児玉健次の発言 (本会議)

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○児玉健次君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに厚生大臣に質問いたします。
 総務庁が一九八八年に行った世界青年意識調査によれば、自国に誇れるものを持っているかという質問に、社会福祉と答えた青年は、スウェーデンにおいて七一・六%、フランスで二六・〇%、イギリス一八・六%、日本では六・三%にとどまりました。日本の福祉の貧しさが青年の意識にも反映していることを示すものであります。世界に誇れる社会保障を築くことは、老いも若きもすべての国民の共通の願いです。
 この改正案が、国民の願いにとってどのような存在であるか、それが問われています。
 質問の第一は、政府管掌健康保険における国庫負担の千三百十億円に及ぶ削減についてであります。
 政府管掌健康保険への定率国庫負担は、健康保険法で二〇%から一六・四%までと明確に定められています。現在の国庫負担率一六・四%は、法が定める最低限度のものであります。それを暫定措置などと称して三・四%も引き下げ、加入者の保険料率は〇・二%しか下げない、これが本改正案の主な内容であります。このような大幅な国庫負担率の引き下げは政府管掌健康保険の歴史始まって以来のことであり、まさに言語道断のことだと言わなければなりません。
 この間、政府管掌健康保険は黒字が続き、一九九一年度末には積立金が一兆四千億。円に達しようとしています。かつて三K赤字と言われ、国鉄、米と並んで赤字続きであった政府管掌健康保険がなぜ黒字となったのか。その原因は、まず、一九八四年に強行された健康保険本人一割自己負担に求められます。一割自己負担の導入以後、労働者の受診率が低下し、過労死と背中合わせの中で、労働者の多くは医療から遠ざけられています。加えて、医療の充実発展を困難にする診療報酬の改定、長期入院の厳しい抑制等があります。その結果生まれた黒字を理由に国庫負担の引き下げを図るという、このようなやり方を国民は断じて許しません。(拍手)
 政府管掌健康保険は、中小企業労働者を主たる加入者としています。厳しい労働条件のもとで日本の産業を支える中小企業労働者を対象としたこの保険は、財政基盤が弱く、多くの関係者のひたむきな努力によって定率国庫負担の制度が発足したのであります。
 総理が生活大国を言うのであれば、国庫負担の削減を撤回し、積立金は健康保険本人十割給付の復活、看護料等診療報酬の引き上げ、保険料の大幅引き下げに充てるべきです。総理並びに厚生大臣の明確な答弁を求めます。(拍手)
 第二は、社会保険審議会を医療保険審議会とすることです。
 社会保険審議会は、従来、被保険者を代表するものということで、労働者代表が加わった三者構成により管理運営にもかかわってきました。この改正案では、三者構成をやめ、学識経験のある者のうちから厚生大臣が任命することとしています。これでは労働者代表が排除をされることにな
ります。ILO・疾病保険の一般原則に関する勧告第二十九号において、「被保険者は、保険制度の運用上最直接に利害関係を有する者だるを以て、選挙せられたる代表者を通じ保険制度の管理上重要なる地位を占むべし。」と明記されています。これが国際的な規範です。そのゆえに社会保険審議会では、労働者代表が審議会委員として重要な地位を占めていました。これまでの審議会構成をなぜ変えるのですか。従来の構成を継続し、審議会における労働者代表として、現存する労働者、労働組合のナショナルセンターのおのおのから代表を選ぶべき、であります。
 次に強調したいのは、新設の審議会が医療保険の一元化という名のもとに、健康保険本人の医療給付の水準を八割給付に引き下げたり、被用者保険への負担転嫁を行う場となることは、絶対に許されないということです。
 以上の諸点について、厚生大臣の見解を求めます。(拍手)
 第三は、標準報酬の引き上げと保険料の引き下げについてであります。
 標準報酬月額の下限を現行の六万八千円から八万円とするとともに、上限を現行の七十一万円から九十八万円に改定することとしています。標準報酬下限の引き上げは、直ちにパート労働者等約十万人に及ぶ低賃金労働者の保険料の引き上げをもたらします。現行の保険料率千分の八十四を千分の八十二に下げることによる保険料の減額分は千二百四十億円、一方、標準報酬の上限、下限の引き上げによる財政的影響額、言い直せば保険料増額分は満年度において千二百三十億円です。保険料の若干の引き下げは標準報酬の改定によって完全に帳消しとなっているではありませんか。政府が喧伝する保険料率の引き下げの内実はこのようなものであります。標準報酬月額の下限を引き上げることはきっぱりと中止すべきではないか。厚生大臣の答弁を求めます。(拍手)
 第四は、現行の単年度ごとの財政運営を五年程度を見通した中期的財政運営に改め、現行の積立金を活用して事業運営安定資金を創設することについてであります。
 政府が心の底から政府管掌健康保険の財政安定を願うのであれば、少なくとも国庫負担率の現状を維持し、あわせて一九八五年から始まった政府管掌健康保険の国庫負担一部繰り延べ措置の累積額、実に五千四百九十一億円、これは一九九一年度末のものですが、これを直ちに厚生保険特別会計に返却すべきではありませんか。総理並びに厚生大臣の見解を求めます。(拍手)
 最後に、本年四月一日から実施される診療報酬についてであります。
 今回の改定で、老人性白内障の眼内レンズに対する保険適用が実現しました。これは、全国の老人クラブ、四百九十市町村に及ぶ議会が意見書を提出するという幅広くかつ粘り強い努力の結果であって、全国のお年寄りに大変喜ばれています。
 しかし、今回の改定で見逃すことのできないものの一つに患者負担の問題があります。快適な環境を提供すると称して、差額ベッドがすべてのベッドの五割まで認められ、患者が費用を負担すれば、特別材料食の提供が認められました。日本の病室の環境は快適さとはほど遠いものであり、食事も含めて入院中の処遇改善を求める声が強くなっています。政府は、これにこたえるための措置だとしていますが、特別にお金を出した患者だけがよい病室と上質の食事ができるというのでは、新たな差別が医療の現場に生じます。この背景には、厚生省の、一定水準以上のサービスは私的負担にゆだね、公的保険の給付範囲を限定するという意向があります。医療に患者の経済力による差別を持ち込むのではなく、公的保険によって医療の水準を確実に引き上げることが現在求められています。厚生大臣の明快な答弁を求めます。(拍手)
 本改正案は、保険料率の引き下げ、出産手当金の支給期間の改善等はあるものの、国庫負担の削減、国民に新たな犠牲を強いる方向での医療保険一元化に向けた体制づくり等が改正の主要な内容であり、日本共産党は容認することができません。
 今医療に求められているのは、世界に類例のない老人に対する差別的医療をなくし、国民だれもが必要なときに安心して医療を受けられる体制をつくることであります。医療保険の改善とあわせて、予防、公衆衛生、治療、リハビリテーションの一貫した保健医療制度を確立することです。医療と福祉の連携強化が重要です。そして、医療機関における看護婦を初めとする職員の労働条件、配置基準等を抜本的に改善することが緊急の課題となっています。
 日本の経済力を国民の暮らしに振り向ける意思さえあれば、これらの事業を実現することは完全に可能であります。そのことを述べて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕

発言情報

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発言者: 児玉健次

speaker_id: 15994

日付: 1992-03-06

院: 衆議院

会議名: 本会議