宮澤喜一の発言 (本会議)
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○国務大臣(宮澤喜一君) ここに、昭和六十一年度補正予算の御審議をお願いするに当たり、当面の財政金融政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、補正予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。
戦後四十年余り、我が国は国際環境に恵まれる中で、国民の勤勉と創意により、今や世界経済の約一割を占めるまで成長を遂げ、国民生活もまた向上いたしました。こうした中で、我が国は、国際社会からその国力にふさわしい貢献を求められるようになっております。
私は先般、IMF・世銀総会等一連の会議に出席し、各国の大蔵大臣及び中央銀行総裁と意見交換を行ってまいりましたが、どの会議におきましても諸外国の我が国に対する強い関心と期待が表明されました。
石油価格や金利の低下等により、世界経済は全体としては好影響を受けるものと見られますが、他方、米国の財政赤字、各国の大幅な対外不均衡、依然として厳しい西欧諸国の雇用情勢等の課題を抱えており、それらを背景として、欧米諸国を中心に保護主義の高まりが懸念されております。
こうした中で、我が国は大幅な経常収支の黒字を続けておりますが、このような対外不均衡の是正について、各国に対しその改善の努力を求めると同時に、我が国としても国際的な地位に応じた責務を自覚し、調和ある対外経済関係を形成するため、市場の開放、内需の拡大、経済構造の調整等に努めていく必要があります。
昨年来のドル高修正は、やがて大幅な対外不均衡の是正に寄与していくと期待されます。しかしながら、当面、我が国経済を見ますと、円レートの急速な上昇の中で、製造業を中心に企業の業況判断には停滞感が広がっております。また、雇用情勢も弱含みで推移しております。
このような今日の経済情勢の中で、政府は、円レートの動向とその国内経済に及ぼす影響に周到な注意を払いつつ、適切な経済運営に努めてまいりましたが、とりわけ内需を中心とした景気の着実な拡大を図り、雇用の安定を確保することが緊要の課題となってきております。
他方、高齢化の進展等今後の社会経済情勢の変化に弾力的に対応し、我が国経済、社会の活力を今後においても維持していくため、財政の対応力の回復を図る重要性はますます高まっております。
昭和六十一年度末の公債残高は百四十兆円を超え、国債費が歳出予算の二割を占めるなど、国の財政事情は極めて厳しく、引き続き財政改革を強力に推進することは喫緊の国民的課題であります。
行財政の改革を進めていくに当たっては、種々の困難が伴うものと思われますが、それに憶することなく、さらに一層の努力を払い着実にその歩を進めていく所存であります。昭和六十二年度予算編成に当たりましても、制度の徹底的な見直し、優先順位の厳しい選択を行い、一層の経費の節減合理化に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
以上申し上げましたような状況を踏まえ、政府は、行財政改革路線を堅持するという基本方針のもとで、内外経済情勢に適切に対処するため最大限の努力を行うこととし、去る九月、事業規模約三兆六千億円に及ぶ総合経済対策を決定いたしました。
本対策においては、まず、事業費三兆円の公共投資等の追加を行うこととしております。
具体的には、公共事業で一兆四千億円の追加を行うこととし、災害復旧事業五千五百億円、一般公共事業八千五百億円を確保するほか、日本道路公団等の事業費一千億円、地方単独事業の追加要請八千億円、住宅金融公庫の融資制度の拡充等による事業規模の追加七千億円を確保することとしております。
また、都市再開発、公共的施設の整備等に民間活力の一層の活用を図るため、規制緩和、インセンティブの付与等をさらに進めます。
さらに、産業構造の国際化の流れの中で、円高などの厳しい環境変化に直面している中小企業等がこれに積極的に対応し得るよう、これまでの対策の拡充に加え、地域中小企業に対する総合的な支援策を講じてまいります。
その他、雇用対策、円高等による差益の還元等を対策に盛り込んでおります。
政府は、今回の総合経済対策の着実な実行を図ることにより内外の要請にこたえていきたいと考えておりますが、ここに本対策の施策の実現をも図るため、昭和六十一年度補正予算を国会に提出いたしました。
税制につきましては、税制調査会において、昨年九月以来の一年余にわたる精力的な御審議を経て、去る十月二十八日、「税制の抜本的見直しについての答申」が取りまとめられたところであります。
答申におきましては、中堅サラリーマンの負担軽減を中心とした所得課税の軽減合理化や法人課税の見直しについて検討の具体的方向が明らかにされる一方、間接税や資産税、あるいは利子配当課税等のあり方について基本的な考え方が示されるなど、税制全般にわたる包括的、一体的指針が示されております。
税制は国、地方を通じ財政の根幹をなすものであり、また国民生活と密接に関連するものであります。この際、現行税制のゆがみ、ひずみ、重圧感を除去し、国民の理解と信頼に裏づけられた税制を確立し、安定的な歳入構造を確保することは、ぜひともなし遂げなければならない重要な課題であると考えます。
