古賀雷四郎の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○古賀雷四郎君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、当面する内外の重要課題について、総理初め関係閣僚に対し若干の質問をいたします。
質問に入る前に、長野市信更町の国道十九号線において、バス転落により、日本福祉大学の学生及び学校関係者の二十五人の死亡という痛ましい事故が発生いたしました。謹んでここに亡くなられた方々の御冥福を祈るとともに、御遺族のお見舞いを申し上げたいと存じます。
政府並びに地方自治体等は、事故発生原因の徹底的究明を行うとともに、再発防止に万遺漏なきを期せられるように強く要請をいたします。
さて、中曽根総理、あなたは十数年ぶりに自由民主党総裁に再任されました。そして、この難しい時期の政権を引き続き担当することになりました。総理は、就任以来、文字どおり東奔西走、世界の首脳外交を積極的に展開し、今や我が国の国際政治の面における責任と役割は確実に高まっております。また、内政面においても、従来の行財政改革を強力に推進し、続いて教育改革に取り組む姿勢を示すなど、戦後政治の総決算に着手していることは御承知のとおりでございます。こうした二年間にわたる総理の業績は、世評、仕事師内閣と言われ、高い評価を受け、中曽根内閣及び自由民主党に対する最近のマスコミの世論調査では、内閣発足以来、最高の支持となっていることは御承知のとおりでございます。
本年は、大戦後四十年、我が党結党三十年、内閣制度百年の大きな節目を迎えております。そして、三十一世紀は指呼の間に迫ろうとしていることは御理解のとおりでございます。今日の重大時局を乗り切るには、従来の概念にとらわれず、創造的な発想とそれに伴う実行が政治に求められていると存じます。総理は、これまでの経験を踏まえ、この難局をどう認識し、分析し、政権を担当していく決意であるか。また、今日、我が国が経済大国として、国際国家としてあるのは、自由と民主主義を掲げ、戦後約四十年政権を担当してきた我が自由民主党政治により実現したものであります。今後も国の命運を担うのは我が党以外にはありません。今こそ二十一世紀を目指した新しい国づくりの道、国家目標を国民の前に示す必要があると考えます。総理の所見を伺いたいのであります。
次に、外交問題について伺います。
まず、軍縮問題についてであります。
総理が、本年は「平和と軍縮の年」であるといみじくも言われているとおり、現在、世界の平和と安定にとって最も緊要な課題は軍備管理、軍縮の促進を中心とする安定した東西関係であります。この観点から、今月初め、ジュネーブにおける米ソ外相会談で今後の米ソ交渉の枠組みにつき基本的に合意を見たことは大いに歓迎すべきことだと思います。しかしながら、世界の平和と安定の基礎となるべきこの交渉の見通しにつきましては、米ソの立場が大きく隔たっているところもあり、楽観を許さないものと予想されます。このような状況において、米ソ間の真摯な対話を期待しつつ、我が国としては、米ソ間軍備管理、軍縮交渉の進展のためにいかなる努力を払っていく所存であるか。まして我が国は、国連軍縮会議等の場でも具体的な軍縮措置の実現に向けて積極的に貢献していかなければならないと思いますが、総理の決意をお伺いいたします。
次は、訪米の成果と今後の日米関係についてであります。
さきにも述べましたように、本年は、米ソ間の軍備管理交渉等を通じ東西関係の進展が期待される年であり、また世界経済のインフレなき持続的成長の確保という観点からも重要な年であります。このように、世界の平和と繁栄にとって節目ともなり得る本年の年頭に当たって、総理が訪米され、レーガン大統領と首脳会談を行われたことは、総理が世界の平和と繁栄のために日米両国が果たすべき役割と責任を十分認識されてのことと思います。今回の訪米の成果と今後の日米関係のあり方について総理の見解を伺います。
