広中和歌子の発言 (本会議)

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○広中和歌子君 私は、公明党・国民会議を代表して、総理の所信に対して質問させていただきます。
 五年前、ソ連で始まったペレストロイカのさざ波は、次第に大きな自由化へのうねりとなって東ヨーロッパ諸国に押し寄せ、ハンガリー、東ドイツ、ルーマニア等に改革のあらしが吹き荒れました。そして、ついに昨年末、東西冷戦の象徴と言われたベルリンの壁の崩壊に至りました。そうした自由化と呼応するかのように、EC統合は着々と進み、米ソの対話、軍縮交渉が始まり、地球環境問題が大きくクローズアップされるようになりました。
 薄い大気に覆われ、微妙な自然界の営みのバランスの上に成り立つこの地球を、健全な形で二十一世紀に残すことこそ人類の直面する最大の課題であるといった問題意識が高まりましたが、それはあたかも、歴史始まって以来、戦争のない時代がなかった人間社会が、環境汚染という共通の敵を見出すことによって、世界はついに平和共存、協調の世紀に入ろうとしているのだという希望を抱かせたものでした。
 こうした平和への希望が、甘くもはかないものとして荒々しく破られたのがこのたびの八月二日のイラク軍によるクウェート侵攻でした。予期せぬことだっただけに世界じゅうが驚きましたが、イラクの侵略を不法とする国連安全保障理事会での決議がなされ、イラクへの経済封鎖による制裁決議に続き、アメリカ・ブッシュ大統領の主導でペルシャ湾岸での海上封鎖、そしてサウジへの出兵が始まり、以来、イラク対アメリカを中心とする多国籍軍との間に緊張が高まっております。
 このように突然訪れた危機に対し総理のとられた最初の御決断、イラクへの経済封鎖は、いかなる理由があるにせよ一国が他国を武力で侵略することが許されてはならないという国際秩序の大原則に立ってのものであり、敬意を表します。
 しかしながら、その後の日本側のいわゆる中東貢献策は、またしてもアメリカの顔色をうかがいながらの小出し、後手に回る対応であり、総理並びに政府のこうした緊急事態での危機管理そのものに危惧の念を抱かざるを得ないのです。そしてまた、こうした対応の背後にある基本理念、つまりいかなる理念のもとに最初は十億ドル、おくれて三十億ドル、計四十億ドルの支援をし、また国連平和協力法の制定を目指していられるのか、お伺いしなければなりません。
 日本は、平和憲法の制約から軍事面の協力はできないとし、戦後一貫して紛争地域へのかかわりを避けてきましたが、今回多国籍軍への二十億ドル資金援助など、積極的に参加しようとする理由は何ですか。多国籍軍は国連軍とは違います。総理は多国籍軍の位置づけについてどう認識していられますか。明らかに国連軍ではない多国籍軍への資金援助を含む後方支援は、憲法で禁じられている集団的自衛権の行使に当たるのではありませんか。改めて、平和国家日本、世界に貢献する日本の基本理念とは何かをお伺いいたします。
 確かに、我が国は中東地域に原油の七割を依存し、国益の点からも、同盟国アメリカへの配慮からも多国籍軍に協力することが望ましいということはありましょう。しかし、今後類似した地域紛争が他の地域にも続発する可能性が少なからずあることが予想されるだけに、何らかの行動規範と歯どめが必要です。四十億ドルの貢献のうち、今回の中東危機で経済的打撃を受けた国々への経済援助や難民輸送のためにとられた輸送機の派遣等は評価いたします。
 一部で、日本は金だけ出して血や汗を流そうとしないということで米国の中に日本への不満が高まっているという報道がなされ、それでは世界に通用しないという議論がもっともらしく日本国内で持ち上がりましたが、そうした議論に便乗して憲法改正、自衛隊派兵へと導く一部の世論誘導に対しては、はっきりと警戒の態度を示すべきだと思います。
 今回の危機を契機に、政府は国連協力への体制整備の一環として国連平和協力法を提案しようとしております。
 その目的とするところは、国連決議に基づき、それを実効あらしめるための諸活動の支援となっていますが、諸活動の定義と範囲が余りにもあいまいです。政府の構想ではその中核的活動は当然自衛隊が担うことになっており、一たび紛争地域へ自衛隊が派遣されるならば、事実上の海外派兵の道を開くのではないかと危惧いたしますが、この点について御見解はいかがですか。もし、国連に協力するなら、むしろ国連平和維持軍、PKOへの協力の形を真剣に模索し、時間をかけて検討すべきだと思いますが、いかがですか。
 中東貢献の四十億ドルについてですが、日本はいつもお金で解決すると簡単に言われがちですが、このお金は国民の汗と知恵の結晶たる税金です。しかも、現在の状況のもとでは、経済封鎖で大きな打撃を受けている周辺諸国への援助こそ必要であり、日本ができ得る、そして平和国家日本にふさわしい貢献です。
