後藤正夫の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○後藤正夫君 私は、自由民主党を代表して、当面する内外の主要課題について総理ほか関係閣僚に対し質問をいたします。
まず、雲仙岳噴火災害について申し上げます。
去る六月三日の雲仙岳の火砕流の被害により不幸にして犠牲となられました方々に対し衷心より御冥福をお祈りいたしますとともに、被害を受けられた方々に対しまして心からお見舞いを申し上げます。
既に六月三日の惨事から二カ月を経た厳戒避難体制の中で、いつおさまるともしれない火山活動によって帰るべき家を失い、田畑を奪われた五百世帯千五百人の方々が今なお学校の体育館などでプライバシーのない不自由な避難生活を強いられ、その疲労といら立ちは既に極限に達しておられるものと思われます。そして、被害はひとり市民生活のみならず、地域経済社会全般にまで拡大いたしております。
今回の災害は、前例のない長期的かつ危険度の高い特異な災害であるという実態にかんがみ、生活基盤を失った被災住民の方々の生活再建を第一義として、救済についてのこれまでの発想を改め、被災住民の集団移転、移転跡地の国による買い上げ等の個人補償について特別立法の措置が必要でありますが、政府としていかに対応されるお考えでありましょうか伺います。
次は政治改革であります。
二年前の参議院選挙において、我が党は結党以来の国民の厳しい審判を受けました。その要因の一つはリクルート事件であります。昭和六十三年六月に発覚したこの事件は、政治の構造的な問題として政治と金との関係が問題とされ、この種の事件の再発防止と政治倫理の確立はすべての政治家に課された課題となりました。昨平成二年二月に冠婚葬祭に係る寄附の禁止を定めた改正公職選挙法が施行され、一部その課題にこたえることはできましたが、ようやく今回、政治改革関連三法案が国会に提出され審議に入ることができますことは、国民の皆様の御期待にこたえられるものと思い、まことに感深いものがあります。
この間、総理の政治改革有識者会議の提言を経て、我が党は、政治改革委員会、政治改革推進本部、さらに政治改革本部を設置し、全党的取り組みの中で血のにじむような検討を進めました。平成元年五月には政治改革大綱を定めて、これを公約として選挙を戦い、国民の皆様に対し政治改革への決意を新たにいたしました。また、昨年十二月二十五日には政治改革基本要綱を党議で決定し、本年六月、これに基づく三法案をも党議で決定するに至ったのであります。二年有余、実に三百五十回に及ぶ活発な討議の末、政治改革三法案がここに審議に入ることができるのは、不退転の決意を表明された総理の粘り強い推進力と、これを支えた党のバックによるものでありました。
総理、思えば三年前、厳しい政治情勢の中で組閣をされましたが、今日、海部内閣は国民の高い支持を得ておられます。総理の現在の御所感をお伺いいたしたいと存じます。
もとより、政治改革は選挙制度の改革で尽きるものではありません。根底には、個々の政治家の政治倫理についての意識の改革がなければなりません。
平成元年の政治改革に関する有識者会議は、国会議員の資産公開を提言し、閣僚の資産公開も一定範囲の家族にまで拡大すべきものとしておりました。我が党も資産公開法案要綱を決定し、衆議院において各党の協議の議題にされたところでありますが、座長所見が提示されたまま、いまだに進展を見ておりません。また、我が党は、行為規範及び政治倫理審査会規程の改正についても積極的に取り組み、資産公開法案要綱と同時に決定しております。他方、四野党は、政治倫理法案共同要綱を合意されているようであります。私は、これらは政治改革三法案と一体のものと受けとめており、ぜひ促進すべきものと考えます。資産公開法や政治倫理法の制定についてはどのようにお考えか、総理の御見解をお伺いいたします。
次に、政治改革関連三法案について伺います。
今回の政治改革の中心は、衆議院議員選挙に小選挙区比例代表並立制を導入する公職選挙法の一部を改正する法律案で、大正十四年以来続けられてきた中選挙区制を根本的に改めるものでありますが、なぜ今選挙制度改革なのかという疑問がいまだに論議されております。