日米間には現実に大きな貿易不均衡が存在し、今後ますます日本に対する市場開放への圧力が高まってくると予想されます。現に、首脳会談においては、レーガン大統領みずから個別分野について市場開放を要請したと聞いております。具体的にはどのような話し合いが行われたのか。また、我が国としては、今後こうした米国の要求に対しどのように対応していく考えでありましょうか。
今回の首脳会談において、総理は、米国の戦略防衛構想、SDIに理解を示したとのことでありますが、それはいかなる考えに立ってのことか。また、戦略防衛構想とはいかなるものと認識されているのか、お伺いしたいと思います。
続いて、日ソ関係について伺います。
本年は、我が国固有の領土である北方領土にソ連軍が上陸しまして四十年目を迎えます。一日も早く四島の一括返還を実現することが国民の悲願であり、総意であります。昨年から日ソ間の種々の対話が進む中で、ともすれば領土抜きの友好といった安易な道に引きずり込まれるのではないかとの懸念も聞かれております。今後、日ソ対話を進めるに当たり、政府の方針と、北方領土問題の解決に向けての総理の決意、及び難航している漁業問題についてどのような対応を考えているのか、総理、外務大臣にお伺いします。
次に、開発途上国に対する経済協力について伺います。
開発途上国に対する援助を今後一層拡充していくことは、我が国が世界の平和と安定に貢献するためにも、また対外経済依存度の高い我が国が国際協調のもとに生きていくためにも極めて重要なことと思います。我が国としては、国際公約たる現行の中期目標の達成に最大の努力を払うとともに、今後とも引き続き政府開発援助の量的、質的拡充に努める必要があると考えます。他方、同時に、援助を相手国の経済社会開発、民生の安定、福祉の向上に真に役立つものにしていく努力、そうして我が国国民の善意と友好のしるしとして心から感謝されるものとしていく努力が重要だと思います。このような目的を確保する一環として、我が国が協力している援助案件がどのように進められているか、みずから評価を行い、その結果をさらに援助の実施に反映させていくことが極めて重要であり、今後とも評価体制の一層の強化充実を図るべきものと考えます。外務大臣の考えを伺います。
また、評価が厳正かつ公正に行われるべきことはもちろん、政府はこれを確保するためどのような方法を講じているか、お聞きしたいものであります。
さらに、外交体制の強化の問題であります。
我が国の外務省の陣容を見ると、定員、予算とも先進国で最低であります。これでは国運を左右する外交の大任を果たすには心もとない限りだと存じます。かかる現状にかんがみ、外交体制を強化すべきだと思いますが、外務大臣の所見を伺います。
次に、安全保障についてお伺いします。
国際紛争は武力によらず話し合いによって解決し、実効性ある軍縮、とりわけ核軍縮を目指すことは人類が希求する共通の願いであります。しかしながら、今日、世界の平和は軍事力の均衡に基づく抑止力によって保たれていることは冷厳な事実であります。六十年の防衛費は三兆一千三百七十一億円、前年度に比べ六・九%の増であります。これは、厳しい財政事情にあって、政府として防衛の重要性を認識した結果であり、評価するものであります。これに対し防衛予算の突出と批判する向きがありますが、これは我が国が置かれている軍事情勢の実態を理解せず、また国の独立と安全があって初めて国民の幸せがあるという国家存立の基本を忘れた誤った意見だと思います。いかがお考えでしょうか。
六十年度の防衛予算をめぐる大きな問題にGNP一%枠の問題があります。
防衛費のGNP比は〇・九九七%、政府公約の一%との差は予算額にして九十億でございます。今後、国家公務員の給与改善があれば一%枠の突破は必至の状況にあります。元来、この一%枠を五十一年度に決定した背景には、当時のGNPの成長率が一〇%以上というところから、一%以下の経費でも防衛計画の大綱の達成は可能であるとの判断があり、決められたものと存じます。一%論厳守でいくと、GNPが変動すればそれだけ防衛費は増します。GNPが伸びなければ防衛費は減ります。その一%そのものに合理性がありません。以上のことから、国の防衛は固定概念ではなく、そのときどきの国際情勢を十分勘案して決定すべきものであり、この一%枠は国民にわかりやすい方法で何らかの歯どめを設定して見直すべきだと存じます。
