吉川春子の発言 (本会議)

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○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、臨時教育審議会設置法案に関連し、総理並びに文部大臣に質問いたします。
 総理、あなたは、戦後政治の総決算として、二十一世紀の青少年の育成を目指すのだと、極めて口当たりよく教育改革を主張なさいます。しかし、本当に教育現場の実態、国民の教育要求というものを正しく認識しておられるのでしょうか。今日の深刻な教育状況をつくり出したのは一体だれなのでしょうか。歴代自民党政府の教育政策の結果ではありませんか。教育改革を論ずるのなら、まずその責任を明らかにすべきであります。ところが、総理の言われる教育改革は、この点の深い反省や真の教育的配慮よりも、あなたの言う西側の一員論や不沈空母の乗組員づくりなどを目指す極めて政治的なものではないかと、私たちは危惧の念を抱かざるを得ません。
 そこで、まず最初に、総理、あなたが教育改革で目指すものは何なのか、率直かつ具体的に明らかにしていただきたいと思います。
 総理、国民が願う教育改革をと言うのなら、まず何をなすべきでしょうか。それは国民の声に耳を傾けることです。せめて四十人学級を早く実現してほしい、マンモス校を解消して教育的環境を整備してほしいという声は、先生や父母たちの切実な声なのです。先日の新聞の世論調査でも、「教育改革でまず何から取り上げたらよいか」と八項目を挙げたのに対し、一クラスの人数を減らしてほしいというのが一番多かったのです。また、総理は、今国会でも既に千七百万人の私学助成の増額を求める請願署名が提出されていることを御存じですか。
 これらの教育条件の整備は、教育基本法に規定するように、政府の教育に対する第一の義務ではありませんか。これを放棄して何が教育改革でしょうか。まず政府の責任を果たすべきです。ところが、臨時行政改革推進審議会の報告は、またしても四十人学級の実施を引き続き抑制する、私学助成も引き続き総額の抑制を図るとしています。国民の教育への願いを踏みにじるにもほどがあります。
 総理、四十人学級を来年から実施するとしても、年間予算は平均七十五億円、P3C一機分のわずか四分の三の予算にすぎません。行革特例法の延長を行わず、来年からこれを実施する、マンモス校の解消計画を立て予算も増額する、私学助成も大幅に増額する、そのためにも教育予算の削減をやめ、必要な教育予算は確保すべきではありませんか。これを拒否するのなら、それは安上がりの危険な教育改革を目指すものと断ぜざるを得ません。明確な答弁を求めます。
 次に、総理の憲法、教育基本法に対する姿勢の問題についてです。
 あなたは、これまで教育基本法を守るとたびたびおっしゃいました。ところが、審議が進むごとに、教育基本法の改悪にまで進むのではないかという疑念が強まる一方です。森文部大臣は衆議院で、審議会では教育基本法にとらわれず自由に論議してもらうと答え、また人選に当たっても教育基本法改正論者かどうかは基準にしないとも答えておられます。自民党の藤尾政調会長は、我が党との協議の中で、教育改革の目的は占領下に与えられた憲法、教育基本法の見直しにあると言明し、また奥野元文部大臣も、教育基本法まで見直しはしないという中曽根総理の発言について、本心からそう思っているとは思わない、彼は彼なりの戦略戦術を使ったのでしょうと述べているのです。さらに海部元文部大臣も、教育制度の根幹に触れるような議論までいくかもしれないと述べています。
 このように見てくると、自由な論議の中で教育基本法改悪まで含む答申が出されるのではないかとの危惧の念を抱くのは私一人ではないと思います。結局は、この法律によって、教育基本法が守られるところか、逆に教育勅語のような教育憲章が新しくつくられるということになるのではありませんか。そうでないというならば、教育基本法改悪の歯どめがどこにあるのか、明確に答えていただきたいと思います。
 総理、次に私が強く指摘したい点は、総理の教育改革構想が極めて非民主的であるということです。
 総理は、施政方針演説で、国民の総意による教育改革を進めると明言されました。ところが、委員はすべて首相の直接任命であり、しかも国会論戦で総理が明らかにされたように、国民の反対の声が強い中教審答申を土台にし、全く総理の私的な諮問機関である文教懇の報告を重要な資料として論議を進めるというものであります。
 そもそも教育基本法の理念である教育の中立と
自主性の原則からすれば、教育論議を進める第一の前提は行政からの独立、第二に、何よりも国民の英知を結集し、国民合意を得ることが必要であるにもかかわらず、この法案では一体どこに国民総意を酌み取る保障があるのでしょうか。委員の人選も、事実上総理の諮問に忠実な人物に偏ることが避けられないのではないでしょうか。
 さらに重要な問題は、自民党、公明党、民社党によって修正された部分であります。三党による修正は、首相直属の審議会という基本的な性格には何ら手を触れないばかりか、首相による罷免権、委員の守秘義務をあえて盛り込むなど審議会への統制と密室性を一層強化し、教育への政治の介入の道を開くものであります。これは「教育は、不当な支配に服することなく、」とした教育基本法を土足で踏みにじるものではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
 また、国民合意による教育改革のためには、審議会の公開は極めて重要であります。
 総理及び文部大臣は、公開にすると自由な論議ができない、一人一人に圧力がかけられるなどと言い、非公開を貫こうとしております。子供の教育を語るのにどうして秘密が要るのでしょうか。戦後の公選制教育委員会も公開で行われ、あなた方が忌み嫌う中野区の準公選の教育委員会も公開で行われておりますが、ここでは委員の一人一人に区民から圧力がかけられたことがないどころか、子供の教育について区民と教育委員会が一体となって取り組んでいるのです。国民的合意による教育改革と言いながら、どうして密室の審議に押しとどめようとするのでしょうか。率直な答弁を求めます。
 総理、結局あなたが進めようとする教育改革なるものは、国民の期待にこたえないばかりか、安上がりで、しかも教育の反動的再編という極めて危険な方向をたどろうとしていることは明らかです。それは、教育の中立を侵して政府の特定の見解を押しつけ、憲法違反の教科書検定に見られるように、安保条約擁護と軍事大国に奉仕するものにほかなりません。このことを指摘し、本法案に強く反対を表明して私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 110115254X02219840713_021

発言者: 吉川春子

speaker_id: 26901

日付: 1984-07-13

院: 参議院

会議名: 本会議