 このたびの日本の貢献に対してアメリカ人の中で不満を表明した人が多数であった理由は、主としてタイミングと出し方の問題です。ロンドン・エコノミスト誌によれば、日本の協力への態度表明が余りにもおくれ、四十億ドルに至るまでのうろたえぶりが記憶に焼きついているからです。
 このたびの意思決定に、外国人ならずとも当の日本人の多くが、一体政府は何をしているのかといういら立ちを感じたはずですが、こうした危機に対処する機構はあるのでしょうか。もしあるとしたら、その機構は今回活用され、十分に機能したのでしょうか。そして、将来起こり得る危機に対して管理体制は十分整備されているのか、お伺いいたします。
 現在、多くの邦人が海外で働いていますが、今度のような危機に直面した際、邦人の安全確保についての対策、救出作戦などの意思決定、責任の所在はどこですか、お伺いいたします。
 万一、緊張の高まる中東で軍事衝突が起きた場合、邦人救出の手段は検討されておりますか、総理の御見解を伺います。
 さて、人質の問題ですが、イラクのクウェート侵攻以来、私も心を痛めてまいりました。国会は休会中。この問題に対する政府の対応にも歯がゆい思いでした。国会議員の一人である以上、自分に何ができるかを考え、行動すべきだと思い、私はフセイン大統領に人質解放を求める女性議員のネットワークをつくることを考えました。世界平和婦人議員連盟の総会が九月二十四日からアフリカのジンバブエで開かれることを聞き、まず日本の女性国会議員の皆さんからフセイン大統領あてのアピールに署名をお願いすることにいたしました。四十六名全員の御協力をいただき、本当にありがたく思っております。
 それを携えジンバブエに飛びました。総会では、人質解放の決議を全会一致で採択していただき、かつ出席した女性議員たちに署名をいただきました。中にはアピールのコピーを持ち帰り、それぞれの国で署名運動を広げることを約束してくださる方もございました。単身イラク入りをしたのは九月三十日、正直言って心細かったのですが、現地ではサレハ国会議長を通じてこのアピール文をフセイン大統領に渡していただくことができました。
 今回イラクでお目にかかった邦人の方々の不安な日々を思うとき、ヨルダン、イラクなど危険地域を重点的に在外公館の充実と領事移住部の拡充をしていただくことが必要だと思いますが、外務大臣の御見解を伺います。
 現在、在留邦人の皆さんの食糧、医療についての状況が悪化し、さらに送金が禁じられているため、現地職員への給料、家賃の支払いに困っていると訴えられています。事実関係とその対応について、外務大臣、大蔵大臣にお伺いいたします。
 海部内閣は、人質解放にもっと多様なチャンネルを通して交渉すべきではないでしょうか。例えば、女性特使の派遣はいかがでしょうか。ジンバブエでお目にかかったスペインの女性議員は、一たん帰国後、特使としてイラク入りをし、同胞十五名の人質釈放に成功したという報告を受けました。
 これまで、女性は戦争のもたらす悲惨さにただひたすら黙って耐えるだけでした。子供を生み、慈しみ育てたのは戦場に送るためではないという心からの叫びを政治の場に反映さすことができませんでした。しかし、今は違います。世界じゅうに女性議員が誕生し、公の場で平和について積極的に発言することができるようになったのです。紛争の平和的解決と人質解放のために、総理、超党派による女性特使派遣の御決断をお願いいたします。
 総理、総理は今回中東五カ国の旅をなさいましたが、その目的は一体何だったのでしょうか。失礼ですが、手土産にお金を配って歩くことなら現地の大使で十分なはずです。我々日本人には理解しがたい遠い中近東の世界を身をもって感じ、直接アラブの人々の気持ち、考え方に触れること、そして周辺アラブ諸国の考えている中東安定策を聞き出すことです。そして、平和的解決のための糸口をつかむことだと思います。
 総理は、イラクと空路による道が開かれている唯一の国、ヨルダンの首都アンマンに立ち寄られましたが、イラクには行こうとなさいませんでした。そのかわり、イラク側からラマダン第一副首相がアンマンに来て総理との会見が実現されました。こうしたあちら側からの接近は、少なくとも停戦への調停を求めるイラク側からのシグナルではないかと考えるのは考え過ぎでしょうか。通訳を入れての短い一時間ほどの会談だったと伺っていますが、人質の身の安全の保証を取りつけてくださいましたか。
 イラクの在留邦人たちは、総理が多国籍軍への貢献策を次々と打ち出すたびにアリ地獄のような苦境に陥っていくと訴えています。国連側の主張を繰り返す時間があったのなら、イラク側の立場を聞き、妥協点を探り、フセイン大統領に名誉ある撤退の花道をつくることこそ我が国独自の平和への貢献ではありませんか。
