海部俊樹の発言 (本会議)

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○国務大臣(海部俊樹君) 山口議員にお答えをいたします。
 平和協力隊の自衛官が操縦するそういう輸送機、補給艦が万一攻撃されたら、この場合戦闘行為に入ることは明らかで、これは憲法違反ではないか、あるいは医療団がサウジだけ行ったのはいろいろ目的があったのではないか、こうおっしゃいますけれども、私はこの際特に申し上げさせていただきたいんですが、平和協力隊の隊員というのは原則非武装でございますから、丸腰で来てもらうわけです。そのかわり、派遣先のいろいろな状況とか職務の内容を考えますと、特に必要であるというときには、隊員にも基本的な人権があるわけでありますから、護身用ということも十分考慮しなければならないことはございます。けれども、輸送機には戦闘をするような武器は装着されておりませんし、また補給艦を見ていただいても、小銃、機関銃、散弾銃が日ごろは船内の武器庫に保管されておることはこれは事実でありますけれども、しかし小銃、けん銃、機関銃という護身用の武器が、これをもって武力による威嚇とか戦闘行動だとか、私はそうは考えないんです。これは、護身用に小型武器を特別のときは貸す、特別必要がないときは貸さないわけでありますから、初めから戦闘を予想して出すわけじゃありませんし、勇ましくそれを撃とうと思って武器を持っていくわけじゃないんですから、武力行使の目的ではないんです、平和協力の目的なんですから、どうぞ初めから我々の目的としておるところをゆがめて特別の角度からだけ物を言うことをおやめいただきたいと思いますし、また派遣するに当たっては、それぞれの国際情勢、その派遣先の状況、その地域がどうなっておるか、いろいろなことを全部慎重に判断して、協力会議で検討をし、方針を決めて閣議で決定するという慎重な対応をしてまいりますので、初めからそういう戦闘行為に巻き込まれるとか戦闘行為をさせるとかいうような考えは毛頭持っておりませんので、計画決定のときに十分御指摘に留意をして考えてまいります。
 また、医療班の問題につきましても、確かにサウジアラビアに第一弾派遣をいたしましたが、これはサウジアラビアからさらにヨルダンのキャンプにも回って、そこでいろいろと調査を進めておるわけでございます。
 私の滞在中に社会党の議員団の代表の皆さん、矢田部団長以下御連名のお手紙も私はいただきました。御好意に感謝いたします。けれども、そのお手紙に書いてあった難民キャンプの実情を私も知るべきだと思って特別機の出発の時間を延ばさせて難民キャンプへ行って見てまいりましたが、その難民キャンプに医療団の先遣隊が行っておったということは事実でございますから、調査をしておるわけでありますので、サウジだけなぜやったということはちょっとこれは事実に反しますので、ヨルダンの方にもしておるということをどうぞ御理解いただきたいと思うわけであります。
 また、自衛隊のいわゆる海外派遣というのは武力行使の目的を持たないで出すことであります。このような海外派遣は、今日までいろいろ御議論がありましたが、憲法上許されないわけではありませんし、これを現に法律によって任務を与えて海外派遣をさせておる、派兵とは明らかに違ったものであることはいろいろ理解されておるところであります。
 ですから、派兵と派遣の違いを思い、同時に武力行使の役割を伴わず、しかも現在、この国際的な世界の中で、実力によってよその国を併合して吸収して返さないという不法行為に対して国際社会がいけないと決議をして、みんなこの決議を受けてそれぞれの国が多国籍軍として展開しておってくれるわけでありますから、私は、新しい世界の秩序の中でこういったような行為を仕方がないからといって見逃してしまうのはこれは未来に対してよくありません。ですから、それな抑止しておる多国籍軍に対して日本も憲法の許される枠内でできる限りの協力をしようというのがこの法案作成の過程で私が考えた問題でございますので特に申し上げさせていただきますし、また、ニューヨークで行われた首脳会談においてブッシュ大統領は、これまでの日本の貢献策について評価をするとともに、さらに効果的に国際的な平和維持活動に参加できるよう検討しているということを聞いておるがこれは世界に歓迎されることと思うと、こう述べたわけでありまして、自衛隊をどうのこうのという具体的な話は、そのとき首脳会談では出ませんでした。これは私がここで申し上げさせていただいておきます。
