藤井宏昭の発言 (内閣委員会在外公館に関する小委員会)

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○藤井(宏)政府委員 官房長の藤井でございます。
 一昨年十二月十八日の小委会会合に引き続きまして、戸塚新小委員長のもと、本日の会合を開催させていただきましたことに深く感謝申し上げます。
 我が国の国際的地位の高まりと国際的な責任の増大に応じまして、我が国と諸外国との関係は、政治、経済、経済協力、文化交流等あらゆる分野で飛躍的に緊密の度を加えております。この傾向は、特に円高以降においてここ数年間顕著でございます。
 人の往来の点を見ましても、六十一年に五百五十万人であった邦人の海外渡航者は六十二年には六百八十万人と史上最高レベルに達し、一年間で百二十万人という驚異的な増加を記録しております。また、我が国の海外投資は急速な伸びを示しております。世界のどこかで事件や事故があれば、直ちに被害者の中に邦人が含まれていないか心配しなければならない時代でございます。他方、我が国に入国する、あるいは滞在する外国人も、観光客のほかますます増加するビジネスマンや留学生などがふえ、二百万人時代を迎え、種々の問題が生じております。
 かかる状況におきまして我が国在外公館が果たすべき役割、責任は、質的にも量的にも飛躍的に増大しているものと考えます。今後このような傾向がさらに加速され、また、「世界に貢献する日本」を目指しまして諸施策が実施されるに当たりまして、外交実施体制の抜本的な強化は従来にも増して緊急の課題になっているというふうに認識している次第でございます。
 他方、我が国の在外職員はさまざまな環境のもとでその職務を果たしておりますが、戦乱、テロ、治安、健康への脅威等、日本国内においては考えられないさまざまな極めて厳しい環境のもとにおいて勤務せざるを得ない場合が多々ございます。
 最近の例でいえば、イラン・イラク戦争の激化によりまして、テヘラン、バグダッド双方の都市では在外職員はミサイルが飛んでくる中で勤務をしております。テヘランでは、東京でいえば環状線内程度の面積の中に一ケ月半の間に百三十七発のミサイル、ということは一日に三、四発のミサイルが撃ち込まれておりまして、これによる死者数は千人以上、負傷者は数千人に上ると言われております。このような中で我が国の在イラン大使館職員及び家族は、生命の危険をも感じながら我が国の外交の第一線で活躍しているわけでございます。そのほか、治安の悪化が見られるような国もございます。
 このような状況のもとで在外職員は士気高く活躍しているわけでございますけれども、在外の職員が少しでも安んじて、また、有効に働くことができるよう在外勤務環境の改善及び在外公館の機能強化のため、外務省としては一層の努力を行う所存でございますので、以前にも増して本小委員会の御支援をお願いする次第であります。
 さて、前回の会合におきまして、北口小委員長から、我が国の外交実施体制強化の観点から、在外公館施設の整備拡充、不健康地対策の強化、在外職員の定員の増員、海外子女教育問題、在外公館の警備対策、緊急時の邦人保護、在外公館の事務処理体制と通信体制の強化の七点につきまして貴重な御所見を賜りました。
 そこで、本日はまず、右小委員長所見に盛り込まれている諸点に即しまして、その後の実施状況、昭和六十三年度予算の状況、いまだ懸案として残されている点等につき取りまとめ御報告させていただきたいと存じます。なお、海外子女教育問題及び緊急時の邦人保護の問題につきましては、別途、領事移住部長より御報告いたしたいと存じます。
 まず第一は、在外公館施設の整備拡充でございます。
 我が国の外交実施体制を強化するためには、外交の第一線の拠点である大使館事務所、大使公邸、館員宿舎等、在外公館の施設を整備拡充することが急務でございます。
 六十三年度予算では、在外公館施設の整備には優先的配慮を行い、非常に激しい財政状況のもとではありますが、諸先生方の御支援を得まして、財政当局の御理解のもと、在外公館施設費として、対前年度比実質二七・六%増の三十五億一千万円が認められました。
 このうちには、新営工事の新規あるいは継続分予算として、在インド大使館、在西独大使館、ジュネーブ代表部事務所及びシンガポール大使公邸の建設費用、中国大使公邸設計費用等が含まれます。また、新規購入案件として在ネパール大使館事務所等の購入費用も計上されております。