 幸い、日本は、過去アラブと戦ったこともなく、戦後良好な経済関係で推移してまいりました。アラブの国々の中には西欧諸国に対して歴史的に複雑かつ屈折した感情を持つ国が少なくない中で、日本は平和への仲介者となり得る国だと期待されているのです。ラマダン第一副首相との会談で、対話の道を残したと報道されていますが、具体的にどういう行動を始められたのですか。総理御自身は、平和的解決の道を探るためイラクを訪問なさるおつもりですか。
 イラクがクウェートに対して行った侵略行為は国際法上断固許されるべきではありませんし、ましてや民間人を拘束し、人間の盾として工場や軍事施設に配備されているということが事実だとしたら、人道上許されることではありません。しかし、そうしたイラクの行為に対する抗議とは別に、現実にこの中東地域が再び戦場となり、多くの人命が失われ、大きく戦費がかさむことを何としてでも避けなければなりません。
 アメリカを中心とする二十万に及ぶ多国籍軍がアラブの土地に存在すること自体、一部アラブの国々の中に反発があり、仮に偶発的にせよ戦争という事態になれば、アラブ全体を巻き込み世界戦争に拡大する可能性があります。中近東がパレスチナという複雑な問題を抱えていることをよもや総理はお忘れではないでしょう。第三次大戦は核兵器と化学兵器使用の危険をはらんでおります。その結果は大量の死傷者、経済恐慌、そして地球環境の破壊です。
 米国の著名な歴史学者アーサー・シュレシンジャー氏は、十月二日のアメリカの新聞ウォール・ストリート・ジャーナルの中で、今回の中東危機におけるブッシュ大統領の決断、指導力を外交的勝利と一応評価していますが、その後のサウジへの軍事力増強と対決姿勢には批判的で、アメリカ人の若者の血一滴たりともクウェート国王のために、あるいは石油の値段を二十ドル以下に引き下げるために使われてはならないと訴えています。そして、アメリカ人には理解しがたい中近東問題はアラブ自身が話し合いでアラブ的解決をするべきだと言っています。
 三週間ほど前、フランスのミッテラン大統領の四つの提案に対してイラクも一応歓迎しているとき、ただ日本がアメリカの表向きの外交スタンスに従うことは将来に禍根を残すでしょう。総理は中東危機の平和的解決の見通しについてアメリカ側ブッシュ大統領と十分に話し合い、了解し合っているのでしょうか、お伺いいたします。その上で、日本独自で、長期的視点に立ち、世界の秩序を確立し、子や孫の時代によりよい地球を残すため、国際的な貢献を考えるべきです。
 私は、このたびのアフリカ、中近東への旅を通して、世界には終戦直後の日本あるいはそれ以上に貧しい暮らしをしている国々、人々があり、こうした貧困が世界を不安定にしている大きな原因でもあることを実感いたしました。貧困は戦争に次いで環境問題の最大のガンです。そして、環境の悪化はいずれ人類の滅亡につながります。
 さて、日本にできる貢献策についてですが、地球の平和と環境を主張いたします。
 まず、予算として、ODAとは別枠にそのこ倍の額を毎年計上し、このたびのような紛争時には被害をこうむった国々を非軍事的な形で支援し、危機のない安定した時期にはその予算を貧困の解消と環境保全のための技術や設備の供与に使うという提案です。今後、具体的に、いつ、何に、どれだけ、どういう形で支出するかなどについて決定できる体制を整えることが必要です。大切なことは、予算の裏づけがあり、緊急時にも速やかに意思決定ができる機構が存在することです。
 その予算はODAの二倍と提案しましたが、ODAは現在GNP比の〇・三二%ですから、その二倍となると世界への貢献費は合わせてGNP比一%となり、現在、日本の軍事費とほぼ同額になります。この金額は一見大きいようですが、仮に十年間続けるとして、アメリカに約束した日米構造協議の最終報告に示された公共投資十年間分、四百三十兆円の一割でございます。世界平和と安全への公共投資という視点に立ってこうした思い切った額を日本が世界のために毎年使っているという実績があれば、仮に日本が軍事面で貢献しないと批判する人がいても、それは少数意見となって消えていくでしょう。
 日本は西側の一員でありますが、サミットに入っている中で唯一の非西欧の国です。その背後にはアジア、アフリカ、中東の視線があることを忘れてはならないと思います。こうした日本の毅然たる平和へのコミットメントこそ、世界で評価され、日本の後に続く国々があることを確信いたします。
 さて、平和憲法を守りつつ日本の安全を保障する道には、外からの侵略に対しては自衛のための自衛隊と日米安全保障条約がございますが、それより何より大切なのは、近隣諸国と友好な関係をつくり、保つことであることは申すまでもありません。
