梶原敬義の発言 (本会議)
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○梶原敬義君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十九年度決算について、中曽根総理並びに関係大臣に質問いたします。
決算事項についての質問に入る前に、総理が強引に挙行しようとしている衆参同日選挙問題について、次のことを質問いたします。
第一に、総理は円高対策を理由とした臨時国会の召集を決意しているようでありますが、真意をお聞きしたいのであります。第二に、もしそうだとすれば、今会期中に、時間も十分あったにもかかわらず、立法措置を含めた中小企業対策を何ゆえもっとしっかりやらなかったのですか、お答え願いたい。第三に、衆参同日選挙は、憲法の趣旨に反し、参議院の独立性を侵すばかりでなく、全野党の反対を押し切って強行することは国民と国会を軽視した不遜の態度であります。党利党略、派利派略、中曽根総理の個人の思惑解散は断じて行うべきではありません。総理の明快なお考えを求めます。
さて、昭和五十九年度は、アメリカの好景気に依存し、我が国経済は前年に続いて拡大を続け、経済成長率も当初の見積もりを上回り五%に達し、第一次オイルショック以来の最高の伸びを示しました。中曽根総理にとって二年目の経済運営は、前年度に引き続き一見順風満帆に見えたのであります。しかし、日本経済を根底から揺るがしている円高旋風の危険な芽を五十九年度決算から見ることができるのであります。すなわち、経済成長率五%のうち、内需は三・七%とほぼ当初見積もりどおりだったのに対し、外需は当初見積もり〇・五%を二・六倍も上回る一・三%の伸びを示しました。したがいまして、五十九年度の経常収支の黒字幅は前年度の五兆七千億円を六〇%も上回る九兆円と過去最高を記録し、さらに六十年も十二兆一千億円と拡大しました。これは、中曽根総理の経済見通しに甘さがあり、経済運営のバランスを欠いた結果であると言わざるを得ません。
政府は、五十九年度は七年ぶりに住民税を含む一兆一千八百億円規模の所得税減税を実施しましたが、その結果を見ますと、所得税減税も自然増税分で帳消しになり、しかも社会保障料などの公共料金のアップや酒税などの大衆課税により勤労者の生活は改善されず、内需拡大を促すほどの消費行動にならなかったのであります。また、政府の公共投資も抑制されたため、公的資本形成は前年度比マイナスを示しており、先進諸国に比べて劣っている上下水道、道路、住宅、公園等の生活環境基盤は少しも改善されておりません。
このような中曽根内閣の極端な輸出依存型の経済運営に対して、当然の結果として、アメリカを初め海外貿易摩擦は増幅され、ついに昨年九月のG5為替協調介入をきっかけに円高基調が急速に進み、東京サミットにおいて激変緩和のための政府の努力も水泡に帰し、円はG5当時の二百四十円台から現在百六十円台まで急騰いたしました。これに伴い円高倒産は既に全国的な広がりを見せており、今後、日本経済全体が危機に直面しかねないと危惧されているのであります。中曽根総理の民活導入や、小手先、口先だけの内需振興策はことごとく失敗し、時期を失し、国の内外から不満と批判が渦巻いています。
一方、中曽根内閣の「増税なき財政再建」の公約は完全に破綻しました。政府が公約した五十九年度赤字国債脱却の目標が崩壊し、中曽根総理はそれにかわるものとして「一九八〇年代経済社会の展望と指針」を閣議決定し、これに基づいて財政再建期間を七年間延長して、六十五年度赤字脱却の公約を国民に示し、そのため毎年度一兆円の赤字国債発行減額を約束しました。しかるに、初年度の五十九年度は五千二百五十億円、六十年度は七千二百五十億円、六十一年度は四千八百四十億円と、いずれも一兆円の減額目標を大幅に下回ったため、今後は向こう四年間、毎年一兆三千億円以上減額しなければ公約は果たせません。もはや、だれが考えても六十五年赤字国債脱却は夢のまた夢であります。にもかかわらず、できないことをできるかのごとく振る舞い、強弁する総理には、かつての大本営の姿が想起されてなりません。真実を国民に知らせ、国民とともに歩き、国民に状況打開の道を相談する姿勢をとるべきではないか、お尋ねをいたします。
さらに、今日この急激な円高を招き、国民経済を混乱に陥れた中曽根総理のバランスを欠いた経済運営について、総理の率直な反省の弁を開きたいのであります。
次に、五十九年度決算検査報告についてお伺いします。
本検査報告によれば、件数が百八十件、金額で二百二十五億八千六百万円余の不当事項が指摘されており、前年度に比べて件数で二件少ないものの、金額では三二%ふえております。検査院の実地検査率が九%となっていることから、これらの指摘件数及び指摘金額は氷山の一角と言わねばなりません。行政改革を中曽根政治の目玉にしているにしては、巨額なむだ遣いが一向に減らないのはどういう理由によるものでしょうか。五十九年度決算報告に対する総理大臣並びに大蔵大臣の所見を承りたいのであります。
次に、政界、官界を渦巻く汚職と政治倫理の確立、政治の浄化についてお尋ねします。
住宅公団、道路公団、海洋科学技術センター、国鉄、建設省近畿地建などにおいて収賄事件が続いて発生しております。特に日本撚糸工連事件では、政官業の癒着と利権の構図が明らかにされ、構造汚職へと拡大し、通産官僚の逮捕に続いて、中曽根内閣の元閣僚であった稻村佐近四郎代議士等も五月一日に受託収賄罪で起訴されました。また、今月十四日には、ロッキード事件の控訴審で佐藤孝行代議士には一審どおりの有罪判決が下りました。そこで総理にお尋ねしますが、自民党の総裁として、また中曽根派閥の長として、この問題をどのように受けとめておられるのか。両代議士に対し議員辞職を勧告すべきと思いますが、総理の姿勢をお尋ねします。
