片上公人の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○片上公人君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております所得税法等の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問いたします。
言うまでもなく、税制改革はまさに差し迫った国家的課題であります。ところが、総理は、これを逆手にとって、減税先行の美名のもとに、売上税導入を真のねらいとした税制改悪を強行しようとしたため、これが廃案とされたことは全国民周知の事実であります。廃案となった後、各党による税制協議会の場でその後の取り扱いを協議することとなったのでありますが、我が党は、税制改革を行うに当たり、国民のすべてが納得できる内容とするため、時間をかけて慎重に対応すべく協議会の場に臨んだのであります。
しかるに、今回の内容を見ますと、我々が強く反対し、廃案に追い込んだマル優の廃止を、十分な協議を経ることなく、所得税減税と抱き合わせて提案しているのであります。さらに、今回の税制改正案は、いわゆる税制改革の一環としての改正なのかどうか、その位置づけすら明確にされていないのであります。
ところで、政府は、今回の税制改正案について、中堅所得者層の減税に重点を置いたものであると説明しております。しかし、その内容は、人的控除はわずかばかりの配偶者特別控除を創設しただけで、最高税率を初め、課税所得が三千万円を超えるような高額所得者には税率を五%も一〇%も引き下げるという内容であるにもかかわらず、最低税率は据え置かれたままであります。
このため、課税所得五十万円以下の低所得者にとっては、結論として税率による減税はゼロであり、いわゆる上積みによる減税もありません。ようやく年収五百万円の平均的サラリーマンだと四万七千円の減税にすぎないのに対して、三千万円の場合は三十六万円、五千万円の場合は百四十万円、一億円の場合は四百三十六万円の減税になるのであります。
また、今回の税制改正の柱として、マル優等の少額貯蓄非課税制度を原則廃止に追い込む一方で、高資産家階層が適用されている三五%の源泉分離課税が廃止され、二〇%へと減税されようとしております。これでは、俗に言う金持ち減税そのものであり、新たな不公平が生じるではありませんか。そして、税制が担っている所得再分配の機能を放棄することにほかならないではありませんか。国債の利払い費が社会保障関係費を上回り、歳出の二〇%を超える現状において、三千万円以上の高所得者層、そして高資産家階層に対して大幅減税を行う理由がどこにあるのか、お伺いしたいのであります。
最低税率をせめて〇・五%引き下げ一〇%にすべきであります。この最低税率一〇%の実施を含め、減税総額二兆円規模の実施が消費支出を伸ばし、内需拡大を進める上でぜひ必要と考えますが、総理のお考え、再考の余地をお伺いいたしたい。
内需拡大策の決め手として政府が打ち出した緊急経済対策の一環だという今回の減税についても、一部の高所得層の消費拡大はあり得るにせよ、大多数の国民の消費拡大にはつながらないと言わざるを得ませんが、今回の税制改正による経済効果をどのように認識しておられるのか、見解をお聞かせ願いたい。
総理は、マル優等廃止の必要を説明する中で、マル優の悪用についてたびたび言及されております。政府は、総額約三百兆円に上る非課税貯蓄のうち、どの程度が悪用されていると考えているのか。不正利用の額、不正利用者の割合をつかみ、これが相当の部分を占めているというのならともかく、政府はその実態をすら明らかにしようとしないではありませんか。
私は、大部分の国民はまじめに税法を守っていると確信いたします。平均的に見て、現在の一世帯当たりのマル優等適用の貯蓄は五百万円程度であり、四人家族だと三千六百万円の非課税枠にはるかに及ばないのであります。一部の不心得者がいることを過大に宣伝し、それを理由にマル優等を廃止してしまうことは、国民の税に対する不信感を増幅させる以外の何物でもありません。
また、廃止の理由にしなければならないようなマル優、郵貯等の悪用による脱税を許してきた当局の責任は一体どうなるのでしょうか。大蔵、郵政両大臣にお伺いしたい。
マル優等の非課税貯蓄制度は、広く国民各層に根づいた制度であり、公的年金等の社会保障制度に十分な信頼を置けない我が国においては、今後の高齢化社会を見据えた場合、低所得者にとっては、これまで以上に非課税貯蓄制度に依存せざるを得なくなるのは火を見るより明らかであります。政府は、その自助努力の手段さえ国民から奪おうというのでしょうか。総理の真意を伺いたいのであります。
