矢追秀彦の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○矢追秀彦君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました政治改革三法案について、海部総理に質問をいたすものであります。
総理、あなたは平成元年十月、総理に就任された最初の所信表明において、「清新の気に貫かれた信頼の政治こそ、私の理想とする政治の姿であります。さらに、政治家一人一人が高い政治倫理を確立することはもとより、ガラス張りで金のかからない政治活動や政策中心の選挙を実現するという、根本にさかのぼった改革を大胆に実行していかなければなりません。」と、政治改革の決意を披瀝し、平成二年十一月の国会開設百年を目標に実現すると明言されました。
さらに、平成二年三月には、「リクルート事件の反省の上に立って、政治倫理を確立するとともに、金のかからない政治活動や政策中心の選挙の実現など実のある政治改革を全力を挙げて進めてまいります。」と述べられ、また本年一月には、「まず何よりも政治倫理を確立することが重要であります。それとともに、政治や選挙の仕組みそのものを改め、政治資金の透明性を確保し、金のかからない政党本位、政策中心の政治や選挙を実現していくことが必要であります。」と、同趣旨の発言を繰り返されました。そして、去る八月の所信表明では、「私は、就任以来、政治改革の実現こそが時代から託された使命と考え、不退転の決意で取り組んでまいりました。」と述べておられます。しかしながら、総理は決意を披瀝するのみであって、何ら政治改革の実現を見ておりません。
会期末まであと二十四日、全野党が反対し、しかも自民党内にも強い反対があり、また、自民党の有力者が、次期総選挙は中選挙区制で行うと明言をされている状況のもとでは、衆議院段階で審議未了、廃案が決定的とも予想されている状態にあります。総理の、ただメンツにこだわり審議を強行しようとする態度には、私は納得がいきません。法案が提出され、少しの審議でも行われれば、総理の責任が果たされるとでも考えておられるのか。もしそうであるとするならば、政治改革、特に選挙法は憲法に次ぐ重要な法律と至言われているだけに、事は重大であります。総理、今回提出されている三法案が不成立に終わった場合、その政治責任をどうとられるのか、明らかにされたい。リクルート事件の反省を忘れ、金権腐敗政治の転換を図ることなく、その原因を選挙制度に転嫁している政治姿勢は、到底許されるものではありません。小選挙区制の導入がどうして政治改革でありましょうか。私は、政治改革の名に値しないばかりか、政治改悪であると申し上げざるを得ません。(拍手)
総理、あなたは、政治改革の第一歩は政治倫理の確立にあることを強調されております。私も全く同感であります。しかしながら、政治倫理の確立が叫ばれて久しいにもかかわらず、依然として汚職や疑惑が後を絶たないのは一体どこにその原因があるのでしょうか。私は、日本の社会の構図が、政界と財界と官界の三者の癒着、腐敗構造にあるものと指摘せざるを得ないのであります。過去の汚職はすべてこの構図にあると言っても過言ではありません。今回の証券・金融不祥事件において、改めて政官財の癒着構造、不公正ぶりが明らかになりました。この問題は政治改革問題とは別個の問題でなく、この両者の根底には深いかかわり合いを持つものであり、したがって、政治改革が緊急かつ必要なものとなってきたと言うべきであります。
あの世間を騒がせたロッキード事件の反省から、昭和六十年にはようやく政治倫理綱領と行為規範が議決され、国会法改正により政治倫理審査会が衆参両議院に設置されることになりましたが、野党が申し立て書を提出したにもかかわらず、自民党の反対でいまだ政治倫理審査会は一度も開かれたことはありません。また、行為規範において定められている議長への届け出については、氏名の公開はもちろん、届け出の有無についても公表されないという状況では、全く政治倫理の確立に不熱心とのそしりを免れることはできません。
総理、政治倫理の確立はどうしてやるのですか。一番大事な政治倫理の確立を解決せずに、金権腐敗政治が選挙制度に原因があるとすりかえて今回の三法案の提出になったとするならば、それは本末転倒であり、総理自身の今までの言動からは全く不可解、自話相違も甚だしいのであります。
政治倫理確立のためには、欧米において既に実証済みであるイギリスの腐敗防止法、アメリカの政府倫理法のような政治倫理法の制定こそ急務であります。既に野党四党が平成元年五月に提案した政治倫理法こそ論議をし、これの成立に努力すべきであります。
総理、あなたは議会の子と言われた三木元首相のまな弟子を任じておられるならば、遺言とも言うべき三木私案をどうして実現しようとはされないのですか。野党四党の政治倫理法は三木私案を参考にしたものです。なぜやらないのですか。それとも今の政治倫理綱領と行為規範と政治倫理審査会で十分対応できるとお考えなのですか。最も重要な、そして早急にやらなければならないことに目をつむり、政治改革に熱心に取り組んできた。不退転の決意とか言われても、国民が聞けば、そらぞらしいとしか聞こえません。まず最初に政治倫理法の制定を決断されませんか。お伺いしたい。
