木村晋介の発言 (内閣委員会)

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○参考人(木村晋介君) 今かかっております法案は行政の保有する個人情報を射程距離に置いた法案ということでございますが、私は、民間企業の保有する個人情報の管理に関連して発生している情報主体側の市民の被害について若干の例を報告さしていただきまして、民間の保有する個人情報についても早急に保護規制が必要だという点について参考意見を申し上げたいと思います。
 個人情報全般について市民の苦情がどの程度なのかという状況については必ずしも全般的なデータはないわけですけれども、私どもが消費者関連の弁護士会の委員会などでいろいろ聞くところによりますと、特に信用情報についての情報の正確性とか情報の収集の問題などについての苦情がふえているという傾向があるようでございます。
 国民生活センターでの調査などによりましても、五十九年に十三件取り扱っておりましたのが六十二年には四十三件にふえている。あるいは、国民生活センターと各地方の消費者センターなどのこの種の信用情報に関する苦情を見ますと、五十九年五十六件であったものが六十二年には六百件近くになっているというようなことでございまして、恐らくこの信用情報だけでなくて他の民間の保有する個人情報についてもいろいろ同様の苦情や被害が生じているのではないだろうかということが推測されると思います。
 とりわけ、個人信用情報については苦情の申し出が多いわけでございますけれども、この個人信用情報自体につきましては、金融機関あるいは金融企業それから信販企業などの与信の管理の上から見まして、個人信用の情報を持ち、これを交流するということはやはり必要なことなのだろうと思います。特に、近年問題になっております多重債務者の発生を防止するという観点から見ましても、個人信用情報自体は重要な役割を演じているというふうに私どもも考えております。
 しかし、現在こうした個人信用情報の機関が、銀行系あるいは信販系あるいは貸し金業専業者の関係それからそのほかの外資の関係等含めまして、全国に主なものが四つあるわけでございますけれども、そこの保有する情報件数を単純に合計しますと七千万件ぐらいになる。恐らくこれは各情報機関でダブっているものもあると思いますので現実にはもう少し減るかと思いますけれども、しかし相当数の事故情報がありまして、しかもこれが多重債務者防止という観点から近年情報センター間での情報交流も行われているということでございまして、そういう点でこの信用情報に係るプライバシー侵害が起こった場合の被害の広がりというものも大変大きくなってくるわけでございます。
 御承知のように、六十一年の三月に通産関連、大蔵関連のプライバシー保護に関する通達が出されまして改善がなされているわけでございますけれども、それにもかかわらず、誤った信用情報の登録によって信用を受ける機会を失った、あるいは誤った情報が載っているんだけれどもそれの訂正がなかなか認めてもらえない、こういった種類の苦情は大変多いわけでございます。
 六十二年の五月に千葉市内で、ある理容関係の機械の販売会社が倒産をいたしまして、この倒産に関連して架空契約その他の被害が出ました。この会社は岩上商会という会社ですけれども、ここが理髪店に対して機材を納入したかのような架空契約をつくりましたりあるいは商品を納入していないというようなことがあって、この関係で被害を受けた理容業者は二百八十人以上に上るというようなことが新聞などで報道されております。この関係で、架空契約で全く判こを押したことがないという理髪業者もいたわけでございますけれども、それにもかかわらず信用情報上は延滞の登録がなされまして、このために住宅ローンや車のローンなどの与信を受ける機会を失った、こうしたトラブルが発生しまして新聞などで大きく報じられたことがございます。
 この種の、本来登録されてはならないはずの事故情報が信用情報に登録されるという例は数々ございまして、各消費者センターなどで受けたトラブルの中を見ましても、クレジットカード契約をしたんだけれども普通郵便で来たために郵便受けで盗まれて三十万円カードを盗用された、信販の保険がおりて弁済になったんだけれども、それにもかかわらず事故情報に登録されてクレジット契約などができないで困っている。あるいは、全く身に覚えのない自動車のクレジット代金の督促が続いて、調べてみたら自分の名前が冒用されていた、裁判で勝ったんだけれども、それにもかかわらず事故情報が登録されている。こういうような苦情がございます。
 要するに、これは信用情報機関に対する事故情報の登録が信用情報機関に加盟しておりますクレジット企業の判断に一方的にゆだねられている、公正な審査がされていないということに大きな原因があるように思います。与信企業というのは与信契約についての一方の当事者なわけですけれども、この一方の当事者が債務者について事故情報を登録するかどうかということについて一方的に権限を持っている、これは非常に問題が多いと思います。そのために、例えば裁判などでは信販契約、クレジット会社との契約が無効とされるようなケースで支払い義務がないと見られる事案についても、支払いを拒絶するとブラックリストに載せるというようなことを言われまして泣く泣く支払いを強制される、こういうようなケースもたくさん起こっております。
 これも相談のケースでございますけれども、カタログを見て血圧計を購入しましたが、調子が悪いのですぐに返品した、しかし代替品が送られてこない、その上、支払わなければブラックリストに載せるというふうにおどかされている、このようなケースが大変多いわけでございます。
 それから、これは信用情報に関連するものでございますけれども、信用情報に関連するもの以外でもいろいろプライバシーの保護の上では問題の多いケースが起こってきております。
 これは私が現在訴訟で争っているケースでございますが、ある会社員が東洋信託銀行に貸付信託の口座を申し込みまして貸付信託の契約をいたしました。そうしますと、銀行の方からダイレクトメールがいろいろ送られてくるわけでございます。会員番号などが付されましたものがたびたび送られてまいりました。そのうち今度は積水ハウスという会社からダイレクトメールが送られてまいりました。このダイレクトメールを見比べてみますと、全く同じシールが張られておりまして、会員番号も全部同じなわけですね。同じ機械で印刷したとしか思えない、そういうものが送られてきたわけです。これは明らかに銀行側が自己の顧客のリストをこの住宅会社の方に漏らしたとしか思えない、こういうケースが起こってきております。銀行の方に公に聞きますと、そんなことはあり得ないということをよくおっしゃるんですけれども、現実に銀行の情報がこうした他の民間企業に情報主体の承諾なしに全く無断で提供されているという事実があるわけでございます。単に住所と名前だけではないか、これはプライバシーとは関係がないではないかという意見もあるかもしれませんが、しかし現実に銀行と取引をしているということがわかる形で会員番号も含めて情報が提供されているということになりますと、その人の経済生活に関する情報が無断で漏えいされた、銀行の契約上の守秘義務にも反する事態であるというふうに断ぜざるを得ないと思います。
 このように民間の保有しております個人情報についてのトラブルも近年ますます多くなっておりますので、立法に当たりましては、今回は法案を見ますと射程距離に入っていないようでございますが、早急に民間の有する個人情報についても何らかの保護のための法制度をつくる必要があるというふうに考えております。

発言情報

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発言者: 木村晋介

speaker_id: 25098

日付: 1988-12-08

院: 参議院

会議名: 内閣委員会