菅直人の発言 (本会議)
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○菅直人君 私は、進歩民主連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております政治改革関連三法案について、論点を絞って質問をさせていただきます。
今回の政治改革は、リクルート事件が直接の契機となり、政治浄化の徹底により政治への国民的信頼を取り戻すために取り組まれたものと理解をしております。しかし、政府・自民党は、この政治改革問題を選挙区制度の問題にすりかえ、小選挙区制こそが金がかからない制度だと主張し、その導入を強行しようとしております。しかし、奄美群島区の一人区の例からも明らかなように、小選挙区であるから金がかからなくなるというのは明らかに間違っております。実際に奄美選挙区から出ている同僚議員の意見をぜひ皆さんもお聞きをいただきたいと思うところであります。
すなわち、政治の浄化というのは、決して選挙区制度の変更によって達成できるものではなく、腐敗選挙それ自体をなくしていくための改革が必要であります。そのためには、イギリスにおいて一八八三年に設けられた腐敗防止法に匹敵をする法律を我が国でもつくって、腐敗選挙を一掃することが何よりも必要だと考えますが、総理の見解を伺いたいと思います。
我が国のこれまでの法律においても、選挙違反における公民権の停止や、連座制における当選無効、さらには百日裁判などが既に規定をされてまいりました。しかし、実態はどうだったでしょうか。戦後、国会議員が一体何人これらの規定によって議席を失ったか、総理は御存じでしょうか。
私が知る限り、公民権停止により国会議員の職を剥奪されたのはわずかに戦後一件。また、連座規定によって国会議員が任期中に当選無効になったのも、昭和三十二年、福島一区の自民党代議士の一件のみであります。しかも、この後者のケースにおいては、当該代議士が福島県知事選に出馬のために上告を取り下げたため任期中に判決が確定したものであり、最後まで争っていれば、任期中は当選無効は確定しなかったと言われております。さらに、現在、海部内閣の主要閣僚の中にも、出納責任者が買収により有罪となり連座規定に違反をしながら、判決確定が選挙から七年後であったため、当選無効による議席剥奪を受けずに済んだ人もいるということを総理は御存じでしょうか。同様に、任期が満了して再選後に選挙責任者等の有罪が確定をした例も、それ以外にも幾つか報告をされているわけであります。
つまり、現行法の連座規定は一度として実効を上げておらず、腐敗選挙の歯どめになっていないということをこの事実が示していますけれども、総理並びに自治大臣はこの点をお認めになるんでしょうか。
今回の公職選挙法改正案には、連座規定の強化の立場から五年間の立候補の制限が初めて盛り込まれており、このことは前進であると評価をいたしております。しかし、五年間の立候補制限では一回落選したと同じ程度の制裁であって、これで十分だとは言えません。腐敗選挙を行えば政治生命が絶たれるという原則を確立するためには、少なくとも十年間の立候補制限が必要だと考えますが、総理はいかがお考えですか。
しかも、改正案の規定には重大な抜け道が存在をしております。つまり、改正案の規定は、あくまで連座裁判の判決が確定後の次の選挙から立候補が制限されるわけですから、再選をされていれば任期満了までは議席が維持できるという点です。そのため、例えば参議院選挙で違反をし、裁判を長引かせて、次の選挙で再選をした直後に判決が確定した場合には当選無効にもならない。しかも、任期満了までは五年以上ありますから、立候補制限も無意味になるわけであります。明らかに法の不備と思われます。
もちろん、百日裁判で違反選挙の任期中に判決が確定すれば、当選無効と立候補制限が重なって効果を上げるわけですけれども、実際上は、被告があらゆる手段を駆使した場合には、裁判の長期化を避けることは大変困難であります。今回の改正案で公判期日の一括指定が盛り込まれておりますけれども、これも効果は不明であります。連座規定に抜け道を与えないためには、再選後であっても判決確定時には議席を剥奪できるようにすることが必要と考えますけれども、総理並びに自治大臣はいかにお考えでしょうか。
