鶴岡洋の発言 (本会議)
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○鶴岡洋君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました総理の施政方針並びに外交、経済、財政の各政府演説に対し質問をいたします。
二十一世紀まであと十年、まさに人類は未曾有の転換期に差しかかっており、新しい世紀に向かって何をなすべきかを真剣に考えなければならない歴史的な岐路に立っていると言っても過言ではありません。今や、国家、イデオロギー優先の時代から人間中心の時代へ、国益優先から地球益優先の時代への大転換期と思うのであります。
それにつけても、一九九一年の幕あけを、多国籍軍によるイラクに対する武力行使、そして戦争という悲しい悲惨な事件で迎えたことは、まことに残念であります。今日、世界は東西の冷戦構造に終止符が打たれ、新たな世界秩序が模索されようとしていたやさきの戦火は、それが新たな秩序形成のための陣痛であるとしても、余りにも痛ましい事件と言うほかありません。同じ地球上に生存する者として、人間の英知と勇気ある決断によって、この戦争が一刻も早く終結し、再発防止はもとより、これを未来へのとうとい教訓として新しい国際秩序が構築され、安定した揺るぎない平和が確立されることを切望するものであります。
初めに、湾岸危機について伺います。
イラクのクウェートへの武力による侵略と併合は、いかなる理由をもってしても正当化されるものではなく、平和への破壊行為であります。国連の十二回にわたる決議を無視し、クウェートからの撤退という国際世論に耳をかそうとしなかったイラク政府の姿勢は厳しく追及されなければなりません。私は、多国籍軍による武力行使は、いまだ外交による説得の余地もあり、拙速に過ぎたのではないかなどの問題を指摘しつつも、やむを得ないものであったと考えております。
しかし、開戦以来の経緯を見ますと、湾岸戦争は、戦域の拡大、長期化という最悪のシナリオも憂慮されるのであります。原油の大量流出、砲弾による人的、物的犠牲は、テレビを見て知るだけの私どもにとっても目を覆いたくなるような惨状であります。私は、中東湾岸戦争の拡大と長期化は、環境破壊を初め、はかり知れない人類的な犠牲をもたらすものであり、一日も早い終結が必要であることを強く主張するものであります。
総理は、国連への働きかけ、関係諸国への呼びかけなど外交努力を強力に行うべきであります。総理にその決意はあるのかどうか、具体的な行動を示していただきたいのであります。また、戦争の早期停止への展望を持っているのかどうか、ブッシュ大統領と停戦について話し合うことは考えていないのかどうかもあわせてお伺いしたいのであります。
湾岸戦争とこれに対する我が国の対応は、まさに国際社会における我が国の平和観、国際観など、今後のあり方、生きざまが問われている極めて重要な問題であると思うのであります。私は、湾岸情勢や国連決議、国際世論など、我が国が置かれている国際的な立場から、多国籍軍への支援に対してはただ反対だけでは済まされないと思うのであります。我が国の平和主義が、自分のことだけを考えている一国平和主義であったり、都合の悪い国際紛争に無関心であったり、傍観者的態度であってはなりません。不幸にも戦争が行われている今日、できるだけ戦禍を抑制し、早期停戦と平和回復のために我が国もある程度の負担も必要であります。
また同時に重要なことは、我が国が平和憲法のもとで営々と築き、積み上げてきた国家としての平和原則を崩してはならないと思うのであります。
さて、政府は、今回の湾岸危機に対する多国籍軍への支援策として、財政面で九十億ドル、日本円で約一兆一千八百億円の追加支援と、難民救済として自衛隊の輸送機派遣を決定いたしました。私は、この政府の支援策については多くの疑問を持つものであります。九十億ドルといえば膨大な額であります。
その理由と根拠について総理は、関係諸国が当面要する経費に充てるためであると説明し、我が国が国際的役割を果たしていくために必要であるから、国民の皆さんに負担をお願いすることになるので御理解と御協力をいただきたいと施設方針で述べられました。果たしてこれだけの説明で、新たな増税も含めた国民負担を求めたことになるのでありましょうか。少なくとも、なぜ我が国がこれだけの支援が必要なのか、どうして九十億ドルなのか、その使途はどうなっているのか、説明していただきたいのであります。
戦争が長期化するようなことになれば、再追加支援、再々追加支援が要求されかねないことも心配されるのであります。際限のない財政支出を求められることに対する歯どめはあるのかどうかも、あわせて伺いたいと思うのであります。
総理、湾岸危機に対する我が国の支援が最重要な課題であるというなら、政府みずからが財政措置について身を削るような努力をして、初めて国民の理解と支援を求めるのが筋であります。戦争が起こる前に編成された平成三年度予算を全面的に見直すくらいの姿勢が必要であります。いわんや、平成三年度をスタートとする新中期防衛力整備計画を大幅に再検討していくべきことは当然であります。海部内閣からそうした緊迫感が伝わってこないのは私一人ではないと思うのであります。私は防衛費、特に中期防の見直し、平成三年度の歳出の洗い直しを行うべきことを主張いたしますが、財源措置に対する総理並びに大蔵大臣の見解を示していただきたいのであります。