あわせて、五十一年当時のデタント時代の限定的な小規模戦を想定して策定された防衛計画の大綱は、今日の科学技術の進歩等を考えれば再検討すべきと存じますが、これらについて総理より所見を承りたいと存じます。
今日、世界いずこの国を見ても、自国の防衛に最も重要な秘密事項を外国に漏えいするスパイ行為に対しては法規で厳しく処断しております。我が国としても、独立国家である以上、防衛機密は国の安全のためにこれを保護する法的整備が必要と考えます。政府としてどう取り組むのか、総理の決意をお伺いしたいと存じます。
次に、経済問題について伺います。
まず、昭和六十年度政府経済見通しの実質経済成長率四・六%をどのようにして達成し、内需主導の経済を実現していくかであります。一昨年の二月を底に日本経済は上昇基調にあり、昭和五十九年度の実質成長率は五・三%と、五年ぶりに五%台を達成しようとしております。これは人々の予想を超えたアメリカ経済の拡大による輸出の急増と、それに誘発された企業の設備投資の増加によるものと存じます。しかし、そのアメリカ経済も昨年の夏以来成長速度が衰え、ことしは昨年の半分以下の三%台に成長率が落ち込むと見られております。したがって、日本からの輸出も減少することから、民需全般にデフレ的影響がもたらされることは避けられません。
外需依存から内需中心の四・六%の実質成長を達成するためには、財政面からの支えが必要だと思います。六十年度予算では、財源難を理由に、道路予算を中心に若干の工夫がなされたほかは、公共投資はほぼ昨年並みにとどまりました。率直に申して、アメリカの景気後退の影響を相殺し、内需主導に転換を図るにはやや力不足と思われます。今後、経済の動向に配意し、民間活力の導入を初め内需拡大を行い得る政策手段を整えておくべきだと存じます。総理及び経済企画庁長官の見解を伺います。
次に、対外貿易摩擦の解消についてであります。
近年、日本の経常収支は巨額な黒字を続け、五十九年度は三百四十億ドル、六十年度も、政府見通しどおり内需主導経済が実現したとしても、今年度と同額の黒字が見込まれております。貿易立国の我が国は、諸外国との円滑な経済関係を維持することが重要であり、そのためにも保護貿易主義の台頭を許して世界の自由貿易を破壊する巨額な国際収支の黒字の累積は何としても避けなければなりません。特に、貿易の三割近くを占めるアメリカとの経済摩擦は激化さしてはならないと存じます。幸い本年正月早々の中曽根・レーガン会談で貿易摩擦解消に向けて話し合いが行われたことは、まことに時宜を得たと存じます。そこで表明された通信機器、木材の市場開放はその影響するところが大きいわけであります。今後どのような方針と段取りで取りまとめていくつもりでありますか。
特にこの際指摘したいのは、木材製品の問題であります。
近年、我が国の林産業は住宅建設の低迷を反映し厳しい不況下にあります。このことが国土の三分の二を占める森林、林業に深刻な影響を及ぼし、ひいては国土の保全や水源の涵養等、森林の有する公益的機能の発揮にも悪影響を生じております。こうした我が国の森林、林業に及ぼす影響を考慮した場合、木材製品の関税引き下げは慎重に対応することが必要と考えますが、これに対する総理の見解を承りたいと存じます。
対米出超の問題は、日本の内需転換のおくれもありますが、同時にアメリカの巨額な財政赤字に起因した金融政策による異常なドル高によるものであり、政府は市場開放の検討とあわせ強くドル高の是正をアメリカに要求すべきだと思います。総理の見解を伺います。
次に、行政改革について伺います。
申すまでもなく、行政改革の推進は国民の声であります。我が党並びに政府は一体となり、これまで一貫して行政改革の推進に取り組んできたところであり、既に電電、専売の改革、医療保険制度の改革を初め、諸般の改革は着実に軌道に乗りつつあるものと思います。しかしながら、行政改革の推進はこれからが正念場であります。そこでまず、総理の行政改革に取り組む決意をこの際お尋ねいたします。
