井上義久の発言 (本会議)
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○井上義久君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となりました政治改革関連三法案について、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
三年前のリクルート事件を契機として、国民の政治不信はきわみに達し、政治改革の世論が一気に高揚いたしました。今や、この政治改革の世論にこたえることは、政治家にひとしく課せられた最重要の課題であります。リクルート事件が提起したものは、政治家と金、とりわけ企業献金を媒介とした政治家と企業の癒着にどうメスを入れるかということでありました。したがって、政治改革の出発点は、まず政治倫理の確立てあり、政治資金の規制強化、腐敗防止でなければならないと思うのであります。ところが、政府・自民党は、政治に金がかかるのは選挙に金がかかり過ぎるからだ、だから選挙制度を変えなければこの問題は解決しないと問題をすりかえ、自分たちに都合のいい小選挙区比例代表並立制の導入に道を開こうとしているのであります。
総理、政治不信のあるところでは、いかなる改革も党利党略としか受けとめられません。まず政治倫理を確立し、政治不信を解消してから選挙制度改革に取り組むべきであると思うのでありますが、いかがでしょうか。
小選挙区比例代表並立制は、小選挙区制に比例代表制を加味しているとはいうものの、全体の議席の六四%が小選挙区で決まり、実質的には小選挙区制そのものであります。この小選挙区制、もともと政府・自民党が、政党本位、政策本位で金のかからない選挙制度であるとの大義名分を掲げて導入を主張していたものであります。ところが、必ずしもそのとおりでないことが国民の前に明らかになると、今度は政権交代が可能な制度であるということを前面に打ち出し、政治変革を求める国民世論に巧みに取り入ろうとしております。果たして政権選択を最優先することが選挙制度改革の本来の目的でしょうか。
第八次選挙制度審議会の答申によりますと、小選挙区制と比例代表のそれぞれの特性について、小選挙区制は「政権の選択についての国民の意思が明確なかたちで示されること、その利点を挙げ、また、比例代表制については、「多様な民意をそのまま選挙に反映し、少数勢力も議席を確保しうる」ことを利点として挙げております。そして結論的には、民意の反映よりも政権選択を優先し、比例代表制を排して小選挙区制を採用したのであります。
日本国憲法はその前文で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」と、政治の主体者は国民であり、国民の意思によって政治が行われるべきことを明確に宣言をいたしております。そして、国会が国民の代表で構成され、国会での議論を通じて国民の意思に基づく政治が実行されることを定めているのであります。
この国会中心の政治を実現するために、憲法は、国会が国民の意思、すなわち民意を最大限反映したものとなることを求めているのであります。国会は民意の縮図でなければならないということであります。したがって、国民の代表を選出する選挙制度も、結果として国会が民意を正確に反映したものになるようなものでなければなりません。国会といえども、これに反する選挙制度を定めることは許されないのであります。
もちろん、日本は議院内閣制をとっておりますから、政府をつくることも選挙の重要な眼目の一つではあります。しかし、国会議員の選挙は、第一義的には国会をつくることであり、ゆえに、政権の選択を第一義として小選挙区制を採用した第八次審の結論は誤りと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)民意の正確な縮図を国会につくるという意味からは、第八次審も認めているように、比例代表制こそ選択されるべき制度であると思うのでありますが、総理、いかがでしょうか。
さて、先般来、私はアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア等を訪れ、選挙制度や選挙の実態を見てまいりました。歴史的背景や現存の政治勢力、求められている課題等によって選挙制度は多種多様でありますが、各国とも、多様な民意をいかに議会に反映させるかという観点で活発な議論を展開をしております。
小選挙区制のモデルとなっているイギリスでも、この制度が多様化する民意を正確に反映していないということから、比例代表制導入の議論が活発に行われております。近年イギリスでは、政党が左右の対立という構図にこだわったために、国民のニーズに十分こたえられたくなり、市民に理解を示す第三党、第四党への支持が高まってきており、保守党、労働党、そして第三グループである連合への支持が、一時期三分の一ずつになったことさえもあるのであります。