第一に、現行選挙制度のもとにおいて定数是正を先行させるべきではないか、まず定数是正の衆議院決議を尊重すべきであるという主張があります。確かに、中選挙区制は国民になじんでおり、準比例代表制とも言われるように、多様な民意を比較的よく反映させるものであります。しかし、この制度で定数是正を行えば、ほとんどの選挙区に分区、合区が生じ、甚だしく困難な事態を生ずることは、さきの八増七減の是正の際にも痛感したところであります。この際、やはり制度疲労を起こしている中選挙区制を根本的に改め、小選挙区中心の制度にして、あわせて一票の格差の是正を図ることが必要であると思います。総理の御所見をお伺いいたします。
第二に、なぜ選挙制度改革が必要なのかという点であります。政治改革に求められているのは、金のかからない選挙と政治の実現であります。しかし、これまで幾たびもこの改革は試みられましたが、残念ながら実を結ぶには至っておりません。政治と金との関係を改めるためには、もはや制度の根本にさかのぼった改革をする以外にないと思います。そのためには、個人名をPRする現在の個人選挙から、政策本位、政党本位の選挙制度に転換することが必要であります。
他方、日本の国際化は急激に進み、国際社会もまた激動を続けております。その中において、我が国の立場は地球規模にまでますます重要性を増しており、責任を持って、かつ的確、機敏にこれに対応した政策を打ち出し、実現していかなければなりません。それには、国民の信頼に支えられ、国民的合意の上に立った強固な政治体制を創造していくことが必要であります。このような政治体制を実現するために、政権の基盤である衆議院の選挙制度としては、安定した政権が直接国民の意思によって選択され、かつ政治に緊張感をもたらすようなものでなげればなりません。そのためには、政策本位、政党本位の小選挙区制中心の選挙制度が最も望ましいものであります。
この選挙制度によって、二大政党制がもたらされて政権交代の可能性が高まり、かつそれが円滑に行われることができるようになるでありましょう。社会経済国民会議の調査によっても、国民各界の約七割が新しい選挙制度の導入を不可欠と見ているのであります。二十一世紀を目前にした今をおいて、国家百年の大計として議会制民主主義の根幹にかかわる抜本的な選挙制度の改革を図る時期はないと確信いたします。
このような改革について、我が党内においても、現在の中選挙区制においては自民党の政権担当は今後も続く可能性が高いのに、なぜあえて政権交代に道を開くような改革をしようとするのかという反論があります。しかし、将来に眼を転ずるとき、政治の性格を変え、わかりやすい政策決定過程とすることは、いかなることがあっても実現しなければならないものであり、単に自民党限りの視野で論ずるわけにはいかないものであると思います。総理の御所見をお伺いいたします。
次に、提案されている並立制について若干問題点をただしたいと思います。
第一点は、小選挙区制では死票が多くなるが、少数意見の尊重をどうするのか。第二点は、並立制になったからといって金がかからなくなるとは言えないのではないか。第三点は、政党本位の小選挙区になることによって現職が有利になり、しかも新人が出にくくなり、政治の活性化が失われるのではないか。第四点は、区割りの問題で一票の格差が当初の目標である三倍以内を達成できなかったことをどう受けとめるのか。第五点は、選挙区が市長や地方議会議員の選挙よりも狭小となることは、国政への関心を妨げ、陳情行政を過熱させるのではないか。
以上の並立制の諸問題について自治大臣はどのようにお考えか、お伺いいたします。
次に、参議院選挙制度の改革について伺います。
これまで六十有余年定着してきた衆議院の中選挙区制から小選挙区比例並立型への移行に伴う問題点に言及してまいりましたが、これと連動して二院制の一翼として大きな使命を持つ参議院も、その創設の本旨を踏まえて、新しい時代の政治に対応できるよう、それにふさわしい選挙制度の抜本的改革と独自性発揮が今強く求められております。
昨年七月三十一日、内閣の選挙制度審議会より参議院議員の選挙制度の改革について答申がありましたが、その前文において、参議院における審議は衆議院と異なる独自の立場に立って行われているとは言いがたい、参議院においても政党化が進み、その独自性、自主性を発揮することが困難となっているなどの批判があり、このことは参議院の現行選挙制度に由来していると指摘しつつも、全国レベルの選挙については候補者名及び政党名を記載する非拘束制を提言しており、全くあるべき理想像と現実の答申とが乖離するという中途半端な案となっております。