さらに、問題としなければならないのは、マル優を廃止する一方で、同じ金融資産からの所得であるキャピタルゲインは依然として原則非課税のままに放置されている点であります。過熱状態となっている昨今の株式、債券市場において、高資産家階層による莫大なキャピタルゲインを非課税としていることについて、政府はこれまで所得捕捉が不可能であることをその理由としてきました。しかし、米国のような個人のプライバシーを極度に尊重する社会においてさえ、社会保障番号によってキャピタルゲインがかなり捕捉されていると言われております。
国民皆保険など、全国民をカバーできるような体制を持つ我が国においても、米国同様にキャピタルゲインを捕捉する体制の整備は可能であり、これによって、不公平税制の最たるものと言われてきたキャピタルゲインについて適正な課税が実現できるはずであります。緊急かつ最重要の不公平解消に向けて、総理及び大蔵大臣の具体的かつ前向きの答弁を求めるものであります。
また、今回の改正案はサラリーマンの財形貯蓄の非課税措置にまで手をつけようとしております。
我が国の財形貯蓄制度は、欧米先進国の制度と異なり、国や事業主からの給付金がないのが一般的で、いわば完全な自助勢力に依存しているのであります。このため、実質上非課税措置が唯一の制度促進の要素であるにもかかわらず、今回これに課税することは、まさに勤労者財産形成制度の根幹を揺るがすものと言わざるを得ません。なぜなら、改悪後の一般の財形貯蓄は単なる天引き貯金にすぎず、勤労者の資産形成は絵そらごとに終わりかねないからであります。二〇%課税は撤回すべきではありませんか。労働大臣及び大蔵大臣の所信をお伺いいたします。
次いで、国民が強い関心を持っている医療費控除についてでありますが、今回の改正において足切り限度額を五万円から十万円に引き上げるとのことでありますが、一気に二倍というのは、これは無謀であります。しかも、これまでの足切り限度改正の推移を見ると、十万円であったものが五十年度に五万円へと、医療費負担による国民生活への配慮が見られたにもかかわらず、今回もとに戻すという逆行は認めるわけにはまいりません。これでは、国民の税に対する不信感を増長するだけではありませんか。修正のお考えはないか、明らかにしていただきたい。
次に、法人税についてであります。
所得税減税先行という政府の前宣伝とは裏腹に、本年三月末をもって租税特別措置法による税率上乗せの規定が期限切れとなったため、現時点では法人税減税だけが単独先行しております。賞与引当金及び配当軽課制度の廃止、外国税額控除制度の見直しなどの制度改正を含めた一体的な法人税改革を待たず、法人税率の引き下げだけを先行させたことは遺憾であります。
所得税については、減税とマル優廃止を抱き合わせながら、法人税は減税だけということでは国民は納得できないのであります。税制改革の当初案には、これらの一体的な改正案が盛られていたにもかかわらず、今回の改正案において増収措置が欠落している理由を明らかにし、今後の法人税改革の意図をお示し願いたい。
次に、地方税改正についてであります。
まず、個人住民税の減税は、当初案によれば、昭和六十二年度、すなわち本年度から実施され、その規模も平年度で七千五百億円余を予定していたのであります。ところが、今回示された改正案によると、六十三年度に先送りした上で、初年度五千億円、平年度六千六百億円に大幅に縮小されております。国民の重税感は所得税だけでなく住民税にも集中しており、住民税減税に対する要求はますます高まってきているのであります。なぜ住民税減税を当初案より大幅に縮小したのか、さらに、その実施を一年先送りしたのはいかなる理由によるのかを伺いたい。所得税の減税が与野党の話し合いで上積みされましたが、住民税にも上積みこそすれ縮小すべきではないと考えますが、自治大臣の御見解を承りたい。
最後に、固定資産税についてであります。
来年は三年ごとに行われる固定資産税の評価がえの年に当たります。東京周辺の地価は暴騰し、一年で二倍から三倍の値上がりを示しております。政府は、地価の抑制策についてどのような方針をお持ちか、具体策を明らかにしてもらいたい。
この異常な地価の上昇が、そのまま固定資産税の評価がえにつながるとすれば、住民の税負担は著しく増大し、負担に耐えられません。どのように対処されるか伺いたい。特に、個人の住宅用地は、地価が上昇したからといって何ら利益を受けるものではありません。生活の基盤となっている一定規模以下の住宅用地については、より一層の減免措置を講ずるか据え置くべきと考えますが、総理並びに自治大臣の御見解をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