赤桐操の発言 (本会議)

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○赤桐操君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に対して質問を行うものであります。
 まず、中曽根総理に税制改革の基本理念と今回提案の税法改正の関係を伺います。
 総理は、六十年九月二十日の政府税調への諮問で、「公平かつ公正な国民負担の実現、簡素で分かりやすい制度の確立及び活力ある経済社会の構築を目指し、かつ、国民の選択の方向を十分くみとり納税者の理解と協力を得られるような望ましい税制のあり方について審議を求める。」と言い、また、「税負担の軽減、合理化のための方策について明らかにし、次いで、その財源確保のための方策等を含めた税制改革の全体的方向について明らかにすることとされたい。」とも述べております。
 これは、恐らく中曽根総理の税制改革の考え方の真髄であったはずでありまするし、納税者の立場からしても、税制はそうあってほしいということであります。
 百八国会に提案された売上税を主体とした税制改革は、公約違反と弱い者いじめの税制で、認めるわけにはまいりませんが、中曽根総理の立場で考えれば、それなりに体系化されていたことも事実であります。そのポイントは、直接税を減税し、大型間接税の創設で増税を行い、税制度を間接税重視型に変えようというものでありました。
 これに比べ、今回の税制改正は、後段で細かく指摘し質問いたしてまいりますが、一言で言えば、全く体系のない拙速で支離滅裂であり、売上税がだめならこちらでという定見のないやり方ではないでしょうか。これでは総理が諮問の中で言っておりまする「納税者の理解と協力」が得られるとは思えないのであります。
 政府の税制改革の考え方は、直接税負担の軽減と代替措置としての大型間接税創設で、シャウプ税制の直接税中心の税制度をヨーロッパ型の間接税重視の税体系に移行するということでありましたし、これが社会経済情勢の推移と将来の展望を踏まえた税制と国民に訴えてきたことはお忘れではないでしょう。
 今回の税制改正は、この基本原則とは百八十度異なる、直接税である所得税の減税を行う一方で、同じ直接税であるマル優制度廃止による利子課税を導入しようという、まさに直射直の税制改正であります。何ゆえそのようになったのか、変わったのかを伺いたいのと、総理があれほど固執していた直間比率是正の税制度ないしは税体系の改革は取り下げられたのか、伺いたいと思います。
 国民の間には、所得税の減税でつって、近い将来穴埋めのための増税、それも大型間接税の導入を政府はねらっており、直間比率是正の立場を捨てたわけではないとの疑念と不信感がありまするので、この点を明確にしていただきたいと思います。
 次に、今回の所得税改正で減税優先を明確にしたことは一応評価できますが、減税額は衆議院における修正を経ても一兆五千四百億円という小ぶりであり、これでは内需拡大型経済成長の最も有力な武器である個人消費に活を入れるには力不足であります。我々野党が要求しております二兆円減税が実現するよう政府に一段の努力を要求するものであります。
 なお、六十二年度減税については、六十一年度の剰余金と六十二年度税収の過小見積もりによる年度内自然増収で減税財源は十分あることを申し上げておきたいと思います。
 次に、マル優制度廃止についてただしたいと思います。
 私どもは、厳格な限度管理を行い、悪徳マル優利用者を締め出すとともに、多くの庶民の生活を守り、老後の保障のためにマル優制度は存続すべきであるとの立場に立っております。総理がサミットでマル優廃止を口にしたことで、これは国際公約などの説も耳にしますが、これほどばかげた話はございません。国内の政策決定を外圧をつくり出して、これを利用して国民に押しつけようというようなことは断じて許されないからであります。
 マル優を初め庶民が貯蓄に励むのは、病気や子供の教育等の不安と将来の出費に備えるためであり、さらに、高齢化社会を迎え、中高年齢層は老後生活の自助努力の一環として行っていることは多言を要しないところでございます。こうした貯金の利子に税金をかけて取り立てようというのは、広義に解するならば、生活費非課税の原則に反するとも言えるのであります。
 政府は、六十五歳以上の高齢者や身体障害者のマル優は存続すると宣伝いたしておりますが、この税制改悪をごまかそうとしているものでありまして、マル優は社会保障政策ではありません。一億国民の大多数が必要とする毎日の生活にかかわる政策であることを忘れてはならないのであります。
 マル優制度は不公平税制の最たるものと総理は発言されました。不正利用があることは否定できません。しかし、これまで不正利用を放置してきたのは自民党政府であることも事実であります。ほんの一握りの悪徳資産家を締め出すためにマル優を廃止するのは、角を矯めて牛を殺すのたぐいと言わなければなりません。
 さらにまた、マル優廃止に伴って生ずる不公正についてどう対処されるのかを伺いたいと思います。
 従来、分離選択課税によって利子所得に三五%の税率で税金を納めていた人は、今回の一律分離課税によって税率が二〇%になりますると、大変な減税の恩恵を受けることになるのであります。これまでの分離選択課税の預金者は金持ち階級でありまするのに、何ゆえそれほど優遇されなければならないのか、多くの零細なマル優預金者には理解できないところでありまして、国民にわかるように御説明を願いたいと思います。