政府といたしましては、答申において示された基本的方向に沿って抜本的な税制改革案をできるだけ早期に一体的に取りまとめ、国会の御審議を経て、その実現を図るべく、かたい決意で取り組んでまいる所存であります。
経済全般にわたる国際化の進展等に対応して、金融の自由化及び円の国際化を進めていくことは、我が国経済の効率化と発展に資するものであると同時に、我が国が世界経済の発展に貢献していく上で有意義なものであると考えております。このため、スケジュールを示しつつ、金利の自由化、短期金融市場の整備、資本市場の国際化、ユーロ円市場の発展のための措置等を逐次実施してまいりました。
現在、十一月の証券投資顧問業法の施行、十二月のオフショア市場の発足に向けて準備を進めているところであります。さらに、来年春までに一億円以上の大口定期預金金利の自由化及びMMCの条件緩和を行うこととするなど、今後とも、適切な環境整備を図りつつ、金融の自由化及び円の国際化を積極的に進めてまいりたいと考えております。
次に、今国会に提出いたしました昭和六十一年度補正予算の大要について御説明申し上げます。
さきに御説明いたしました総合経済対策を実施するため、公共事業関係費の追加として、災害復旧等事業費四千百六十億円のほか、臨時緊急の措置として一般公共事業関係費一千三百三十億円を計上するとともに、一般公共事業に係る所要の国庫債務負担行為の追加を行い、事業費一兆四千億円を確保することとし、また、民間活力活用推進対策費及び中小企業等特別対策費として二百八十五億円を計上することといたしております。そのほか、給与改善費、北洋漁業救済対策費、義務的経費の追加、国民健康保険特別交付金等、当初予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となったやむを得ない事項について措置を講ずることといたしております。
他方、歳入面におきましては、税収につきまして、最近までの収入実績等を勘案すると、一兆一千二百億円の減収が避けられない見通しとなり、また、税外収入も一千三百三十三億円の減収が見込まれることとなりました。
このような状況におきまして、行財政改革路線を堅持するため、特例公債の増発を回避するよう歳入歳出両面にわたり最大限の努力を払ったところであります。
まず、可能な限り既定経費の節減に努めるとともに、予備費の減額を行い、さらに、国債整理基金の状況にかんがみ、普通国債償還財源の予算繰り入れ四千百億円を行わないこととするほか、所得税及び法人税の収入見込み額が減少することに伴い地方交付税交付金を四千五百二億円減額することといたしました。しかし、なお財源が不足することから、前年度の決算上の純剰余金四千四百五億円について、臨時異例の措置ではありますが、特例公債の増発を回避するためやむを得ずその全額を不足財源に充当するとともに、公共事業の追加相当額については建設公債五千四百九十億円を発行することといたしました。なお、この剩余金の措置につきましては、別途昭和六十年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
これらの結果、昭和六十一年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも当初予算に対し二千六百三十八億円減少して、五十三兆八千二百四十八億円となっております。
地方財政につきましては、一般会計からの地方交付税交付金が四千五百二億円減額されますが、地方団体の円滑な財政運営を確保するため、交付税及び譲与税配付金特別会計において資金運用部から同額の借り入れを行うことにより、当初予算額どおりの地方交付税総額を確保することといたしております。
以上の一般会計予算補正等に関連して、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましても、所要の補正を行うことといたしております。
財政投融資計画につきましては、総合経済対策を推進するため、既に弾力条項を発動して、日本道路公団等の事業費の追加に要する資金につき機動的に対処してまいりましたが、今回の予算補正においても、空港整備特別会計等について、所要の追加を行うことといたしております。
以上、昭和六十一年度の補正予算の大要を御説明申し上げました。何とぞ御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
なお、既に国会に提出しております国鉄改革関連法案及び老人保健法改正法案につきましては、いずれも予算編成と極めて密接な関連を持つ重要な法案でございますので、速やかに成立いたしますようお願いを申し上げます。
今や、国際社会における我が国の役割が高まる中で、財政状況は厳しく、我が国経済は内外とも難しい局面を迎えております。来るべき新たな世紀に向け、これらの諸課題を解決するため国民各位の一層の御理解と御協力をお願いいたします。(拍手)
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国務大臣の演説に対する質疑