 しかしながら、先生方御承知のように我が国の在外公館施設の中にはいまだ整備を要するものが多いことも事実でございます。
 また、施設修繕及びインフラストラクチャーの整備に関しても、六十三年度予算においては、アフリカを初めとする不健康地公館の整備経費の増額を見るなど改善を見てはおります。しかしながら在外公館の果たすべき役割から見れば、施設の整備拡充はいまだ不十分であるため引き続き努力を重ねていく必要があると考えており、中長期の観点からできる限り計画的に在外公館の国有化、既存施設の修繕と維持管理のためのインフラストラクチャーの整備等に意を用いてまいりたいと考えております。
 第二は、不健康地対策の強化でございます。
 我が国の百七十一に及ぶ在外公館のうちほぼ三分の二がいわゆる不健康地にあり、そこに在勤する在外職員は、全在外職員約二千五百人のうち約半数に当たります。
 このような不健康地に在勤する在外職員にとって、健康管理は非常に大きな問題となっています。例えば、こうした不健康地の医務官駐在公館において、マラリア、デング熱、赤痢等の感染症、寄生虫症、熱射病等の病気により、医務官が診察した館員の延べ人数は、六十二年度には六千人近くに及んでいます。
 こういう自然、衛生等の面で非情に厳しい環境下にある在外職員が、少しでも安んじて外交活動に専念できるよう各種対策を一層充実していくことは、私どもの務めと考えておりますが、おかげさまで本小委員会の力強い御支援によりまして、不健康地対策も少しずつ前進してまいりました。
 六十三年度予算では、医務官につきましては、ネパール等四カ所における配置が新たに認められ、医務官の定員は計三十三人となりました。しかしながら、大半の医務官の任地が不健康地であるだけに、定員はふえても格好の人材を確保するのは容易ではなく、当省では各地の大学病院等に対しリクルートのための働きかけを強化しております。この面におきましても諸先生方の御助力をお願いしたいと存じます。
 また、健康管理休暇制度についても適用公館の拡大が認められました。
 不健康地公館が必要とする健康診断、物資の調達等各種ニーズに迅速に対処できる不健康地公館支援拠点の設置について従来より要求してきましたが、このような支援拠点を設置するための予算が在英大使館と在仏大使館に新たに認められました。
 これらを含めまして不健康地対策の六十三年度予算は対前年度比実質一七・〇%増の十二億三千万円となりましたが、六十四年度予算においても、健康管理対策や宿舎対策等の従来からの施策をさらに拡充するための予算を要求してまいりたいと考えております。
 第三は、外務省定員の増員でございます。
 外務省の定員については、国家公務員全体の定員が純減となる厳しい状況のもとで、先生方の御支援と関係各方面の御理解により、六十二年度九十五人、六十三年度百二人の増員を獲得することができました。この結果、六十一年度末に三千九百六十八人であった外務省定員は六十二年度にはやっと四千人の大台に達し、六十三年度末には四千百四十八人に増加することとなっております。
 他方、外務省の定員はなお十分な体制とは言いがたく、それどころか、定員拡充の必要性は従来にも増して喫緊の課題となっております。その原因の一つは、冒頭御報告申し上げましたような邦人海外渡航者数、外国人留学生数、投資額の急増等さまざまな指標に顕著にあらわれているとおり、外務省に対する行政需要が飛躍的に増大していることであります。また、我が国の国際的地位の向上に伴い、世界各国にとっての我が国の重要性あるいは各国の我が国に対する関心が急速に高まっており、我が国としても、これにこたえて、大国のみならず小国をも含めて、これら諸国に対して従来以上に積極的な外交を展開していくことが必要となっております。このためには、各国の実情に通じた専門家の養成、確保が不可欠であり、かかる観点からも外務省定員の拡充が不可欠のものとなっております。 したがいまして、外務省としては、今後も予算要求等における最重点事項として、定員増強に取り組んでいく所存でありますので、御支援のほどよろしくお願いいたします。
 第四は、在外公館警備対策でございます。