 マル優が不公平税制の最たるものとマル優攻撃に熱心な総理は、他の資産所得、特に株の売買利益、キャピタルゲインについては黙して語らずですが、こちらは公平税制が実施されておりましょうか。昨今の株式市場の状況は、六十一年度の有価証券取引税が当初見積もりの六千三百三十億円の二・二倍の一兆三千六百六十四億円が納付されたことを見ても、キャピタルゲインが巨額に上っていることは間違いありません。しかし、周知のごとく原則非課税と言っていいほど優遇されているのであります。
 日経新聞によりますれば、全国上場株式の時価総額は、六十一年度中に百二十兆円も増加し、この二五%が個人の保有株で、株主のキャピタルゲインはおよそ三十兆円と推定され、仮に二〇%の税率としても、六兆円の税収が可能になると指摘いたしておるのであります。マル優廃止による税収の五倍となるのであります。
 政府はまた、いろいろとへ理屈を並べて、キャピタルゲインに対する課税回避をいたしておりますが、米国におきましては、納税者番号制を使ってキャピタルゲインの約九〇%を把握いたしておることはだれよりも税務当局が御存じのはずであります。要は、やるかやらないかの問題であります。結局、政府のお目こぼし政策によって、国家財政の負担でマネーゲーム奨励、キャピタルゲイン擁護を行っていると言っても過言ではないと思うのであります。
 さらに、日銀を初め金融機関等の調査で、預貯金と株式等の貯蓄形態別の資産形成を見ますると、高額所得者と金持ちの株式保有比率が高いことは明らかであり、総務庁貯蓄動向調査によれば、貯蓄に占める有価証券保有比率は、低所得層の第一分位は四・〇%、高所得層の第五分位が二八・三%となっております。今日の財テク、マネーゲームの風潮で所得階層間格差が拡大し、社会的不平等が一段と広がっていることは否めません。
 そうした状況下でのマル優の廃止は、資産課税の中で取りやすい勤労大衆のとらの子の利子を懐に手を突っ込んで取るやり方で、許されるものではないのであります。蔵相の御答弁を求めます。
 次に、減税財源問題で政府の態度を明確にしていただきたいと思います。
 所得税減税一兆五千四百億円に見合う減税財源は、六十二年度に関しては前年度剰余金等で賄えるといたしまして、今、目前に迫っておりまする六十三年度の予算編成とも絡んで、来年度以降の減税財源の目途はどうなっているのか、答弁を願いたいと思います。マル優廃止によって平年度九千五百七十億円の増収になるというのが政府の説明であるようでありますが、前国会の税制改革論議では、六十二年十月一日からマル優廃止で初年度四百五十億円、平年度の税収に達するには五ないし十年の歳月を要するという説明でありました。そうしますると、六十三年度の減税影響額にはマル優廃止の効果はとるに足らないということになるかと思いますが、どんな対策を考えておられるのか御答弁を願いたいと思います。
 次に、将来を展望した税制度のあり方と関連して、今回の一律分離課税方式の導入は不公平税制拡大の突破口となる危険はありませんか。
 私どもは、国の税制の中心に直接税を据え、その主柱である所得税は、総合課税と超過累進の方式で行うことが公平税制樹立に不可欠の要件であると確信いたしております。
 したがって、今回のように利子所得だけを取り出し、資産家、大金持ちも貧乏人も構わずに一律二〇%課税というやり方は、税制をゆがめ不公平な税負担を強いることになると考えるのであります。最近の政府の動きは、クロヨン等に見られるごとく、所得の捕捉と総合課税の実行には限界があるとの立場で、所得税の原則遵守とは逆に分散型の税制をねらっているように思われてなりません。また、所得分割を容易にした点で不公平と批判されている税制を、公平税制確立の方向に改めるのではなく、不公平批判の口封じのようなやり方の糊塗策を弄して新たなゆがみをつくるような点が目立ち過ぎるのであります。
 八月七日の与野党幹事長・書記長会談の申し合わせの中に、利子課税制度のあり方については総合課税問題を含めて五年後に見直しを検討するとの項目があります。これは、所得税制が分割・分散化の傾向を強めつつあることに与野党の代表がくぎを刺したと理解いたしておりますが、政府はどうお考えですか。したがって、一律分離課税は、たとえ法案が成立いたしましても、時限立法であり、所得税の原則である総合課税に戻すことを明確にすべきだと思いますので、蔵相の答弁を求めたいと思います。
 最後に、税制改革失敗の政治責任及び歳入予算のあり方について伺いたいと思います。
 百八国会での公約違反の大型間接税導入のもくろみは、国民的総反撃によって関係六法案の廃案と六十二年度歳入予算の執行不可能な事態を招いております。この前代未聞の大失政の責任はだれがおとりになるのでありますか。政治にはけじめと責任が大事ではないでしょうか。その責任を放棄したまま、百九国会では、税制改革に筋道をつけるなどという言い方で、中曽根総理の任期満了までの指導力の衰えを回避し、政権の座を維持する方便に税制改正を利用しているという批判的論調が強いのでありますが、総理の御答弁を求めたいと思います。
 さらに、売上税収入を柱とした六十二年度予算は、執行不可能の状況にありながら、先ごろの補正予算で一指だにも触れず放置された政府の責任は重大であります。歳入予算は国会で議決した予算とどんなに違っても構わぬというのが政府の見解でありましょうか。これでは憲法八十三条の国会の議決に基づいて国の財政を処理しなければならないとの規定は死文化し、財政民主主義は空洞化してしまいます。このような欠陥予算を放置している政府の責任を追及し、答弁を求めて私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 110915254X01019870904_007

発言者: 赤桐操

speaker_id: 29832

日付: 1987-09-04

院: 参議院

会議名: 本会議