ところが、小選挙区制であるため、一九八三年の総選挙では、保守党が四二・四%の得票率で六一・一%、労働党が二七・六%で三二・二%の議席を得たのに対し、連合は二五・四%の得票率でわずか三・五%の議席しか得られませんでした。続く一九八七年の総選挙でも、保守党は四二・二%の得票率で五七・七%、労働党は三〇・八%で三五・二%の議席を得たのに対して、連合は二二・六%でわずか三・四%の議席しか得られなかったのであります。
その理由は、単に連合が第三番目の支持率だからということではありません。保守党が中南部イングランドで強く、労働党がウェールズ、スコットランド、北イングランドで強いというような、いわば地域政党化しているのに対し、連合の支持が地理的に広く全国に及んでいる分、小選挙区制では議席につながりにくいという結果なのであります。これは、第三党である連合の国民政党としての正当性を証明するものであるのに、地域的に支持の偏りのある二大政党には勝てないということであり、制度の不合理を如実に示しているものであります。
それでも第三党の支持が減るわけではありません。ここが問題であります。二大政党が前提で小選挙区制というならわかりますが、イギリスですら二大政党が三大政党になったというのが現在の流れであります。この国民の中に現にある大きな第三の政治勢力が完全に無視されてしまっているのが現状であります。
しかも、イギリスでは、かつて一九五一年に、労働党より得票率の少ない保守党が第一党となり、一九七四年には逆に、保守党より得票率が少ない労働党が第一党となったことがあります。議会制民主主義において、代表制の性格上、説明のつかない逆転は許されません。この一つをとっても、小選挙区制には政権の正当性そのものが否定されるという致命的な欠陥があります。
ロンドン「ザ・エコノミスト」は、一九九一年五月の社説で「もう言いわけは要らない。現行の小選挙区相対多数制は、非民主主義なのだ。それだけで小選挙区制は取りかえられる必要があるのだ」と厳しく批判をしております。また、選挙制度の実態研究の権威であるデビッド・E・バトラー氏は、その論文の中で「私には、国会の小選挙区制が二十世紀の終わりまでもつなどということは、まずありそうもないことのように思われるのである」、このように述べております。総理は、こうしたイギリスの現状をどのように認識しておられるのか、お伺いをしたいと思います。
小選挙区制は、イギリスでもうまくいっていないのが現状であり、いわんや、既に多党化している日本の現状とは全く相入れない制度であることは明白であります。利害や意見が多様化するにつれて、比例代表制が世界の大勢となりつつあります。比例代表制は、民意の正確な縮図を国会につくることでは他の制度が足元にも及ばない最良の制度であります。比例代表制には多様な形態があり、どのような制度を採用するかは、その国の実情を十分に踏まえたものでなければなりませんが、各国とも政党への投票のほかに、人の要素をとう組み入れるかに苦労いたしております。既に公明党は、この人の要素を組み入れた比例代表制として比例代表選挙区併用制を提案をいたしております。併用制に対する総理の見解を改めてお伺いしたいと思います。
次に、第八次選挙制度審議会のあり方についてお伺いしたいと思います。
本来、政治改革への努力は、立法府で各党の話し合いでなされるべきものであり、行政府たる内閣の主導で行われるべきものではありません。その意味で、第八次審が第七次審まではメンバーだりた国会議員を除外したことは、スタート時点で既に問題があったことを指摘をしておきたいと思います。
総理は、答申が出れば最大限に尊重する旨繰り返し言明してこられたところでありますが、結果は、小選挙区比例代表並立制という自民党の政治改革大綱に沿った答申がなされました。審議会の意思はどうあれ、自民党の党利党略案に公的な性格、権威を付与する役割を果たしたと言っても過言ではありません。しかも、答申をもとにつくられたという政府・自民党案なるものは、総定数並びに小選挙区と比例区の割合、定数配分のあり方等、制度の根幹にかかわる部分で大きく食い違っており、自民党に一層有利な案になっております。しかも審議会は、あろうことか、自民党の党利党略によってゆがめられた定数配分をそのまま受け入れて区割りの諮問に応じ、答申をしていることであります。これでは自民党の諮問機関そのものではありませんか。こうした国民の疑念にこたえるためにも、まず私は、審議会の全議事録の提出を要求するものであります。
特に区割りについて、総理は、審議会の専門家に案を示していただいたものでありと、盛んに公正さを強調しておられますが、選挙制度審議会は区割りをどこまで主体的に行ったのか。報道によれば、あらかじめ自治省がつくりていた二人区を分割した程度しか関与の余地がなかったなどということも言われております。公正な配分、公正な手続ということに関し余りにも重大な疑念があり、国民の前に審議会の区割りに関する委員会の全議事録の開示を重ねて強く要求するものでありますが、総理、出すお考えはおありでしょうか。(拍手)
次に、一票の格差と区割りについて具体的にお伺いをいたします。