今日、衆議院において全国レベルで政党を前提とした比例代表制が導入されるとなるならぱ、せっかく昭和五十八年選挙から実施された本院の拘束比例代表制はこれとの対比においてどうあるべきか等々、今こそ国民負託の原点に返って二院制のもとでの参議院のあるべき姿を求め、思い切った改革を断行すべきときであると思います。
我が党は、過ぐる参議院選挙で、政治改革の一環として参議院の改革に関し、独自性の発揮、比例代表制の改善及び総定数の削減と定数配分の不均衡の是正を公約し、現在、党内の参議院選挙制度に関する小委員会を既に二十六回開催し、九つの改革私案の個別審査をも終えて、最終的合意形成を目指して精力的に討議を重ねております。ここでの論点の一つは、議院内閣制のもとでの現実の政党政治の中で、参議院が衆議院と距離を置きその自主性、独自性を発揮するには、参議院は非政党化、脱政党化すべきではないかという強い意見がある一方、参議院の政党化はこれを肯定すべきとする意見もあります。
また、参議院の改革は、ひとり選挙制度の面のみならず運営面の改革も重要であり、河野議長のとき以来二十年の長きにわたる参議院改革協議会の実績を顧みるとき、各党各派は党利党略を離れて、かくあるべきであるという参議院みずからの理想を求めて前進すべきではないでありましょうか。
総理は、参議院選挙制度の改革についてどのような認識を持たれているか、また、現行の政党政治のもとでの参議院のあり方についてどのような御所見をお持ちであるかをお伺いいたします。
次に、政治資金と政党助成について伺います。
今回の政治資金規正法の改正は、政治にかかわる金の透明性を高めようとすると同時に、小選挙区比例代表並立制という政党本位の選挙制度を中心に置いた政治資金規制を行おうとするものであります。つまり、企業、組合等の団体寄附を原則として政党に限って行えるものとし、政治資金をつくるパーティーも政治団体を中心とすることとしており、他方、政治家については指定団体を一つに限定し、また、資金調達団体も二つに限定することとするのであります。さらに、政治資金による投機的取引を禁止し、あわせて政治団体の資産公開をすることとしております。これによって政治資金の透明性は格段に向上し、選挙制度の改革と相まって、必ずや国民の納得が得られるものと確信いたします。
しかしながら、政治活動は政党が中心であるとはいえ、それを担うのはやはり一人一人の政治家であります。その自発的かつ自由濶達な活動を阻害することは、望ましいことでほありません。個人の活動の自由を保障することも必要であり、透明性を拡大しつつ個人の資金調達の道も開いておくことも考えられるのであります。現在のところでは新制度が定着した際にどのようになるか予測がつかない面もある以上、その際に政治資金規正の趣旨にのっとり見直すことも必要であろうかと考えますが、総理の御所見はいかがでありましょうか。
政党助成は、政党本位の選挙制度を実現することに伴い、政党活動の公的性格にかんがみて国庫から助成をするものでありますが、これにより資金集めの苦労や弊害から解放され、政党が内外の課題について総合調整、総合政策立案型の政治に集中することが可能となるものであります。しかしながら、この点についても幾つかの危惧が挙げられるのであります。
第一に、三百億円にも達する助成に国民の理解が得られるでありましょうかという点であります。もちろん、この政治改革は、国民の政治に対する信頼を回復し、その負託にこたえる政治を実行することを目的としており、助成に対する理解もこれが実現できるかどうかにかかわっているものであります。政治が現状のままであるならば、単に地盤培養に使われるのではないか、あるいは公私混同されるのではないかなどの疑問が当然持たれましょう。政策本位、政党本位の選挙と政治を実現するとともに、議員定数の大幅な削減や団体献金の制限など、みずからに痛みを課する改革の遂行によってこそ国民の理解が得られるのではないでありましょうか。
〔議長退席、副議長着席〕