これまでの政府における行政改革は、省庁組織の再編合理化、公社、特殊法人の改革あるいは社会保障等重要政策分野の改革を初め、どちらかといえば国の側の改革に重点が置かれていたのであります。しかし、我が国行政は国と地方がいわば車の両輪であり、我が国行政に占める地方公共団体の役割は極めて大であります。そこで、今後、行政改革が全体として真に実りあるものとするためには、地方公共団体においても高額給与の是正を初め徹底した減量化、効率化を行う必要があると考えます。さきに地方行革大綱が発表されましたが、今後地方行革をどのように推進していくお考えか、総理に伺います。
次に、国鉄の事業再建についてであります。
その緊要性にかんがみ、既に国鉄再建監理委員会において活発な審議が進められています。また、経営合理化のための各般の緊急対策も実施に移されているところであります。しかしながら、国鉄の経営は今日なお深刻の度を深め、長期債務残高は昭和六十年度末には二十三兆円を超える見込みであります。再建の前途はなお厳しいものと考えざるを得ないのであります。政府は、昭和六十二年七月末までに経営形態の抜本的改革の実現を図る旨明らかにしていますが、国鉄の再建については広く国民の理解を得てまいらなければなりません。政府は、再建に至る具体的な手順及び今後の見通しについてどのように考えておられるか、総理の見解をお伺いします。
次に、財政改革についてお伺いします。
我が国の財政は、六十年度末には百三十三兆円という巨額の公債残高に達する見込みであり、今後も多額の公債発行を続けざるを得ない状況にあります。この結果、国債の利払いが大半を占める国債費は十兆二千二百四十一億円となり、ついに社会保障費、地方交付税交付金を追い越して最大の歳出項目になっております。今後の高齢化社会の到来や国際社会における責任の増大等を考えれば、利払い費の急増は政策的な経費に充てる財源を圧迫し、財政の硬直化をもたらしていることは御承知のとおりでございます。六十年度からは、赤字国債の借りかえ、期間一年未満の短期国債発行という新たな問題を抱え、六十五年度赤字公債依存体質からの脱却目標が果たして達成できるのか危惧しているところであります。財政体質を改善し、財政の対応力を回復することは緊急の課題であります。また、現世代の後世代に対する責務でもあります。財政改革に臨む決意を総理にお伺いします。
さて、政府は、昭和六十年度予算の一般歳出を前年度以下に抑え、五十八年度以来三年連続の超緊縮予算を編成されました。戦後の財政にこのような例はありません。増税なき財政再建のもと、政府が歳出削減に徹底したメスを振るわれた結果であります。しかし、財政再建の目安となる赤字国債約一兆円の減額は、五十九年度に続いて六十年度も達成できるかどうか。歳出削減だけでは財政再建が困難なことを示していると思います。臨調の増税なき財政再建策は、水膨れした高度成長型から安定成長型に財政構造を転換させるのに大きな役割を果たし、国民の支持を得たと思います。しかしながら、今後とも歳出削減だけに頼った財政再建を推し進めようとすれば、経済の拡大が抑えられ、税の自然増収は多くを期待できず、しかもそれは国債の利払いと地方交付税に消えてしまい、政策経費の一般歳出は財政再建の六十五年度までふやすことができないということが考えられます。
今や、財政の実態とかけ離れ、言葉だけがひとり歩きしている増税なき財政再建について再検討し、財政経済の実態に合った具体的で実現可能な財政再建策を立てるべきだと思います。すなわち、臨調答申による歳出の見直しに努める一方、従来タブー視されていた歳入面の改革を図り、国債の縮減と歳出の拡大に振り向け、もって経済の成長を促す財政均衡方式を目指すべきだと確信します。総理及び大蔵大臣の見解をお伺いします。
第二は、具体的な歳入構造の改革についてであります。
総理も施政方針演説で税制改革の必要について言及されました。既に申し上げましたように、財政再建のために歳入面の改革は必要でありますが、さらに来るべき高齢化社会の年金を初めとする各種福祉施策に対する財源の確保の点を考えても、税構造の改革は緊急の課題であると言わなければなりません。私は、総理が戦後政治の総決算の一つとして、行革、教育に続いて税制の改革を提案されたことを受け、この際単なる直間比率の是正にとどまることなく、抜本的な改革を要請いたしたいのであります。