次に、選挙制度の改革について伺います。
今回、政府が導入しようとしている小選挙区比例代表並立制は、本質的には小選挙区制であります。比例代表制を並立させることによって、少数政党の意見を国会に反映できるとめことでありますが、わずか百七十一議席の中の比例配分であり、明らかに少数政党の切り捨てであります。今日の多党化された日本の政治状況にあって、民意を議席に的確に反映したものとは到底言えません。(拍手)
総理は、所信表明において「わかりやすく公正な政治を確立し、その負託にこたえていくことが政治の原点」であると述べられていますが、このわかりやすい公正な政治が、すなわち小選挙区制の導入にあるとするならば、考え違いも甚だしいと言わざるを得ません。
さきの選挙での支持率を使ってのマスコミ各社の試算によれば、自民党は四割台の得票率で八割程度もの議席を確保し、逆に野党は、五割台の支持率でわずか二割台の議席しか得ることができません。これは、つくられた多数派を意図的につくり上げるものであります。その結果、自民党は一党支配を続け、さらに三分の二以上の議席を衆議院において獲得することになり、参議院における現在の逆転状況にもかかわらず、あらゆる法案を通過成立させることができるという、まさに自民党の党利党略そのものではありませんか。(拍手)
総理、あなたは初の昭和生まれの総理であります。にもかかわらず、今、古めかしい過去に葬り去られた遺物をまた復活させようとしている思考力を疑います。今世界は大きく動いています。七十四年間続いたソ連共産党の一党支配は、音を立てて崩れています。このことは、自由と議会制民主主義が人類普遍の原理であることを改めて実証されたものと言えましょう。一党支配を目指すこの制度は公正と言えるでしょうか。民意の的確な議席への反映こそが公正な選挙制度ではないのでしょうか。(拍手)総理の言う公正な政治の定義、基準とは何か、具体的に明快にお答えいただきたい。
次に、金のかからない選挙を強調されていますが、小選挙区制によって金がかからないという保証は全くありません。小選挙区制は既に帝国議会において、多くの弊害が指摘され、その反省の中から大正十四年には小選挙区制を廃止したごとによっても明らかであります。このときの第五十回帝国議会における選挙法改正理由書の中に、「小選挙区制に在りては選挙競争区域狭小となるが為に選挙運動余りに周密激甚となりて動もすれば之に伴う種々の弊害を誘起するの虞多く又候補者の濫立を促すの感あり」、また、「小選挙区制に於ては選挙費用を減少せしたるの利ありとの説あるも従来の実績を見るに必ずしも然りと云うことを得ず」と明確に弊害を述べております。
以上述べたごとく、歴史の上から、小選挙区制の方がはるかに金がかかることは明々白々であります。さらに、よく引き合いに出される奄美群島区の実態から見ても明らかであります。小選挙区一制を導入すれば選挙に金がかからなくなるという総理の主張とは全く逆の結果になっているのであります。
去る五日、自治省から発表された平成二年の政治資金収支報告書を見ても、億単位の政治資金を集め、そのほとんどを政治活動に投入していたという実態が報告されています。選挙は金がかかるのではなく、金をかけているのが実情であります。決して制度上の問題ではありません。この点は、総理のお考えにどうしても承服することはできません。
イギリスの歴史家アクトンは、「権力は腐敗しやすく、絶対的権力は、絶対的に腐敗する。」またセネカは、「大きな権力を持つ人は、その権力を軽く使うべきである。」これら先哲の言葉を名演説家と言われる総理は百も承知のことと思います。一党独裁、しかも金権選挙によってつくられた政権は必ず腐敗することは歴史の語るところであります。
総理、重ねて申し上げます。どうして小選挙区制なら金がかからたくたるのか、納得のいく答弁を求めます。(拍手)
さらに、選挙制度と金の問題について角度を変えてお伺いいたします。
総理は、中選挙区制について、「複数候補者を必要とするこの制度においては、主義、主張の同じくする候補者同士が政策以外の分野で個人レベルの争いを強いられています。政策論争を離れた選挙では、政党政治の中心たるべき政策は、ともすれば大切な場面で姿を消し、有権者との個人的なつながりが重視され、その維持、拡大に莫大なエネルギーが費やされるのであります。」と述べられ、いかにも現行選挙制度に弊害があると言われていますが、この考え方には大きな誤りがあります。同一政党が複数候補を立て、同士打ちをするから金がかかるというのは、自民党の選挙のやり方であり、他の政党に当てはまるものではありません。(拍手)現に我が党も、地方自治体選挙においては、多いところでは十四名もの候補者を立てておりますが、政策本位の選挙を展開しており、同士打ちによる金のかかる選挙ではありません。他の政党も同様であると思います。