 また、アジア諸国の危惧に対する問題にもお触れになりましたが、私はアジアの国々に対しては、過去の歴史の反省に立って二度と侵略戦争はしない、軍事大国になって脅威を与えるようなことはしていけないという気持ちは前々から強く持っておるわけであります。しかし、この地球的な国際化時代になりますと、世界の平和と安定はアジアにも直ちに響くわけでありますから、国際社会が国際社会の大義の名においてこれは許せない平和の破壊だと決めたことに対して、しかもそれを決める国連の安保理事会には、中国も常任理事国として、他の、アジアからも二カ国が参加をしておるわけでありまして、その安保理事会の決議を受けてそれぞれの国がこれは許されないというので立ち上がっておる行動でありまして、それに武力行使を伴わないで行う協力でありますから、この平和と安定を守ることはアジアの安定にも役立つものであると私は考えておりますので、その点は法案成立の暁にはあらゆる段階を通じて十分御説明をするとともに、私はこの協力隊については慎重な態度でアジアの国々にも対処していかなければならぬと考えております。
 また、イラクの邦人救出ができなかった先般の中東外交は失敗であったと、こう仰せられますが、いろいろなお考えはあろうと思います。しかし、私は、中東五カ国の首脳とは、現状に深い憂慮の念を持ってこの危機を何とかしなければならない、平和的に解決しなきゃならぬというこの願いに立って日本も同じ立場を明確に表明するとともに、原則に従った解決をして、力による侵略、併合は許さないという国際社会の大義を国際社会が力を合わせて実現するためには、経済制裁を国際社会が力を合わせて行うことによって局面を転回するというイラクの決断を求めなきゃならぬということを共通の認識として得てまいりましたので、それは私はどうぞお認めをいただきたいと思うし、また、イラクのラマダン副首相との会談に対しては、この局面を打開することのできる直接的な決断をできるのはまさにイラクでありますから、直ちに撤兵をして、そうすれば極東の問題、世界の問題、あるいは中東の問題、今世界には片づけなければならぬ問題がたくさんあるわけでありますから、ブッシュ大統領の国連演説のように、またミッテラン大統領の提案のように、この第一原則が行われれば次にイラク・クウェート紛争の問題やパレスチナ問題の解決などについて、いろいろ国際的な解決への努力が図られる転機がもたらされるであろうということを言っておるわけでありますから、勇気を持って局面打開をするように、それがすべての問題の解決に連なる第一歩であるということを私は強く申し上げ、そのことについてもラマダン副首相とは話し合いをし共通の認識を持ち、引き続いて政治的な対話を続けていこうということで共通の認識を得てまいりました。今後ともこの窓は閉ざすことなく、平和解決に向けての努力を続けていきたいと考えております。
 次期防の策定につきましては、憲法及び専守防衛の基本的防衛政策に従うとともに、昭和五十一年の閣議決定の節度ある防衛力の整備を行うという精神を引き続き尊重してまいることは言うまでもありません。
 日ソ交渉においては、四島返還問題に政府の態度の変更はないかということでありますが、基本的に、四島返還によって領土問題を解決したい、この政府の態度に変化はございません。そして、既に明春ゴルバチョフ大統領訪日が決まっておりますから、そのときには抜本的解決へ向けての質の変わった日ソ関係を打ち立てていきたいということで、シェワルナゼ外務大臣とも話をし、共通の認識を得ておりますので、これを大切な節目と考えて努力をしていきたいと考えております。
 また、大嘗祭についてお触れになりましたが、私は、大嘗祭は皇室の行事として行われるものであり、皇位が世襲制である憲法のもとにおいて一世に一度の極めて重要な伝統的皇位継承儀式と考えておりますので、その儀式の挙行について国としても関心を待ち人的、物的な側面から可能にする手だてを講ずることは何ら政教分離の原則に反しないものと考えておるものであります。