腐敗選挙が今も後を絶たないのは、金をかけてでも当選をした者が政治的には生き残り、金をかけずにきれいな選挙をやっても、落選をすれば政治的には淘汰をされてしまうという現実、つまりは、やり得という現実があるからだというのが選挙を経験をしたこの議場におられる議員皆さんの偽らざる実感ではないでしょうか。逆に、金をかけたことが理由で議席を失い、立候補が十年も制限されれば、その人物の政治生命は間違いなくなくなるでしょう。こうなれば、だれも選挙に不法な金を使う者はなくなるはずです。つまり、やり得ではなく、金を使えば逆に損になる制度をつくることこそ、政治浄化に必要不可欠なことだと考えます。こうすれば、たとえ同じ政党から二人の候補者が同じ選挙区に出たとしても、その競争は候補者の人物の見識やその活動によって判断されると思われますけれども、総理の見解を伺いたいと思うわけであります。
次に、選挙制度について伺いたいと思います。
政府案では、小選挙区を主とし比例代表を従とする並立制が提案をされております。確かに選挙制度として、比例代表制と並んで小選挙区制も多くの国で採用されております。しかし、我が国の場合、与党自民党が四〇%を超える得票率を占め、野党が多数に分立をしている現状では、自民党が小選挙区制によって圧倒的に有利な結果になることは、火を見るよりも明らかであります。自民党が、例えば分裂をして政界が大きく二つのグループに再編された後の議論としてならばともかく、今の状態で小選挙区制を導入することは、野党の議席が極端に少なくなるだけであります。自民党の皆さんは、そうしたみずからの分裂による政界再編をも覚悟の上でこのことを進めようとされているのか、その皆さんの見解もあわせてお聞きをしておきたいと思うところであります。
そういった意味で、今回の小選挙区制導入は決して国民の声を正当に反映をする選挙制度にはならない、このように考えますけれども、総理のお考えをお聞きしておきたいと思います。
私たちは比例代表制を基本とし、個人名投票をあわせて行うドイツ型の二票制の比例代表制が望ましいと考えます。その理由は、国民の声を正確に反映すると同時に、長年我が国でなれ親しんできた個人名投票も当選者の半数の決定について生かされるからであります。この点について、総理の見解を伺いたいと思います。
政治資金規正法の改正案についてもお伺いをします。
この中で政治団体の資産公開が規定をされることになっております。しかし、まず何よりも必要なのは、政治家個人の資産公開ではないでしょうか。進民連所属の各議員は、十年近く前より資産公開をそれぞれ行っており、また閣僚も就任時の資産公開が定例化をしてきておりますけれども、少なくとも国会議員全員が資産公開を義務づけられる、そうした法制化が必要だと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
また、政党助成についても、議院内閣制のもとでは、与党は官僚を立法のスタッフとしてフルに活用できるのに対し、野党は立法の専門のスタッフをほかに求めなくてはなりません。野党について特に公費によるスタッフの充実が立法府の活性化のためにも必要だと考えますが、総理はどのようにお考えになりますか。
さて、政府・自民党は、今回提出している政治改革三法案は一体であるという考え方を示されています。しかし、先ほども述べましたように、政治浄化の問題と選挙区制度の問題は性格を異にしており、三法案一体にこだわるのは小選挙区強行の手段としか思われません。少なくとも今国会では、合意可能性のある政治浄化について与野党協議の上法制化を進め、選挙区制度については政府案を廃案の上、並立制、併用制、中選挙区制度における定数抜本是正の三案を土俵にのせて、十分時間をとって議論を進めるべきだと考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。
最後に、私は今は亡き市川房枝先生の選挙運動を手伝ったことから政治家への道を歩み出した者でありますけれども、政治改革を生涯の目標とされた市川先生に満足してもらえるような政治改革が実現するよう、総理にも一層の努力を期待をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