秋葉忠利の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○秋葉忠利君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、いわゆる政治改革関連三法案について、反対の立場から質問を行います。(拍手)
この三法案の中でも、特に公職選挙法改正案は、現代の世界に生きる人間にとって最も基本的な権利の一つである選挙権に大きな変更を加えようとするものであります。私たちは、日本国民の権利を守り、本当の意味での民主主義を定着させるために、与野党双方に力強く脈打っている良識と知性、その伝統に期待しつつ、政治改革法案の矛盾と隠された真の目的を委員会審議の中で明らかにしていくつもりです。
本日、私は、この政治改革関連三法案中、特に公職選挙法改正案に的を絞って質問したいと思います。
最初に申し上げておきたいのは、民主的で公正な選挙にとって何が一番大切なのかについて、政治と選挙についての世界的権威の集まりである国際政治学会が、一九八九年、明確な判断を行っている事実です。それは、ワンマン・ワンボード・ワンバリュー、すなわち、すべての人が一票を持ち、一票の価値はだれにとっても同じでなくてはならないという原則です。簡潔に述べれば、一人一票同価値の原則です。
この原則こそ、民主的で公正な選挙の基本であることは、世界の歴史の中で、この原則を現実のものにするために先人たちがいかに血のにじむような努力を続けてきたかを見ても明らかです。女性の参政権を獲得するために闘ってきた平塚らいてうや山川菊栄、市川房枝、そして黒人の参政権獲得のために、アメリカではマルチン・ルーサー・キング牧師は文字どおり命をかけました。
実は、こうした人々の努力は一票の格差是正を目的としていたと考えることができます。男性の一票に対して、かつて女性に与えられた票はゼロでありました。これは男女間の格差です。白人の一票に対して黒人の票もゼロでした。これは人種間格差です。そして、今私たちが問題にしているのは地域間格差です。東京八区に住む人の一票を一とすると、神奈川四区に住む有権者の一票の価値は〇・三にしかなりません。〇・三は四捨五入すればゼロになります。このように、四捨五入すると東京八区に比べて一票の価値がゼロにたる選挙区が現在三十五もあります。私の選挙区である広島一区もその一つであります。海部総理の愛知三区もしかりです。広島一区は、原爆による人口の急減少がそのまま現在の定数として凍結されています。一人一票同価値の原則が守られていれば、「ヒロシマの心」をもっと世界に広げることができたのではないか、被爆者援護法はもっと早く制定されていたのではないか、そう考える被爆者の無念さを晴らすためにも、一刻も早い定数是正こそ最優先されなくてはならないと私は考えます。
この格差を是正するはずの政府提案では、高知三区の一票に比べて一票の価値が四捨五入するとゼロにたる選挙区が二十七もあります。格差は二倍未満という原則、これを言いかえると、最小選挙区に比較して一票の価値が四捨五入するとゼロになるようだ格差は許さないという原則であります。そして、この原則には、四捨五入という概念、そしてゼロは一より小さいという数学的な裏づけがあります。(拍手)二十七もの選挙区で四捨五入すると一票の値がゼロになるにもかかわらず、基本的には格差がなくなったと主張する海部総理には、御自分の主張が意味を持つのだという数学的根拠を示す責任があると考えますが、総理、数学的根拠はどこにあるのでしょうか。
さて、定数格差の是正、すたわち地域間格差が解消されない点も大きな問題ですが、政府案による選挙制度が導入されるとそれ以上に深刻な格差が生じます。それは政党間格差であります。昨年の衆議院選挙の結果をもとに、政府案による区割りを使った毎日新聞の試算によれば、自民党は、四八%の得票率で、何と全議席の七八%を得ることになります。野党を全部合わせると、五二%の得票率で議席は二二%。自民党に投票すれば、その票はバブルのように膨れ上がり、野党支持者の票の三・九倍にもなってしまうのです。さらに、万一この制度が導入されれば、次回の選挙で与野党間の政党格差が一層広がることは必定です。最高三・三四倍の地域格差を是正するために、三・九倍の格差、それより大きい格差を導入しようとするこの選挙制度が、一人一票同価値という原則を踏みにじるものであることは言うまでもありません。
それでは、一体、それにまさる、それ以上に大切などんな目的のためにこの制度を導入しようとしているのか、具体的に総理にお答えいただきたいと思います。そして、それらの目的が、どのような理由で一人一票同価値という原則より優先されなくてはならないのか、客観性のある根拠を示していただきたいと思います。(拍手)
しかも、地域間格差は時とともに変わります。人口の増減が全国一律ではないからであります。悪化した地域間格差を解消するために、政府案では衆議院議員選挙区画定審議会を設置することにしています。仮にこの審議会が効果的に機能するものなのであれば、選挙制度全体を変える以前にまずこの審議会を設置すべきたのではないでしょうか。それが第百四国会における衆議院議員の定数是正に関する決議の精神に沿い、一人一票同価値の原則を保障する具体的措置ではないのでしょうか。なぜこの審議会を切り離して設置しないのか、そして万一、並立制とあわせて設置しなければこの審議会が機能しないというのであれば、その理由は何なのか、因果関係を明確にした上でお答えいただきたいと思います。
これまでの問題提起から、小選挙区制の持つ最大の欠陥が一人一票同価値の原則を破る点にあることは、十分おわかりいただけたと思います。そして、一人一票同価値の原則を守るために、また、政党本位の選挙を行うためにも、比例代表制が最もふさわしい制度であることも世界の常識であります。