総理、選挙に金がかかるのは、さきにも申し上げましたように、制度に理由があるのではなく、自民党の金権体質にあるのではないでしょうか。地元におけるサービス競争によるのではないでしょうか。すなわち、冠婚葬祭のおつき合いなど地盤培養をエスカレートされてきたのは、総理、あなたの率いる自民党ではありませんか。(拍手)小選挙区制になればますます地元へのサービス合戦がエスカレートすることは必至であることは、まさにさきに述べた過去の小選挙区制廃止の経過から見ても明らかであります。
総理、このような風潮をなくすことこそ政治改革の第一歩ではありませんか。総理の御所見をお伺いしたい。
さて、総理は、小選挙区制の導入によって二大政党政治への移行を目指しておられますが、我が国の政治は、戦後、幾多の変遷を経て今日の多党化時代を迎えたのであります。それぞれの政党は立党の原点を持ち、政策を掲げ、国民の支持を獲得してまいりました。この現状を無視し、制度を変更することによって少数政党を切り捨て、人為的に二大政党制へ無理やり移行しようとする暴挙は、国民の意思に反するものであると断ぜざるを得ません。
総理は、欧米諸国の国々に小選挙区制があり、二大政党のもとで政権交代が行われていることをもって、日本にも導入した方がよいとのお考えのようでありますが、これは歴史と現実の誤認識から来るものであります。確かに議会制度の母と言われるイギリスは二大政党政治であり、小選挙区制であることは承知をしております。そして政権交代も行われております。しかし、それは二大政党の勢力が接近しており、また外交、防衛といった基本的な政策において大きな相違がなく、政権交代による混乱がないことによって、小選挙区制が今日まで続けられてきたのであります。
そもそも小選挙区制の歴史は、立憲君主制のもとにあって、国王が戦費等の調達のため徴税を行うことから地域の代弁者を集めて議会がつくられ、それが団結して権利を主張するようになったもので、言うたれば立憲君主制時代の名残であります。今、平等な権利を持つ現代の民主主義の時代には適合しないものと指摘せざるを得ないのであります。
ロンドン・エコノミストなどによりますと、イギリスは立憲君主時代から革命もなく、占領ということもなかった。このことは幸運であったが、反面、このような政治改革を行う機会がなかったということであって、それが現在のイギリス病の病根となってしまったと指摘しております。そして今、現行の小選挙区制度はイギリス世論の厳しい批判にさらされており、労働党が昨年の党大会において選挙制度の見直しを決定し、委員会をつくって比例代表制の導入を検討し始めたのであります。
さらに、小選挙区制を採用しているカナダ、韓国などほとんどの国で選挙制度がうまく働かず、地域分断を助長している現状は、もはや小選挙区制自体が国民各層のさまざまな民意を反映できない時代おくれの制度と言わざるを得ません。総理はこのことを御承知なのか。歴史に逆行し、現実の日本の政党のあり方を無視する小選挙区制には絶対反対であります。総理、いかがでしょうか。
以上、私は小選挙区制がいかに民意を反映しない、議会制民主主義に反するものであることを述べてまいりました。
ここで私は、公正な政治が実現でき、多党化時代の日本の政治状況の中にあってベストの制度は、比例代表制であると主張するものであります。
現にEC参加国のほとんどは比例代表制を採用しております。比例代表制にも多様な形態が存在していますが、公明党は、候補者の顔の見える選挙区併用制を提案しております。私は、比例代表選挙区併用制こそが民意を的確に反映し、政策中心、政党本位であり、日本の現状に最も適した選挙制度であることを重ねて主張するものであります。(拍手)
総理、今直ちに小選挙区比例代表並立制という過去の遺物のような法案を撤回すべきであります。
私は今、イギリスの名宰相グラッドストーンの「政治の目的は善をたすに易く、悪をなすに難き社会をつくるにあり」との言葉を思い起こすのであります。総理、二十一世紀へ向けて、公正な政治の新たなる出発をしようではありませんか。総理、いかがでしょうか。
このほか、本法律案では、選挙区人口格差二・一五倍、格差が二倍を超える選挙区が二十七もあること、また選挙区割りのあり方については、地域の実情を全く無視したものとなっております。この点については、どうお考えになっているのか。
また、政治資金規正法改正案については、一歩前進の面もありますが、資金集めパーティーを事実上公認していることなど、改革は不十分であります。さらに国民の税金で政党助成を行うのであれば、どうして現行法が目標としている政治資金の企業、団体からの献金を廃止して、個人献金に限るとしなかったのか、この点についても総理のお考えをお伺いしたい。
最後に、いま一度重ねて申し上げます。総理、あなたが主張されている政治改革は、この三法案では到底実現することはできません。議会制民主主義を大きく後退させ、国民の信頼に十分こたえられない今回の三法律案には断固反対であり、速やかに勇断を持って撤回されることを強く強く要求し、私の質問を終わります。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