すなわち、シャウプ勧告以来三十六年を経て、社会経済の変化に応じて修正、複雑化された現行税体系はいろいろな矛盾や問題点を含んでおります。すなわち、所得税における高累進税率構造の問題、法人税における高い負担と税率格差の問題、複雑で合理性の少ない個別物品税のあり方、ともすれば不公平税制の批判のある租税特別措置法等における政策税制の問題等々は、この際、より合理的かつ実情に合った、国民にわかりやすい簡素な税体系に抜本的に改めるべきであると存じます。その際、心すべきことは、税制の大幅改正が租税と社会保障の国民負担率の引き上げとなり、欧米諸国に見られるような、やる気のない、勤労意欲を喪失したいわゆる先進国病に陥らぬように、国民が負担し得る適正な負担水準はぜひ厳守していただきたいと存じます。
以上挙げました問題をどう受けとめ、今後の税制改正に臨むのか、その基本方針を伺いますとともに、適正な国民負担率の水準をどう認識しておられるか、総理及び大蔵大臣の所見を求めたいのであります。
次に、教育改革について伺います。
教育は国家百年の大計と言われるように、国を担うものは人であります。我が国は、明治以来、国民の教育に対する熱情と努力により、我が国教育の充実は世界でも最高の水準になって、教育が今日の我が国の目覚ましい発展と繁栄の基盤を築いたのであります。しかしながら、戦後の教育改革から四十年を経た今日、過熱化した受験戦争から偏差値教育がまかり通り、学校教育をゆがめているほか、学校内における暴力、青少年の非行が横行し、大きな社会の問題になっております。今こそ我々は、二十一世紀の日本を担う青少年が豊かな人間性を持ち、心たくましく、社会的な連帯感と公共に奉仕する精神を持った、国際性豊かな人間に育てることが急務となっております。
我が党・政府は、かかる教育における実態を直視し、昨年九月、臨時教育審議会を設置し、目下具体的改革案づくりが精力的に行われていますが、どうか、教育者のあり方、入試中心の偏差値教育の是正を初めとして、学校制度、教育内容、非行化対策、生涯教育等々教育全般にわたり、新しい時代の要請にこたえた、はつらつとした改革案の提示を期待いたしており、これにあわせて報告されたものは速やかに逐次実施に移していただきたいと存ずるわけでございます。総理の教育改革に取り組む決意を伺いたいのであります。
これまでの教育は、ともすれば知的教育に偏して、人間形成の面がおろそかではなかったでしょうか。物質万能で、出世主義、功利主義に走り、国を愛すること、親を敬うこと、思いやり、助け合い等の意識が薄く、果たしてこのようなことでよいのか。かつての修身の復活ではありませんが、現行の教育基本法に問題はないのかどうか、いかがでありましょうか。
このような観点から重視していただきたいのは道徳教育であります。現在、道徳教育については検定の教科書がありません。学習指導要領をもとに副読本、教材等を使用して実施されております。この際、道徳教育の一層の充実を図る必要があると思いますが、文部大臣の所見を承りたいと存じます。
次に、社会保障について伺います。
我が国の社会保障は、現在、経済の安定成長下、しかも特例公債からの脱却という財政再建を迫られる最中で高齢化社会に対応していかなければならないという大変厳しい事態に直面しております。我が国においては、今日、出生児のうち八十歳を迎えることができます者は男性では四一%、女性では六一%に達しており、まさに人生八十年時代が到来していると言われております。このような時代の到来に伴い、個々人の生活設計とともにライフサイクルの変化等を踏まえた制度、システムの樹立が必要になってまいっております。
特に人生八十年時代においては、社会の活力を維持し、高齢者の生活を充実するため、高齢者の能力、経験をできるだけ生かす工夫がなされなければなりません。このような意味において、高年齢労働者の能力の開発向上等高齢者の雇用の確保は喫急の課題と考えます。また同時に、個々人が長い人生を健康で生きがいを持って過ごせるような健康づくり対策、生きがい対策を推進する必要があります。これらにつきまして総理の方針をお伺いいたします。