しかしながら、比例代表制以外の制度が全く無価値かというと、そんなことはありません。例えば、衆議院では比例代表制を採用して民意を正確に反映させ、参議院では、例えば一極集中の弊害を是正するために、四十七都道府県から各二名の議員を選ぶような制度も検討の余地があると思います。
しかしながら、今回の提案では、このような全体像を描くこともせず、場当たり的な新制度を導入しようとしています。もし政府案の中に私たちには見えない深遠な哲学が隠されているのなら、その哲学を開陳した上で、衆議院と参議院おのおのの機能と特徴、そして二院の違いをどのように考えているのか、お答えいただきたいと思います。(拍手)また、一万の院では木に竹を接ぐような制度を採用し、またもう一方の院では水に油をまぜたような制度を採用しても、国会全体としてうまく機能すると政府が考えている根拠を示していただきたい。
さて、本法案の目的ですが、政府は、政党本位の政治であるとか、金のかからない選挙、一票の格差是正といったお題目を並べています。しかし、それらが本来の目的ではなく、単に見せかけの目的でしかないために、無理なこじつけが至るところで行われ、その結果、矛盾に満ち満ちているのが本法案の特徴の一つです。
例えば、自治省のパンフレットによると、小選挙区制の特徴として「政権交代の可能性が高くこ同時に「政権が安定する。」のだそうであります。これは、例えば安定した結婚の典型的な例として七回離婚を繰り返したエリザベス・テーラーの結婚を挙げるに等しい矛盾です。
また、小選挙区制を長く採用しているアメリカの下院選挙を検証することで、小選挙区制を採用しても必ずしもそれは政権交代につながらないことがわかります。アメリカの下院選挙では、一九五〇年以来これまで、現職の再選率が平均九三%、一九八八年の選挙では再選率が九八%にもなっています。政権交代どころか、新人議員一人が当選することさえ不可能に近くなっています。さらに、今、日本でこの制度によって選挙が行われれば、圧倒的多数で自民党が勝つことは目に見えています。その後このような高い再選率が続けば、自民党の永久政権ができ上がります。これが本法案の隠された目的の一つだと私は考えています。(拍手)
また、アメリカの下院選挙の投票率は五〇%以下、実際は三〇%、四〇%です。大統領選挙の投票率も五〇%台と、小選挙区制度すなわち政治の活性化にならないことも明らかです。にもかかわらず、日本ではこの制度によって政権交代への道が開け、政治が活性化されるという理由は何なのか。因果関係を明確に、かつ同語反復にならないようお答えいただきたいと思います。
さて、自治省のパンフレットも海部総理も、中選挙区制による選挙には金がかかると述べています。しかしながら、戦後の選挙すべてにおいて、法定選挙費用を超えた報告はなされていない上、今回の改革案の中には、法定選挙費用は高過ぎるからこれを低くしようという提案は含まれておりません。ということは、選挙に金がかかるとは、少なくとも一部の政治家において法定選挙費用を超えた選挙費用が日常茶飯事になっていることを意味します。本当にそうなのかどうか、自治大臣に伺いたい。
さらに、もしこのとおりであれば、自治大臣は、違反の可能性のあった候補者について具体的な調査を行うかデータを集めるかしたのでしょうか。もしそうであれば、その結果を公表していただきたい。どの党に属するだれが、どのような方法でどのくらい金を集め、それをどのように使ったのか、国民には知る権利があります。もし調査やデータの収集を行わずに、単なる印象や伝聞によって金がかかると決めつけ、それを大目標にしてこれほど大がかりな法律改正をしようとしているのなら、それは体温もはからずに大手術をしようとしている医師と全く同じです。無責任な暴挙にほかなりません。(拍手)
リクルート事件に端を発した政治の腐敗は、最近でも、大蔵大臣の秘書による不正融資あっせん、建設大臣、自治大臣の申告漏れ、自民党派閥領袖の違法献金等、自民党政治家の醜聞として毎日のように報道されています。(拍手)国民が望んでいるのは、こうした非倫理的な行為が政治の世界から一掃されることであります。しかしながら、今回上程されている三法案の中には、こうした政治的腐敗を一掃するための政治倫理法案は含まれておりません。
政治倫理法案を上程するかわりに、海部総理は、制度面においても改めなければならない問題が現在の政治の仕組みにあると述べ、問題を選挙制度にすりかえています。もし人と制度両方に問題があるのなら、政治倫理法と制度を変える法律両方を上程するのが当然です。制度だけ変えようとしているのは、人の側、政治家の側、その腐敗政治家の側は実は変わる必要がない、つまり不祥事が起きたのは、彼らが悪いのではなく制度が悪いからだと言うのと同じことです。言葉では何と言おうとも、政治倫理法案を上程していないという事実がこのことを雄弁に物語っています。(拍手)このからくりで、これまで不祥事にかかわった人々はすべて清廉潔白の士だということになってしまうのです。すなわち、政治改革法案は、悪徳政治家に対して政府が発行する免罪符にほかなりません。海部総理、今回、他の法案に先駆けて政治倫理法案を出さなかった理由がほかにあるのか、正直にお答えいただきたいと思います。(拍手)
最後に、海部総理、免罪符を発行するとともに、自民党永久政権をその真の目的とする政治改革三法案を即刻取り下げ、後世から、党利党略に走りた政治家としてではなく、良識と知性ある宰相として記憶される道をお選びになるおつもりはありませんでしょうか。
これで私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