金子満広の発言 (本会議)
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○金子満広君 私は、日本共産党を代表して、湾岸戦争を中心とする当面の内外の重要問題について総理に質問をいたします。
世界の平和を脅かす湾岸戦争が開始されてから二週間になろうとしています。戦争は長期化の様相を見せ、無辜の人民の殺りくと破壊、大量の原油流出による地球環境の汚染は、全世界の人々に対して深刻な不安を呼び起こしています。
言うまでもなく、この根本には、イラク・フセイン政権による野蛮きわまるクウエートへの侵略とその併合があります。我が党は、この蛮行を断固糾弾し、イラクが即時無条件にクウエートから撤退することを湾岸の平和の中心課題として要求してまいりました。
同時に、イラクがどんなに野蛮、頑迷であろうと、なぜアメリカが武力行使を急いだのか、そこに重大問題があることは厳然たる事実であります。国連安保理でも多数の国が賛成をし、イラクも評価せざるを得なかった、道理あるフランス提案による交渉の機会をアメリカはつぶしたのであります。政府が武力行使の根拠として挙げている国連安保理決議六七八号にしても、一月十五日の期限が切れたらすぐ武力行使をやれなどと言っているものでは全くありません。時間がかかっても平和的解決をさらに追求すべきではなかったか。これこそ今、圧倒的多数の国民が感じているところであります。
もう戦争に入ってしまったんだから、国際貢献とはその戦争に協力する以外にないんだという立場は成り立ちません。こういうときにこそ、あくまでもイラクのクウエートからの撤退とその後の中東の平和を目指して、憲法の平和原則を貫き、湾岸問題の解決に向けて局面の転回を図り、戦争を一刻も早く終わらせるために、日本が日本にふさわしい役割を果たすことこそが真の国際的貢献ではありませんか。(拍手)総理の責任ある答弁を求めるものであります。
しかしながら、海部内閣には、そういう立場からの積極的なイニシアチブは全く見られません。それどころか、武力行使の戦費負担であり、自衛隊機の派遣であります。
そこで、具体的に質問をいたします。
まず第一は、総理がアメリカを中心とする多国籍軍への確固たる支持を表明し、莫大な国民の血税を応分の負担として要求してきたことであります。
その協力とは、九十億ドル、一兆二千億円、国民一人当たり一万円にも及ぶ戦費の負担であります。全戦費の実に二〇%、五分の一であります。あの撃ち込まれるミサイルの五発に一発は日本の負担ということになります。この九十億ドルは、どのような内容、事態を想定して算出したのか、まず伺います。
また、総理は、自主的に決めたとか、多国籍軍に対するものだと言いますが、アメリカのベーカー国務長官は、二十六日の声明で、九十億ドルは我々が日本政府に頼んだものと数字を挙げ、その上で、しかも九十億ドルは米軍戦費であると言明したことが報道されています。これまでの政府の見解と大きくかけ離れたものであり、具体的な事実関係を明らかにすることを要求いたします。
また、日本国民の血税は、何の条件もなく、多国籍軍の武器弾薬の購入はもちろんのこと、戦争が長引けばその額がずるずると膨らむことは必至であります。これに対してどのような見通しを持ち、どのように対処するのかお聞きいたします。
また、海部総理は、多国籍軍の支援が日本の国力に見合ったものだと述べていますが、我が国で大もうけをしているのは大企業だけであり、国民生活は圧迫され、国の財政も赤字ではありませんか。この上、国民にしわ寄せをするということは一体どういうことなのか。
ところが一方、アメリカは、二十七日、大統領首席補佐官及び行政管理予算局長は、日本などの資金援助が順調なのでアメリカは増税する必要がない、このように発言していることが大きく報道されているのであります。一体総理はこの事態、この状況をどう見ているのか、このことをあわせて責任を持ってお答え願いたいと思います。
第二は、自衛隊機の派遣であります。
避難民の救済という人道的な問題での援助は当たり前のことであります。しかし、総理、あなたは、避難民の輸送を自衛隊のつまり軍用機でやるということであります。民間機が使用できないところでやると言いますが、民間機でさえ攻撃される危険のある地域に軍用機を派遣して、それに避難民を乗せるということは、人道的どころではありません、かえって標的にされ、避難民を危険にさらすことになりますが、この点を総理はどのように考えているのか、責任を持ってお答えを願います。
自衛隊の輸送機の派遣には、運航や整備の要員が当然同行します。自衛隊員、部隊の派遣であります。当然、隊員の武装問題も大きな問題となってきます。こうしてこの問題は、結局のところ、昨年の国連平和協力法案、あの内容の完全な蒸し返してあります。自衛隊の海外派兵の法案は、国民世論と国会の審議を通じて、その不当、無謀さが明らかにされ、廃案になったのではありませんか。総理は、国会と国民の意思を一体どう考えているのか。国会に諮ったのではもう通らないから政令でやってしまうというのが今度のやり方でありますか。一片の政令による自衛隊機の派遣、まさに露骨きわまる国会の立法権の侵害でありますが、はっきりとした答弁を求めます。(拍手)