次に、農業及び中小企業の振興について伺います。
我が国の農林水産業を取り巻く諸情勢にはまことに厳しいものがあります。すなわち、国内では農産物等の消費の伸び悩み、価格の低迷などの問題に直面しているほか、行財政改革の観点から効率的な行政への対応が迫られています。また、対外的には米国を初め諸外国からの市場開放要求が相次いでおります。しかしながら、国民のため食糧自給率の向上を図り、食糧の安全を保障することは国として当然のことであります。このような視点から見ますと、内外の経済社会情勢がいかに厳しくとも、農家の方々が安心して将来に夢と希望を持ちながら農業にいそしめるような施策を積極的に進めていく必要があります。
私は、困難なこととは存じますが、農業の生産性の向上を図り、我が国の農業を自立性ある足腰の強い農業にぜひ育成していただきたいと思うのであります。この際、今日の農政全般にわたり抜本的な検討を行い、先ほど申し上げました足腰の強い農業のための施策を実行していただきたいと思います。中曽根総理の御意見を承りたいと存じます。
また、中小企業は経済の活力の源泉であります。国民のニーズの多様化、技術革新の進展等の環境変化のもと、我が国経済の今後の発展に向けての牽引力の基盤として、中小企業の機動性、創造性に対する期待は極めて大きいのであります。中小企業の技術化、情報化の中で中小企業に活力を与え、その振興を図ることが肝要と考えます。中小企業の振興のための対策をどう講ぜられるのか。以上、総理の所見を伺いたいのであります。
次に、我が国の科学技術政策についてお尋ねいたします。
資源小国である我が国が、科学技術立国として今後とも安定的な発展を維持していくためにも、また国際社会に対して一層の貢献をしていくためにも、独創的な科学技術の振興を図ることが必要であり、このためには特に国として基礎的研究を強力に推進することが重要であると考えます。また、我が国全体としての科学技術の推進に当たりましては、最近の学際的研究の必要性あるいは研究開発の生産性向上の見地から、基礎的研究と応用開発研究相互の交流、学際的、総合的アプローチが必要となっております。このため、産業界、大学、国立研究機関、いわゆる産学官の間の連携を一層強化することが必要であると考えます。さらに、国の科学技術に関する長期的、総合的な政策を策定するための科学技術会議の役割は重要であり、同会議の積極的な活用を図る必要があります。これらの点について総理のお考えを伺います。
次に、先端技術分野の技術開発に対する政府の取り組みについて伺います。
昭和六十年代は日米ハイテク戦争の時代と言われております。最近のアメリカ経済は、先端技術を中心とする技術革新の波と規制緩和、投資減税等の政策効果が相まって目覚ましい復調を示しております。我が国経済が国際化の時代を迎え、今後も持続的成長を遂げていくためには、先端技術分野における技術開発の進展いかんがそのかぎを握っていると申しても過言ではありません。
現在、先端技術の多くは在来の産業区分を超えたところに花咲いております。例えば、光ファイバーには電線、繊維、ガラス、樹脂等の各産業、バイオテクノロジーには医薬、食料品、化学、エネルギー産業など、これまでの産業分類では異業種と考えられていた業界が横断的に入り乱れて参入し、あるいは分類不明とも言うべき産業が急成長しております。したがって、伝統的な産業構造に対応する各省庁の縦割り行政では、その所管事項を超えたところ、またはその接点に当たる部分にさまざまな問題が発生し、例えばVAN規制やソフトウエア保護論争などでは省際摩擦の言葉が生まれたように、各省間の調整のおくれから行政面での対応が後手後手に回っているのが実情であります。行政の立ちおくれが技術革新における民間活力の障害や足かせになってはなりません。
私は、高度情報化社会への歴史的転換期に当たり、先端技術分野の技術開発政策を総理の責任のもとに内閣レベルで総合調整し、行政組織の弾力化、活性化を図ることが必要ではないかと存じます。総理の決意のほどをお伺いいたします。