私は、財政支援を行うとしても、原則を明確にすることが必要であると思うのであります。少なくとも、第一に、戦争の早期終結に全力を挙げること。第二に、国民に十分説明し理解を求めること。第三に、難民、医療など人道面を中心とし、武器弾薬等には使わないこと。第四に、安易な増税を行うべきではなく、防衛費を含めた不要不急の経費を見直すこと。第五に、社会的に弱い立場や国民生活への影響を最小限にすることなどは最低限度の措置であると思うのでありますが、これらの点について総理の見解を伺いたい。
自衛隊の輸送機の派遣は、これまでの経緯から許されるものではありません。さきの国連平和協力法案の審議の結論は、自衛隊の派遣はノーというものでありました。これが国会の意思であります。政府もこれまで、自衛隊法の改正なしに自衛隊の海外派遣はできないという見解を示してきたのではありませんか。国権の最高機関である国会で決めた意思、方針が無視され、法律の基本的な枠組みを政令の追加で政府が勝手に行えるとするならば、政府の裁量は無制限、国会の権威、機能は形骸化されるという、我が国の法治国家としてのあり方、民主主義の基本にかかわる問題であり、自衛隊の輸送機の派遣を撤回するよう強く要求いたします。
また、IOM、国際移住機構からは、難民を輸送する一般的輸送機の要請であって、特に自衛隊機を要請しておりませんと伝えられておりますし、輸送経費さえ出してくれるところがあれば、ヨルダン航空機で十分輸送できるとの報道もあります。この点についていかがですか。
さらに、自衛隊機を派遣する前に、我が国としてできること、しなければならない支援策があるのではないかと思うのであります。それは戦争による原油流出対策であります。原油流出による海洋汚染が拡大し、深刻な環境破壊に発展しております。これは、戦争が地球環境を脅かす最大の加害者であることを示すものでもあります。我が国も、かけがえのない地球環境を守るため、技術協力等を含め速やかに対応すべきだと思いますが、いかがですか。
次に、ソ連情勢と日ソ関係について伺います。
ソ連国内においては、リトアニア、ラトビアの両共和国への武力弾圧、さらにはソ連国内の政治、経済状況の混迷といった憂慮される事態が伝えられているのであります。ソ連国内のこうした不安定状況は、ただソ連一国にとどまらず、米ソ関係、デタントへと動き出した国際政治、欧州情勢にも重大な影響をもたらすものであります。また、この四月に初めてゴルバチョフ大統領が訪日することになっておりますが、総理はソ連の国内情勢、ゴルバチョフ政権の安定度、ペレストロイカの前途、民族問題についてどのように認識されているのか、御説明願いたいのであります。
今日のソ連の政治状況から見れば、ゴルバチョフ大統領の来日によって北方領土問題への明るい展望はあるのでしょうか、その見通しはいかがでございますか。経済的な支援策もどうするのか、明らかにしていただきたいのであります。
外交問題の最後に、ガット・ウルグアイ・ラウンドについてお伺いいたします。
ガット体制下で最も恩恵を受け、繁栄を享受してきたのは我が国であります。何としても今年二月末に交渉期限を迎える新ラウンドを成功させ、保護貿易の台頭を防がなければなりません。日本は、経済大国として、自国のエゴイズムのみにとらわれることなく、積極的にリーダーシップを発揮すべきものと考えますが、総理の御所見を伺います。今後の交渉において我が国が食糧安保論を押し通すことが可能であるのか、特に、最悪の事態である日米二国間交渉は避けられるのかどうか、政府の基本的な見解を明らかにしていただきたいと存じます。
さて、総理、二十一世紀を目前にして、我が国は今こそ国民一人一人が心の豊かさを実感できる生活者重視の社会を構築していかなければなりません。心の豊かさとゆとりを実感するための最大の基盤は、住宅対策であります。近年の大都市圏における地価高騰は、努力次第で我が家が持てるというサラリーマンのマイホームの夢を絶望的にし、一方では住宅家賃の高騰をもたらし、都市生活者の家計を著しく圧迫しております。本来サラリーマンのための公共住宅である公団住宅の家賃が異常に高くなっており、東京では二LDKの家賃が二十八万円もするところもあります。また、一LDKで十三万円もする公団住宅に新婚夫婦が入居できるでしょうか。
総理、このように高い家賃の公団住宅に一体だれが入居されるとお考えでしょうか。私は全く憤りを覚えるのであります。
そこで、このように高い家賃負担に悩む生活者を守るため、我が党がかねてより主張している家賃控除方式と家賃手当制度をあわせた家賃補助制度を速やかに創設すべきだと考えますが、いかがですか。また、住宅に関する基本理念を明確にするとともに、住宅問題解決のための基本的方途を示した住宅基本法を早期に制定すべきだと考えますが、あわせて総理の所見を伺いたい。
次に、土地対策についてであります。