 米ソを中心とする東西冷戦構造が解消した今、北朝鮮との一日も早い国交回復が望まれますが、このたび、自民党の金丸氏、社会党の田邊氏などのイニシアチブで北朝鮮との対話が始まったことは大いに歓迎すべきことです。その結果、新しい国交樹立のために自民党、社会党そして北朝鮮の労働党の三党による共同宣言の署名がなされましたが、政府としてはこの宣言文に明記されている項目についてどう解釈されているか、お伺いいたします。また、こうした議員外交によって日朝関係の障害が大きく取り除かれ、前進したと受けとめられるのか、今後の国交樹立へ向けてのプロセスを外務大臣と総理大臣にお伺いいたします。
 次に、他の国々に比べ、ソ連と日本との関係改善、平和条約締結がおくれている理由は何なのか、お伺いいたします。
 日本にとって、北方四島の返還は、国際法上の原則にのっとってもぜひ実現されなければなりません。しかし、現在、ソ連が自由主義経済への脱皮、産みの苦しみのさなかにあり、かつ国内の民族問題に悩まされていることを配慮すれば、我が、国政府は従来の政経不可分の原則についてもっと柔軟な対応をすべきではありませんか。正常な国交回復を目指すため、ソ連を金融、経済、技術面などでもっと支援し、官民ともに信頼と友好な関係を醸成することが品位ある外交と言えるのではないでしょうか。外務大臣のお考えをお伺いいたします。また総理に、ソ連との平和条約に向けての御決意を伺います。
 次に、内政問題としてぜひお伺いしたいことがございます。
 今後、中東貢献に向け、さらには地球の平和、環境、貧困の解消のために多額の貢献を国民に求める場合、中には、自分たちには豊かさの実感がない、他の国を助けるゆとりなどないという意見もあります。もし日本人の中に豊かさの実感がないという人が多いとしたら、それは主として土地政策、流通機構、許認可行政や補助金制度など、多くは政治、行政上の問題であると思います。
 国民が豊かさの実感がないと訴える理由の第一に土地住宅問題があります。
 現在、その対策の一つとして政府の税制調査会土地小委員会で審議されている新土地保有税には、財界や、都市に土地を保有している地主、そして与党の中からの反発が強いと予想されております。土地の供給を促し、地価を下げるためには、私権の制限を含む都市計画の実施とともに税制上の断固たる対応が必要です。新土地保有税の導入、その時期について大蔵大臣の御見解と御決意をお伺いいたします。
 地価高騰の原因の一つとして首都圏への集中があり、特に東京への一極集中への対応のおくれを見過ごすわけにはいきません。国会としても、このような地価高騰をもたらした原因についてこれまで十分な対策をとってこなかったことを深く反省し、国会がみずから国民に夢のある土地政策を提言しなければならないと思います。その一つとして、国会議員みずからが率先して国会の移転を図ることにより東京への一極集中を緩和すべきだという動きがあり、国会議員で構成されている新首都問題懇談会でも国会移転への機運が高まっています。
 私も国会移転について関心を持つ議員の一人ですが、新しい国会を中心とする新都の建設は、二十一世紀の国家的大プロジェクトとして、今内外から求められている内需拡大にも役立ちます。国会の移転に伴い、議院内閣制のもとでは当然行政機関の移転が伴いますが、新都移転を契機に各省庁、企業などに多極分散へのインセンティブも高まることと思います。この新都では、土地基本法の理念でうたわれている土地利用計画が無理でない形で実行されるはずです。そして、新都を中心として地方都市へ向けての新たな交通網などの基盤づくりがなされ、国土の活性化に寄与することでしょう。
 一方、東京は国際情報文化都市として、適正規模を守りつつ、住みよい大都会として立派に存続し続けると確信します。もちろん、これはきょうあすに実行するということではなく、十年、二十年のスパンで二十一世紀をにらんでのことですので、今東京に土地を持ち、子供が学校に通っている方などは影響がないはずです。かつて唐の長安を模して平安京、今の京都がつくられましたが、二十一世紀に向けて都市計画に基づく新都がつくられるならば、実に千二百年ぶりの快挙となりましょう。必ずや豊かな日本にふさわしい理想の都市が出現するのではないかと期待しております。
 今後、政府としても新都建設に前向きな対応をお願いし、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 111915254X00319901018_004

発言者: 広中和歌子

speaker_id: 7185

日付: 1990-10-18

院: 参議院

会議名: 本会議