次に、海外援助に対する政府の基本姿勢をお伺いします。
言うまでもなく、開発途上国に対する援助は、被援助国の国民生活の向上と民生の安定に寄与するものでなければなりません。しかるに、我が国の援助の実態は必ずしもその目的を十分果たしているのか疑問であります。我が国のフィリピン援助が、マルコスの巨万の蓄財と民衆抑圧の独裁政権延命に手をかしたことは否定することはできないのであります。逆にまた、マルコス側からブラックマネーが日本国内に還流して、日本の政治家に渡ったといううわさもあります。政府は、真相究明のため、またこの疑惑を晴らすためにも、フィリピン政府と協力して、国会に積極的に資料提供をすべきではないか、総理並びに外務大臣の答弁をお願いします。
また、海外援助プロジェクトの一つ一つが当初の目的どおり実施され、効果を上げているかどうかの事後チェック機能の不十分さが目につきます。本院におきましても、五十八年度決算の警告事項として、「政府は、政府開発援助の原資が国民の税金等であることにかんがみ、同援助が相手国国民の生活向上と民生安定に資するため、適正かつ有効に使用されるように援助の実施手続及び評価体制の改善を図るべきである。」とただいま決議されました。この警告決議を総理並びに外務大臣、大蔵大臣はいかに受けとめておられるのか、伺います。
さらに一歩踏み込んで、相手国と共同して我が国の会計検査院の検査ができるような道を開くべきと考えるが、重ねて総理、外務大臣、大蔵大臣の所見をお伺いします。
次に、国会における決算審査のあり方についてお尋ねします。
決算委員会の重要性はこれまでにもたびたび指摘されました。例えば、昭和四十三年三月七日の衆議院本会議において、時の佐藤総理大臣は、決算の重要性について触れ、編成前の予算審議は大変論戦が交わされ、また非常に大事に扱われるが、一たん執行した後はこれらは等閑に付されている、そういうことは国民に対しても相済まない、予算の執行が政策目的を果たしているかどうか、また不正、不当がないかどうか、こういうことを事後においてトレースすることは大変大事なことであると答弁しております。佐藤元総理大臣の高い識見をうかがい知ることができます。本院においても、五十七年二月に参議院改革協議会から議長あてに、審査日程の確保、総括質疑の充実、警告決議に対する事後措置の三項目にわたる改善事項が答申され、今日に至っておりますが、これらの事項はいずれも内閣の協力なくしては実現できません。
しかるに、決算委員会への総理の出席は、五十八年度では審査回数十七回のうちわずかに締めくくり総括審査のときの一回だけで、しかも三時間程度というありさまであります。さらに、決算審査を通じて感じたことは、質疑者に対して、捜査中とか企業の信用問題を盾に答弁や関係資料の提出を拒む等、問題の解明に当たって極めて非協力的な態度であり、政府は決算審査の重要性を口にしながら、実際の行動は国会の決算審査を軽視していると言わざるを得ません。決算審査の重要性を一体どのように考えておられるのか、内閣の協力姿勢もあわせて総理並びに大蔵大臣にお尋ねいたします。
以上、私は、五十九年度決算に関して質問を行いましたが、最後に、三年半にわたる中曽根政治の総決算をしてみたいと思うのであります。
まず、中曽根政治に対する世論の高い支持率であります。かつてヒトラーがラジオを宣伝の武器に使ったように、中曽根総理はテレビを使っての大衆受けを意識したスタンドプレーがやたらに目につきます。総理御本人が一番よく知っておられることでございましょうが、高い支持率は、総理の格好よさ、口先のうまさ、外国語が話せる等の知的行動派の印象を映像を通して国民に植えつけることによる計算され、つくり出された人気であると断じても間違いありません。
一方、政治実績を振り返ってみますと、まず私的諮問機関を多用し、議会の形骸化をねらった国家主義的な手法が目につきます。また、与野党で合意した減税には誠意ある態度を示さず、昨年の都議選では総理みずから大型減税を大衆に公約しておきながら、大型減税はいまだ実施されず、増税なき財政再建の公約もさきに述べたとおり実現不可能。その場限りの無責任な公約の乱発は、一国の総理のすることにしては目に余るものがあります。
さらに、健保及び老人医療費の本人負担の強化や、消費者米価、国鉄運賃など生活関連公共料金の値上げ、大衆課税の強化など、歴代政権さえもやらなかった国民生活の圧迫政治が矢継ぎ早に行われたのであります。国民生活の切り下げを図る一方、防衛費だけは異常に突出させたばかりでなく、日本列島を不沈空母と名づけてアメリカの戦略にがっちりと組み込み、次々に憲法九条を空洞化させてきたのが中曽根政治であります。これによって日本の置かれた軍事的危険性は戦後最も高まってきたと言わざるを得ません。
ロン・ヤスを売り物にした中曽根外交も、内需振興策をとらずして国際収支の大幅黒字を放置したため、日本は国際社会で孤立化を招き、有史以来の円高というしっぺ返しを受け、国民は大きな痛手を受けています。このように国民が苦しんでいるときに、総理派閥の政治家が起訴されたり、現閣僚が次々に問題発言をするなど、政権は末期的な症状であります。
以上、三年半にわたる中曽根政治は、虚々実々の虚で塗り固められた政治であるといっても言い過ぎにならないと確信するものであります。このことを後世の史家が必ず明らかにすることを予見し、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