佐藤観樹の発言 (本会議)
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○佐藤観樹君 私が本院に議席を得たのが、一九六九年十二月。当時は佐藤内閣でした。ほぼ二年後に田中内閣、そして三木、福田、大平、鈴木といずれも二年ずつ政権を担当し、今四年も続いた中曽根内閣が終わろうとしています。
戦後四十一年の中で、この中曽根内閣の四年間はどう評価されるべきでしょうか。平和憲法のもとで軽武装、経済重視という保守本流の政治に対し、防衛を前面に立て、戦前回帰を思わせる「戦後政治の総決算」路線は異質であり、危険な方向と言わざるを得ません。
私は、日本社会党・護憲共同を代表して、この中曽根政治を総決算しつつ、一九八六年度政府予算三案に反対の討論をいたします。(拍手)
キリスト教には、七つの大罪がありますけれども、後世の史家は、中曽根政治の七つの大罪を次のように明らかにするだろうと私は思います。
第一の罪は、新国家主義、「戦後政治の総決算」路線の誤りであります。
今や地球は狭くなり、経済政策も国境を越えなければならない国際化時代になりました。このとき、我ら日本人に求められているのは、いかに国際人になるかであります。国際人とは、根なし草のコスモポリタンを意味しません。日本のよき歴史、伝統、文化、芸術、そして日本人のすぐれた資質を高く評価しつつ、狭い民族主義に閉じこもることなく、世界の人々から尊敬され、世界に奉仕する日本こそ、まさに国際国家であります。しかるに、総理の言う国際国家は、経済力、軍事力をバックにした政治大国であります。この発想は、時として、東条英機以下A級戦犯を合祀した靖国神社を公式参拝し、中国や韓国など、かつて日本に侵略され、大変な惨禍を残した国々から、ごうごうたる非難を呼び起こす過ちを犯すのであります。戦後政治の原点は、世界の人々に甚大な惨禍をもたらした戦前の軍国主義体制への否定、反省から出発すべきであります。
第二の罪は、軍事費の拡大を進め、日本の自衛隊をアメリカ軍の対ソ極東戦略の一翼に完全に組み入れたことであります。
中曽根内閣になってから、軍事費は聖域化され、赤字財政の中でも、福祉、年金、医療、教育、地方自治を犠牲にしても、毎年六%台ずつふやし続け、今や一般歳出の一割弱に達し、政府公約の対GNP一%は、ベア一・六%すれば突破するところまで来ています。国庫債務負担行為は二兆四千億円、中期防衛力整備計画が終わる一九九〇年には、軍事費はさらに一兆円近くもふえて四兆円台にもなります。国債に抱かれた日本の財政は、ふえることはあっても減ることのない軍事費に圧迫され続けます。いつか来た道が始まっているのであります。三宅島の米軍艦載機夜間発着訓練場の建設にも見られますように、軍事のためなら、ヨットハーバー、ゴルフ場、テニスコート、ジェット空港と締めて七百億円、これでも足りなければ一千億円と金に糸目をつけず、湯水のごとく国民の税金を使うという、これは軍事優先の政治の最たるものであります。(拍手)
このような軍事費の量的拡大の原因は、日本の防衛政策に、自衛隊の機能と役割に大きな質的な変化があるからであります。基盤的防衛力構想は、今や中期防では所要防衛力構想へと拡大し、日本列島の三海峡を完全に管理し、ソ連の潜水艦や他の艦艇を通過させない態勢、シーレーン一千海里の安全確保を維持し、洋上防空網を数百海里まで延ばす、そして、フリーテックス85に見られますように、日米共同作戦体制をつくり上げることが目標になっています。もはや専守防衛戦略からさらに進んで、前方防衛、反撃戦略へと質的に変化させ、アメリカ軍の対ソ極東戦略の重要な一翼に組み込まれているのであります。超水平線、OTHレーダーの解析ソフトウェア使用問題でもわかるように、アメリカは、作戦指揮権も情報管理もみずからのものにしようとしていることは明白であります。日本は、憲法が禁止をしている集団的自衛権に踏み込んだのではないかと多くの疑問が出るのは当然であります。戦場を宇宙まで広げるSDI構想に参加の条件を探るなど、量的にも質的にも軍拡は歯どめを知りません。
昨年十一月のレーガン・ゴルバチョフ会談で、曲がりなりにも世界は緊張から緩和へ向かおうとしているとき、GNP第二位の日本が軍事力増強を図り続けることは、世界の平和、軍縮に水を差すものと非難の的になることは明らかであります。これ以上軍事費の膨張を許すことは断じてできません。
第三の罪は、総理の私的諮問機関の多用化による国会審議の空洞化です。
外部の意見に耳を傾けることは結構でございますが、首相好みの人を集め、あらかじめ自分の方向を定めておいて、総理の考えどおり結論を出させるというのでは、世論操作以外の何物でもありません。それでいて、国会で質問すれば、まだ結論が出てないとか、都合の悪いことはあたかも自分の考えでないと逃げ回るのでは、充実した国会審議はできません。自由民主党の方々も、選挙で出てきたわけでない人々がつくった結論をありがたくおしいただいて推進することは、国会の形骸化につながることを反省し、このような政治手法はやめさせるべきではないでしょうか。(拍手)
第四の罪は、憲法違反の定数是正問題について、総理は、何ら指導性を発揮しないことです。