第二に、政党に対する規制がさまざまな形で出てくるのではないかという点であります。政党は社会において自由に生成し、自由に活動し、民意を吸収し、政策を実現していくものであり、これに対する規制は議会制民主主義に対する最大の脅威となるものであります。助成することが政党に対する規制のきっかけにならないか、また、既成政党にのみ有利となり、自由な政党活動を阻害することにならないか、助成を受ける政党と他の政党との間に不平等を生じないか、政党の離合集散が把握されて公権力が介入することにならないかなどの危惧があります。また、政治家が政党に不当に拘束されることにならないか、政党官僚主義にならないかといった問題も含んでおります。
しかしながら、公的資金を使う以上は、国民の理解を得るべく適正な会計処理と監査は必要であり、これに伴う必要やむを得ない法律上の処置であるならば、これが政党活動の規制になるとは考えられないのであります。また、これにより政治家が金集めをすることなく、政策を考え、本来の政治活動に打ち込めるようにする仕組みとして政党助成は必要であり、これが政治家を自由にこそすれ、政党に不当に拘束されることにはならないと確信するものであります。政党に対する規制はやむを得ない最小限にとどめるものとして、政党法の立法については今は考えておられないと推測いたしますが、以上の点についての総理の御見解を伺いたいと存じます。
以上、政治改革の理念から三法案の基本問題に触れてまいりました。これらの政治改革について、野党は、まず定数是正をすべきである、あるいは併用制を採用すべきであるという主張をされているようであります。もちろん、議会制民主主義の基本にかかわる改革でありますから、与野党ともに議論を尽くすことが必要であります。野党も単に論戦を回避するよりも、みずからの対案を示され、論戦を行い、とるべきはとり、正すべきは正し、よりよき政治改革を実現していくことこそが、言論の府である国会にふさわしいのではないでありましょうか。
総理は、既に、内閣の命運をかけ、不退転の決意で対処する旨を表明されておりますが、改めて総理のこれに取り組む御決意をお伺いいたします。
次に、一連の証券不祥事件について伺います。
戦後最も長かったイザナギ景気と肩を並べた近年の景気拡大が、一方で地価及び株価の暴騰とその後の暴落を招いて一連の証券不祥事件の背景となり、舞台ともなったことは紛れもない事実でありますが、これらの事件の原因について政府の見解をまずお伺いいたします。
戦後四十五年間、我が国の行政は一貫して欧米に追いつき追い越せを合い言葉に、政府と民間が相呼応してその推進に努めてまいりました。しかし、今日気がついてみると、我が国はかつて我々が目標としてきた欧米と肩を並べる経済大国となっているのであります。世界最大の証券会社や銀行に我が国の企業が名を連ねるようになった現在、かつての時代おくれになっていた産業の育成を目的とした保護中心の行政は、大きな転換期を迎えていると考えます。今回明るみに出た証券会社による一連の大口投資家への損失補てんや暴力団関係者との取引問題は、まさに我が国の業界保護の行政の限界と甘さが表面に出たものと思いますが、政府の率直な見解をお伺いいたしたいのであります。
国境を越えた経済活動が急速に広まると同時に、国同士の相互依存関係がますます深まり、各国間におけるさまざまな摩擦やあつれきが一段と厳しさを増しております。国際的な経済摩擦の中でも、我が国独自の商習慣や系列取引は、単に文化の違いというだけでは済まされない日本市場の不透明さを示すものとして、海外、特に米国から日米構造協議を通じて強くその是正が求められました。
本来、市場とは、そこに参加する者すべてに共通のルールが適用され、優勝劣敗と自己責任の原則が貫徹されるものでなければなりません。それにもかかわらず、一部大口投資家や一部の顧客だけに損失補てんが行われるという市場ルール無視の行為があったことは、国民の証券行政に対する信頼を大きく裏切るものであったと言わなければなりません。これでは日本異質論の主張を強めている海外から一層厳しい批判を受けるばかりか、我が国市場、ひいては経済社会全体までが極めて異質であるとの印象を持だれかねないのであります。
世間には、証券会社が一部大口投資家に対して行った損失補てんの事実を監督責任を持った大蔵省は知っていたのではないかという、大蔵省に対する不信感があるようであります。行政の側に甘さ、手抜かり、さらには業界との癒着はなかったのかどうか、どういう市場監視をしていたのか、その事実風係について率直に国民の前に明らかにするとともに、今回の問題の責任をどう受けとめておられるのかをお伺いいたします。