土地問題の解決は、内政における最大の政治課題であります。その土地対策の成否のかぎを握るものが土地税制改革であります。ところが、政府が平成三年度税制改正要綱で提案している地価税は、税率、課税対象、課税方式など大幅に後退したものであり、国民の期待を裏切るものであります。これでは土地神話を打破し、地価の引き下げと土地の有効利用を促進することはできません。この地価税を実効あるものとするためには、専門家等が当初考えていたとされる税率一%、課税最低限五億円とし、税収は所得税や法人税の減税に充てるべきだと考えますが、総理並びに大蔵大臣の所信はいかがですか。
次に、生活、福祉問題の初めに、育児休業法についてお伺いします。
我が国の平均出生数を見ると、十年連続で最低記録を更新し、出生率が平成元年度には一・五七人と史上最低となってしまい、人口減少が始まるとされる二・一人を大きく割った状態になっております。出生率低下の原因は、女性の社会進出、住宅難、若い世代の子育てに対する価値観の変化などが挙げられていますが、子供を生み育てる環境が整備されていないことが最大の原因であります。
かかる視点から、私は育児休業法の制定が急務であると思いますが、総理のお考えをお伺いいたします。
第二に、児童手当制度についてであります。
児童手当制度は、公明党の強い主張によって昭和四十七年に発足し、今日に至っております。その経過を見ると、現在の第三子月額五千円という金額は昭和五十年以来十五年間も固定され、その支給期間も、制度発足当初は中学卒業まで支給されていたものが、昭和六十年度には支給を第二子まで広げたかわりに小学校入学までと制度が縮小されています。子供は国の宝であり、社会全体ではぐくむものであるという視点から、制度の思い切った充実が必要であります。私は、そのためには、支給対象を第一子から、支給額一万円以上とし、支給期間は諸外国のように義務教育終了まで支給して、次代の日本社会を担う児童を育成するのにふさわしい制度に改善すべきだと考えますが、総理並びに厚生大臣の御見解を伺います。
第三に、老人医療の問題についてであります。
政府は、今国会において老人医療費の一部負担を、外来について八百円を千円に、入院については四百円を八百円に引き上げ、さらに医療費の上昇に合わせて一部負担をスライドさせるルールの導入を考えているようであります。しかし、多くの老人が年金収入のみに頼っていることを考えれば、受診抑制につながる安易な一部負担の引き上げや、国会のチェック機能を奪ってしまうことになる医療費スライド制の導入には反対であります。
高齢化社会の進展に伴い、老人医療の充実は年金制度の充実とともにますます重要になってきます。これからの我が国の老人医療対策をどのように進めていかれるのか、総理並びに厚生大臣の御決意のほどをお伺いします。
第四に、救急救命医療体制の充実についてであります。
交通事故の激増、高齢化社会の急速な進展に伴う急病者と在宅医療の増加、国民の疾病構造の変化等を反映して、救急隊の出動件数は年々増加の一途をたどっております。白書によれば、平成元年の年間出動件数は二百六十五万件余、搬送人員は二百五十九万人にも上っております。全国で一日平均約七千二百七十九件、十一・九秒に一回の割合で救急隊が出動したことになります。
こうした状況の中で、今最も緊急を要する課題は、人命尊重の立場から救急救命医療体制の抜本的充実であり、なかんずくプレホスピタルケアの充実であります。救急専門医の育成を初め、救急隊員の応急処置の範囲の拡大とドクターカーシステムの全国ネットワーク化など、総合的な体制の整備が急務だと考えますが、総理並びに厚生大臣のお考えと、今後の取り組みについて伺いたい。
第五に、消費税についてであります。
私は、消費税はあくまでも廃止すべきであると考えております。しかし、昨年の両院協議会で益税、運用益、逆進性の緩和等について与野党の認識が一致した部分は、国民生活重視の立場から緊急是正の措置を講ずべきであります。食料品、公共料金等の非課税についても最大限の努力をすべきでありますが、今回、緊急是正措置が全く無視されたのはまことに遺憾であります。いかがお考えか、総理並びに大蔵大臣の明確な所信をお示しいただきたいのであります。
最後に、政治改革についてお伺いします。
現在の日本の政治は、国民の意思が十分反映されているかどうか、極めて疑問であります。政治に対する国民の信頼は不可欠の条件でありますが、リクルート事件以来、政治改革が言われながら、具体的な成果がないばかりか、元環境庁長官稲村利幸代議士の株取引に関する所得税法違反事件は政治不信を増大させているのであります。この現実をどう認識されていますか。
総理は政治改革に内閣の命運をかけるとまで明言されましたが、総理の言われる政治改革とはどういうことなのか。政治の金権腐敗構造の責任を選挙制度に転嫁することですか。政治資金の規制強化、政治倫理の確立、国民の政治への信頼回復をどう進められますか。具体的に示していただきたいと思いますが、いかがですか。
以上、当面する内外の諸課題について伺ってまいりましたが、今日の歴史的とも言うべき大きな変革のときに当たり、我が国を取り巻く課題はいずれも難題が多く、そのかじ取りを行う政治の役割と責任はますます重大であります。
以上、総理の明確な答弁を求めまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