 昨年末の日本赤軍幹部丸岡の逮捕や本年四月の日本赤軍メンバーと見られている菊村のアメリカにおける逮捕、あるいは「よど号」事件グループメンバーの逮捕等に見られるごとく、最近、日本赤軍の動きが活発化しておりますが、近年における世界的な治安の悪化及び我が国の世界的プレゼンスの増大とともに、我が国在外公館を目標としたロケット弾攻撃、爆弾設置、侵入占拠及び脅迫等の行為が年々増加しておりまして、昨年一年間のみでも一昨年の百三十件を大幅に上回る百六十余件の事件が発生しており、我が国在外公館は従来にも増して警備を強化する必要に迫られております。
 昭和六十三年度予算では、このような我が国在外公館を取り巻く治安情勢を念頭に置きつつ、引き続き、各公館の警備施設等の一層のレベルアップを図ると同時に、近年多発傾向にある各種爆弾テロ、誘拐、狙撃等、主として公館外で発生するテロに備えるための対策等を主体に、トロント・サミット及びソウル・オリンピックに対する特別警戒を含め、警備強化対策を講じていく所存でございます。
 いずれにしましても、在外公館の安全は我が国の外交を推進していく上での大前提ともいうべきものであるにもかかわらず、我が国公館の警備施設等の整備は、欧米先進国に比しても大幅におくれているのが現状でございまして、今後とも警備強化対策を引き続き強力に推進していくことが急務であると考えております。
 第五は、在外公館の事務処理体制と通信体制の強化でございます。
 まず、通信体制の強化について述べさせていただきます。
 本省と在外公館を結ぶ通信網は我が国の外交活動を支える中枢神経でございます。近年の我が国外交活動の活発化に伴い電信量は過去五年間に一・五倍に急増しており、これを遅滞なく処理するため、通信システムを強化することが急務となっております。
 六十一年度に始まった高度データ通信システムの導入は、最新の通信技術を導入し、外交通信機能を飛躍的に向上させるものでございまして、六十二年度までに十四公館に導入を終え、現在運用を行っております。六十三年度にはさらに十公館に導入すべく準備を進めておりますが、引き続き通信量の多い公館を中心に拡充を図ってまいりたいと考えております。さらには、電信専用回線の導入、在外における電信機器の近代化、本省のコンピューターによる電報蓄積の電子化等を図ることにいたしております。
 次に、在外公館事務処理体制の強化について述べさせていただきます。
 在外公館につきましても、ワープロ、パソコン、商用ファックス等のOA機器を一層活用して事務の合理化を図っていきたいと考えております。
 さきに御説明申し上げました高速データ通信システムを利用し、在外公館から直接本省の各種データベースへアクセスし、必要な情報を即座に入手し得る体制も現在整えつつあるところでございます。
 昭和六十三年度において、初めて在米大使館等六公館へのコンピューター端末設置のための予算が認められ、現在設置のための準備を鋭意進めているところでございます。今後は、このコンピューター・ネットワークの拡大を図り、あわせて、設置されたコンピューター端末の活用により、経理事務、領事事務等の在外公館事務の一層の効率化に努力していく所存でございます。
 最後に、秘密保全対策について一言述べたいと存じます。
 近年我が国の国際的地位の向上、外交活動の拡大・高度化に伴ない、機微な情報の量も飛躍的に増大しております。これに比例して、従来にも増して我が国が諸外国による情報活動の対象となる危険が増大しております。このような認識のもとに、秘密保全対策の強化を極めて重要視しており、例えば、在外公館の電信室の安全強化、外交伝書使制度の拡充、秘密文書の安全を確保するための諸措置等をさらに強化してまいりたいと考えております。
 以上、外務省といたしましては、これら諸施策の実現に最大限の努力を行ってまいる所存でございますが、本小委員会並びに諸先生方には、今後とも引き続き絶大なる御支援を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。

発言情報

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発言者: 藤井宏昭

speaker_id: 25571

日付: 1988-05-23

院: 衆議院

会議名: 内閣委員会在外公館に関する小委員会