。解決の協議をすることなしに先進諸国が脱退するというような動きは、ロンドン・サミットの宣言にうたってあります善意と協力の精神に照らしてもまことに遺憾と言わざるを得ません。ましてユネスコは、その憲章の中に、教育、科学、文化の国際協力を通じて平和と安全保障に寄与する、このような目的をうたっておる組織であります。
総理、この分野こそ我が国が最も独自性を発揮し、世界に貢献し得るいわば働き場所ではないかと思うのであります。我が国は、進んでユネスコ問題の解決に努力するとともに、アメリカ初め先進国を説得すべきではないでしょうか。この問題に対して総理の建設的な御見解を望んでやまないものであります。
最後に、我が国が経済力を反映して政治的発言力を強めてきたことは、国民として喜ばしいことであることを申し上げたいと思います。しかし同時に、国際的責任の重くなってきていることも総理が述べておられるとおりでありましょう。問題は、これからどのようにその責任の内容を定義し、どのようにそれを実行するかにかかっているのであります。それは、我が国が南北のかけ橋としての役割を誠実に実行する、そのことと東西対話の実現に全力を尽くす、そこにあると私は信ずるものであります。
我が国がこのような使命を果たしていくことを総理に強く要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