湾岸戦争のどさくさに紛れての自衛隊の海外派兵、これは憲法の平和原則のあからさまな侵犯、じゅうりんであります。総理、この明白な憲法のじゅうりんをどう考えているのか、この点についても筋道を立てて説明をしていただきたいと思います。
湾岸問題が起こって以来、日本共産党は、一貫してイラクの蛮行を糾弾し、この問題を平和的に解決するため全力を挙げてきました。一月十五日を前にしたぎりぎりの局面で、イラクを国際的に追い詰める、道理を持ったフランスの和平提案が国連安保理の協議の場に出されました。この提案は、イラクのクウエートからの撤退の実現を前提にパレスチナ問題での国際会議をというものであり、我が党は、このフランス提案の方向で平和的解決を図るよう安保理十五カ国に電報で要請し、海部首相にも申し入れてまいりました。国連の実際の状況から見て、この提案の方向で局面を打開することは可能だったのであります。
総理、この十四日の夜から十五日の夜までの間に、日本政府は、国連その他の場でフランス提案を含めて問題の平和解決のためにどのような努力をしたのか、あるいはしなかったのか、具体的な答弁を求めます。(拍手)
総理は、施政方針演説で、国連が示した一月十五日の期限まで、事態の平和的解決に向けて、我が国を含めあらゆる努力が行われた、そのように述べていますが、このときに日本政府は、総理演説とは全く逆に、開戦前の十四日、国連の安保理事国間で協議しているその前に、中山外相がブッシュ大統領に対し、武力行使への支持と全面協力を約束していたのであります。そこで総理、なぜ開戦前にアメリカに対して武力行使を支持し、全面的協力を約束させたのか。これでは開戦無条件支持と言って、その後押しをするのと同じではありませんか。(拍手)総理の真意をただします。
さらに、このフランス提案について総理は、先日の本会議での我が党の不破委員長の質問に対して、アメリカもそれに反対しなかったかのように答弁をされましたが、フランス提案がアメリカの拒否によって葬り去られたことは紛れもない事実であります。総理は、このアメリカの態度をよしとするのかどうか、重ねて伺いたいと思います。
そこで、当の中山外相は、今国会での外交演説ではさらに、「今回の湾岸危機によって改めて明らかになったことは、国際の平和と安全を守る上で中心的な役割を果たし得る国は米国をおいてほかにない」としてアメリカを絶対化し、その立場から、日米安全保障条約を堅持していくべき必要性についてはいささかの変化もありませんと述べています。
軍事同盟、軍事ブロックの害悪とその解消の必要性が今ほど世界的に明らかになっている時期は戦後政治の中で初めてであります。ところが日本政府は、その流れに逆行して、いつまでも古い枠組みの中でアメリカへの従属を続け、戦費の負担から自衛隊機の派遣まで、同調、協力、協同しているのであります。これでは、憲法の平和原則を生かした独自の外交も国際貢献もできないことは明らかであります。このことを強く指摘して、来年度予算の問題について質問をいたします。
湾岸問題にしろ、予算や国民生活の問題にしろ、自主的に国の進路を決めていくことは今日の日本にとっては根本的な問題であります。一兆二千億円に上る湾岸戦争への戦費の負担に加えて、来年度予算では、さらに防衛費という名の軍事費は四兆三千九百億円を超えています。一九八〇年の二兆二千億円の二倍に及ぶ軍事費の突出であります。なお、この十年間で、在日米軍に対する思いやり予算は実に四・五倍に拡大しているのであります。しかも、来年度は新軍拡の五カ年計画の初年度に当たりますが、そこには総額二十二兆七千五百億円もの血税をつぎ込もうとしているのであります。
かつて私は、本院で、アメリカの要求に基づき軍事費異常突出の予算について、軍事が栄えて福祉が枯れると指摘したことがありますが、来年度予算はこれをさらに露骨にしたものであります。この十年間の軍事費の連続異常突出がいかに福祉、教育、国民生活を犠牲にし圧迫してきたかは、一九八三年、当時無料であった老人医療が有料化されました。これを突破口にした健康保険本人一割負担、国民健康保険料の相次ぐ値上げ、生活保護費の大幅な削減、そして教育と地方自治体の補助金への圧迫であります。この中で伸び続け伸び続けてきたのがほかならぬ軍事費では、皆さんありませんか。一体日本の政治はどこを向いているのだ。今国民の願いは、国の政治を軍拡から軍縮の方向に転換をすることであります。(拍手)
総理は、今全国で重大問題になっている国民健康保険料を初め、住宅問題や家賃補助、看護婦不足の解消、心身障害者対策など、国民の福祉下医療、教育の現状をどう見ているのか。多国籍軍の戦費負担をやめて軍事費を大幅削減するならば、これらの充実に道を開くことができるのではないですか。総理の見解を求めるものであります。(拍手)
そこで、消費税の問題です。
日本共産党は、売上税の段階から、大型間接税は最悪の不公平税制であり、軍備拡大の財源づくりであると指摘してまいりました。今日、ふえ続ける軍事費と米軍への協力は、消費税の目的がどこにあったかを事実によって明らかにしています。高齢化社会のためなどという政府の宣伝がいかに言葉だけのものであったかは、来年度予算で老人医療について、通院一カ月につき初診料現行八百円を千円に、入院料一日四百円を二倍の八百円に引き上げようとしていることを見ただけで明らかであります。お年寄りの怒りが、その声が全国各地に広がっているのは当然であります。消費税が実施されて一年十カ月、この現実は一世帯当たり年間十万円を超える税負担であります。