総理は、三倍を超えた現行定数の抜本是正について、選挙制度の抜本改革の中であわせて行う旨繰り返し言明をしてこられました。ワンマン。ワンボード・ワンバリュー、すなわち一票等価の原則こそ議会制民主主義の大原則であります。一人が二票を持つことはこの原則に反する。したがって、格差は二倍未満、第八次審の答申の基本的な考え方もそうであったと思うのであります。
ところが、発表された区割り案は、最高格差二・一五倍、しかも二倍を超える選挙区が全体の約一割の二十七選挙区もつくられております。このような初めから格差二倍未満が守られないような区割り案は全く不公平であり、民主主義制度としては失格であります。政府には、公平という最も重要な観点が欠如していると言わざるを得ないのであります。この点、総理はいかが認識をされておりますか。また、総定数をまず都道府県別に配分をしておりますが、その理由は何でしょうか、あわせて明らかにしていただきたいと思います。
さらに、具体的な区割りについても看過できない問題があります。一見して極めて不合理な、恣意的な市の分割や組み合わせ、飛び地など、自民党有力議員の地盤が驚くほどそのまま選挙区になっている例は枚挙にいとまがありません。このような不合理な定数配分や区割りで国民は納得するでありましょうか。政治不信はますます募るばかりではないでしょうか。これもひとえに小選挙区制を無理やり導入しようとするところから生じてきているひずみであります。それでも総理は、定数配分や区割りは公正、公平に行われた。このように言い張るおつもりなのでしょうか、お伺いをします。
次に、政治資金規正法改正案についてお伺いをいたします。
最近、現職の大臣に、秘書や事務所を提供し、それを会社の経費として損金処理をしていた企業が、国税当局から追徴されるという事件が相次いで発覚をいたしました。それぞれ政治家に対する立てかえ金ということで修正申告されたようでありますが、明らかに政治献金であり、政治資金規正法違反であると思いますが、いかがでしょうか。
また、派閥の領袖の政治団体が、多額の政治献金を受けていながらこれを政治資金収支報告書に記載していなかったという事件が発覚をいたしました。担当者の初歩的ミス、このように弁明しておられるわけでありますが、当の担当者は、このことが表に出るとは思わなかったと、最初から政治資金規正法違反であることを承知で行っていたというのでありますから、言語道断でございます。これらの点について、自治大臣、責任大臣としていかがお考えでしょうか。修正報告すればそれで事が済むというようなことでは、政治資金規正法などあってなきがごとしであります。このようなことが許されるはずはありません。総理、この問題にどのように対応なさるおつもりなのか、お伺いをしておきたいと思います。
今回の政府案について、総理は、政党中心に調達するという流れをつくるとともに、政治資金の公開性を高め、規制の実効性を確保すると述べられております。確かに一歩前進が見られるものの、最も重要な企業、団体からの政治献金については、現行法ですら将来的には廃止をするという方向を明示しているにもかかわらず、逆に、政治家個人の後援会などが企業献金を受け取ることを、五年後一社二十四万円までにせよ、これを容認してしまったことであります。明らかに後退であります。総理、企業・団体献金を全面的に廃止する考えはおありにならないのでしょうか、お伺いをします。
さらに、政治資金パーティーについてであります。まず、これを寄附とは別枠のものとして認知
し、制度化してしまったことは、甚だ遺憾であります。一千万円以上のパーティーは政治団体が主催し、収支を公開することとしたものの、それ以下であれば年間何回やっても公開したくてもよいことになります。しかも、購入者については、六十万円以上の氏名を公開するのみであります。また、購入限度額を、政党、政治資金団体のパーティーは百五十万円、それ以外のもののパーティーは百万円としたが、それは一件ごとのパーティーの規制であり、年間の総額規制ではありません。これでは献金と名のつかない大規模な政治資金収集の手段となり、近年批判の的となりている政治資金パーティーと何ら変わりません。むしろ、大手を振って堂々と行えることになります。総理の言われる政党中心の資金集めということなら、少なくとも政党のみに開催を許し、政治資金規正法の枠内とし、すべてを届け出るようにすべきであると思いますが、いかがでしょうか。
以上述べてまいりましたように、小選挙区比例代表並立制は、民意を反映しないばかりか、政治改革が本来なさねばならない金権腐敗政治の根絶にも役立たないことは明らかであります。速やかに並立制導入を中心とした政府三法案を撤回し、政治倫理を確立し、比例代表を中心とした選挙制度を導入すべきことを強く主張するものであります。
なお、総理の答弁によっては再質問を行いたいと思いますので、時間を留保いたします。
以上です。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
〔内閣総理大臣海部俊樹君登壇〕