もとより、事件発生の原因と全容の解明は同種の事件再発防止のために極めて重要でありますが、損失補てんを行った証券会社のみならず、損失補てんを受けた企業にもそれ相応の責任があります。大手及び準大手、中堅証券会社については自主的な公表が行われておりますが、未公表の地方財務局所管の中小証券会社についても同様の措置をとるよう政府は督励すべきであると思いますが、いかがでありましょうか。さらに、現在公表されているものは平成二年三月期決算のものでありますが、平成三年三月期及び現事業年度について損失補てんの状況はどうなっておりましょうか、特別検査の進捗状況を御報告いただきたいのであります。
私は、今日の事態を顧みて、金余りと言われる時代に、より有利な資金運用を求めて企業が財テクに走るばかりか、公的資金を預かる団体までがこれに参加すみという行き過ぎた投資行動は厳に慎み反省すべきであり、政府としても、企業に対してほその社会的責任を追及するとともに、徹底した自覚を促し、企業倫理の確立を図るべきであると思います。現行の検査体制の見直しに対する政府の基本的認識についてお伺いいたします。
かかる観点から、最も大切なことは事件の再発防止に向けた建設的な法整備の対応で、通達による不透明な部分のある行政から、だれもがわかる法律による行政へとその基準を変えるべきではないでありましょうか。そのためには、証券取引法の改正はもとより、さらに一歩進んで米国型の証券取引委員会、SECのような監視及び不正行為を取り締まる独立機関を中心にした市場行政への移行も含めて真剣に検討すべきだと考えます。行政が業界の指導や保護を中心とした行政だけにこだわり続けるとするならば、同様な事件の再発防止も、海外からの経済産業政策がアンフェアであるとの批判も解消できないでありましょう。
我が国は従来の経済政策を歴史的に転換させるべき時期を迎えており、かかる転換なくして我が国の発展はあり得ない、これがあの前川リポートの本旨でありました。世界に通用する市場システムの確立のために、一刻も早く政府が行政を転換することを願うものであります。総理大臣及び大蔵大臣の率直な御見解をお伺いいたします。
次に、PKOを中心とする国際協力についてであります。
今日、我が国が世界第二位の経済大国となったのは、国民の努力とともに、自由民主主義、市場経済の維持発展に努めた諸外国の協力によるものでありました。このように考えますとき、我が国は、世界の平和と繁栄の確保のために、その持てる国力にふさわしい役割を果たさなければなりません。そのためには、中長期的に見て何が真の国益に資するのであるかということを踏まえ、国際社会へ積極的に貢献していくべきであると考えます。言うまでもなく、自国の平和、繁栄にのみ関心を注ぐ一国平和主義、一国繁栄主義はおよそ世界から受け入れられるものではありません。
持てる国がお金を出すことは何ら恥ずるべきことではなく、出すに当たっての理念、原則を明確にしておけば、国民の納得も世界の理解をも得られるものと思います。しかし、それとあわせて、具体的に人の面での貢献が重要であります。さきのペルーにおけるJICA職員襲撃という痛ましい事件を見るにつけ、人的貢献の難しさと厳しさを改めて痛感させられました。海外でのさまざまな協力に従事される方々の安全確保に細心の配慮を払い、万全を期するべきは当然で、これを教訓としながら、我が国は世界の平和と繁栄のために一層貢献していかなければならないとの念を強くいたすものであります。
総理、我が国として、今後どのような考え方のもとに、いかに国際社会への貢献を進めていくお考えかをお伺いいたします。
国際的貢献にとって重要なことは、平和と安全の確保を主たる任務とする国連のあり方とこれへの我が国の対応であります。さきにロンドン・サミットにおいて、薪国際秩序構築の柱の一つとして国連平和維持機構を強化することが確認されております。
国連は、第三次世界大戦の勝利者である五大国を常任理事国とする安保理事会を中心にして、世界平和を維持することを目的としております。したがって、五大国以外の国々の発言力は限られたものとなり、加盟国内に不満のあることも事実であります。その意味において、米国に次ぐ国連分担金の負担の大きい我が国やドイツの常任理事国への昇格、旧敵国条項の削除など、冷戦終結後の新しい時代にふさわしい国連システムの改善が求められます。一方、湾岸危機に際して、ソ連、中国も協力的姿勢をとり、安保理事会が正常に機能し始めたことは、国連の将来に希望を与えるものであります。こうした政治環境を踏まえて、政府は今後国連をどう支援していかれるか、また安保理事国への参入や旧敵国条項の削除についてどのように考えておられるかの御見解を伺います。