次に、建国記念日の式典に関して伺います。
建国記念の日の奉祝式典は、四十一年十二月に建国記念の日が制定されて以来、民間の奉祝運営委員会が主催、五十三年から総理府が、五十六年からは文部省が、五十八年からは自治省が後援する形をとってきたところであります。これまでの式典の運営が宗教色、政治色の有無に関し論議があり、首相の出席は実現に至りませんでした。これに対し、昨年春、中曽根総理は、従来から、建国記念の日は国民の祝日なのだから国民のあらゆる階層の人々が参加して祝えるものとすべきだという考えをお持ちであり、この結果、来月十一日の式典は従来の主催組織と性格を大幅に変更し、現職首相として初めて出席するやに伺っており、私としてもこれを期待し、歓迎をいたすものであります。将来は国民参加のもとに政府主催の式典を目指すべきであると存じますが、式典についての御認識と将来のあり方を総理としてどう考えておられるのか伺います。
次は、いわゆる忌まわしいグリコ・森永事件であります。
昨年三月事件発生以来、犯人はますます脅迫の対象を広げ、国民に不安と恐怖を与えるばかりでなく、脅かされた関連企業は死活的な損害をこうむるなど今や大きな社会問題となって、速やかな解決が望まれるところであります。この間、警察当局においては、犯人検挙に向かってそれなりの努力を払っていることを多とするものであります。今回の捜査を振り返って、情報化社会における情報・通信システム、広域捜査等に対する対応、あり方については反省なきにしもありません。
治安のよさは世界でも誇り得る我が国ではありますが、この際、科学化、情報化時代における警察機能の発揮のために、これまでの警察の機構、組織、人事等を洗い直すとともに、ディジタル化、コンピューター化を進め、新しい型の犯罪にも速やかに対応し、検挙できる態勢を確立していただきたいのであります。これにあわせ、このような悪質知能的な残忍きわまる犯罪に対しては厳罰に処すべきであり、新規の立法が必要であると考えます。総理の決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。
最後は、参議院改革の問題であります。
政治は、新しい経済社会や国民のニーズ、価値観の変遷に対応して、その中で生ずる問題点を事前に国民に指摘することが重要であります。そのことが新しい体制へ移行するための国民的合意の形成に役立つものと考えます。その意味から、国政の一翼を担う本院の使命は極めて大であります。勅選による貴族院から公選による参議院へ生まれ変わってから、はや三十八年になります。この間、本院は国権の最高機関として、六年という長い任期の保障のもと、国民より選ばれた多くの優秀なオピニオンリーダーが、国家、国民の規範としての法律制度の検討を通じて、議会政治、民主政治の発展と国民生活の向上に尽くしてまいったところであります。多くの国民より本院に寄せる関心と期待は強いものがありますが、一部より衆議院のカーボンコピー、無用論の声があることも否定できません。
本院としては、これまでも制度、運用面にわたり改革を行って、現に重要政策を中長期的に展望し、その指針を示すための調査特別委員会の新設を初めとして数々の改革を行ってきたところであります。今後とも二院制の本旨に照らし、先見性、独自性を発揮し、活力ある新しい参議院を目指して、我が党は各会派と協力し、率先して改革に取り組み、もって二院制の真価を発揮し、権威の高揚を図る決意であります。参議院改革は立法府みずからの課題でありますが、参議院の使命、あり方を自由民主党総裁としてどう認識しているか伺いたいのであります。
今年は、我が党立党三十年の記念すべき年であります。世界に比類なき政権政党として、我々は「三十にして立つ」の初心に返り、厳しい政治倫理に徹して、国民とともにこの難局を乗り切り、輝かしい次の時代を目指して前進することを国民各位に誓い、代表質問を終わらしていただきます。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