 九月十四日早朝のブッシュ大統領との電話の内容と四十億ドルの中東貢献策決定の詳細を報告せよということでございますが、イラクによるクウェート侵攻、併合というあの事実、それがあってから、我が国としては積極的に国際的努力に対して貢献を行うべきものであると考えておりました。このために、情報をフォローしながら具体的貢献策を政府内部で鋭意検討を進め、中山外務大臣の中東訪問の結果をも踏まえて、八月二十九日の閣議において、輸送、物資、医療、資金面での湾岸における平和回復活動に対する協力並びに周辺国支援及び難民援助を内容とする貢献策を発表し、翌三十日、平和回復活動に対して十億ドルの協力を本年度予算において行うことを決定し、その後さらに政府部内で検討を続け、その後の中東情勢等も勘案して、政府としては、深刻な経済的損失をこうむった周辺諸国、エジプト、トルコ、ヨルダンといった国に対し総額二十億ドル程度の額の経済協力を実施すること、また、湾岸における平和回復活動に対する協力として、さきの十億ドルに加え、今後の中東情勢の推移等を見守りつつ、新たに十億ドルを限度として追加的に協力を行う用意がある旨を表明いたしました。ブッシュ大統領との電話のときにはこの内容を伝えたわけであります。
 人事院の勧告の問題についてお触れになりましたが、政府は、これまでも労働基本権制約の代償措置であるとの基本姿勢に立って対処してきたところでありまして、できる限り早期に結論を得るよう努力をいたします。
 補正予算については、税収の動向などをぎりぎりまで見きわめる必要がある現段階では、その提出時期についてはまだ申し上げられる段階ではございません。
 公共事業の事業別配分に当たりましては、それぞれの社会資本の整備状況等を踏まえ、今後の公共投資基本計画を指針として、国民生活の質の向上に重点を置いた分野にできる限り配分してまいるつもりでおります。
 森林整備についてお触れになりましたが、森林は木材生産のみならず水資源の涵養、生活環境の保全など重要な役割を果たしているところであります。今後とも森林林業施策の充実を図りつつ、森林整備を着実に推進してまいる考えでおります。
 また、補助事業のメニューの選択制については、各種公共事業について限られた財源を国民経済的見地から効果的に活用するためには、それぞれの事業について各地方団体ごとの整備水準、必要度などを個別に勘案しながら事業ごとに審査し、実施していくことが不可欠でありますので、いろいろと御意見に対しては慎重に検討をさせていただきたいと考えます。
 在日米軍経費問題につきましては、従来から、我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制の効果的運用を確保していく、このことは極めて重要と考えております。自主的な努力を今日までも払ってまいりました。本件は、これ自体の問題として、次期防策定の作業の中で引き続き努力をしてまいりたいと考えますが、具体的なことについては現段階でまだこれ以上の答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
 政治改革法案の提出と企業献金の廃止についてお触れになりました。
 私は、政治に対する国民の信頼回復のためには、政治倫理の確立はもちろん大切なことであります。御指摘になった、金のかからない、政党本位の、政策本位の選挙を実現していくこと。政府としては、審議会の答申の趣旨を尊重して、選挙制度及び政治資金制度の抜本的な改革を図ることができるように、その成案化に向けてただいま鋭意取り組んでおるところであります。できるだけ早い時期に改革が実現できるように努めてまいります。
 最後に、国連平和協力法のもとでは、国連憲章第七章の措置を含め、国際の平和及び安全の維持のために国連が行う決議を受けて行われる国連の平和維持活動その他に対し武力による威嚇または武力の行使を伴わない国連平和協力隊の派遣などの協力を行うことを想定しておりますが、同法のもとでは兵力の提供を行うことは考えられておりません。
 また、この協力法のもとで想定されておる態様以外の協力のあり方については、これは将来の問題として研究を行っておりますけれども、いずれにしても、集団的自衛権に関する憲法の解釈の変更は考えておりません。
 残余の御質問に関しましては関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
   〔国務大臣中山太郎君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 111915254X00319901018_024

発言者: 海部俊樹

speaker_id: 5376

日付: 1990-10-18

院: 参議院

会議名: 本会議