なお、この際、海上自衛隊の掃海艇がペルシャ湾における船舶の安全確保という平和目的のため連日炎熱のもとで危険な機雷の処理に当たられ、具体的に国際協力の第一歩を踏み出しておりますことを多とするとともに、ここに隊員諸君の御苦労に深く敬意を表したいと思います。
今期国会召集の目的の一つに、いわゆるPKO法案の制定があります。総理も、平和主義の理念を現実のものとするためにも、人道的な国際協力を一層強めるとともに世界平和を守る秩序づくりの国際共同作業に参加することを表明され、国連の平和維持活動に対する協力について新たな法案の提出を準備されており、さきにその基本的考え方の中間報告をされました。今後、各党間においてそれぞれ検討の上、三党調整を踏まえて成案が取りまとめられることと存じますが、現時点において次の点についてお伺いいたします。
PKOの活動の形態は監視団と平和維持軍の三つに大別されます。湾岸戦争後に設立された停戦監視団に我が国政府は一名の要員を派遣していると承知しておりますが、今後も、国連を積極的に支援していくのであれば、PKOに資金のほかにさらに人員の面でも貢献することが重要であると考えられます。
このようなPKO活動に適切かつ迅速に協力するためには、官民あわせた協力を得て実施することが不可欠でありますが、私は、まず政府機関に蓄積された経験、組織的な機能を最大限に活用すべきものと考えます。その一環として、自衛隊がその長年にわたって蓄積してきた技能、経験を生かし、あるいは組織としての活動能力を活用することが適切であり、これが真に国際社会に貢献していく道であると考えますが、総理はこの点につきどのような御所見をお持ちでありましょうか。
また、平和維持軍の性格、協力に当たっての基本原則、特に武器使用と憲法問題をどうお考えになるか、あわせて御意見をお伺いいたしたいのであります。
関連して、先ごろバングラデシュにおきまして発生いたしましたサイクロン災害に際し、政府は、ヘリコプター二機、消防庁職員等五十名から成る国際緊急援助隊を派遣し救援活動に当たられ、バングラデシュ政府より高く評価されたと聞いております。我が党といたしましても、我が国がその国力にふさわしい国際的責務を果たすために、このような海外における災害救援活動をさらに積極的に展開していくことは極めて重要であり、そのためには我が国の緊急援助活動の実施体制を一層強化していくことが必要であると認識しております。
その一環として、雲仙岳の噴火の際の活動にも見られますように、国内の災害救援活動において目覚ましい活躍をしている自衛隊を海外における災害救援活動においても活用すべきであり、速やかに国際緊急援助隊法等の改正を行うべきであると考えます。この点に関する政府のお考えをもお伺いいたします。
次に、外交問題についてお尋ねいたします。
先般のロンドン・サミットは、東西冷戦の終結と湾岸危機の克服を踏まえ、新たなる国際秩序の構築を目指して、国連の平和維持機能の強化、ソ連の新思考外交の地球的規模での適用などを一つたった政治宣言、通常兵器移転の国連登録制を盛り込んだ軍縮・軍備管理宣言を採択するとともに、北方領土問題に至言及した議長声明を発表し、さらにウルグアイ・ラウンドの年内妥結、対ソ支援を盛り込んだ経済宣言を採択しております。また、今回、この会議に引き続きゴルバチョフ・ソ連大統領を招いてソ連の改革を中心に対話が行われ、六項目の対ソ支援の合意がたされました。ソ連を加え、G7プラス1と呼ばれる今回のサミットは、従来の西側サミットとほその性格を異にし、まさにグローバルサミットヘの踏み出しであると申せます。
すなわち、今回の会合において、自由と民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済原理という普遍的な価値観に基づき、間近に迫った二十一世紀を平和と繁栄の世紀とするための枠組みをつくる渾身の努力を払うことが、ソ連を含め世界をリードする諸国によって全世界にアピールされたと申しても過言ではありません。ソ連、中国の改革や発展途上国の抱える困難な問題、さらに環境保護などの地球的規模の問題を、この新たなる秩序形成の中で解決していかなければなりません。国連の機能強化や自由貿易体制の拡大発展を手始めとして、グローバルパートナーシップの構築という新しい国際秩序の枠組みの形成に向け全世界を挙げての取り組みが開始されております今日、我が国に対する各国の期待は一層高まっております。