我が党は、このような最悪の不公平税制である消費税の廃止を一貫して要求しますが、同時に、今直ちに廃止が困難な条件のもとでも、国民が切実に求めている食料品などの生活必需品、関連サービスなどへの課税を完全にやめ、国民の苦難を軽くすることを両院合同協議会でも繰り返し繰り返し主張してきました。総理、本当に逆進性の緩和を言うのであれば、少なくとも食料、衣料、住宅などを完全に非課税にすべきであります。また、国民の政治参加の自由を保障するため、政党機関紙への課税もやめることです。改めて総理の答弁を求めます。(拍手)
さらに、総理はこれまで、海部内閣の間は税率を上げないと述べてきましたが、今後も税率は引き上げないと断言できるかどうか、あわせて伺っておきます。
さてそこで、今正念場を迎えている米の輸入の自由化の問題であります。
米問題は、日本農業の存亡にかかわる問題であり、また、消費者にとっても、安全な食糧がどうなるか、大きな問題であります。同時に、日本経済、主権にかかわる問題であります。総理は、施政方針演説でも、国会決議の趣旨を体してとか、自給するとの基本方針で対処するとか述べています。しかし、今最大の問題は、アメリカの理不尽な要求をきっぱりと拒否できるかどうかということであります。かつて牛肉・オレンジ交渉に当たったアメリカのヤイター代表が、日本は風圧をかければ幾らでも折れるんだと述べたことが報道されています。総理、米の輸入の自由化は、どのような条件が出されてもアメリカの要求はきっぱりと拒否すると、全国の農民、消費者にここではっきりと答えていただきます。
そこで、平和と民主主義、国の進路にかかわる重大問題として、いわゆる政治改革についてお聞きいたします。
総理は、リクルート事件のあの後、反省に立って、内閣の命運をかけても政治改革をやると言明してきました。また、施政方針演説でも信頼の政治の確立をうたいました。しかし、政府が今やろうとしていることは、政治改革に名をかりた小選挙区制の導入であります。これが導入をされれば、四割台の得票で八割の議席を自民党が占めることは、各界がひとしく指摘しているとおりであ
Sります。衆議院で三分の二の議席を自民党が確保すれば、参議院で過半数割れしていても、国民の圧倒的多数が反対する自衛隊の海外派兵法も消費税の税率アップもできるというものであります。
我が党は、並立制であれ併用制であれ、いかなる形であれ小選挙区制の導入には反対であります。今やるべきことは、定数の抜本是正を決めた国会の決議の実行そのものであります。九〇年国勢調査結果に基づいて、一票の格差は一対二未満とする、現行の中選挙区制で総定数は現在の五百十二名とする、これは党利党略、私心を捨てれば今すぐにでもできることであります。(拍手)やるべきことをやらないで、国会の決議でもないことをやるというのは、民主主義のルールに反したことであります。
汚れた政治をなくすというのであれば、その根を断ち切ることであります。それは企業、団体からの政治献金の禁止であります。政治献金は個人に限定することであります。これをやらないで金権政治をなくすことはできません。総理のはっきりした見解を伺います。
最後に、ゴルバチョフ大統領の来日に関連して、日ソ領土問題について伺います。
その前に、ソ連政府によるリトアニアなどに対する武力弾圧は、大国主義の暴挙であり、断じて許せない、このことを厳しく指摘しておきます。
そもそも日ソ間に領土問題が起こった根本も、同じ性質の大国主義にありました。一九四五年のヤルタ会談で、スターリンは、対日参戦の条件として千島のソ連引き渡しを不当にも要求し、これに米英が応じ、ヤルタ協定が結ばれました。これは、領土不拡大という連合国が戦後処理の原則として決めた国際的な民主主義の道理に反する全く不公正なものでありました。その後、一九五一年のサンフランシスコ条約の締結の際、アメリカの要求で、第二条(c)項で千島の放棄が明記をされ条約化されたのも、この延長線上に起こったものであります。
そこで、総理、今後の交渉に当たって、このヤルタ協定に基づく千島放棄の枠組みを動かしがたいものとして考えているのかどうか、問題解決の基本姿勢にかかわるものでありますから、明確に答えていただきます。(拍手)
総理、ことしは太平洋戦争開戦五十周年の年に当たります。あの痛苦の歴史の上に制定された憲法は、「われらとわれらの子孫のために、」「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」と明記して、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」ことを内外に宣言しているのであります。これこそ戦後政治の原点であり、その平和の原則は、国際的にも誇るべき先駆的なものであります。今こそ政府は、この原則に立ち返るべきであります。
以上、私は、湾岸戦争問題を中心に、平和と民主主義、国民生活の基本問題について質問をいたしました。総理の責任ある答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