昨年の臨時国会では、二名区新設問題が最大のネックとなり、是正は実現できませんでした。小選挙区制に通じ、自民党のみが圧倒的に有利になる二名区は、野党こぞって反対、いや、自民党の中にも反対者があるときに、今週常国会では、二名区を断念し、選挙区の境界線変更によって是正する以外、方法がないことは明白です。しかし、自民党総裁として、具体的にどのような方法で定数是正を行うかの指示は、聞いたことがありません。それどころか、夜な夜な自民党議員の会合で衆参ダブル選挙をにおわし、定数是正を一層やりにくくしていることは、極めて不謹慎であります。総理は常に、大統領的総理を目指し、トップダウンの手法を使って政治を進めることを標榜していながら、自分が泥をかぶったり火の粉がかかることは手を染めないのでは、指導性ゼロと厳しく批判されてもいたし方ございません。(拍手)
第五の罪は、経済政策がことごとく失敗していることです。
中曽根総理は、欧米ではしばしば、顔のある指導者と評価されているそうです。これまでの首相と違い、自分の考えを明確に言い、個性も指導力もあるという意味でしょう。しかし、本予算には防衛以外、総理の顔は見えてこない。むしろ、政策的に行き詰まった数字しかあらわれていないのであります。鈴木内閣は一九八四年までに赤字国債脱却を公約し、実現できないと見るや、潔く総理の座をおりましたが、その後を継いだ中曽根内閣ですから、財政再建こそ全力を挙げて取り組む課題でした。しかし、一九九〇年までに赤字国債脱却は無理なことは、だれの目にも明らか。結局、緊縮財政は、財政再建も景気回復も両方ともできないアブハチ取らずに終わっております。
総理の政治手法は、初めに言葉ありきですが、シャウプ勧告以来の税制改革をうたい上げた割には、公平、公正、簡素、選択の言葉があるだけで、あとは政府税調任せ。そして、春には減税、秋には増税案を出すという、この参議院選挙用の虫のいい言動は、国民を愚弄するものであります。野党がこぞって予算修正で、具体的に財源つきの減税案を出せば、その財源は実施不可能と言いながら、みずからは財源のない減税案のみを世に問うということは、笑止千万であります。野党の増収案は、不公平税制を網羅したものですが、これを拒否なさるなら、残るは大型間接税しか財源がないことを、国民の前に明らかにすべきであります。
中曽根総理は、極めて運の強い人です。三角大福中といわれた時代の最後に登場したゆえに、三日間だけでも総理にと言っていたのが、四年も首相の座にあるのも強運なら、総理の不得手な経済も、運よく世界的な経済環境にも助けられて、日本経済が欧米に比べるとパフォーマンスにすぐれていた時期に総理の座にありました。しかし、実はこの間にも、日本経済の体質はじわじわと外需依存体質となり、今世界から袋だたきに遭っているわけであります。一九七三年の第一次オイルショック以来、企業は省エネ、生産性向上に努め、一方、勤労者は賃上げを抑えられた結果、確かに日本経済は世界に類を見ないほど立ち直り、企業は、自己資本率の上昇など内部留保を厚くし、国際競争力をつけましたが、勤労者は、労働分配率が下がり、実質増税、公的負担の増加と相まって可処分所得は横ばい、個人消費の拡大は振るわず、内需が盛り上がらない分だけ輸出ドライブがかかり、五百億ドルの貿易収支黒字になっていったのであります。いわば長い間に企業はマル金、勤労者はマルビの経済構造のツケが今あらわれているのでありまして、これに対し、労働時間の短縮、あるいはベースアップの高目誘導など、政府の見るべき施策は全くありません。
その上、第六の罪は、マルビの国民に対し、予算面でも追い打ちをかけるように、福祉、年金、医療など新たな負担が加わり、経済大国日本とか、あるいは対外純資産一千億ドル突破、世界一の債権大国など、こういうマクロの話は、生活実感が全く伴わないのであります。
最後に、第七の罪は、フィリピンのマルコス独裁政権に、我々の警告を無視し続け、営々と援助してきたことであります。
発展途上国への経済援助は、より進めなければなりません。しかし、国民の血税を使う以上、援助される国民の民生安定に本当に役立っているのかどうか、チェックしながら援助するのは当然のことであり、独裁政権ならなおさらのことであります。マルコス前大統領一族の隠し財産は、少なく見積もっても二百億ドル、三兆六千億円とも言われ、フィリピンの最大の悩みであります累積債務二百五十億ドル、四兆五千億円に匹敵するような膨大な額であります。中曽根内閣になってから、無償、有償、技術援助で合計約二千億円を援助しておりますけれども、一体、これはマルコスの隠し財産になっていったのではないかと国民の皆さん方が疑問を持つのは当然ではないでしょうか。(拍手)これに対し政府は、何ら積極的な解明も、今後の援助のあり方に検討を加える姿勢も見せておりません。何か解明されると都合の悪いことでもあるのでしょうか。
以上述べてきたことでおわかりのように、本予算案は、平和と軍縮に逆行し、日本を危険な方向に導き、国民には犠牲を強いるものでありますから、断固反対することを強く表明するものであります。
中曽根内閣も最終年を迎え、こういう立場で予算に関し本会議場でまみえることも、これが最後かと思います。中曽根総理、長い間御苦労さまでございました。ひとつニューリーダーの皆さん方も、日本のために頑張ってください。ニュー社会党も、政権を目指して、より一層頑張りますことを申し添えまして、反対討論を終わらせていただきたいと思います。(拍手)