ロンドン・サミットに出席された総理が、今般のロンドン・サミットの意義、成果をどのように受けとめられ、新国際秩序の構築に向けてどのように寄与されるお考えか、お聞かせいただきたいと存じます。
次は対ソ政策であります。
ソ連の市場経済移行に向けた改革を着実に前進させソ連経済を世界経済に組み込むことは、ソ連自身を改革させるのみならず、国際社会全体の平和と繁栄を約束することにつながります。このような観点から、今般、ゴルバチョフ大統領とサミット参加国首脳との協議により対ソ支援の枠組みが整えられたことを歓迎するものであります。
対ソ支援に当たって我が国が留意すべきことは、第一に、ソ連との間には北方領土問題を解決して平和条約を締結するという歴史的な課題が残されていること、第二に、経済改革はあくまでソ連自身の自助努力が基本であることでなければならないのであります。ソ連の軍需産業の民需転換のために我が国の戦後の経験を提供するなど、知的、技術的支援を強化しなければならないことは申すまでもありませんが、中央計画経済システムがなお解体されていない現状のもとでのソ連への金融援助は、生産基盤の整備に資金が供給されることなく、いたずらに消費されてしまわないとも限りません。
サミット参加国の中での孤立を恐れる余り、ソ連の性急な要請に応じようとする声も聞かれますが、今必要なのは、対ソ支援がソ連の軍事力維持につながらないこと、連邦と各共和国との関係が明確になること、何よりも北方領土問題解決の見通しを明確にすることであります。対ソ支援についての我が国の基本的姿勢を総理からお示し願いたいと存じます。
また、先般の米ソ首脳会談でブッシュ大統領が我が国の北方領土問題に言及されており、今や北方領土問題は、ソ連が新思考外交を世界に適用し、国際社会のシステムの中で共存共栄していくことができるかどうかの重大な試金石となっていると申しても過言ではありません。我が国も、先般のゴルバチョフ大統領の訪日の成果である日ソ共同宣言をもとに、北方領土の具体的返還の段取りが一日も早く明確なものとなるよう対ソ交渉を加速化していかなければなりませんが、総理の北方領土交渉を推進する御決意のほどをお聞かせ願いたいと存じます。
次はSTARTの調印問題であります。
去る七月三十一日、米ソ首脳はモスクワにおいて、戦略兵器削減条約STARTに調印いたしました。当初、戦略核の半減を目指したにもかかわらず、結果的には約三〇%の削減にとどまったとはいえ、ICBM、SLBMなどの戦略核について初めて削減した歴史的意義はまことに大きなものがあると考えます。かかる措置は、相互の信頼関係の前進があってこそ実現できるからであります。さきに米ソ間における戦域核INF全廃条約の発効、東西欧州間における欧州通常戦力削減交渉CFEの妥協など、東西の軍縮の進展は目覚ましいものがあります。一方、ロンドン・サミットでは、湾岸戦争に見られるような地域紛争の再発を防止するために、通常兵器移転の国連への登録制を導入することで合意しております。
そこで、総理に伺います。第一に、米ソ戦略兵器削減条約の発効が、今後の米ソ関係及び国際政治の動きにいかなる影響を及ぼすと認識しておられるか。第二に、こうした米ソ軍縮機運が、アジア・太平洋や中東の安全保障、軍縮の進展、さらには国連を中心とする兵器移転の規制に具体的なインパクトを与えるものと判断されておられるかどうか。第三に、戦略兵器削減条約に象徴される米ソ関係が、我が国の平和外交や防衛政策を考える上でいかなる意味を持つとお考えか。以上の三つの点についてお伺いいたします。
次に、ウルグアイ・ラウンドヘの対応であります。
ロンドン・サミットにおいて、ガット・ウルグアイ・ラウンドについて年内決着を目指すことになりました。ウルグアイ・ラウンドの成功は世界経済の着実な発展にとって不可欠であり、自由貿易体制から最大の恩恵を受けてきた我が国としてもラウンドの成功に向けて努力する必要があります。他方、ウルグアイ・ラウンドの焦点となった農業交渉は、我が国はもとより、米国、ECそれぞれに問題を抱えているものであり、食糧安全保障という国家存立の根幹にもかかわる問題であることから、米市場開放問題について我が国が関税化という一方的な譲歩を強いられることは避けなければなりません。今後、年内合意に向けて我が国に対する圧力が高まることが予想されますが、政府はどのように対処していかれる御所存か、お尋ねいたします。
次に、国際化時代にふさわしい危機管理体制の整備について伺います。
昨年から今年にかけての湾岸危機に際し、我が国は巨額の資金協力を中心とした支援、貢献を行ったにもかかわらず、諸外国からさほど評価されていなかったことはまことに残念であります。その理由として、危機管理体制が整備されておらないため対応が後手後手に回り、タイミングを失し、かつ支援、貢献のほとんどが資金的なものにとどまってしまっていることが挙げられるでありましょう。
今日なお冷戦後の新しい国際秩序が確立されるに至ってはおらず、いまだに領土、資源、民族、宗教などの紛争要因が残存しており、今後とも地域紛争の可能性を否定できない状況にあります。したがって、我が国としては、湾岸危機への対応の仕方を真剣に検討し、危機に臨んで、国益を守り、かつ国際社会に貢献するために迅速かつ的確に対応できるよう体制を整備することが喫緊の課題であります。
国の防衛に関しては安全保障会議があり、さらに各種の危機に際しては関係閣僚会議を設置して対処するのを例としております。しかし、いずれも湾岸危機のような事態に十分に対応できないのであります。米国の国家安全保障会議のような広範な機能と権限を備えた体制が必要であり、さらにこのたびの雲仙岳の噴火あるいは関東大震災のような国内の災害にも直ちに対応できる危機管理の体制が必要であると考えますが、総理ほどのようにお考えでありましょうか。次は日米関係であります。
我が国外交の基軸である日米関係は、年々相互依存の度合いを深めておりますが、一方、摩擦が生じやすくなっていることも否定できません。総理が、日米親善交流基金の創設や日米コミュニケーション改善構想など、日米の交流強化に腐心しておられることに敬意を表するものでありますが、日米関係の過去を振り返り、二十一世紀を控え、世界の平和と繁栄の大きな牽引力となる両国のきずなをより強固なものとする必要があると考えます。
その象徴ともなるべきブッシュ大統領の訪日の見通しほいかがでありましょうか、また、訪日を機会に、率直な意見交換と、互譲の精神を発揮し、経済問題などの諸懸案を解決して日米の友好関係をより一層発展させるべきものと思いますが、総理の御見解をお尋ねいたします。
また、我が国の安全保障に失わせない日米安保条約の円滑な運用に資する観点から、米軍に対する支援強化の要請にもこたえていくべきものと考えますが、いかがお考えでありましょうか。
以上、私は当面する重要課題に絞って政府の対応についてお伺いいたしましたが、いずれも日本の将来を決定づけるものであると信じます。
ともすれば、これまでの我が国は、金は出すが人は出さないという小切手外交とさえやゆされ、政治経済制度は同じでも質的には違った国と言われておりました。おくればせながら掃海艇を派遣し、今期国会にPKO法案を提出されることとなっておりますが、今こそ、相互依存を深めている国際社会において、世界の中の日本として、みずからがその独自性のもと、憲法の国際協調の精神を体して国際秩序の形成に積極的に貢献しなければなりません。
また、政治改革は、政治に対する国民の信頼を確立するため、心ならずもなじんできたこれまでの政治の基本構造を有権者の立場に立って抜本的に改めようとするもので、政治家にとっては痛みを伴うものとなりますが、健全な議会制民主政治を確立するためには避けられぬ重要問題であると思います。その見地から、「信なくんば立たず」の三木元総理の精神を受け継いでおられる海部総理としてこの政治改革を大胆に実行されることが、総理そして海部内閣に課せられた重大な使命であると思います。
当面の証券問題の解明を初め、重要な政策課題が山積しておりますが、我々はこの危機を一日も早く克服して、公平で活力ある社会づくりに邁進しなければならないと存じます。総理、どうかこの歴史的とも言える挑戦に向かって不動の信念のもとに強いリーダーシップを発揮されるよう切望して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